冬になるとイチゴが高くなる。これはクリスマスケーキでイチゴを使うかららしい。
そんなことを休憩室のテレビで見た次の休日。幸村はたくさんのイチゴケーキを買って光秀のマンションを訪れていた。
インターホンを連打すると不機嫌顔の光秀が玄関を開ける。しかし追い返されることはなく幸村はリビングに通された。
この時点で幸村は少しだけ調子に乗ってしまう。
書類とパソコンを交互ににらむ光秀の目の前でケーキの箱を広げ始める。色とりどりのケーキを前にして幸村は飲み物がないことに気付いた。
「明紫波、俺の紅茶缶まだあるよナ?」
「…知らねぇよ」
光秀の愛想がないのはいつものことで、今さら何か思うことはない。おそらく慶次あたりならこの時点で引き下がっていただろう。
けれど幸村は平然とした態度でキッチンに向かった。お気に入りの茶葉で紅茶を入れて、さらに砂糖を投入する。
その時点で何かないかと冷蔵庫を開けた幸村は「honey」と書かれた可愛らしい小瓶を見つけた。
また誰かにプレゼントされたのかと思いながら小瓶を取り出して中身を紅茶に入れる。しかし光秀にハチミツを贈るということは、光秀は甘いものが苦手だということを知らないのか。
紅茶カップを手にリビングへ戻った幸村は早速とケーキを食べ始める。
しばらくケーキを楽しみ紅茶を飲んでいると身体が熱くなり始めた。動悸も激しく下半身も重くなってくる。「……明紫波」
ケーキに何か入っていたのかと思いながら目の前の男を呼ぶ。すると光秀はこちらを見てくれた。
「なんだよ」
「身体が変…になった」
言葉の間に吐息を漏らしながらつらいのだと訴える。すると最初は険しい顔をしていた光秀が唐突に立ち上がった。そのままキッチンに行ってしまう光秀を幸村は困惑の顔で見つめる。
少しの間を開けて戻ってきた光秀はあの小瓶を手にしていた。
「おまえこれ使ったろ」
「そのハチミツ…毒入りかヨ」
「あ? よく読めよ。これは媚薬だ」
小瓶を幸村に投げ付けて、光秀はソファへ行ってしまった。ソファに座ると書類を読み始めてしまう。
「なんで媚薬なんてあるんだヨ!」
「こないだの接待でお偉いサンにもらったからだよ。それで恋人を喜ばせてやれってな」
「……恋人、っていねぇよナ」
「さぁな」
聞き慣れない単語に不安を抱きながら幸村は小瓶をテーブルに置いた。ゆるゆると動き出すとソファに近づく。
「明紫波…」
「仕事の邪魔すんな。ヤりてぇなら勝手に跨いで自分でハメろ」
それはあまりにも冷たすぎる発言だった。しかし光秀の態度に絶句している間も身体がうずいてしまう。
ソファの手すりに持たれて座る光秀の上に跨がり、幸村は唇を噛みながらゆっくりと腰をおろしていく。けれど目の前にいる光秀は書類に目を通す作業をやめてくれない。
「まだ仕事する、のかヨ」
「テメェが勝手に人ン家来て好き勝手して自爆したんだろ。自分で始末つけろよ」
冷たく突き放された幸村は自分の気持ちいいところを探して腰を動かしてみた。けれどそれは見つからず、惨めさに涙があふれる。
「…ったく」
大粒の涙をこぼす幸村に気付いた光秀は書類をテーブルに投げた。勢いよく身体を起こすと繋がったままの幸村を押し倒す。
「仕事の邪魔しやがって」
獰猛な肉食獣のような目に見下ろされて幸村は涙に濡れた目を見開く。
「タダで済むと思うなよ」
そう告げた光秀は射抜くような眼光を向けたまま笑みを浮かべる。それを見た幸村は噛み殺されるような錯覚とともに顔を赤らめた。