光秀×幸村 短編集   作:とましの

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徹夜明け

壁の時計が午前二時まで進んでいる。当直の医師たちは仮眠や勤務に当たっていて職員室には誰もいない。

 

………あー………何徹目だっけか………。

 

今までにないほどの強い睡魔に襲われた俺はPCから目を落とした。ほんの少し五分ほど休むつもりで目を閉ざす。

 

今週は用事が重なった事もあって今までになく忙しかった。学会の準備に奔走しながら新しい医療器機の搬入日程を調節する。

石黒が書いた論文も明日までに目を通して、院長に提出しなければならない。通常の仕事にくわえていくつも仕事が重なれば寝る時間なんて残るはずがない。

 

 

 

「…昼から搬送が始まるから、石黒に立ち会わせて…」

明日も忙しい。昼間は書類仕事なんてやってられないだろう。機材の搬入に関しては石黒に任せることもできるが。

そう考えていると弱い力で肩を揺すられた。

目を開けたすぐ先になぜか真葉の顔がある。視界にあるのは俺を見下ろす真葉と白い天井だ。

 

「寝言まで仕事かよ」

 

「……職員室じゃ、ねぇよな…」

 

さっきまで職員室でPCをにらんでたはずだ。椅子に座ったまま少し目を休ませようとしたはずなんだが。ここは、仮眠室か?

 

「伊達川が救急の対応から戻ったら、おまえが床に倒れてたんだヨ。ここに運んで緋田がいろいろ見てくれた」

「ちょっと休んだだけで大袈裟だな」

椅子に座ったまま目を休ませようとしたはずが転げ落ちたらしい。ただそれだけの事で当直の伊達川と緋田まで使ったのか。あいつらも暇じゃないだろうに。

 

 

仕事に戻ろうとした俺はベッドの上で起き上がった。時刻は午前四時を過ぎている。二時間も寝れば十分な仮眠になるだろう。

 

そう思った矢先、真葉に押し倒された。上から体重をかけられたら、いくら俺でも動けない。

真葉の手が俺の肩に食い込む、眼前に迫る真葉の顔も厳しい。

 

ああ………そうか。

 

 

理由に気づいても、あいつの気持ちをわかっていても、それを口に出せない。

 

「イラつくことでもあったか」

 

だから誤魔化すように軽口を向けてやった。

 

「ああ、マジでウゼェ」

 

ますます顔をしかめた真葉はつぶやくように言うと俺から離れる。ベッドを離れた真葉は呆然と寝転がる俺の枕元に水のボトルを置いた。

 

「部下に心配かけんなヨ」

 

顔も見せずに言い放った真葉はそのまま仮眠室を出ていく。

 

あいつがマジで怒るなんて初めて見たわ。けどだとしたら、もう今夜はここで休むしかなさそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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