リーナが決勝トーナメントに行く前にこなした予選リーグでの話を深雪たち観客席視点で語られた内容となっております。要するにアクティブエアーマイン登場回ですね。
良ければお楽しみください。ただしセコイ内容ですので原作ファンの方はお気を付けくださいませ。
「あら、摩利。寝てなくていいの?」
一高に割り当てられてるテントの中で、私たち生徒会コンビが試合会場を映し出すディスプレイを見ていると松葉杖をついた風紀委員長の三年生さんがひょっこり顔を出してきた。
これで生徒会プラス風紀委員の三年生トリオ復活ね。一日ぶりだけどホッとするわ~。
「病気じゃないんだ。暴れなければ問題ない。それより真由美の方こそテントに詰めてなくていいのか? ・・・あるいは精神病棟に隔離されてなくていいのか・・・?」
「どういう意味じゃ!?」
おどけたやり取りを(私の方は最後だけ若干本気)交わして一日ぶりの友誼を確かめ合い、相手が健在であることも判ると私はニコリと笑って、リンちゃんはニコリともせず事務的な説明をして、摩利はリンちゃんの説明に仏頂面でお返事。
うん、いつもの生徒会プラス風紀委員メンバーだわ。これぞ我が魔法科第一高校よ。
「と言うより、寝ているだけだと不安が募って寝ていられん。動いていた方が結果的には安静にできる。
こんな状況下でアイツのエンジニアとしての腕前を実戦で見せられるとは思っても見なかったのだからな・・・正直、不安で仕方がない・・・」
「・・・まぁ、うん。それはちょっと分かるかもしれないわ・・・ね」
好奇心はなく、不安と不信と疑惑で満ち満ちている内心を剥き出しにした摩利の言葉に、私は役職上、問題あるなと思いつつも首肯せざるをえないものを感じてしまった。
なんたって次の試合のエンジニアは、あの雫ちゃんなのだから不安にならない人の方が極小数例だと私でさえ確信できてしまう。
「私の時はお手伝い程度とはいえ達也くんだったし、ある程度は腕前の一端を披露してくれたから、彼が担当する試合の方は信じて観戦するぐらいの余裕は持てると思うんだけど・・・雫ちゃんじゃちょっとねぇ・・・」
「不安だ・・・・・・」
「クドウさんを始め、選手からはとても好評のようですが」
生徒会長プラス風紀委員長コンビが、いまいち自分たちが任じたエンジニアを信じ切れずにいる中で、リンちゃんが常と変わらない平素な口調で安心できる要素を報告してくれる。
「え、そうなのリンちゃん?」
「はい。彼女たち曰く『なんだか理屈はわからないんだけど前のより使いやすい』『なんとなくだけど手に馴染む気がする』『これなら勝てると根拠もなくそう思えてくる摩訶不思議なCAD調整技術』と、不思議そうにしながらも出来自体は絶賛してましたから」
「不安だ・・・不安しかない変なハイスペック説明だ・・・・・・」
摩利がさっきより一層、表情を暗くして私もちょっとだけゲンナリする。
雫ちゃん・・・あなた、科学の塊CADに何しちゃってるのよ本当に・・・・・・。
「エリカ。隣、いい?」
「アラ、深雪。空いてるわよ。どーぞドーゾ」
わたしは深雪が来たとき用に確保しておいた席を、座るべき主に譲り渡し、番犬代わりに席順いじって配置させといたレオとミキをお役御免してやりながら(あんま役に立たなかったけどね~)試合開始寸前の会場へと視線を戻した。
元から深雪が遅れてきても大丈夫なように打ち合わせしといた結果だったから、別に問題ないでしょコレぐらいなら。レオたちには何も話してないけど、お姫様の席を守り抜くナイトの役を任せられてたんだからありがたく思っとけーって感じでひとまずはおK。
こうして深雪がそろったことで面子が集まり、全員が落ち着いて試合を見れるようになった次の瞬間。ランプが全て点って試合開始。クレーが空中に射出され始める。
そしてリーナがCADの引き金を引くと、クレーは出てきた途端に砕け散って相手選手は呆然自失。出てきたと思った瞬間にはエリアの両端から射出されたクレーが二つ同時に砕け散ったわけだから当然っちゃ当然の反応なんだけど・・・どうやったのかしらアレって?
有効エリア全域に作用する魔法で、出てくるクレー全部を片っ端から落としているとかなら判らなくもないけど、相手選手の分まで落としてしまうから割は良くないし・・・。
あ、今度のは普通に片側から出てきた自分の落とす色だけ砕いたわね。――本気でどうやってんのよコレ!?
「さすがは、リーナ。豪快な魔法の使い方ね」
「豪快とかそう言う問題じゃないでしょ!? いったいどうやってんのよアレ!? さっきから試合が成り立ってないんですけどぉ!?」
素直に賞賛する深雪と違って、わたしはひねくれてる自覚があるから噛みつくわ。それこそ納得いくまで全力でね。
「・・・もしかして有効エリア全域を作用領域に設定した魔法の効果対象を自動で選別できるようにしてあるんでしょうか?」
「そうですよ」
深雪がいともアッサリ、スピードシューティングと言う競技を根底から台無しにするかのような秘密を暴露してくれた。
いや、もう其れ、スポーツでも何でもないと思うんだけども・・・・・・。
「得点有効エリア内にいくつか震源となるポイントを設定して、そこから固形物に振動波を与える仮想的な波動を発生させる。震源から球形に広がった波動に標的が触れると仮想的な振動波が標的内部で現実の振動波となり標的を破壊させる・・・これがお兄様のオリジナル魔法アクティブ・エアー・マインの原理よ。
今リーナが使っているのは、これに雫が調整した超簡易魔法式による照準補助をさせたものね」
「補助て。明らかにルール規定以上の性能を発揮しちゃってるんだけども・・・?」
あたしは、コレが正式採用された日にはスピードシューティング終わるなーってレベルで問答無用に射撃無双しまくってる射撃姿勢のリーナを指さしながら白い目で深雪に質問すると、彼女は笑顔でこう答えてくれる。
「ええ、そうかもしれないわね。でも、大会規定に則ったCADを使って、規定違反に指定されていない性能しか発揮できないはずの調整までしかしてない器具で大会運営委員会が想定した以上の成果を出すことは、はたしてルール違反に該当するのかしら? どう思う? エリカ」
「・・・ハッキリ言って詐欺だと思うわ、絶対に・・・」
「そもそもどうやってんだよ、その訳分からん理屈不明の詐欺は・・・」
うめくように私が言って、横合いから同じような声でレオが聞く。
深雪は変わらぬ笑顔で穏やかに優しく種明かしをしてくれた。
「今までのCADは機械によって魔法を使いやすくし、個人差が大きかった魔法師の実力の単一化と量産化を最重要視したものだったの。魔法師を兵器として捉えていたが故の発想と、お兄様は呼んでいたわ。
これは機械による魔法師の補助ではあるけど、機械自体が魔法を使えるようにしたわけではなかったから、当然CADで使える魔法は機械と直接リンクしていたわけではない。あくまでCADを通すことにより効率を上げていた。ただそれだけ。
魔法師にとって有用ではあったけれども、魔法師以外にとっては然したる意味のない道具・・・それが今までCADの市場が限定的で在り続けざるをえなかった最大の理由。
でも、超簡易魔法式は其れとは根本的にコンセプトが異なっているのよ」
「超簡易魔法式は『簡単な魔法だけを使用可能にした機械』のこと。その性質上、魔法を使用する本体である機械と魔法との間には従来のCADとは桁が異なる親和性を発揮していて、超簡易魔法式は『機械本体の機能も使わせようと思えば出来てしまう』。
色の識別だけなら人の目や魔法で判断するより、機械にやらせてしまった方が早いのは自明の理でしょう? だから今リーナの使っているCADにはその機能が簡易的に組み込まれているの。
超簡易魔法式で機械の色識別機能を作動させて得た情報を、エリア内のポイントめがけてCADで魔法とともに撃ち出す。
色を識別する魔法なんて難しいわけがないし、機械の電源を入れてデータを元のCAD本体に送り返すだけの魔法が高難度のはずもない。
簡単な魔法の組み合わせだけで可能になってしまう、最高に最低なスポーツへの冒涜魔法・・・私はそこまで卑下することはないと思うのだけど、お兄様はそう仰られていたわね」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
――正直、白い目になって唖然。今回ばかりは達也くんの言うことが正しいと思ってしまうあたしだわ・・・。まぁ犯人自身が言ってりゃ世話ないんだけれども。
「てゆーかソレ、間違いなく最初に使った試合以降は使用禁止されるよな? 厳密なルール規定で禁止されてなくても、使わせ続けちまったら試合にならねぇんだし・・・」
「ええ、その通りになるだろうとお兄様も仰っていました。そして、その時には大人しくCADを大会委員に渡して謝罪するとも言っておられましたよ?」
「だったら―――」
「そして、次の試合からはソレよりかは性能を落とした類似品で試合に挑ませるとも。
最初に大きく振って衝撃を与え、その後は退いてみせることにより実際以上に相手が譲歩したように錯覚させる。
想定されていなかった魔法の使用を禁止するのですから、当然ソレを決めるのは大会委員たち個人個人の主観に頼ることとなり、客観的事実よりも情動などの感情に左右されやすい判断基準とならざるをえません。
最初に自分で決めたことを覆すのは人にとって至難であり、自分の決めたルールに従い妥協してくれたものには好意を抱きやすいもの・・・」
「・・・・・・」
「お兄様曰く、この手法を商売の世界では『ローボールテクニック』と呼ぶのだそうです」
「詐欺じゃねぇか。普通に」
レオが白い目をしたまま真顔でツッコんで、あたしも隣でうなずき賛成であることを表すと、深雪も首肯して納得する。
「ですが―――」
「別に九校戦はCADの新機種をPRするために開催された即販イベントではないのだから問題はない。魔法競技という名のスポーツ大会である。
接客業ではないのだから、スポーツに経済界のルールを持ち込むのはスポーツマンシップに泥を塗る行為なのでしたくはない、とも仰られていましたのでそのあのえーと・・・・・・」
「「詐欺だよ! 詭弁だよ! 完っ全に詐欺師の言い分だよソレはぁぁぁぁぁっ!!!」」
あたしとレオの雄叫びが九校戦の会場内に響き渡って、唖然呆然として沈黙している観客席中に空しく轟く。
夏の空に、男と女が勢いだけで空っぽの叫び声を轟かす日本の夏。九校戦の夏。
経済大国にして技術大国目指して躍進している日本の夏は、スポーツでかいた汗まで金臭くなりそうな状況にあった。
「・・・・・・という仕組みだそうです。如何思われますか?」
「「普通に詐欺だと思う」」
私と摩利が異口同音にリンちゃんの解説を切って捨てる。
リンちゃんも特に異論はないようで、反論してくることも達也くんを弁護しようとする気配もなく、解説の続きを淡々とした声と口調で語ってくれた。
「・・・もっとも、それほど便利な魔法という訳でもないようですね。
本来は別々の物をつなぎ合わせて、瞬時に誤作動なく発射され、なおかつ狙いが誤差の範囲で収まるズレしか生じさせないとなると、均一化を前提とした従来のCAD調整技術だと何らかの形で何処かに欠陥を生み出すか、試合途中で自壊する危険性を背負い込むか、最低でも大幅な性能ダウンとサイオン消費量の増大、この内どれか一つをデメリットとして享受せざるをえないのが普通なのだそうです。
これは司波くんの技術を持ってしても完全解決には至りません。どうしても北山さんによる、選手個人の感覚に特化して依存させた調整が必要不可欠なのだとのことでした。
・・・まぁ、尤もそのお陰で一般の評価基準で見た場合にはバランス最悪な欠陥品CADにしか見えようがないから審判を騙しやすいとも言ってましたけれども・・・」
「・・・やっぱり詐欺なんじゃないの・・・・・・」
私が白~い目でリンちゃんを睨み付けると、彼女はほんの少しだけ誤魔化すように咳をすると、私たち二人に向かって達也くんの口調を真似しながら最後にこう付け加えるのだった。
「司波くんはこうも言ってましたよ。『世界を上手く騙すのが魔法の技術なんです』・・・と」
「まぁ、そうかも知れんが・・・・・・」
ポリポリと後頭部をかきながら摩利が呟き、私も概ね同意する。
確かにその意見は正しい。正しいのだけれど・・・でもね? 達也くん?
「今現在進行形で騙されて利用されてるのは、世界なんてスケールの大きい代物じゃなくて、大会運営委員たちと大会規定なんだけども?」
「・・・・・・・・・私に言わないでください。司波くんに言ってくださいよ司波くんに・・・・・・」
つづく