新年最初の更新が今作というところに思うところが無いわけではないのですが……今からだと流石に時間が…。
些か下品な――いや、品のない勝ち方という部分もあったとは言え、兎にも角にもレオと僕、そして達也の第一高校代理出場チームは一回戦に勝利した後、控え室にもどって身体を休めている・・・・・・はずだった。
次の対戦相手である、二校との試合までに与えられた休憩時間は30分。しょうじきチーム戦でのスポーツとしてはインターバルが短すぎると思いもするのだけれど、僕たちは何と言っても急遽出場が許可された代理チーム。しかも特例での試合だ。
本来の予定では昨日のうちに終わっていたはずの二試合分を、特例で今日に延期してもらったとなれば、文句の言える立場じゃないことぐらいは流石に理解して受け入れるしかないところだろう。
大会委員も、タイムスケジュールの調整でかなり四苦八苦した結果だろうし、そこの所は仕方がないと言うしかない。
そう・・・仕方がないんだ。
仕方がないことなんだから、30分っていう短い休憩時間しかないのは仕方ないとして、本当に30分しかないはずの休憩時間がさっきから妙に長く感じられて仕方がないのは、もしかしたら大会委員がやっぱり気を利かせてくれて延長してくれてる可能性もあるのだから、そういう気遣いはやめてお役所仕事らしい事務方の定時通りな対応を求める次第で、えっと、えっとぉ・・・・・・っ。
「おい、幹比古。少しは落ち着いたらどうだ? さっきからソワソワしっぱなしだぞお前」
呆れたような声をかけれた視線の先に、隣で座っていたレオがいる。
ついさっきまで調整してもらっていた二本目の『小通連』――あくまで制作者の人がつけたって言う仮名らしいけれど、《ネオ小通連Z》というらしいソレを片手に持って、ユラユラと揺らして弄びながらリラックスしきった態度で話しかけてくる彼だけど・・・・・・。
・・・・・・その落ち着き払った対応が、今の僕には理解できないし不可能なんだと分かってくれて、助けて欲しいんだけどね・・・・・・レオ。
「君は、その・・・・・・平気そうだねレオ。えぇっと・・・・・・そう、ふ、普段設定の少ないクラスの人達が多い状況なのに、て・・・・・・」
「ん? ああ、確かにリーナとか深雪は一科で、達也と幹比古は工学科。この中だと俺だけが二科の選手ってことになるわけだから、言われてみりゃ少し場違いな気がしなくもねぇか」
彼から視線と共に向けられた無言の問いかけに対して、正直に応えるのは気が引けたし、ちょっとその・・・・・・差し障りがある部分でもあったから誤魔化しも含めて捻り出した、苦し紛れな表現での指摘だったんだけど・・・・・・やっぱり遠回しすぎたみたいだった・・・まったく伝わってくれてるようには感じられない・・・。
「あらあら、吉田君は意外と人見知りなんですね。ウフフ」
「いや、幹比古の態度の方が普通だと思うぞ? 深雪。俺たちはまだしも兄妹だが、一人っ子の少年はシャイなものなんだよ」
「まぁ、お兄様ったら。シャイなお兄様なんて深雪は見せていただいたことがなかったのは、兄妹故の結果だったと仰られるのですか?
それはヒドいです、お兄様。そんなお兄様にはお仕置きですっ、えいっ。えい♪」
「痛つ・・・・・・。こら、深雪。試合前にお痛が過ぎるぞ? お前も淑女として場所を弁えることを・・・・・・痛痛つつ・・・」
・・・そして口では怒ったようなことを言いながら、その実コロコロと楽しそうに笑い混じりの声で語りつつ、背もたれに身体を預けて寛いでいる達也の肩を、輝くような満面の笑顔を浮かべて白魚のような指で優しく揉みしだいている、学園一の才女にして美少女と名高い司波深雪さん・・・。
いやもう、確かに僕は人見知りな方だけれども!
この姿と、やり取りとを見せつけられて恥ずかしく感じないでいられる方が、男としては正直どうかとも思うよ本当に!?
しかも!! ・・・・・・今の僕にとっては、彼ら兄妹の見てはいけないものを見せられてる気がする光景さえ、一番気になる重要事項とは言いがたいという現実がある・・・。
先ほどから椅子に座ったままソワソワと、僕を落ち着かなくさせてきている原因となっている存在―――ソレは!!
「・・・ん、しょっ。うん、しょ・・・・・・。どうか、な? 深雪と同じ肩モミモ、ミ・・・・・・気持ちい、い・・・・・・? んっ、んッ、・・・・・・んンッ」
モミッ、モミッ、モニュッ。
――――先ほどから僕の両肩に、白魚と言うほどではないけど柔らかな感触が優しく触れてきてリズミカルに踊り続けている。
それに合わせるように、途中途中で混ざってくる、甘い吐息のような息づかい・・・・・・。
「お父さんにや、ってあげたらお小遣いくれるか、ら私もでき、る」と言って、深雪さんのマネをし始めたときには大したことではないと思ってたんだけど・・・・・・今では自分の浅慮を深く後悔している己がいる。
この子はアレだ。うん、アレだよアレ。なんて言うかそう―――
・・・・・・な・ん・で! こんなナチュラルに気になる姿を晒してしまうんだ本当に!?
もう少し警戒心持とうよ雫ちゃん! 僕は紳士だからいいけど、他の男の子の前でも同じことやると本気で危ないからね本当に!?
「お、どうやら幹比古も気に入ったみたいだな。雫の肩揉みは意外に癖になるだろ? 意外な特技って奴でなぁ、俺たちも結構やってもらってることが多くって・・・・・・まぁ、いつものリラックスできる光景って奴だな。こういう時にはありがたい」
「いつも!? こんなのを、いつもやってるのかいレオたちは!?」
「ん? おう。達也なんかは常連なぐらいだぞ。深雪でも敵わないらしい雫の肩揉みテクは金取れるレベルで助かってるぜ」
達也もやってもらってるの!? しかも深雪さんの見てる前で!?
修羅場じゃないか! それ確実に見る人が見れば修羅場だと分かること確実な状況じゃないか! 何でそんなところに平然といられる話をしてるんだレオは!
・・・・・・自分では、あの事故以来それなり以上に鍛練を積んできて、先の試合でも成果を出せたことで少しだけ自信も取り戻せてきたように感じてたけど・・・・・・やっぱり自分は所詮、凡人の部類でしかない一人でしかないんだと、このメンツの中にいると痛感させられる・・・。
あまりにも異質な人達が揃いすぎている場所だった。
やはり、この中でまともな一般的感性を持っているのは僕一人だけということk―――
「失礼するわね、達也くん。次のステージが決まったから知らせに来たんだけど」
と、その瞬間。
控え室をキャンバスの仕切りとして敷かれていた、ハイテク布をめくって七草会長と中条先輩が入ってきて。
「ん、・・・しょっ。んん・・・、しょ。んっ、んッ・・・・・・ンンっ、んッ!」
『『――――あ』』
と一言だけ呟いてから・・・・・・僕と雫ちゃんの方へと、薄汚れた犬でも見るような目を向けてこられて、って嫌ちょっ違ッ!?
「会長! 誤解です! なにか酷い非難をされるのが当然のような行為を僕が彼女に強要していたように見えてしまったかもしれませんが、僕は家の名誉にかけて、女性たちから蔑まれるような不埒なマネは一切していません!!」
「・・・・・・大丈夫ですよ、吉田君。勘違いだと言うことは理解していますから、あなたも気にしないでください。大丈夫です」
「いやその言葉を念押しされると逆に怖いのですが!? 本当に何でもなかったんです! ただ肩を揉んでもらってただけですから! 本当に何でもない肩揉みだったんです会長ー!?」
「大丈夫です、分かってますから。大丈夫ダイジョ~ブ」
子供の言い訳をいなすような態度で応じてくれる、優しい笑顔の七草会長だったけど・・・・・・今の状況だと、その笑顔と対応が逆に不安だ! からかわれてるだけだと信じたい! ああ本当に―――早く終わって始まってくれ次の試合~~~ッッ!!!!
そんなやり取りを経て、赤くなって俯く中条先輩の横で会長が、明らかに幹比古をからかって遊んでいる姿を眺めながらインターバルを過ごしてから約30分後。
俺が臨時のリーダーを務めることになった、第一高校モノリスコード代理出場チームは2回線目の試合会場である廃ビルの中を進んでいる最中になっていた。
俺たちにとっては2回戦目にあたり、第一高校としての通算としては4回戦目ということになる試合会場は、市街地ステージにある5階建てビルの三階。・・・・・・森崎たちが事故ということで負傷したのと同じ環境下での試合と相成っている。
この選定については、試合前に伝えに来てくれた七草会長でさえ思うところがあったのか、
「・・・・・・昨日あんな事があったばかりのステージを、負傷した選手たちの代理出場チームの試合に、ですか・・・・・・?」
「ステージの選定はランダムだから、そんなのは考慮されないって事にしたいんでしょうけどね・・・・・・流石に私も作為的な意図はないって保証しづらい組み合わせよね、本当に・・・」
はぁ――と溜息まで吐かれながらの説明に、俺としては立場的にも個人的にも返す言葉がない。
額面通り今試合のステージセレクト理由を解釈するなら、2度目の事故が続くリスクよりも規則遵守に固執したがる魔法大学や事務方の徹底ぶりは、お役所仕事としては立派だとさえ思えてくるほどのものだ。無論、呆れ混じりにではあるが。
だが一方で穿った見方をするならば、昨日の負傷について管理責任や過失を認めようとしない運営側が、負傷した選手たちと同じ高校の代理チームを同じステージとスタート地点から開始させ、なにも問題が起きずに終了までいく事によって、『昨日の負傷は事故の結果ではなかった』という事を俺たちに証明させたがった結果という可能性もなくはない。
その状況下で、2度目の事故と負傷者を一高から出してしまえば運営委員どころか《モノリス・コード》という競技そのものが九校戦内で存続させることを難しくさせる恐れすらある方法論ではある辺りが、組織全体をまきこむ危険よりも、自分たちが属する小さな内部組織を存続させることを優先するきらいのある官僚組織らしい選択だった。
もっとも、一○○から情報をもたらされている俺の視点で考えるなら、『昨日の事故』は確かに大会運営側の過失や責任とは言いがたい部分があるのも事実ではある。
あれが情報にあった『無頭龍』による攻撃であったなら、攻撃対象と協議内容は彼らの都合次第で選ばれるだろうからだ。
必ずしも事故が起きるのは、モノリス・コードである必要性はなく、必要がある場合にはスタート地点がどこであろうと、その条件に合った『事故』が起きていただけだったろう。
そういう意味では、大会運営側の言い分や目的も、完全に無責任や罰逃れとも言い切れない。・・・・・・言い切れなくはあるのだが・・・・・・。
「でもまぁ、これって深く考えたら矛盾しちゃうことになるんだけどね。そこの所はどう説明するつもりなのかしらね? この状況って・・・」
「はぁ、まぁ・・・・・・確かにそうなのでしょうが・・・」
またしても答えにくい疑問を投げかけられ、俺としては言葉を濁さずざるをえない。
昨日の一件が『事故』だった場合には、運営委員の管理責任が問われることになる。
だが、事故でなかった場合は『当事者か第三者からの攻撃』で負傷させられたことになり、事故ではなく事件になる。
どちらにせよ、選手を守れず負傷させられた事になってしまうのは、運営委員として問題にはならないのだろうか・・・? 会長だけでなく俺としても答えの出しにくい話ではあった。
「――幹比古、こちらは目的地に到着した。聞こえるか? 」
『聞こえるよ、達也。通信状態は問題ないみたいだ』
俺は敵の索敵をかいくぐるため魔法を使わず屋上から屋上へと飛び移り、敵のディフェンダーを突破するという力業で辿り着いた目標地で一息吐き、通信機を使って待機している後方の幹比古と連絡を取り合う。
この場所は、一高のモノリスが配置されているビルの向かい側にある、二校チームのモノリスが設置されたビルの屋上。
一度は隣のビルまで回り込んだ後、改めて相手チーム側のビルへと飛び移ったわけだったが、師匠である『忍術使い・九重八雲』との訓練に慣れた俺としては大した苦ではなく、むしろ単純な流れ作業で弛緩せぬよう思考分割で脳を機能させ続ける必要があるほどだったが・・・・・・どうやらその必要もなくなったようだった。
「こちらの方は問題なくやれそうだが、そっちはどうだ? 幹比古」
『こっちも今のところは問題なさそうだよ。モノリスの位置を掴むのも問題ない。・・・・・・どうする、達也?』
「ふむ・・・・・・」
幹比古からの『完全に予定通り』を意味する作戦状況の報告と問いかけに、俺は少しの間だけ逡巡して思考させられた。
正直“どちらになっても良い”つもりで考えていた策だったので、完全に上手くいかれてしまうと少々判断に迷ってしまったのである。
(・・・・・・思っていた以上に、レオが二校相手に成果を出しているということか。信じていたとはいえ、ここまで填まるとはな。そうなると俺も、理想通りの結果を出せる方に賭けた方が得策という事になるが、果たして・・・・・・)
俺としては即座に答えが出しづらい、難しい部分での舵取りだった。
モノリス・コードでは他の競技と異なり、予選を一つの高校が四試合ずつ行い、勝利数の多い上位四チームが決勝トーナメントに進出するという変則リーグ戦を採用している。
少数が並んだ場合や、不戦勝・相手チームの失格による勝利があった場合はそれを差し引いて戦績と比較し、不戦勝・失格負けがなければ勝ち数で並んだチーム同士の直接対決で勝利した方がトーナメント進出。直接対決がなければ勝った試合時間の合計で短い方が――という具合にだ。
現在の各チームの勝敗と戦績は、第三高校が四勝。第八高校が三勝して俺たち相手に一敗。
第九高校が同じく三勝で、今戦っている第二高校だけが一勝で、俺たち第一高校は二勝。ただし一勝分は先の事故による四校の失格が含まれるという、微妙な配分になっていた。
第一高校女子選手陣による異常なまでの快進撃と、それに触発され突き上げを受ける形となった男子選手陣の過剰なまでの不調。
そこに勝機を見いだした各校選手たちの奮起が、このような状況と結果を齎した形になったわけだが・・・・・・この数値の内訳とモノリス・コード独特の変則ルールが俺を迷わせる理由になっている部分だった。
当初の作戦では、俺は敵陣の背後から忍び込んでの速攻で勝利を掴むという策を想定していた。
この試合は既に勝ち数によって、負けても決勝トーナメントへ進めることは戦う前から確定してはいる。
ただ決勝トーナメントの組み合わせはルール上、予選での一位と四位、二位と三位で準決勝を競った末に、勝ったチーム同士が決勝となる流れになる。
三校の決勝進出は、ほぼ規定事項となっている以上、負傷による退場が出る危険性もあり得る相手に、準決勝で彼らと当たるのと決勝で彼らとぶつかるのでは意味合いが全く違ってくるしかない。
また直近の問題として、レオの魔法力では敵と正面からぶつかり合って、そう長く保たせるのは難しいだろうと予測していたのが大きかった。
彼は決して弱くないと俺は思うっているが、ルールで縛られた魔法競技では本領が発揮しづらいことが足枷となり、長期戦を想定しての作戦では消耗が大きくなりすぎるだろうと考えていたのだが・・・・・・どうやら良い意味で当てが外れたらしい。
そうなると、俺にも欲が出てくる。
“らしくない”と、自分でも思ってはいるが、勝率を高めるために有効な状況なのも確かな事実。・・・・・・ここは多少あざとくても、やるしかあるまい。
「やるよ、幹比古。プランBを実行する、援護頼む」
『・・・・・・やっぱりそうなるんだね。僕としては正直、Aの方が楽だったけど・・・やるからには全力を尽くさせてもらうよ』
「その意気だ。よし、行くぞッ」
通信機に向かって小さく叫んだ俺は、侵入に成功してから部屋を飛び出し。
壁伝いに二階へと飛び降りてから通路を伝い、敵チームのモノリスがある廃ビルから一高のモノリスがある廃ビルへと続く通路を逆コースで疾走し始めるっ。
今頃はレオが守っているモノリスを攻略するため、敵陣へと突入していったであろう第二高校のオフェンス2人を、モノリスを守備するレオと前後から挟撃して壊滅させ、然る後に敵チームのモノリス攻略を目指すというプランBを実行に移すために!!!
密かに自陣の背後へと回り込んでいた敵が、敵陣へと攻め込んでいたはずの自分たちに背後から襲いかかろうと脅威が迫りつつあったことを、第二高校のオフェンス選手は気付くことができていなかった。
・・・・・・いや、単純にそれ所ではなかっただけなんだけれども・・・・・・。
「ヴァンツァーッ!!」
第一高校のモノリスを守っていた選手が、手に持つ武装一体型CADという遺業の武器を振り回し、アナログな音声入力式の起動ワードを叫ぶ声が同時に響いてくるのを聞いた瞬間。
二校のオフェンス選手たち2人は、そろって声と心の両方で舌打ちを響かせる。
「「チィッ! またかッ!?」」
屋内にある遮蔽物に身を隠しながら接近中だった二人の選手たちは、声と共に横へと薙ぎ払われた刀身と切っ先が鍔元から離れて飛んでくる異形の木剣を回避するため、進撃速度を緩めて切っ先を凝視する!
八校との試合で初めて見せられたときには驚かされたが、あの武装は魔法で刀身を浮かせるだけで、先端だけ離れて飛翔する切っ先部分も超簡易魔法式の応用によって刀身の座標に依存するであろうことが既に自分たちの技術スタッフによって解析されている。
確かにリーチの長さは脅威ではあったが、戦場次第では大きなデメリットにもなり得る特徴でもある。
ただ『見えない刀身を伸ばすだけ』でしかない打撃武器である以上、振り回すスペースの無い場所では無用の長物になるか、もしくはリーチを縮めてメリットを少なくするしか無い。
切り離される先端部分も、そういった密閉空間内では却って使いづらくなるだけでしかない―――そのはずだと思っていた時期が、自分たちにもありました。
――ブゥゥッン!!
と、風を切り裂いて最大速度と長さを維持したまま飛んでくる、見えない鎖で繋がれた刀身。
それを回避するため、自分の横に柱などの遮蔽物がある位置へと瞬時に移動する二校の選手たち。
横薙ぎの斬撃である以上、刀身が伸びようが見えなかろうが、自分に届くまでに辿る剣の軌道上に、それを遮る巨大な遮蔽物があっては意味が無い。
・・・・・・そのはずだったんだけれども・・・・・・。
―――ブゥゥッン!!!
風を切りながら、壁として隠れた柱に真横から猛スピードで迫ってくる木剣の刀身! それが柱へと触れた、その瞬間!!!
――――かっくん。・・・・・・ブゥゥオンッ!!
何故だか、柱だけ避けてから、避け終わった後で元の位置から改めてコッチに向かって飛んでき直す木剣へと早変わりした!!
「「だ・か・ら!! なんでだ~~~~~~ッッ!?」」
訳わからん代物と、訳わからん現象を目前に見せつけられて、二校男子選手の二人は、今日何度目かの絶叫と悲鳴を上げながらも全速力で後退して、訳わかんない武器の射程距離外まで慌てて逃げ出すしかない!!
「く、クソぅ・・・なんなんだよ、あの武器はさっきから!? なんか物に当たりそうになったと思った瞬間には必ず避けて元に戻ってるぞオイ!? 反則じゃねぇのアレって!?」
「知らねぇ! 分からねぇ!! 古代の呪いでも掛かってるオーパーツとかなんじゃねーか!? だってそれぐらいしか出来るようになる方法思いつかねぇし!!」
「よっしゃ、止め差してやるぜ!! おおぉぉぉぉっ!! ヴァン、ツァぁぁぁぁッ!!」
「「!!! やべぇ! あの攻撃だ!! 避けろぉッッ!!!」」
そして今し方離れていったばかりの敵モノリスがある辺りの位置から、第一高校のディフェンス選手が『そのワードを』を叫ぶのが聞こえた瞬間。
二人の第二高校オフェンス選手たちは、敵からの攻撃回避のため一時的に隠れていた場所から飛び出し、まだ規定内的の攻撃から全速力で逃げ延びる!!!
・・・・・・片手で、下半身の下辺りをガードしながら。
「ちぃっ! 逃したか! だが次は外さねぇぜ! 何せ、ここは既に俺の縄張りなんだからな! 人様の縄張りに土足で入ってきやがった野郎には落とし前つけさせてやるぜ!
“玉取ってやる”から覚悟しやがれ!! ヴァン、ツァぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
「「くぅっ!? お、おのれぇぇぇぇぇ!! “二刀流”とは卑怯だぞ一高~~ッ!!」」
かさに掛かったような敵選手の叫びと脅迫と、脅迫で使われた単語。
更には、それを可能にする道具を左手に持ったまま、残った右手だけで振るわれる『伸びて曲がる刀身』の攻撃という脅威にさらされながら、打つべき手が思い浮かばず避け続ける以外にできることが何も無いまま、虚しく敵モノリス発見からずっと時間だけを浪費してしまっていたのであった。
そう、レオは今、両手に一本ずつ『小通連』を持っているのだ。
片方は言うまでも無く、先の試合で恐るべき威力を発揮した『小通金(レオ命名の略称)』
もう一本は、見た目こそ金とほとんど変わらないが仕込まれている術式は別物が採用されている、牛山主任から送られてきた2本目の小通連《ネオ小通連Z》である。
こちらも一本目と同様、原理や仕組みそのものは簡単であり単純だ。
もとより超簡易魔法式は、単純で簡単な物しか作れないからこそ安価な代物なので、複雑な機構はそもそも造れない。
では、どうやっているかと言うと答えは簡単。
切っ先の、刃に当たる部分がセンサーになっており、障害物が近づくと感知して曲がる。・・・・・・というだけだったりする。
本来ただ曲がって避けるだけで、元に戻ってくる機能などはないのだが、小通連は相対位置を固定させて切っ先を飛ばして使う武装のため、両方ともの機能で結果論として戻ってきて飛んでいく。という装備である。
注意点は、簡易であるが故に魔法の効果範囲が重なり合って、魔法の重ね掛けのような状態が発生しないよう、ブレード部分から発する魔法と、刀身が鍔元から離れて飛ぶための硬化魔法のエイドスが被らないよう、位置は慎重に調整して造る必要があるということ。
今一つは、あくまで『進行上に障害物があったら曲がって避けるだけ』のため《小通連mk-Ⅱ》と同じような使い方は出来ないということだ。
―――だが、しかし。
実際には出来ないが、相手が『出来る』と思い込むかどうかは、相手の心掛け次第な問題であり、魔法力の消耗を押さえるためにも節約する必要があるウィードのレオだが・・・・・・持っている武装の見た目が瓜二つなのは短時間で急いで3本も造ってくれた物なのだから文句を言ってはいけない。
その為の布石として、達也は先の試合でレオ提案の作戦を多少、下品なところもあるのは承知の上で致し方なしと採用していたのだから、まぁ仕方が無い。
音声入力式の装備は、発音のニュアンスが違っていると認識されないこともあるので、「ヴァン、ツァー」という濁点とかが混じってしまっても、息継ぎのブレスで失敗してるだけだから仕方がない。
仕方がないは魔法の言、葉(Psどっかのバカ)
優等生たるブルームに、劣等生のウィードが正々堂々とした試合で勝つためである。
そこら辺の工夫は、優等生の優秀さで何とかしてもらうしか無いよなと、レオは割り切っていた。
良くも悪くも、友人たちに変な人が増えたせいで、彼もけっこう染まってきている自分に、レオ自身は自覚が薄い。
「うぉぉぉぉぉッッ!!! ハルトぉぉぉぉッ!! ハルトハルトハルトぉぉぉッ!! ヴァン、ツァー!! ハルトハルト! ヴァンツ、アァぁぁぁぁっ!!!」
「く、クソッ! 嬲りやがって! 本命はどこに伏せさせてやがる!? 変な雷もしょっちゅう落ちてきやがるし、不意打ち狙いばっかで卑怯だぞッ!!」
「ん!? なんだ・・・・・・後ろから誰か来るだと・・・? アイツまさか、焦りすぎてモノリス放ったまま前線まで来ちまったんアベシッ!?」
「な、なんだ!? どうした! 何があっ―――き、貴様は!? し、しし、シバァァァタツーヤぁぁぁぁぁッッ!!??」
やがて、試合時間終了のギリギリまで引き延ばされた戦いは一高の勝利で幕を閉じる。
試合を目撃した者たちの反応はマチマチで、新たに現れた新技術に興味を抱く者、技術者として高名な司波達也の身体能力に文武両道の凄みを見いだし頷く者、戦い方の品のなさに眉をしかめる者など多数に渡ったが・・・・・・中に2組だけ、同じ疑問と推測とを司波達也の戦い方に見出していた者たちが存在していた。
第一高校の生徒会およぶ部活連首脳陣と―――第三高校のプリンスとカーディナル、エースコンビ2人の組み合わせである。
「・・・・・・参ったね、これは」
「・・・?? そうなのか、ジョージ? 試合結果は予想通りの範疇を出ていなかったように感じられたが」
隣に並んでライバルの試合を観戦していた相方による嘆息混じりの呟きに、俺は小首をかしげながら返事を返すことしかできなかった。
確かに司波の身体能力の高さと戦い慣れた者特有の体裁きには目を見張るものがあり、全く以て大したものだと、格闘技を学んでいる一人としては脱帽したくなるほどのものではあったが・・・・・・それだけと言えばそれだけの試合だった。
むしろ、予想より遙かに勝利までの時間がかかっており、無駄が多い試合内容だったとしか俺には見ることが出来なかった。
ただ・・・・・・奴にしては無意味な無駄が多すぎるように感じさせられた戦い方だったのも事実ではある。ジョージはそこに何かしらの答えを見出した、と言うことだろうか?
そう思い、訪ねてみたところ相方からの答えはこうだった。
「これは多分、司波くんから将輝への挑発だよ。『次の試合で自分と撃ち合ってみろ』ってね」
「挑発? ずいぶんと侮られたものだな。奴の武器は、機動力と洞察力、そこから導き出される意外性。魔法力よりも戦闘技術にあることぐらい、コッチもとっくに承知しているというのに。
まっ、正面からの撃ち合いを望んでくれるのなら、こちらとしては望むところでしか無いがな」
「うん・・・・・・僕もさっきまでは同じことを考えていたんだけどね・・・」
「・・・?」
どこか歯切れが悪い親友の言葉に、俺は眉をひそめる。
司波がしてきたことは俺たちが次の次第でやる作戦としてジョージが考えを語ってくれたばかりの案だったはず・・・・・・それなのに何故・・・?
そんな疑問が顔に出たのだろう。ジョージは苦い笑みを浮かべ直しながら、俺に向かって問いの答えを解説してくれる。
「・・・確かに正面からの撃ち合いになったら、司波くんが将輝に勝てる可能性は極端に低くなる。それこそ試合が草原ステージだったら九分九厘、こちらの勝ちは確実になる」
「だったら――」
「僕たちが司波くんたちに勝つだけなら今言ったとおりの作戦で、ほぼ確実だ。・・・・・・ただ、次の準決勝で彼らに勝たないと、第三高校としては第一高校の彼らに負けることになる・・・」
「!! ――そうか! ポイント合計の総合得点! それがあったかッ!!」
ジョージに言われ、慌てて俺は現時点までの試合結果を思い出し、頭の中でソロバンをはじいて次の状況を推測する!
モノリス・コードに限定すれば奴らの現在の順位は3位! 決勝トーナメント進出は確定しているが、順位の方は次の試合結果次第で決まる!
そして・・・・・・本選と予選双方の合計ポイントで、俺たち第三高校は確実に、第一高校よりも劣っている!!
今年の第一高校女子選手陣が異常すぎる成果を出しすぎた結果ではあるが・・・・・・問題なのはそこでは無く、今の司波たちがいるモノリス・コード内での順位である。
3位・・・・・・本戦で残っているのが『十文字克人』が出場する《モノリス・コード》本戦と、『渡辺摩利』が欠場した《ミラージ・バット》本戦だけになる。
もし決勝で奴と当たるとなれば、たとえ俺たちが勝っても奴は準優勝で2位のポイントを得ることになり、ミラージ・バット本戦の代理に誰が選ばれたかにもよるが、ほぼ第一高校の総合優勝は現時点で確定してしまうことになる。
それを阻止するため、他のチームの勝敗次第という運任せの手段を取らず、確実性を少しでも上げるためには、第一高校にはモノリス・コード予選を「4位」で終わってもらうのが最も望ましい。
その為には、決勝では無く準決勝で奴らと当たる必要が、俺たち第三高校には存在するのだ。
決勝で司波達也と当たり、他の高校が運良く第一高校にケチをつけてくれる可能性に賭けるのと。
準決勝で彼らとぶつかり、負ければ4位になるリスクを背負ってでも第一高校の入賞を阻止できる可能性が得られるのとでは、将としての意味合いが全く異なってくる。
「確かに、参ったな・・・。あえて隙を見せることで、自分にとっては不得手なはずの真っ向勝負に、俺たちの方を誘い出すか。
しかも性質が悪いことに、この挑発に乗ってやることが第三高校にとっては最も優勝に近づける可能性が高いときているとは・・・」
「そうだね・・・。今になって考えれば、僕がさっき立てた作戦の挑発や正面決戦も、必勝の策というわけじゃなかった。将輝にとって本来のスタイルは砲撃戦なんだから、待ち構えて迎撃だけしていた方が勝率は高くなる。彼の側には防御を突破できる威力ある魔法がない。
けど、それも今となっては無理だね。準決勝で終わらせるためには積極策に出るしか道はない」
「それを最初から読まれて、挑発によって封じてきたって訳か。
まったく、大したものだよ司波達也。―――だが早々お前の思い通りにはいかないのが現実だってことを教えてやるさ。この俺の力でな!!」
風雲急を告げる九校戦!
モノリス・コード予選、準決勝で勝つのはどのチームか!?
つづく
オマケ『戦い終わった、その後に・・・・・・』
エリカ「次兄上! 何故このような所にいらっしゃるのですか!?」
修次「え、エリカ・・・少し落ち着いて・・・」
エリカ「兄上、まさかとは思いますが、この女と会うために、お勤めを投げ出したのではないでしょうね!? 次兄上は、この女と付き合い始めて堕落しました!」
エリカ「・・・・・・あのバカ兄貴。あんな女に誑かされちゃって・・・あ。達也くん、深雪・・・しかも雫まで。もしかして、聞かれちゃった?」
達也「すまん・・・・・・盗み聞きするつもりはなかったんだが」
雫「う、ん・・・・・・んと、ね・・・? さっきのエリカ、はその・・・時代劇のお姫、様でカゲロウお銀で、お風呂でお兄ちゃんと一緒に、痛、いっ!? な、なんでエリカま、で私のお尻叩く、の・・・!? 私なにも悪いことやってな、痛いっ!痛い痛痛痛、痛痛痛~~・・・・・・ッ(パチーン!パチーン!パチーン! ペシペシペシ~~~ン!!!)」
エリカ「~~~~!!!! ッ!! ッ!!! ~~~~~ッッ////!!!(〃_ _)σ∥」
北山雫は今までで、最多お尻ペンペンされ回数を記録する。
雫「・・・・・・したくな、い・・・・・・(メソメ、ソ・・・(; ;)ホロホロ)」