春日居市、春日居港、木暮岸壁地下下水道。
人生の絶頂期があるとすれば、今この瞬間こそが
聖杯戦争への参加。そして自分のサーヴァント、バーサーカーは見事な戦いをした。
ランサー、ライダーの戦いに乱入し、その力を見せつけ、そしてライダーを仕留めて見せた。
セイバー、アーチャー、ランサーの三大騎士クラスに匹敵する力を持ち、さらに多彩な宝具を持つことが多いライダーのサーヴァントを倒せたのは大きい。
ランサーは尻尾を巻いて逃げ出した。ほかにもいた、銃を使うアーチャーと思われるサーヴァントも撤退した。今この場に残ったのは自分たちだけだ。
「いいぞ、いいぞバーサーカー。お前は最高だ」
下水道の鼻の曲がるような臭いも気にせず、アーノルドは興奮気味に口にしていた。
実際、あの触媒を使っただけあって、バーサーカーは強力なサーヴァントだ。
A++ランクの『狂化』スキルの恩恵で高いパラメーターを有している。それに加えて二つの常時発動型の宝具を持っているため、理性を失ったが故に宝具の真名を解放し、宝具の真価を発揮できないという、バーサーカーの致命的なデメリットも回避している。
勿論その分魔力消費は他のサーヴァントの比ではないが、そこも問題ない。この問題をクリアするために、私財を全て打ち払って燃料を買い貯めたのだ。スクラディオファミリーも、まったくいいものを用意している。
あれを使えばバーサーカーに対する魔力切れは心配しなくていい。数か月は全力で暴れても問題ない。
残ったサーヴァントは五騎。それらを倒して、おれの名を刻みこんでやる。
明日以降の戦いを思い描き上機嫌のアーノルド。入ってきたマンホールに続く梯子に手をかけた。まさにその瞬間だった。
左胸に衝撃。続いて、びちゃりと大量の液体を地面にぶちまけたような音。
「あ……?」
何が起こったのかわからなかった。アーノルドが下を、衝撃のあった左胸あたりを見た時、奇妙なものが胸から生えていた。
黒い棒のようなものだった。それが左胸から下水道の壁に向かって伸びていた。
否、違った。逆だ。下水道の壁から何かが生えていた。それが、此方の左胸に埋め込まれているのだ。
不思議と痛みはない。だから現実感が湧かず、茫洋とした表情で、アーノルドは呆けたように自分の左胸に沈み込んだ何かを見下ろしていた。
棒が身震いする。アーノルドの左胸から引き抜かれていく。その間も痛みは全くない。その事実がアーノルドの背筋を寒くさせた。
ずるずる、ずるずる。びちゃり。棒が引き抜かれた。
引き抜かれてみれば、それは棒ではなく手であった。五指が見える。何かを掴んでいる。
何だ? 暗い中、目を凝らして見つめる。ドクンドクンと、生命の在り方を主張するように鼓動する、赤黒い臓器。
心臓。
誰のものか言うまでもない。自分のものだ。
「か……」
肺から空気が漏れるような、短く後がない呼気が漏れる。アーノルドは二、三歩後退し、どしゃりと仰向けに倒れ込んだ。
通路壁から生えた黒い手が、心臓を握り潰した。
もう駄目だ。もう助からない。体に移植された魔術刻印が、魔術の血を絶やさぬために必死に延命を行っているが、心臓を破壊されてしまっては魔術刻印でもどうにもならない。ただ死ぬ瞬間を先延ばしにするだけ。
一体いかなる状況なのかわからない。混乱はある。だがアーノルドはそれらすべてを棚上げし、自分は絶頂からどん底に突き落とされた。ここで聖杯戦争から脱落するのだと受け入れた。
そのうえですること、したいことがあった。
霞む視界。その中央に捉えたのは、黒銀の騎士。
バーサーカー。
苦労して右手を上げる。掌に刻まれた令呪を見る。
自分が死ぬまでもう時間がない。急がなくてはならない。
拡散し、闇に沈みそうになる意識を必死でかき集めて、己の延命さえ放棄して、アーノルドは傍らに佇むバーサーカーに告げた。
「三画の……令呪全てを……持って……命ずる……。バーサーカー……。お前に……、
右掌に微かな痛みが走る。次いで赤い発光が一瞬だけ下水道を照らし、光が収まった時、アーノルドの令呪は三画とも色を失い、ただの痣のようになっていた。
これでいい。狂化した英霊に理性を植え付けることは不可能だ。だが令呪三画を使用し、さらに知性の方向性を聖杯戦争に勝つために限定したならばどうか? うまくいけば、バーサーカーは聖杯戦争を勝ち抜くという一点に限り、“考えて行動”できるはずだ。
残念だが、その結果を確かめる時間は、アーノルドには残されていない。
だからここから紡がれるのは、ただの彼の願い。世界に己の存在を刻みつけようとし、しかしていま息絶えようとしているマスターから、サーヴァントに最期に送る言葉だ。
「バーサーカー……。お前の、憤怒を……。お前の、存在を……。ほかの……英霊に……、マスターに……。世界に……、刻め……」
生前の後悔を晴らせ。お前を縛る立場は今生にはない。生前果たせなかったことを成せ。思う存分、お前の憤怒を解放しろ。
最後にそう願いを託し、アーノルドは絶命した。
春日居市郊外、森の奥の洋館。
『――――マスター。ご報告があります』
アサシンからの念話で、ニヒトは閉じていた瞼を上げた。
ねぐら兼住居である、打ち棄てられた洋館の一室。ソファに横になり、先程まで共感魔術でアサシンと視覚を共有し、観察していた聖杯戦争初戦の様子を思いだしていたニヒトは、その声に反応。即座に自分も念話を返した。
『どうしました、アサシン? 戦況は、君が離脱するまで私も視ていましたから把握しています。それ以外に報告ごとが?』
『――――先程、
アサシンの報告に、ニヒトの表情が引き締まる。
『どこに仕掛けたものですか?』
『――――先ほどの戦場です。念のための侵入経路潰しのため、下水道に』
『そのタイミングで、その場所の宝具が発動したならば、マスターの一人を仕留めたと見てよさそうですね。外来のマスター以外の魔術師ならば、わざわざ戦場に足を運ばず、使い魔の視覚を利用するでしょう。
幸先がいいですよ、アサシン。どのサーヴァントのマスターか分かりませんが、これで一組脱落が確定しています。もしもライダー以外のマスターならば、二勢力の敵がこれで脱落したかもしれません』
彼女は生前、自己改造によってシャイターンの心臓を移植した。そのため彼女は物質界と
彼女は生物無生物限らず物体に潜り込み、水中を泳ぐように移動できる。あらゆる壁も、あらゆる防御の手段も、彼女の前には意味をなさない。彼女は多くの厳重な警備をこの業で文字通り潜り抜け、数多の暗殺を成してきた。
そしてサーヴァントとなり、宝具に昇華した現在、この業は更なる進化を遂げた。
元来の潜航能力に加え、自らの魂の一部を生物、無生物問わず埋め込み、任意の遠隔操作、自動発動が可能となったのだ。
これは第四次聖杯戦争に参加していた百貌のハサンの宝具、
彼女はこの宝具を戦場の観察を始める前に予め春日居港の敵マスターが隠れそうな場所に自動発動タイプで設置しておいたのだ。
発動条件は魔力を持った存在――即ち魔術師やサーヴァント等――が通ること。アーノルドは運悪く、その罠に掛かってしまったのだ。
『状況は分かりました、アサシン。此方に戻ってください。君のスキルで傷は多少回復するでしょうが、私が治癒魔術で治した方が早い』
『――――了解しました』
念話終了。ニヒトはアサシンが戻ってくるまで、今夜の成果を再度確認し、明日以降の動きを脳内でシミュレーションし始めた。
アサシンが仕掛けた罠は一つではない。昼間にも彼女は一つ、罠を仕掛けている。
昼間に偵察し、もぬけの殻だった祠堂邸。彼女はそこにも、主が帰ってきた時のために宝具による罠を仕掛けていたのだった。
◆◆◆◆◆◆
春日居市、新地区。
道々をバイクのエンジン音の轟音が響き渡る。
司は必死にハンドルを操作、転倒だけはしないよう慎重に、だが決して止まらず疾走する。
法定速度を遥かにオーバーしたスピードの中、司は魔力で視力を強化。周囲の把握に努める。
眼前の信号機が黄色に変わる。このままの速度は赤になって間に合わない。
だが止まれない。止まれば死ぬ。あのサーヴァント、ランサーがすぐ後ろに迫っているかもしれない。確かめられない。そんな勇気は出てこない。
だが追ってきている、追ってこない理由がない。
さらにアクセルを吹かす。スピードを上げ、クラクションの大合唱の中、交差点を突っ切る。
カーブ。膝が地面にこすれるすれすれまで車体を倒し、曲がり切る。
左肩から痛み。完全に思考の外に置く。治癒魔術で止血はした。激しく動かせば傷が開くがそれはいい。今はとにかく、流れ落ちる血で滑ってハンドルから手が離れる、なんて事態が起こらなければいい。
旧地区に入った。ここからは大通りが少なく、住宅街が多いのでさらに注意しなければならない。
速度は落とせない。
より多くなるカーブ地点。家の壁に激突しそうになったことは二度や三度では無い。
だが司の奇跡的なドライビングテクニックもついに限界に達した。
旧地区住宅街。もうすぐ祠堂邸につくというところで、車体が大きく浮いた。
「!?」
小石を踏んでしまった。いつもならなんてことないものでも、小道にも関わらず時速120kmを超えた驀進故に、小さな躓きが致命的になる。
浮いた車体が左に傾く。
判断は一瞬。司は左手をハンドルから離し、地面に掌を向けた。
脳裏に浮かべるイメージは火が灯ること。マッチやライターでも何でもいい、とにかく発火がイメージできれば。
体に鈍い痛みが走る。魔術回路が起動。祠堂司の
「
左掌から小規模の爆発。火の魔術による衝撃が傾いた車体の軌道を修正。地面への着地に成功した。
そのまま角を曲がれば、目的地の祠堂邸。
バイクから下りて、門扉をくぐる。
瞬間、異変に気付いた。
「――――!」
祠堂邸に張られた結界に異常がある。魔術師にのみ聞こえる警鐘が司の聴覚を刺激した。この鐘の音。それが意味するところは明白。即ち、侵入者の存在だ。
門扉から屋敷までの前庭。そこに、彼は立っていた。
「おかえりなさい。早かったですね」
涼しげな声音も、その佇まいも、ついさっき目にしたものから寸分も変わっていない。
ランサーのサーヴァント。
ここにきて、司は己の愚かさに気づいた。
バイクでいくら飛ばそうと、サーヴァントの身体能力ならば屋根から屋根に跳躍して移動することくらいたやすいことだ。
最初から、移動距離が違いすぎた。だがそれでも、何故
疑問は残るが答えを得る時間はなさそうだ。
「サーヴァントからは逃げられない、か……」
「はい。そのようです。で、あれば、覚悟を決めるべきでは?」
「さて、どうだろうね……」
言葉を交わしながら、司は己の左手にむず痒い感触が下りてくるのを感じていた。
原因は明白。先程の魔術行使の反動で、傷が開いたのだ。
滴り落ちる血が二の腕を通過し手の甲を滑り、指先から落下。地面に落ちる。
瞬間、屋敷の機能が起動した。
「これは――――」
瞬間的に張られる結界は、内部の異常を外部に漏らさないもの。これで中で何が起ころうと、どんな轟音が鳴ろうが閃光が迸ろうが、周囲の人間は何も気づかない。
本来ならば当主である父の不意の流血に反応する魔術式だが、現在司は聖杯戦争の期間中、父から屋敷の権利を委譲されている。ゆえに今は彼の血液に敷地自体が反応。自律的に防衛機能を発動させる。
敷地内を囲う木々の間から飛び出す影が四つ。祠堂家によって調整され、魔獣へと変化させられた猟犬。
大人ほどの大きさの黒犬四体が一目散にランサーへと向かう。
無論この程度ではせいぜい数秒足止めできればいい方。だが司はその数秒が欲しい。次の仕掛けを起動させるための、
バックステップで後退。地面に右手をつけ、詠唱開始。
「
バチ! と火花が爆ぜる。直後、司が手を置いた地点を中心に地面が盛り上がり、下側から爆ぜる。
まず現れたのは大人の胴体ほどの太さを持つ右腕。それから右肩、頭部、左肩、上半身、腰、腿、膝、足と次々にパーツが姿を現す。
それは、四メートルほどの大きさのゴーレムだった。父が伝手を頼りに、ゴーレム製造の大家である魔術師から一体のみ譲り受けた、祠堂の家が伝えるの火の魔術を動力源にする特注のゴーレム。
左胸に灯った火。その火が燃え尽きるまで、機体の損耗を度外視して動き回る、寿命を犠牲に出力を上げたオーバーロード前提のゴーレム。それがこれだ。
前後左右から同時に飛び掛かった猟犬を、ランサーは流れるような槍捌きで撃退。柄や石突で叩き落とされた猟犬が地面を転がる。
その刹那にできたか否かの隙をつき、ゴーレムが右拳を振り降ろした。
そこに鈍重さはない。自壊上等のコンセプトが、このゴーレムに短命という枷を与え、多大な出力という力を与えた。
轟音。ゴーレムの一撃は空を切った。ランサーはバックステップで後退し、振り下ろされた一撃を回避。対象を失った拳は虚しく前庭の地面を叩き、クレーター状の穴をあけ、土塊を噴水のように巻き上げるに終わった。
だが司はこれでいいと思った。
おそらくランサーはゴーレムの一撃を躱した後、カウンターで槍を当て、ゴーレムを粉砕するつもりだったろう。
だがその目論見は崩れる。ランサーの後ろに引いていた左足が玄関扉の前に踏み込んだ瞬間、
玄関扉から飛び出す黒い右腕。まっすぐランサーの背中側から、彼の心臓を狙って伸ばされる。それが何を意味するのかこの場の誰も知らない。それが、名を亡くした女暗殺者の宝具であるという事実は――――
「ぐっ!」
赤い鮮血が飛び散り、地面を濡らした。その時には司はもう移動を開始していた。
驚愕はある。まさかあんなものが出てくるとは思わなかった。あの黒い手は一体何だ? 我が家はいつの間にか様々な勢力に土足で侵入されているらしい。結界も意外と当てにならない。
身体強化の魔術を駆け、さらに先ほど体勢を立て直した。小爆発を、今度は足裏に向けて放つ。爆発の推進力と強化された身体能力を合わせ、この場から離脱。魔法陣のところまで行ってサーヴァントを召喚するしかない。
眼前のゴーレムをバックステップで回避。カウンターの一突きで心臓を穿とうと考えたランサーだったが、その目論見は予想外の咆哮から崩された。
玄関扉。そこから飛び出した黒い腕。腕は鞭のようにしなり、無軌道に跳ね上がり、ランサーの背中から鎧をするりとすり抜けて侵入。背中の筋肉を潜っていき心臓へと指を伸ばした。
「ぐっ!」
己の体内に侵入する異物感に、ランサーは危機を察知。体を前に投げ出し、追撃の拳を振り上げたゴーレムの懐に飛び込む。
心臓は無事だ。だが背中の肉が裂け、鮮血が地面を濡らした。鎧には傷一つない、どうにも不可思議な業だ。
ゴーレムの懐に入ったため、槍は使えない。ランサーはこちらを捕まえようとするゴーレムの胸板を裏拳で殴った。
轟音が鳴り、石と土が混じった塊が内臓のように吐き出される。
心臓の火が消える。一合も交えることなくゴーレムは沈黙した。
「さて、あの少年は――――。もう屋敷の中ですかね」
ランサーは今度こそ何の罠もなくなった玄関扉を開き、祠堂邸の中に侵入。そこで眉をひそめた。
「これは……」
祠堂邸は大きな洋館だ。ならば眼前にあるのは玄関ホールであるはずだった。だがそこにあるのは壁だ。
壁と壁が組み合わさった、さながら迷宮の通路。
「幻覚ですか。魔術によるものですが。どうやら蜃気楼が意味合い的に近そうですね」
祠堂の家は代々火の属性を継承してきた。歴代当主は全員火属性で統一されており、まれに違う属性の子供が生まれれば、調整して火属性に変えてしまうほどだ。
そして、扱う魔術もまた火に特化している。この、火と熱による幻惑もその一つだ。
「ですが哀しいかな。私に視覚からの幻は効果が薄い」
呟き、微笑し、ランサーはあっさりと蜃気楼の迷宮に足を踏み入れた。
司の足は地下の工房ではなく、中庭を目指していた。
扉を開け、中庭に。
ここまでたどり着けた安堵にほっと一息つく。多くの植物が生い茂り、ちろちろと炎を揺らめかせるガス灯が各所に景観を崩さない程度に設置されている中庭。その中を進む。
中庭の中心部には、聖杯戦争のために描いた魔法陣があった。
司はこういう、屋敷に敵が押し入ってきた事態を考え、サーヴァント召喚のための魔法陣を敷地内の複数のか所に書き込んでいた。ベストは地下の工房だったがこの非常事態に贅沢は言えない。ここでやるしかない。
家から中庭に出る扉を視界に収めつつ、目の前に迫りつつある危機に乱れる心を落ち着かせる。
集中しなければならない。恐怖はいったん棚上げしろ。自分は父の命令通りに聖杯戦争に参加する。ここに至って迷っている暇はない。
ならば決めろ、己はこの流れに乗ったのだ。父が望んだ流れに。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ――――」
詠唱開始。額から汗が一滴流れ落ちる。夜の中庭に、詠唱の声が朗々と響く。
次第に魔法陣に変化が起こった。魔法陣の中心から風が巻き起こり、稲妻が帯電し始めた。
早く、早くしろと逸り、焦る心に落ち着けと念じ続けて精神を集中。
急がなければならない。しかし決して焦ってはならないという矛盾を抱えつつ、詠唱し続ける。
不意に中庭に続く扉が開かれた。そこから現れる白い槍兵。
すぐさま屋敷の防衛機構が発動。周囲のガス灯の炎が力強く燃え盛り、自らの身を切り売りするように炎を弾丸のように飛礫としてランサーに向けて放つ。
だがそんなもの、『対魔力』スキルを持つランサーには足止めにもならない。事実、彼の身に当たる前に、見えない障壁に阻まれるように火弾はかき消されていく。
ランサーと目が合った。彼の身体が沈む。その様が司にはスローモーションに映った。
全身のバネを
到達されればランサーの槍は今度こそ司の心臓を貫くだろう。
だが――――
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!」
間一髪。詠唱が完了。直後、先程までの閃光と突風が比較にならない規模の風、光、そして雷が走る。
ランサーの進撃が止まる。新たなサーヴァント召喚という事態に、彼も慎重にならざるを得ない。
魔法陣から迸る光、その中から弾丸のように飛ぶ三つの
ランサーに叩き落とされた飛来物はそのまま地面に突き刺さった。
「剣?」
地面に落ちたのは三本の剣。そして――――
「伺いましょう」
その声は、司の耳にはとても心地よく、おおらかで、暖かかった。
魔法陣の中から進み出てくる女の影。
外見年齢は自分と同じか少し上。おそらく二十歳前後。月光を形にしたような金の髪、吸い込まれそうな青い双眸。胸と腰回り、最低限の急所のみを守る白銀の軽装鎧。同じ色の具足。篭手はなく、鎧の下には黒いインナーのみ。ただし胸から下はない。剥き出しの腹、へそ回り。そして左わき腹辺りに、ぐるぐると螺旋を描く茨の形をした痣、もしくはタトゥー。そこだけが彼女には異質で、痛々しく、しかし
その立ち姿。戦士のように凛としていながら母や姉のように優しく包容力のある矛盾した佇まい。月光に照らされた美しさに、司は戦場にいることも、命の危機にあることも忘れて、魅入った。
そんな、どこか呆けた司に向かって、彼女は告げた。
「貴方様が、
ここに召喚は成功した。
この瞬間、サーヴァント・セイバーの召喚を持って、この偽典の聖杯戦争は本格的に開始されたのだ。
現在公開可能なサーヴァント能力
クラス:バーサーカー
真名:???
マスター:アーノルド
身長199cm、体重102kg、属性:秩序・狂
筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?
クラススキル
狂化:A++:パラメーターを大幅にランクアップさせるが、言語能力と思考能力を完全に剥奪し、理性を消し去る。
固有スキル
???
宝具
???
クラス:アサシン
真名:-(本来の名前は亡くし、ハサン・サッバーハの名は剥奪されたため、真名はない)
マスター:ニヒト
性別:女 身長:166cm 体重:50kg 属性:秩序・悪
筋力B 耐久C 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具C
クラススキル
気配遮断:A+:サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
固有スキル
投擲(短刀):B:短刀を弾丸として放つ能力。
自己改造:A:自身の肉体にまったく別の肉体を付属・融合させる適性。このランクが上がれば上がるほど正順の英雄から遠ざかっていく。アサシンは心臓にシャイターンの心臓を融合させている。
風除けの加護:A:中東に伝わる台風(ジン)除けの呪い。
自己再生:E:自動でHPが回復するスキル。『自己改造』で融合させたシャイターンの心臓の効果によって代謝が上がり、軽度の傷ならば間をおかずに治癒できる。
宝具
仮想体廊(サバーニーヤ):C:対人(物)宝具:レンジ1:最大補足:不明(本人も知らない)
生前はシャイターンの心臓を移植し、さらに鍛錬によって得た自身の肉体を物体に埋没させる物質潜航能力。相手は埋没による痛みは感じない。サーヴァントとなった現在は、元来の潜航能力に加え、自分の魂の一部を生物、無生物問わず分割して埋め込み、遠隔操作、自動発動が可能。ただし、魂の総量は一定なので、分割すればそれだけ本体の戦闘能力は落ちる。一度にどれだけ魂を分割できるかは、サーヴァント化によって宝具の性質が変わったため、アサシンにも把握しきれていない。分割した魂は、一度発動するか、アサシン自身の意志でアサシンに戻すことができる。