ドーブルのなりそこない   作:cat

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2016/08/06、2箇所訂正しました。


研究所

「おお! タマゴが揺れている! ビデオカメラの設置は出来ているか? バッテリーは? 大丈夫だな?」

「ああ、準備は出来ている。あとは誕生を待つだけだ」

 

 ん……。何かが聞こえる……。

 

 ピキッ! パリッ!

 

「ああ、待ち遠しくて割ってしまいたい……!」

「駄目だ。自力でやらせた方がいい。待つんだ」

 

 パリッ! バリバリッ!

 

「た、誕生した……!」

「次世代をいくドーブル、ドーブルZ……!」

 

 ぼくは、だれだろう?

 どうしてこんなところにいるんだろう?

 

「ここは、どこ……?」

「プラズマ団基地、カントー支部だ。お前は、6V色違いドーブルだ。他と違う点は、ミュウの遺伝子からミュウツーが造られたように、お前はドーブルZという新たな種族の第1号ということ、人間の言葉がしゃべれるということ、どんな技でもどれだけでもスケッチ出来ること。他にも優れた点は、身体能力やら頭脳やら色々とあるんだが、とりあえず、今までに失敗してきたドーブルAからドーブルYとは違い、ちゃんとした完成品だ。五体満足だし、しゃべることも出来る」

「お前には、これから色々と学んでもらう。世界を救うドーブルになってもらうんだ。修行はみっちりやるぞ」

 

 けんきゅうしゃだからか、せつめいがわかりやすい。

 わかったことは、ぼくをうみだすために、25ひきのぼくのきょうだいがぎせいになったこと。

 ぼくのきょうだいには、ごたいふまんぞくなきょうだいもいるということ。

 かれらはかんせいひんではないということ。

 そして……ぼくも、れっきとしたドーブルじゃないということ。

 

 ぼくは、ドーブルじゃない。ドーブルZだ。たぶん、けんきゅうじょからでても、ドーブルたちはぼくをなかまにいれてくれない。

 ただひたすらにかなしい。

 けど、げんじつてきなせいかくのおかげか、なげいてばかりじゃいられないとわかる。

 

 きょうだいたちにあう。

 みんなでここ(きょうふ)からにげる。

 

 いまやるべきことはそれだけだ。

 ドーブルにはうけいれてもらえない。けど、ぼくたちは26ひきだ。だいじょうぶ、たすけあえばなんとかなる。

 

 ぼくはけっしんをかため、べんきょうをおしえてくれるというけんきゅうしゃ1についていった。

 

 

 

「お前の兄姉(きょうだい)たちだ。ポケモン語しか話せない奴や、人の言葉しか話せない奴もいる。五体満足や、五体不満足の奴もいる。計算が出来るが読み書きが出来ない、或いはその逆の奴もいる。だが、お前の兄姉(きょうだい)にはかわりない。仲良くしろよ?」

「う、うん」

 

 ドーブルようのつくえがならべられたへや。

 いっぴきのドーブルがちかづいてくる。

 

「あなたがドーブルZね。私はドーブルAよ。最初に造られたからか、そこまで障害はない。ドーブルより優れている点は、知能だけよ。ドーブルZ。あなたは完成品よ。研究者1から、あなたに名前を授けるように言われたわ。幸い、私は両親に会ったことがある。名付けを許されるなら、この名前を与えて欲しいと言われたの。———あなたは、今日からパレルよ」

「パレル……」

「由来は、パレットから。将来、良い絵描きになって、私達兄姉(きょうだい)を救って欲しい———両親の思いが込められているわ。パレル。お願い、私達を救って。あなたを待っていたの」

「……うん。ぼくは、おねえちゃんたちをかならずたすける。ぼくのしめいは、それだ。まってて、おねえちゃん。ひつようなことをおぼえたら、かならずたすけるから!!」

「ありがとう、パレル。……此処は、教室よ。みんなが学ぶ場所。私が主に教え、わからないことがあったら研究者に教えてもらうの。厳しいわよ、私の授業は」

「ぼく、がんばるよ!」

「わかったわ。まずやるべきことは……」

 

 

 

 あれから1週間が経った。

 朝起きて、ぼくは教室で出来る限りのことを覚えたあと、お昼ご飯を食べる。それから、A姉ちゃんにスケッチする為の技を教えて貰い、夕方になると研究者2に健康診断をされる。夜ご飯を食べたあとは、きょうだい達と遊んだりし、そのあと眠る。

 この生活を7回繰り返した。

 その間、ぼくは特別に、一回だけ外に出してもらった。

 寝床から外までの道はその一回で覚えた。けど、外に出た瞬間、脱出計画が吹き飛ぶほどの衝撃を受けた。

 

 綺麗だった。

 

 アジトは森の中にあった。

 新鮮な空気を存分に吸った。太陽の光を浴びた。

 研究者2に、そこでソーラービームや危険な技の数々を教わった。はかいこうせんなども教えてもらった。

 きょうだい達は、教えてもらっていないそうだ。A姉ちゃんは、ブラストバーンやハイドロカノン、ハードプラントをこっそりスケッチしていたけど。

 そらをとぶの練習をしたあと、研究者2のポケモン(ピカチュウというらしい)に、ひみつのちからを教わった。アジトも、このピカチュウのひみつのちからを利用して作ったそうだ。

 

 外に出ていたのは、1時間だけだった。

 戻るぞ、と言われた時に、目一杯深呼吸をしておいたけど、すぐに綺麗な空気は無くなってしまった。

 この体験をA姉ちゃんに話すと、他のきょうだいには、それを話しちゃ駄目だと言われてしまった。

 

 昔、C兄ちゃんは、研究所から脱走しようとしたことがあるらしかった。

 前日に外までの道を覚えていたので、優れた身体能力で一気に通路を駆け抜けたらしい。

 しかし、研究者のピカチュウに捕まってしまった。

 それからは、きょうだい達は外に出してもらえることは無くなったという。

 

「多分、あなたは一番遠回りの方法で外に連れて行かれたと思うわ。3つのルートがあるの。1つは、Cが通った最短ルート。2つ目は、少し遠回りなルート。3つ目は、あなたが行った最も遠回りなルートよ。近ければ近いほど、防火扉が常に作動していて、1ルートは3つ。2ルートは2つ。3ルートは1つよ。防火扉は、電気や水にも強くなっているから、技で開けるのはほぼ不可能だわ。研究者2が持っているカードが必要なのよ。どろぼうでも盗ることが出来ない、特殊なカードなの」

「わかった、ありがとう。やっぱりカードを使うのは無理なんだね。ぼくに作戦がある。決行は3日後だ。ぼくに任せて」

「きょうだいにも伝えておくわ。絶対、今後は話さないように念をおしておく」

「お願いね。あ、あと、みんながあなをほる、なみのり、そらをとぶのどれかを覚えているかな?」

「やっぱり賢い子ね。だいたい三等分になるよう、それぞれどれかはスケッチさせているわ。研究所を出たら、土にもぐるもの、川を下るもの、そらをとぶものにわかれるのね?」

「うん。ただ、あのピカチュウはなみのりとあなをほるを覚えているらしいんだ。出来ればそらをとぶが出来るきょうだいを増やして欲しい」

「わかったわ。あなたも頑張ってちょうだい」

 

 

 

 普通なら、教室で勉強をする時間。

 

「あの、研究者さん」

「ん、なんだ?」

 

 ぼくは研究者1に声を掛けた。

 

「ぼくって、世界を救うんですよね? なら、世界のことを教えて貰えませんか?」

「パレル、お前、文字や計算の勉強はどうした?」

「A姉ちゃんが用意したカリキュラムが全部終わったんです。何か勉強したいなって思ったんですけど」

「Aか、アイツは賢い。アイツのカリキュラムを終わらせたなら、いいだろう。世界に詳しいもう1人の研究者に頼め」

「わかりました。何処に居るんですか?」

「ああ、アイツならお前が孵った部屋に居る。わかるだろ? さあ、行ってこい。俺は研究を続けなければならん」

 

「……という訳で、お願いします」

「いいだろう。まず、此処はカントー地方だ。この前の森、あれを見たろ? あれを抜けると、マサラタウンという小さな町がある。そして……」

 

「カントー地方とジョウト地方が隣接しているんですね。では、他の地方は?」

「どれが気になる?」

「シンオウ地方です」

「シンオウはな、……」

 

「じゃあ、最後にイッシュだ。イッシュは……」

 

「……こんな感じだ。詳しく説明したから、もう夕方だな。ああ、今日は身体検査はしない。もう健康体だってわかったからな、一ヶ月後にもう一度やるぞ。もう戻るんだ」

「ありがとうございました」

 

 色々と聞き出せたので、ぼくはお礼を言って食堂へ向かう。そして、きょうだい達に混じってご飯を食べ、眠った。

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