偽典の聖杯戦争   作:tuki21

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第28話:二日目⑯ 一時閉幕

 春日居市新地区某所、ウィンクルードのセーフハウスの一つ。

 この場の誰も知らないことであるが、第四次聖杯戦争ではあるマスターの陣営が、蝙蝠などの飛行動物を使い魔にし、小型カメラを取り付けて斥候替わりや監視に用いていた。

 ウィンクルードも似たようなことをしていた。

 ただし、今回彼が用いたのは使い魔などの魔術側の技術ではなく、科学側の技術であったが。

 空撮ドローン。

 黒に塗装し直し、夜闇に紛れるように改造されたソレを、ウィンクルードは火事が起こったタイミングで――つまりバーサーカーが暴れ出した時点で――飛ばし、現場に向かわせていた。

 ドローンを遠隔操作しなければならないのでウィンクルードはセーフハウスに残り、戦場付近にはアーチャーのみを向かわせた。

 結果、バーサーカーの姿をはっきりと捉え、ランサーを補足。セイバーが乱入したことまで収めていた。

 ランサーはアーチャーに任せて、ウィンクルードはドローンを操作し、セイバーがバーサーカーを投げ飛ばした自然公園に向かわせた。

 バーサーカーの熱量がすさまじく、サーヴァント同士の戦闘に巻き込まれてはたまらないので、距離を取り、さらにセイバーのマスター、祠堂司(しどうつかさ)が飛ばした使い魔に気づかれぬよう、高度を取ったため細かい部分の詳細は不明だったが、セイバーとバーサーカーの戦闘のほぼ一部始終を映像に収めることができた。

 例外は一端セイバーが離脱したタイミング。木々の生い茂った森の中に入られてしまったので、ドローンでは撮影できなかった。

 あのタイミングの前後で、セイバーの動きのキレがよくなったので、何かがあったのだろうが残念ながら不明のままだ。

 それより重要なのは、どうやらバーサーカーの弱点が判明したことだった。

 

「んー、スキルだな、こりゃ。多分生前から由来するデメリットスキル」

 

 ノートPCに映しているのは回収したドローンの映像。そこには左足に黒い靄のようなものをまとわりつかせ、地面に這いつくばっているバーサーカーの姿があった。

 突然現れたこの現象が、ほかサーヴァント――例えばキャスター――の横やりとは思えなかった。だったらもっと致命的な、それこそセイバーが止めを刺せるタイミングでやる方が自然だろう。最小の労力で敵を一つ潰せるのだから。

 それがなかったから、これはバーサーカー自身が持つデメリットスキルだと思わせる。

 マスターを失ったはずのバーサーカーがなぜ今だに現界しているのかは疑問だったが、今は考えない。新しいマスターを見つけたか、何らかの手段で魔力を補給し、無理矢理現界しているのだろう。

 

「となると、やっぱり気になるのは、アーノルドってやつが持ってったっていう聖遺物か……」

 

 それが分かれば、召喚されたサーヴァントの真名が分かるかもしれない。足の不自由さというのは大きなヒントだ。触媒が分かれば答えにたどり着けそうだ。

 触媒についてはウィンクルードに探る手段はない。アーノルドとやらが隠れ家にしていた場所が分かればいいが、それもこれも、人手が必要だ。

 そして人手を割くなら死んだマスターの隠れ家探しよりももっと有意義なものがある。

 

「いずれにしても、エクソダス殿の連絡待ちかね」

 

 アメリカ合衆国から派遣されたウィンクルードの協力者、エクソダス。石造のような彫り物を思わせるいかつい男だが、今はあの男に任せるしかない。

 彼が合衆国内の機関にアーノルドが無断で外部に持ち出した聖遺物を確認中だ。今までもこちらが頼んだ仕事は堅実にこなしてきたので、今度も大丈夫だろうと、そう期待してもいいだろう。

 そんなことを考えていた時だった、

 

「マスター」

 

 呼びかけられた声に振り向くと、いつもの仏頂面のアーチャーがいた。どうも自分の周りには表情に面白みのない奴が多い。

 

 

「アーチャーか。ランサーは?」

「宝具撃ち込んだ。普通に考えれば致命傷。ここで消えずとも、遠からず消える」

「消滅は確認していないと」

 

 ウィンクルードは右腕のシャツの袖をまくり上げた。

 右上腕部。そのに記された令呪の紋様を見る。

 三度だけ使えるサーヴァントへの絶対命令権。それはサーヴァントへの命令だけでなく、一時的な能力の底上げや、治療にも使えるという。なら、ランサーのマスターが令呪を惜しまぬなら、一画使って治療できるかもしれない。

 

「油断はできないな。アーチャー」

「なんだ?」

 

 ウィンクルードは体をノートPCの前からどけた。ソファの席を開け、アーチャーに勧める。

 

「今夜あった、セイバーとバーサーカーの戦いだ。自然公園からのだが、記録されてる。参考にしとけよ。この二騎を狩るための」

「了解した」

 

 早速ソファに座り、最初から動画を再生し始めるアーチャー。彼とてランサー戦での傷があるだろうに、その動作に疲弊の色は全くなかった。

 そんな相棒に頼もしさを感じながら、ウィンクルードは棚の中にあったブランデーをグラスに注ぎ、一気にあおった。

 考えることはたくさんある。バーサーカーの正体はともかく、ほかのサーヴァントの真名はまだ分からない。だが戦いようはあるはずだ。そのための戦術、戦略を練らなくてはならない。

 ライダーは脱落した。残る敵は五騎。どの順番で攻略するか。

 なんにせよ、ひと眠りだ。人間、眠らなければ明日戦うこともできない。

 

 

 ライダーが本当は脱落しておらず、今は裏方に徹していることをウィンクルードはまだ知らない。この事実を知った時、彼が、そしてアーチャーがどうなるか、それはまだ誰の手にもわたっていない運命だった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 春日居市新地区、春日居教会。

 その夜は、シスター・キャロルにとって激戦だった。

 始まりはバーサーカーによる虐殺、略奪、そして放火。周辺の区画を封鎖し、避難指示を出し、バーサーカーの炎の圏内にいると思われる住人たちを一斉に避難させる。そのうえ二次災害が起きぬように、その場にとどまらぬようにスタッフを総動員して避難誘導を行い、従わないものには魔術的暗示をかけた。

 さらに一般人からの通報を受けて、現場に急行してきた消防車を止め、乗り込んでいた消防官たちに魔術的暗示をかけ、現場に急行後、消火活動に従事した記憶を上書きする。

 バーサーカーの相手はランサーに任せ、避難が完了した住人は一時避難所に集め、全員に暗示をかける。

 この時点でかなり人手を割かれた。バーサーカーは神秘の秘匿など何も考えずに暴れまわる。これではいついらぬ目撃者が出るかわかったものではない。

 また、科学による記録媒体の増加も悩ましい。

 スマートフォンで写真を撮っていたものもいたので、当然没収。データ記録と頭の中の記憶を消去。ただ言われるがまま、夢中で逃げ回っていた記憶を上書き。

 記憶処理が終われば次は配給だ。彼らの精神を落ち着けるために夜食を用意し――春日居教会からのボランティアスタッフとして、何人か人手を割きもした――、第七聖堂病院から派遣されたカウンセラー――聖堂教会の息がかかったスタッフだ――によるカウンセリング――暗示を駆使して、精神を落ち着ける療法だ――を行い、避難所の住人達の不安を和らげる。

 この時キャロルだけでなく、本来監督役とは何の関係もないスミス神父も避難者のケアに奔走してくれたのは、まったくもって頭が下がる。

 戦場の把握も忘れない。バーサーカーと相対している時にアーチャーから狙撃を受けている連絡を受けたキャロルは舌打ちを堪えるので精一杯だった。

 同盟状態にあるセイバーのマスターこと、祠堂司がセイバーを派遣してくれたことで状況はわずかながら好転。ランサーはバーサーカーの相手をセイバーに任せ、自分はアーチャーを仕留めにかかった。

 ここから先、ランサーからの連絡は完全に途絶えることになる。

 心配ではあったが、キャロルもその場を離れるわけにはいかなかった。

 セイバーがバーサーカーを民家群から引き離し、自然公園に戦場を移動させたことを聞き、ひとまずは安心したが、すぐにその場に人をやって、結界の強化を行わせた。

 一応、司が結界を張っていてくれたが、彼は次男。魔術刻印を受け継ぐ長男に比べると、どうしても魔術の成果に不安が残る。

 大丈夫だとは思ったが、スタッフの中で魔術を使えるものを数名、自然公園外周に向かわせ、結界の様子を確認させた。勿論、彼らの目から見て問題ないと判断されたらすぐに引き返させ、引き続き被害者たちのケアに当たる。

 さすがにこういう時、日頃市民と触れ合っている教会のシスターという立場は便利だ。顔見知りもいたのですぐに安心して貰えた。

 その安心感に付け込んで暗示をかけ、彼らの精神に治療を施す。

 そしてもう一つ、忘れてはならないのがこの連続火災をどのように収めるか、だ。

 原因不明の火災、ではこの件が注目されてしまう。これではやはり神秘の漏えいに繋がりかねない。

 なのでこの件にはでっち上げの物語(カバーストーリ)が必要だ。

 キャロルがとった行動は昼間の火災を結びつけること。

 昼間起きた森林の樹木の一本が燃え上がった事件と、今回の民家の火災を同一犯による放火として結び付ける。

 人のいない樹木から段階を飛ばして民家に火をつける火急性を印象付け、さらに夜間や不要不急の外出の自粛を促す。

 とにかく今この街には目に見える形で危険があるのだと、何も知らない人々にもそう知らしめる。

 各人の危機意識を高めるのだ。

 勿論本当の聖杯戦争に巻き込まれたのなら、そんな危機意識など紙よりも脆いだろうが、それでも民衆の胸には“君子危うきに近寄らず”と刻まれるはずだ。

 と、そこまでやってやっと一息つけるかと思ったら、この夜最大の驚愕がキャロルを襲った。

 帰還したランサーが、今にも消滅してしまいそうなほどの有様だったからだ。

 ガラスのようにもろく罅割れた体、欠け落ちた四肢、憔悴した表情。

 辛うじて霊核は無事なようだったが、欠損はひどく、さらに体に走った罅割れはまるで領土を侵食するように徐々に広がっているように見えた。

 アーチャーの宝具にやられたと語るランサーを無理矢理横にさせ、キャロルは夜を徹してランサーの治療に当たった。

 ただの治療魔術ではだめだろう。とにかく魔力が足りない。霊基が不安定だ。このままでは治癒魔術を受ける基盤がそもそも保たない。

 

「…………」

 

 キャロルは己の胸元に手をやった。

 そこに、彼女の令呪は宿っていた。次に首から下げた銀のロザリオを握り締め、祈るように目を伏せた。

 それも一瞬、キャロルはランサーの額に手を置いた。

 

「マスター?」

 

 かすれた声で、訝し気にランサーが問う。キャロルは何も言わず息を吸った。

 

「大丈夫です、ランサー。貴方をここで消滅などさせません。絶対に」

 

 これは賭けだ。令呪の膨大な魔力があれば、霊核さえ無事なら可能なはず。

 そして時間さえかければ、可能性はさらに上がるはずだ。

 

「令呪をもって命じます。ランサー、今宵一晩かけて、貴方の傷を完治させなさい」

 

 キャロルの胸元に赤い光が灯り、すぐに消えた。――――明け方近く、シャワーを浴びた時に確認したが、キャロルの胸元に会った六枚翼を広げた天使のような形をした令呪は、上から三分の一、色を失っていた。

 そして、ランサーは『聖人』スキルを取得する際にHPの自動回復を選択している。令呪の膨大な魔力と一晩という時間を消費すれば、完治は十分に可能なはずだ。

 あとはこちらからも治癒魔術をかけていく。

 こんな序盤でランサーを失うわけにはいかない。この地で行われている聖杯戦争、その全てを暴くまで、舞台を降りるなどもってのほかだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ???

 かつてこの場所を訪れた時、そこはまだ洞窟の体を成していたはずだった。そう男はそう考えた。

 ひどく、特徴のない男だった。

 二十代から四十代の、どの年代にも見れそうな背格好。切り揃えられた黒髪、目鼻立ちも平均的で印象に残らない。

 地味目の黒のシングルスーツ、白のワイシャツ、黒ネクタイ、ネクタイには銀色のネクタイピン。のっぺりした顔立ちは映画やドラマのエキストラを思わせ、一度群衆に紛れたら見つけることはできそうもない。

 この特徴という特徴を削ぎ落した無貌の怪異のような男こそが、此度の偽りの聖杯戦争におけるキャスターのマスターだった。

 男は表情にこそ出さないが、靴裏から伝わる感触と、肌にまとわりつく空気に訝しんでいた。

 靴裏から伝わる感触は岩のようでもあるが、弾力があり、湿り気がある様は臓物を想起させる。

 足裏からの感触を無視して、男は進む。予定通りにいけば、キャスターは今夜、新しい“夫”にご執心のはずだ。

 キャスター。その真名、エキドナ。

 ギリシャ神話に名を刻む怪物。そのもっとも有名な特性は母親。彼女はギリシャ神話に登場する多くの怪物の母である。

 当然母ならば父が必要だ。その父親は度々変わっている。

 足を進める。灯になりそうなものは何もないはずだが、壁がほのかな胎動とともに薄紫色に明滅しているので、周囲の様子を窺うのに不自由しない。

 かつては洞窟の内部だったこの岩肌は、今は肉の内壁になっている。

 

「神殿は完成し。その中で順調に子供を生み出しているわけか」

 

 キャスターの宝具は複数ある。その中でも現在発動中なのは“夫”の体液や魔力を体内に取り込み、自らの子供である怪物を生み出す出産宝具、『母の愛は尽きることなし(グレート・マザー)』ともう一つ。

 『陣地作成』スキルと組み合わせ、この出産効率を上げる産場を作り上げる結界宝具、『妖母の産場(エキドナ・カタフィギオ)』。

 産場であり、キャスターが持つ外付けの子宮であり産道。ここで彼女の子供たちは生まれ、この場所を通って世界に産声を上げるのだ。

 今、男がいるのはまさしくこの産道の中だった。

 足を進める。周囲に獣臭い気配を感じる。生まれながらも、まだは子宮から外に出ていない子供たちがここに入るのだ。

 これらをすべて解き放った場合、子供たちは栄養として肉と魔力を求め、この街は地獄となるだろう。

 それもいいか、と男は思った。だがキャスターはまだそこまでは望んでいまい。少なくとも、まだまだ父親候補たる魔術師や、英霊がいる現状ならば。

 やがて開けた場所に出た。キャスターの寝所であり玉座であり、そして子供たちの揺り籠だ。

 

「これはこれはマスター。待っていたぞ」

 

 出迎える声は艶やかな女のもの。

 ウェーブのかかった黒髪は一房ずつ乳房の前に垂らしている。

 ファーのついた、何かの獣の毛皮を使ったコートを羽織り、コートの下は血のように赤いイブニングドレスのようなスカート。それ以外は何も纏ってはいない。

 血を固めたような赤い瞳、赤い唇。男ならば吸い寄せられずにはいられない、毒の滴る蟲惑的な雰囲気なのに、どこか深い母性や包容力を感じさせる矛盾した女だった。

 キャスターだった。

 彼女は腕を組み、胸を強調するような姿勢で己のマスターを迎える。男は一つ頷いただけだ。

 

「バーサーカーは?」

「もうすぐ愛すべき我が子が連れてくる」

 

 キャスターがそう言った直後だった。彼女の背後の空間が、まるで紙のように引き裂け、穴が開いた。

 否、穴に見えたのは口だった。大きな口がその空間に鎮座している。

 やがて口の中から竜の頭が出てきた。

 それも一つではない。二つ、三つと数を増やし、ついには数え切れぬほど。

 それは新地区の自然公園でセイバーとバーサーカーの戦いに乱入し、バーサーカーを連れ去った竜種だった。

 そしてその多頭の竜はいくつかの口にバーサーカーの身体の各所を加えていた。

 口が離れる。

 バーサーカーが重々しい音と湿った音を立てて地面に落ちた。

 兜の間から呼気が漏れるが弱弱しい。体から溢れ出る炎の勢いも弱く、かなり弱っていることが伺えた。

 いまだアーノルド(マスター)が残した魔力結晶は残っている。それを使えば出力の面ではまだごり押しができそうだが、マスターという楔がない状態が続いているため、本来の力を十全に発揮することはできないのだろう。

 

「多頭の竜、ラードーンか」

 

 マスターはバーサーカーには目もくれず、竜を見てそう言った。

 ラードーン。ギリシャ神話に登場する怪物で、やはりエキドナの子供の内の一体。

 リンゴ園の黄金のリンゴを守護する役目を持っていたが、十二の難行に挑んでいた英雄、ヘラクレスによって倒された。

 

「その通り。本体が口という珍しい特性を持っていてな。このように、自分自身さえも飲み込んで移動できる」

「バーサーカーはどうするつもりだ」

「決まっておろう―――――」

 

 続きを言う前に、バーサーカーが立ち上がろうと腰を浮かした。

 

「■■■■■■■■■■■■――――!」

 

 怒りを伴ったバーサーカーの咆哮が響き渡る。キャスターは嫣然と微笑んだ。

 

「それでよい。新たな妾の夫となり、父となるのだ。死にかけであれこのくらいの気概がなくてはな」

 

 再びバーサーカーを拘束しようとしたラードーンを手で制し、キャスターはバーサーカーに近づいていく。

 バーサーカーの身体から炎が噴き出した。その熱量に男は顔をしかめたが、キャスターは笑みを崩さず近づいていく。

 炎を意にも介さず、右手をバーサーカーの頭部に添えた。

 

「だが、少し暴れすぎだ」

 

 そのまま膂力に任せで腕を振り下ろす。後頭部を抑えられたバーサーカーは抵抗できずに顔面から地面に叩きつけられた。

 鈍い音が響く。其れだけでなく、兜の内部でカクテルのようにシェイクされた頭部は散々打ち付け、人間でいう脳震盪を引き起こした。

 それでも立ち上がろうとしたバーサーカーだったが、今度は待機していたラードーンがその牙をバーサーカーに突き立てた。

 

「さて、このまま妾は新たな子を創りたいところだが……、その前にマスター。この者の魔力を供給しなければなぁ?」

「それだけでなく、マスターも必要になるといいたいのだろう? そのために私を呼んだのだろう?」

 

 男は自分がキャスターに呼び出された理由を正確に把握していた。マスター無きバーサーカーは、このままではいずれ消滅する。

 新たな、それも極上の父親を失うことをキャスターは好まない。少なくとも、今はまだ。

 そしてこのバーサーカーは使える。手持ちの戦力は多いほうがいい、というのが男の考えだった。

 

「いいだろう。私がマスターになる。生憎バーサーカーの令呪はすでにかつてのマスターに三画全て使われてしまったが……、まぁいい」

「妾への魔力供給も問題はなかろう?」

「ああ」

 

 くすくすと笑うキャスターが、そう問いかけた。男は簡単に頷く。

 二騎のサーヴァントを従えるというのは一見メリットのように感じられるが、実際はデメリットの方が大きい。何しろマスター一人で二騎のサーヴァントに魔力を供給しなければならないのだ。

 その場合、並のマスターならば一騎あたりに供給する魔力が少なくなり、結果として従えたサーヴァントたちは十全に力を発揮できず、一騎の時よりもむしろ弱くなってしまう。

 そのため、複数のサーヴァントを従えるとすれば、それはマスターがよほどの規格外か、外付けで魔力をため込んでいるか、だ。

 

()()()()()。あそこの魔力を使えば問題ない。令呪も、まぁ聖杯の予備機能を励起させれば、一画くらいは何とかなろう」

 

 こともなげに男はそう言った。

 だが男の発言は、聖杯を手に入れようという、この聖杯戦争の根底を覆すものだった。

 聖杯の魔力を使えばキャスターとバーサーカーの二騎を運用でき、さらに新たな令呪も一画なら問題なく用意できるという。それはつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 つまり、この偽りの聖杯戦争は、彼こそが黒幕だといえた。

 そして、聖杯を手に入れておきながら、聖杯戦争を行うという矛盾。男の意図も狙いも、何もかも分からないことだらけだった。

 

「さぁ、二日目はこれで終わりだ。三日目がやってくるぞ。マスターよ、サーヴァントよ。願いを叶えるために死力を尽くせ。その結末を、あらゆる感情を抱きながら享受するがいい」

 

 男の声はどこにも届かず、ただ闇の中に消えていった。




現在公開可能なサーヴァントステータス

クラス:バーサーカー
真名:???
マスター:アーノルド→キャスターのマスター
身長199cm、体重102kg、属性:秩序・狂
筋力A+ 耐久B++ 敏捷B-- 魔力D 幸運E 宝具B
クラススキル
狂化:A++:パラメーターを大幅にランクアップさせるが、言語能力と思考能力を完全に剥奪し、理性を消し去る。
固有スキル
幻痛:C:生前に受けた傷が、魂にまで残ったが故に起こる痛み。バーサーカーは生前に足を負傷したため、判定に失敗した場合、敏捷のステータスが著しく下がる。
???
宝具
???

キャスター
真名:エキドナ
マスター:???
身長:194cm、体重60kg、属性:中立・悪
筋力B 耐久C 敏捷B 魔力A++ 幸運A+ 宝具A++
クラススキル
陣地作成:A:魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるが魔術師ではないキャスターは出産のための“巣穴”を作成できる。ランクAならば神殿に匹敵する産場が作成できる。
道具作成:-:宝具による召喚能力によって失われている。

固有スキル
怪力:A:一定時間筋力のランクが一つ上がる。持続時間は「怪力のランク」による。
神性:E-:本来は神霊そのものだが、魔物としてのランクが上がったため、ここまで退化してしまっている。
悠久の血脈:A++:どこまでも残る血統の証。たとえ本人は死しても、多産による一族の延命によって、どの時代どの場所においても自分の出身地および血族たちを含めた知名度補正を得られる。
動物会話:A:動物たちの言葉の意味が解るが動物側の頭が良くなるわけではないのであまり複雑なニュアンスは伝わらない。Aランクならば全ての動物、幻想種の言葉が分かる。
???

宝具
母の愛は尽きることなし(グレート・マザー):A++:対人宝具:レンジ1~100:最大補足100人
他者の魔力や体液を取り込み体内で醸成させることで、新たな怪物を産む。産み落とした子供の能力は“夫”側の能力によって決まる。子供たちは全員がエキドナが消滅するか、自身が致命傷を受けるまで現界し続ける。

妖母の産場(エキドナ・カタフィギオ):A:結界宝具:レンジ1~100:最大補足-
「母の愛は尽きることなし」の出産効率を上げる神殿の作成。陣地作成を行った場合に発動できる結界宝具。自分の陣地を、魔力濃度が神代に近くなる異界につくりかえ、内部で子供の出産に必要なあらゆる魔力量が減少し、一度に産める数も増える。

???
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