ドーブルのなりそこない 作:cat
「おお! タマゴが揺れている! ビデオカメラの設置は出来ているか? バッテリーは? 大丈夫だな?」
「ああ、準備は出来ている。あとは誕生を待つだけだ」
ん……。何かが聞こえる……。
ピキッ! パリッ!
「ああ、待ち遠しくて割ってしまいたい……!」
「駄目だ。自力でやらせた方がいい。待つんだ」
パリッ! バリバリッ!
「た、誕生した……!」
「次世代をいくドーブル、ドーブルZ……!」
ぼくは、だれだろう?
どうしてこんなところにいるんだろう?
「ここは、どこ……?」
「プラズマ団基地、カントー支部だ。お前は、6V色違いドーブルだ。他と違う点は、ミュウの遺伝子からミュウツーが造られたように、お前はドーブルZという新たな種族の第1号ということ、人間の言葉がしゃべれるということ、どんな技でもどれだけでもスケッチ出来ること。他にも優れた点は、身体能力やら頭脳やら色々とあるんだが、とりあえず、今までに失敗してきたドーブルAからドーブルYとは違い、ちゃんとした完成品だ。五体満足だし、しゃべることも出来る」
「お前には、これから色々と学んでもらう。世界を救うドーブルになってもらうんだ。修行はみっちりやるぞ」
けんきゅうしゃだからか、せつめいがわかりやすい。
わかったことは、ぼくをうみだすために、25ひきのぼくのきょうだいがぎせいになったこと。
ぼくのきょうだいには、ごたいふまんぞくなきょうだいもいるということ。
かれらはかんせいひんではないということ。
そして……ぼくも、れっきとしたドーブルじゃないということ。
ぼくは、ドーブルじゃない。ドーブルZだ。たぶん、けんきゅうじょからでても、ドーブルたちはぼくをなかまにいれてくれない。
ただひたすらにかなしい。
けど、げんじつてきなせいかくのおかげか、なげいてばかりじゃいられないとわかる。
きょうだいたちにあう。
みんなで
いまやるべきことはそれだけだ。
ドーブルにはうけいれてもらえない。けど、ぼくたちは26ひきだ。だいじょうぶ、たすけあえばなんとかなる。
ぼくはけっしんをかため、べんきょうをおしえてくれるというけんきゅうしゃ1についていった。
「お前の
「う、うん」
ドーブルようのつくえがならべられたへや。
いっぴきのドーブルがちかづいてくる。
「あなたがドーブルZね。私はドーブルAよ。最初に造られたからか、そこまで障害はない。ドーブルより優れている点は、知能だけよ。ドーブルZ。あなたは完成品よ。研究者1から、あなたに名前を授けるように言われたわ。幸い、私は両親に会ったことがある。名付けを許されるなら、この名前を与えて欲しいと言われたの。———あなたは、今日からパレルよ」
「パレル……」
「由来は、パレットから。将来、良い絵描きになって、私達
「……うん。ぼくは、おねえちゃんたちをかならずたすける。ぼくのしめいは、それだ。まってて、おねえちゃん。ひつようなことをおぼえたら、かならずたすけるから!!」
「ありがとう、パレル。……此処は、教室よ。みんなが学ぶ場所。私が主に教え、わからないことがあったら研究者に教えてもらうの。厳しいわよ、私の授業は」
「ぼく、がんばるよ!」
「わかったわ。まずやるべきことは……」
あれから1週間が経った。
朝起きて、ぼくは教室で出来る限りのことを覚えたあと、お昼ご飯を食べる。それから、A姉ちゃんにスケッチする為の技を教えて貰い、夕方になると研究者2に健康診断をされる。夜ご飯を食べたあとは、きょうだい達と遊んだりし、そのあと眠る。
この生活を7回繰り返した。
その間、ぼくは特別に、一回だけ外に出してもらった。
寝床から外までの道はその一回で覚えた。けど、外に出た瞬間、脱出計画が吹き飛ぶほどの衝撃を受けた。
綺麗だった。
アジトは森の中にあった。
新鮮な空気を存分に吸った。太陽の光を浴びた。
研究者2に、そこでソーラービームや危険な技の数々を教わった。はかいこうせんなども教えてもらった。
きょうだい達は、教えてもらっていないそうだ。A姉ちゃんは、ブラストバーンやハイドロカノン、ハードプラントをこっそりスケッチしていたけど。
そらをとぶの練習をしたあと、研究者2のポケモン(ピカチュウというらしい)に、ひみつのちからを教わった。アジトも、このピカチュウのひみつのちからを利用して作ったそうだ。
外に出ていたのは、1時間だけだった。
戻るぞ、と言われた時に、目一杯深呼吸をしておいたけど、すぐに綺麗な空気は無くなってしまった。
この体験をA姉ちゃんに話すと、他のきょうだいには、それを話しちゃ駄目だと言われてしまった。
昔、C兄ちゃんは、研究所から脱走しようとしたことがあるらしかった。
前日に外までの道を覚えていたので、優れた身体能力で一気に通路を駆け抜けたらしい。
しかし、研究者のピカチュウに捕まってしまった。
それからは、きょうだい達は外に出してもらえることは無くなったという。
「多分、あなたは一番遠回りの方法で外に連れて行かれたと思うわ。3つのルートがあるの。1つは、Cが通った最短ルート。2つ目は、少し遠回りなルート。3つ目は、あなたが行った最も遠回りなルートよ。近ければ近いほど、防火扉が常に作動していて、1ルートは3つ。2ルートは2つ。3ルートは1つよ。防火扉は、電気や水にも強くなっているから、技で開けるのはほぼ不可能だわ。研究者2が持っているカードが必要なのよ。どろぼうでも盗ることが出来ない、特殊なカードなの」
「わかった、ありがとう。やっぱりカードを使うのは無理なんだね。ぼくに作戦がある。決行は3日後だ。ぼくに任せて」
「きょうだいにも伝えておくわ。絶対、今後は話さないように念をおしておく」
「お願いね。あ、あと、みんながあなをほる、なみのり、そらをとぶのどれかを覚えているかな?」
「やっぱり賢い子ね。だいたい三等分になるよう、それぞれどれかはスケッチさせているわ。研究所を出たら、土にもぐるもの、川を下るもの、そらをとぶものにわかれるのね?」
「うん。ただ、あのピカチュウはなみのりとあなをほるを覚えているらしいんだ。出来ればそらをとぶが出来るきょうだいを増やして欲しい」
「わかったわ。あなたも頑張ってちょうだい」
普通なら、教室で勉強をする時間。
「あの、研究者さん」
「ん、なんだ?」
ぼくは研究者1に声を掛けた。
「ぼくって、世界を救うんですよね? なら、世界のことを教えて貰えませんか?」
「パレル、お前、文字や計算の勉強はどうした?」
「A姉ちゃんが用意したカリキュラムが全部終わったんです。何か勉強したいなって思ったんですけど」
「Aか、アイツは賢い。アイツのカリキュラムを終わらせたなら、いいだろう。世界に詳しいもう1人の研究者に頼め」
「わかりました。何処に居るんですか?」
「ああ、アイツならお前が孵った部屋に居る。わかるだろ? さあ、行ってこい。俺は研究を続けなければならん」
「……という訳で、お願いします」
「いいだろう。まず、此処はカントー地方だ。この前の森、あれを見たろ? あれを抜けると、マサラタウンという小さな町がある。そして……」
「カントー地方とジョウト地方が隣接しているんですね。では、他の地方は?」
「どれが気になる?」
「シンオウ地方です」
「シンオウはな、……」
「じゃあ、最後にイッシュだ。イッシュは……」
「……こんな感じだ。詳しく説明したから、もう夕方だな。ああ、今日は身体検査はしない。もう健康体だってわかったからな、一ヶ月後にもう一度やるぞ。もう戻るんだ」
「ありがとうございました」
色々と聞き出せたので、ぼくはお礼を言って食堂へ向かう。そして、きょうだい達に混じってご飯を食べ、眠った。