北山雫は魔法科高校の劣等生   作:ひきがやもとまち

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久しぶりの更新となってしまいました…。最近、歳のせいなのか季節柄のせいなのか、書くときに体力消耗し過ぎるため書きたい内容を書けるコンディションの時が異様に少なくなってて困り気味な作者であります。
他の作品もできるだけ早く続き書きたいのに困ったものです…(-_-;)


31話「北山雫は『九校戦』の劣等生?それとも優等生?」

 全国魔法科高校親善魔法競技大会・・・・・・それは全国から選りすぐりの魔法科高校生たちが集い、若きプライドを賭けて栄光と挫折の物語を繰り広げる純粋な魔法競技大会。

 その為、この大会に選手として参加を許された時点で、魔法という希少な才能を認められたエリートの中から選抜されたエリート中のエリートであることを証明してくれている。

 

 しかし、この大会は参加選手に選ばれた時点から劣等選手と優良選手が存在している。

 

 たとえば、参加選手用にと割り当てられた普段は自衛隊関係者用のホテルの一室である自分用の部屋で、夜遅い時間に妹に訪問され説教している最中に、妹より先に来ていて寝ぼけたバカな幼馴染みのせいで迷惑被らされていた現代基準では劣等生とされている最強魔法師の少年が怒られている近くのベッドで、騒動の原因となってるバカが安らかな寝息を立てながら満漢全席の夢を見て涎を垂らしていることが許されてしまう程に。

 

 九校戦は同じ劣等生でありながら、それでも格差が存在してしまっている魔法競技大会の場であったのだ。

 

 

 ・・・・・・そして奇しくも同時刻。九校戦の会場である富士演習場から大分離れた距離にある横浜中華街、その香港資本が経営している高級ホテルの一室において、今の司波達也と同じぐらい理不尽な目に遭わされて嘆いている男たちの一団が至急の呼び出しを受けて集められていた。

 

 

「――今日の新人戦、『スピード・シューティング』だけでなく、『バトル・ボード』でも一高の女子選手たちが上位独占したそうだ・・・」

 

 テーブルを囲むように座って席に着いていた五人ほどの男たちは、最初に口火を切った男の報告を聞かされて思わず不愉快そうに唇を歪ませずにはいられなかった。

 

「・・・・・・新人戦は第三校が有利ではなかったのか?」

「その通りだ。少なくとも下馬評ではそうだった。だが蓋を開けてみればこの様だ・・・客たちは賭け甲斐があると喜んでいたがな・・・」

「クソがッ! これだからギャンブルって奴はこれだから!!」

 

 ダンッ!と大きな音を立てて一人の男が拳をテーブルへと叩き落とし、並んでいた満漢全席とはいかないながらも高級中華フルコースではある料理の一部を衝撃で床に落としてしまうが、それに目を向ける者など一人もおらず、誰もが焦りと苛立ちとを血色の悪くなった顔に浮かべながら腕を組んだり閉じたり開いたりしていた。

 

 男たちの顔には例外なく我慢しがたい怒りと憎しみが渦巻いており、本来なら万が一を考慮して英語で話し合うべき場所柄だというのに母国語で罵声を叫んでいる同士を咎めもしない。

 

「せっかく渡辺選手を棄権へと追い込んだというのに、これでは意味がないではないか! 本戦での優勝者一人で得られる点数より、新人戦で上位独占をして得られるポイント数の方が高いんだぞ!? このままでは第一高校が優勝してしまったらどうする気なのだ!?」

「第一高校は、女子選手たちとは真逆に男子選手たちの成績が悪い・・・。

 《スピード・シューティング》では一人が準優勝で、残り二人は予選落ち。《バトル・ボード》の方でも予選通過が一名だけだ。

 男女ともに《波乗り》の決勝は六日目でもあることだし、まだ第一高校が優勝するとは限るまい・・・」

「男子選手たちとは真逆に、女子は選手全員が首位を独占しての予選通過という結果を見ても第一高校が《波乗り》で負けてくれる可能性があると本気で思っているのかジェームス!?」

「それは・・・・・・」

 

 そう言われてしまうと返す言葉もなく黙り込むしかない。

 だいたい今言った発言とて、別に本心から信じて言ったものではなく、過ぎた事を恨むよりかは何かしら明るい希望を見つけ出そうと無理矢理こじつけただけの代物であり、ジェームスと呼ばれた彼自身も怒鳴ってきた相手と同じように怒りと憤懣やるかたない想いで胸がいっぱいなのである。

 

 

 ――彼らは香港系の犯罪シンジケート『ノー・ヘッド・ドラゴン』の日本支部を担当している上級幹部たちであり、最近までは『ソーサリー・ブースター』と名付けられた商品で相当に荒稼ぎしていた者たちの一部でもあった。

 

 『ソーサリー・ブースター』、俗称『ブースター』は魔法師の大脳を使用した魔法増幅装置であり、使用する魔法を限定する事によって素材となった大脳の持ち主だった魔法師が本来もっていたキャパシティを超えた性能を発揮してくれる高値で売れて原価が安い、供給元にとってはこれ以上なく美味しい品物であるはずだった物でもあり、近年まで『ブースター』の製造に関わる者たちの組織内における待遇は破格とも呼ぶべき特権的地位を有してきていた。

 

 だが、最近ではその栄光は陰りを見せ始めて久しい。

 戦争が起きる回数が減った事により、ブースターを求める顧客が激減してしまったことが、その要因である。

 そうなった原因は言うまでもない。あの忌々しい超簡易魔法式が登場したことが全ての災いの元凶になっていた・・・!!

 

 あれが登場したせいで国家間戦争のあり方が、武力衝突よりも経済戦争にシフトするようになってから数年。

 国同士の諍いを武力によって解決しようとする動きが0になることなど人類の歴史が続く限り絶対にあり得ないことではあっても、やはり往事ほどの回数には遠く及ばない頻度でしか紛争や騒乱が勃発しなくなったことにより、ごく自然に『ブースター』の消費量と補充のために再購入してくれる回数は大幅に減ってきてしまっている。

 今ではメインの客層が国軍からの非公式な大量受注ではなく、自分たちと同じ犯罪組織やテロリストなどの方が購入回数としては多くなってきているほどだが、領土という固有の経済基盤を持たない私設武装組織が一国家の正規軍以上に金を持っていて、多国間戦争に勝つため高額兵器を大量購入し続けてくれるはずもない。

 本部に献上している上納金も最盛期の半額近くにまで落ち込んできているのが昨今の彼らであり、当時の栄光を知る者たちとしては素直に受け入れられる心境には中々なれない。

 

「本命の第一高校が勝利したのでは、我々胴元の一人負けだぞ? 大損だ!! そうなっては今期のビジネスところではない!」

「今回のカジノでは特に大口の客を集めたからな・・・負けた時の支払い配当は、我々全員が持つ全財産に相当する。我々全員が本部に粛正されるか首をくくるかの、どちらかしか選ぶ道はなくなってしまうしかないだろうな・・・」

 

 男たちが深刻さを増した表情で顔を見合わせながら話し合いを続けていく。

 顔は深刻そのものではあったが、実のところ彼らがやっている事自体はシンプル極まりない、『今年の九校戦で優勝する学校はどこか? どの学校がどの順位に付くだろうか?』を予測して選んでもらい、正解者には豪華賞品がプレゼントされる・・・・・・まぁ要するに「トトカルチョ」である。

 体育祭とかの時に学生たちが昔からよくやっていた例のイベントを、超高額の賭け金募って、参加者たちはVIPレベルに限って開催してきたのがノー・ヘッド・ドラゴン主催の毎年恒例『九校戦トトカルチョ大会』であり、今年は予想が大きく外れて胴元が大損しかけて焦っている。・・・ただそれだけでしかない本当にシンプル極まりない話の内容だったのだが、シンプルだから問題の結果まで軽いという訳でもない。

 

「・・・もし、我々が再起を賭けて全財産を投じた今回のカジノで敗れた場合、我々全員が本部から無能者の烙印を押されて用済みとなり、粛正対象に指定されてしまうだろう。最悪の場合にはボスが直々に手を下しにくることさえあり得る状況なのだぞ・・・そうなってしまったら我々は・・・」

『・・・・・・・・・』

 

 ゴクリ、とリーダー格の男の言葉に全員が唾を飲み込んで喉を鳴らす。

 誰かが掠れた声で呟く声が、ポツリと聞こえた。

 

「死ぬだけならまだいいのだがな・・・・・・」

 

 その声は恐怖に震え、顔色は蒼白を通り越して真っ白になりかけていた・・・。

 超簡易魔法式の登場によって大幅に売り上げを減らした彼らは追い詰められた挙げ句、毎年恒例となっていた九校戦トトカルチョで再起を賭けた大勝負に出て、残る全財産をベットしてきていたのである。

 後がなくなり、逃げ場所も自分たちで閉じた後ともなれば怖くて震えてしまうと言うのも頷ける心理ではあっただろう。

 

 ・・・だが、彼らが再起のために選んだ手段そのものは単純明快で判りやすい限りであり。

 自分たちが胴元として主催する今回のトトカルチョ大会で、本命に指定した第一高校のオッズを倍率が高くなっても勝ちさえすれば損をしない額にまでバカ高く設定して票を第一高校に集中させた後、自らの手で第一高校の優勝を妨害して賭け金を独り占めするという、今どき中学生でもやりそうにない子供じみた出来レース賭博計画だったが、彼らがこんな杜撰すぎる計画で復権を狙いだしたのにはワケがある。

 

 

 ・・・・・・そもそも、いくら往事ほどの力はなくなったと言っても、彼らが組織内では有数の戦力を保持し続けている事実に変わりはなく、昔と比べて没落したと言うほど低い評価を受けるようになったと言う訳でもない。

 にもかかわらず、彼らがこうまで焦っているのは端的に言って、新勢力の台頭と成り上がりが下克上を招き始めていることが原因によるものだった。

 

 超簡易魔法式は魔法の使えない一般人であろうとも簡単な魔法は擬似的にマネ事ができるようにした機械、と極論する事が出来なくもない装置であり、ある意味では『ソーサリー・ブースター』を下位互換しまくった劣化量産型であると言えない事もない存在である。

 それは発揮できる出力と性能こそ桁違いに低くなってしまうことを意味する物であったが、逆に言えば大した効果を発揮できるものではないためリスクが少なく、コストパフォーマンスも良く、大量生産されて安価で手に入れられるから様々な用途での実験をしやすかったという安物特有の長所をもっているということでもあった。

 

 彼らノー・ヘッド・ドラゴン内で台頭してきた新勢力たちは、この特性を利用して様々な分野での成功と失敗を繰り返しながら、徐々に徐々にジェームスたち既存の幹部勢力の持つ力を着実に削ぎ落としにかかってきていた。

 特に違法賭博と、知能犯罪の面において超簡易魔法式の性能は絶大であり、使用するものの工夫次第で如何様にも使う事ができる利便性の高さは頭の柔らかい若手幹部たちに好まれて、武断的なやり方を好むジェームスたち年寄り世代に分類されるようになってしまった守旧派勢力にとっては卑怯卑劣で忌々しいだけのガラクタでしかなかったのだ。

 

 彼らとしては、今まで誘拐してきた魔法師たちを能力に関係なく大脳だけのブースターに改造して他国に高値で売り飛ばしているだけで儲かりまくってきた特権階級的な立場を奪われ、今まで見下してきていた若造共に頭を下げさせられる屈辱に耐え続けなければならない日々は苦痛でしかなく、仮に今のままの状態が続いても食うに困らず影響力と地位も一定より下に下がることは無いとわかっていても、やはり一発逆転可能かもしれないギャンブルを前にすると追い詰められた人間というものは飛びついてしまいたい衝動に駆られやすい動物だと言うことなのだろう。おそらくはの話だが。

 

 

「大亜連合が日本への奇襲をかけるという話さえ、真実になってくれていたなら『ブースター』も売れて、在庫も完売し、我々が今日の大博打に手を出す必要もなかったのだがな・・・」

 

 しばらく沈黙が続いた後、男たちの一人が愚痴るように呟いた言葉に、他の数名が賛同し、別の一人が唇を歪ませながら嘲るように悪意と罵声を味方になるかもしれなかった国家に向けて口にする。

 

「残念ながらあの大国は、勝てば確実に利益が得られると保証されている奇襲でなければ、リスクが高すぎるから控えたいのだそうだ。切っ掛けさえあれば話は別だそうだが、準備不足の段階では如何ともしがたいとさ」

「フンッ、相変わらず安全に確実に利益だけを手に入られる戦いしかしたがらない軍事国家殿は気楽でいい。魔法の軍事偏重が祟って、あの国も今や自分の都合だけで戦うことは不可能な情勢下になっているというのに現実を見ることなく、過去の栄光ばかりを懐かしみおって・・・・・・ロマンチスト共が」

「夢よもう一度というワケか・・・変わらんな、あの国も。遙か昔の歴史ばかりを誇りとして掲げて昔ばかりを懐かしみ、現在の自分たちが置かれた窮状を認めようとしないのでは先が思いやられる」

「今少し状況の変化に対応できる組織作りと精神を育むべきだったな、あの国も・・・。だからこそ今になって、これまで大量に作ってきた兵器を無駄にすまいと奇襲と侵攻による略奪戦争を仕掛けようなどという気になったのだろうが・・・・・・」

 

 

 止まる事なき悪意と罵倒の羅列羅列。

 その全てが自分たち自身の現状にそのまま当てはまることに露ほども気づかぬまま、ノー・ヘッド・ドラゴン日本支部の幹部たちは無意味な愚痴と悪口の言い合いとで鬱憤を晴らし、明日からの九校戦対策を話し合う会合の時間を無駄に浪費し続ける。

 

 他人の欠点はよく見えるのに、自分が今している非難と罵声こそが同じ欠点を有している証だとは思いもよらない自己客観視能力の欠如こそが彼ら自身に今日の没落をもたらしたのだということを理解するには、一度は位人臣を極めた彼らのプライドは高くなりすぎており、凡俗に過ぎぬ者たちと肩を並べて同じ仕事をしているなどとは死んでも思いたくない無意味な矜持こそが結果的に彼らに破滅をもたらすことになるのだが・・・・・・それはまだ今少しだけ先の話で待っているべき未来の出来事。

 

 

 差し当たっては九校戦五日目にして、新人戦二日目が始まる朝を迎えた今日。

 大事な妹が選手として出場する種目『アイス・ピラーズ・ブレイク』を万全の状態で支えてやるため準備を整えておこうと決意しながら司波達也が目を覚ました九校戦会場に隣接しているホテル。その一室において―――

 

 

「ん、う・・・もっと寝、る・・・あと五、分・・・・・・じゃなく、て・・・十五分でい、い・・・・・・ZZZ(ギュッ)」

「・・・・・・(^_^)(ピキピキ・・・)」

「・・・・・・・・・・・・・・・(;゚Д゚)」

 

 

 明け方頃まで妹に説教され続け、ようやく解放されて妹のために仮眠だけでも取ろうとした直後に寝ぼけたバカから寝ぼけたまま抱きつかれてしまった姿を、感情的になってしまった非礼を詫びに来た妹に再発見されてしまい再びの窮地に立たされている現状をどうにかする必要性に迫られていた・・・・・・。

 

 全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称『九校戦』。

 そこは選手に選ばれた直後から、生まれ持った才能と運の善し悪しによって優等生と劣等生が存在し、悲喜こもごもが繰り広げられている場所でもあった・・・・・・。

 

 

つづく




そして久しぶりなのに主人公の出番が少ないというね…(苦笑い)

実は森崎君が飛び出してった夜の祝勝会の話とどっち書こうか迷ったんですけど、アレは間にアイス・ピラージ・ブレイク入れた後の方が良さそうでしたので次話以降に回しました。
九校戦はイメージしてたよりも長いですね(;^ω^)
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