気付かなかったとはいえ、滅茶苦茶長い間ほったらかしにしてしまっていて申し訳ございませんでした。
なお、ゆっくり考える筈だった雫のCAD調整回は別の機会にさせて頂きたいと思います。
追記:
一部書き忘れてた分を付け足しました。
分かり易く文の頭に『※』を付けておきました。
ーー超簡易魔法式によって世界から武力対立の図式が消え、経済戦争という形に各国の対立が変わったことにより魔法差別の撤廃を掲げていた政治団体が内部分裂をはじめているーー。
自宅のリビングにおいて風間少佐から『その話』を聞いたのは、皮肉なことに壬生沙也加先輩から剣道部に誘われた日の深夜にだった。
彼女はカフェで、俺に向けてこう訴えかけてきていた。
『超簡易魔法式は確かに世の中と社会に変化をもたらしはしたけれど、それでも世界は一朝一夕で変わるものじゃない。
人の心と社会によって生み落とされた差別という名の歪みは、たった一つの発明品で覆せるほど単純なものなんかじゃないから・・・』
一定の真理を含んだ言葉であったと高く評価していたのだが、それでも事実は小説より奇なりだ。
どうやら世界は彼女が思っているより単純でシンプルな、原始的な真理によって動かされているらしい。
即ち、『金と力』。
それが世界と人の心とを動かす最たる物。
おそらくはそれが現実なのだと、今の俺はそう思っている・・・。
『まだ裏は取れてないのだが、ウクライナ・ベラルーシ再分離独立派がスポンサーである大亜連合のコントロールを離れ、独自の判断と方針のもと勝手な行動を起こし始めているらしい。
魔法師を主戦力とした戦闘が遠ざかったことで対魔法師用軍需物資だったアンティナイトの価値と価格が暴落し、各国政治団体のスポンサーを一手に引き受けていた大亜連合が「利益無し」と判断して手を引いたことで暴走しだしたと言うことだろう。
日本にも支部があることは以前より確認していたのだが、先日判明した所在地が微妙な位置にあるのでな。下手に刺激して自爆でもされたら叶わん場所にあるのだ。すまないとは思うのだが、詳細は省かせてくれ』
「事情はお察ししておりますので、お気になさらないでください。少佐。ご連絡していただけたことに感謝致します」
俺は礼儀正しく、礼儀だけを守って頭を下げる。
詳細は省くとのことだったが、ここまでの内容を俺に聞かせてきた時点で魔法科第一高校が奴らにとっての攻撃目標と目されているのは自明の理だ。利害が一致しているが故の同盟関係としては十分すぎるほどの礼儀を示してくれたと言えるだろう。
一方で、ここまで伝えておきながら詳細は伝えないと言ってくる少佐の胸の内も予想は付いている。
『そこでと言うわけではないのだが・・・達也。まだルイの正体について開かす気にはなれんかね?
世界を動かしている流れの中心には常に“彼”がいた。今や彼はあらゆる目的で世界中のあらゆる組織から狙われている身なのだよ、何らかのアクシデントに巻き込まれてからでは遅い。彼にもしものことが及ばないよう我々もまた警護につくべきだと私は考えているのだが・・・・・・』
思わず俺は唇の端を歪めて嗤う、苦笑を漏らしてしまっていた。
なるほど、これが『相手の意図が読めてしまったときに感じる苦々しい気持ち』か・・・。初めて感じたが、微妙に悪くない。
「・・・申し訳ありません、少佐。相手は世界に影響力を持つ北山グループのVIPです。いくら共同開発を提案してもらったとはいえ、俺個人の判断だけで正体を開示するには地位が高すぎる相手ですので、どうかお許しを・・・」
俺は礼儀正しく頭を下げて、相手からの『要求を拒絶』する。
何のことはない、風間少佐は「これ以上の情報開示を求めるのなら、お前の方からも出すものを出せ」と言ってきただけなのである。
『・・・・・・そうか。いや、お前の言うことの方が今回は正しい。出直させてもらうとしよう。それではな』
通話が切れ、ブラックアウトした画面を眺めながら俺は考えてみる。
果たして今の返答は、俺の心からでた本心だったのだろうか?
そして、思考し始めた直後に答えがでた。半分は間違いなく本心だったし、残り半分も嘘をついてはいかなかっただろうと。
北山グループに関しては嘘を言う必要性そのものがない。少佐たちに悪いとは思うが、はっきり言って基盤を持たない一○一は日本という国あっての組織でしかない。
いくら札付きの厄介者部隊を気取ったところで「どうしても」というお達しが御上から届けられた時には、その意向に従わざるを得ないのが国家という名の巨大組織に属する小規模組織の限界なのだから、これは仕方がない。
とは言え、いざという時に自衛能力皆無の雫を預けるには危険すぎる部隊であるのも確かなので、今はまだ雫には対外的に平凡な魔法科高校の劣等生でい続けてもらう必要性が絶対的に存在する。
「・・・いや、周りの者たち以上にあいつ自身が自分のことを劣等生だと思いこんでいるわけだから、「対外的に」と言う言い方は正しくないのか・・・?
ーーーそもそもあいつ、本当に自分のことを劣等生だと認識できているのだろうか・・・。俺に脅されて入った場所に怒られたくないから通っているだけみたいな感覚でいられた場合には、俺の今交わした会話はいったい・・・・・・」
時々本気で考えてることが分からなくなるバカの思考は、エレメンタル・サイトを使っても中身が見通せるようにはならない。どこまで行ってもアイツ一人の頭の中で妙な理屈から生み出されたアイデアに世界中が振り回されてるだけだと解釈したならバカが適当にやって世界を救った英雄譚にでもなるのだろうか? ・・・あまり読みたくない伝記が後世では100万部ぐらい売れていそうで少し怖いな・・・。
「まぁ、いい。とりあえずは明日からはじまる本格的な魔法実習についての予習だ。工学科といえども何もしないわけにはいかないはずだからな。やっておいて損はない」
こうして俺の夜は過ぎていき、平和的な朝を迎えて平和的に学校へとむかい、平々凡々な成績でテストをクリアすることに成功したのだった。
・・・・・・さて。雫たち二科生のクラスのテストではどんな状況になってしまっているのだろうか。面倒ごとに巻き込まれていなければよいのだが・・・・・・。
※しかし、それにしても・・・・・・。
「仮に話すべき時が来て、少佐たちにルイの正体があのバカだと明かしたとしても、信じてもらえるだろうか・・・? それが魔法の実技試験以上に難しい一番の課題なんだが・・・」
アイツの考えてる事も分かり難いが、それ以上にアイツの正体を聞かされた時の世間の反応はもっと解らん。予測不能過ぎている。いくら慎重にふるまっても過ぎると言う事はないだろう。
アイツの正体を開示しないもう半分の理由が『言っても信じてもらえるかどうか解らない』と言う辺り、つくづく予測できない不確定因子の塊みたいな奴だと思わずにはいられない。
「・・・明日は本当に何も起こさないでくれよ、雫・・・。いい加減、俺の拳も限界だからな・・・?」
「一〇六一ms・・・惜しい! あと少しで手が届いた距離まできたってのに!」
「バカね、時間を距離で表現するのは光の単位でよ。こんな短距離に用いてどうする気なのよ?」
「エリカちゃん・・・・・・一〇五三msで現在最下位だよ?」
「あああぁ! 言わないで! せっかく目の前に広がる辛い現実から目を背けるために手頃な弱者をイビって憂さ晴らししてたのに!」
「ご、ごめんなさい・・・って言ってもいいのかな? 今の言葉って・・・」
「ううん、いいのよ美月。悪いのはあなたでも私でもなくて、世界の方なんだから。
でも、どんなに厳しかろうと現実を直視して前を向かなくちゃ人は生きていけないものね・・・だから私は、この辛い現実をぶっ殺す!」
「え、エリカちゃーーーっん!? それ魔法科高校に通っている魔法師が言っちゃうと色々と問題がありそうな発言なんだけどーーーっ!?」
「・・・テメェの三文喜劇なんざどうでもいいんだが、いい加減、自分のペアがクリアしない限り居残り続けなきゃならない現実を直視しろよ・・・。
俺を玩具にしてタイム落ちたら、テメェだけ合格しても帰れないんだぜ? 俺たち・・・」
「ああっ!? しまったぁぁぁぁぁっっ!!!!?」
「エリカちゃん・・・・・・」
隣、で実技試験の居残りさせられて、るエリカとレオン・・・ハルト?が、仲良く「笑点」風コメディーを繰り広げてるなか。私もがんばって次で終わらせよう、とセイシンシューチュー。
「ん~・・・・・・えい! ーーあ、できた。二五〇msだった・・・」
「「マジで!?」」
「ーーっ!?(いきなり大声出されて思わずビクンっ!)」
び、ビックリした・・・。いきなり大声出すんだ、もん・・・。
「おいおい、幾らなんでもその数値はおかしいだろ? 今さっきエリカと似たり寄ったりな記録を出したばかりな二科生が叩き出せる数じゃねーって! ・・・・・・あ、本当だわ。本当に二五〇切ってるわ。・・・マジ引くわー・・・」
「むしろ私と同数がでる前にやった二度目には、合格基準を五〇以上下回ってたはずなのに・・・この一人格差社会はいったい・・・」
「エリカちゃん・・・雫ちゃんが最初にやった時には合格まで〇コンマ一秒以下の誤差しかなかったんだよ・・・?」
「「マジで!? 演算して使うのが現代の魔法なのに!? 一体どういう作りになってんの!? こいつの頭の中身って!!」」
う、うん・・・? なんだかよく分からないけ、ど・・・・・・怒って、る?
「え、っと・・・これはそ、の・・・・・・何となーーー」
く。と続けようとしたところ、で私は止まった。
考えてみた、ら、いつもこの言葉を言ったとき、に達也さんから怒られてる気がす、る。ひねくれ者は屁理屈が得意なひ、と。だから私も理屈はとく、い。頭でものを考える頭でっかち、なひねくれ者が正しいひねくれも、の。
「えと、ね? これにはコツ・・・みたいなのがあって、それが出来た時に、はスゴく上手くいく、の。出来なかった時に、はダメな結果しか出せない、の」
「ふむふむ、なるほど。一理あるわね。確かに剣術の技とかでも似たようなことはよくあるし・・・」
「って言うか、ほぼ全ての事柄に共通している常識的意見だった気がするけどな、オレ的な視点で、見た場合には」
う、ん。二人とも喜んでくれてるっぽ、い。ここでいい所を見せておけ、ば後で達也さんから怒られる回数が減らしてもらえるかもしれな、い。
がんばって、どう伝えればわかりやすい、か考えてみ、る。
「んと、ね? 頭の中のポーンとなってる所、をぽいっとし、て。ふわっと出てきた部分、をキュッとなったら答えがココになるで、しょ? そしたら後、はーーー」
「うん、ありがとう雫。大変よくわかったからもういいわ」
「だな。こいつの考えてることが誰にも理解できない理由がハッキリ分かったのも含めてスッキリしたぜ! 要は繰り返し練習あるのみってことだな! そう言うのは得意だ! うおおおおっ! やぁぁってやるぜ!」
「あー、もー! 暑っ苦しいわね! 猪じゃないんだから、少しくらい熱下げなさいよ!
でも、今回だけは私も似たようなことやりたい気分だわ。いいじゃない、乗ってあげる。特別に。感謝しなさいよね?」
「・・・いや、唐突にそこで偉ぶられても意味わかんないんだけど・・・。つか、よく考えてみりゃ久し振りな気がすな、このやり取りも」
「そういえばそうかもねー。ま、いいじゃない。今回の居残り授業に限ってだけど、アンタと私はペアで一蓮托生コンビ。早くクリアして帰る為にも力を合わせて頑張りましょ!」
「おうよ! それじゃあ行くぜ相棒!」
『うおおおおおおおおおおおっっ!!!!!!』
「・・・二人とも、一一〇〇ms代だね・・・。二人とも、頭で考えなきゃいけない現代魔法を使おうとしているときに叫んだりするから、集中が途切れて思考がバラバラになっちゃったんだよ~・・・」
『・・・・・・やっぱりアンタ(お前)とは反りが合わない! コンビ解散だ!(よ!)』
早、い!?
注:
今作の雫は天才ではないですので今回の結果も才能によるものではありません。
ぶっちゃけ『運』です。
魔法を感覚で使っているため時折うまくハマる事があり、その時にぶつかると良い結果が出ます。
要するに『パルプンテ』みたいなもんだと思っといてくださいませ。