ドーブルのなりそこない   作:cat

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脱走

 いよいよ、作戦決行の日がやってきた。

 ぼく達が勉強している間、研究者達は研究に没頭する。その時を狙って脱出するつもりだ。

 

 ぼくは、きょうだい達の前でこうそくいどうをした。それをスケッチし、きょうだい達もこうそくいどうを始める。

 ドーブルは、覚えていない技でも、一時的にならスケッチすることが出来る。それを利用し、全員6回はこうそくいどうを積んだ。

 

「作戦開始。A姉ちゃん率いるAチーム、出発して。C兄ちゃんの、五体不満足チームは、その20秒後。そして、ぼく率いるZチームは、30秒後に出発する。ピカチュウは、今の時間はアジトの反対側をパトロールしているはずだけど、出来るだけ急いでね」

 

 全員が真剣な目で頷く。

 きっちりカウントしたあと、五体不満足チームは出発した。C兄ちゃんと、5匹の五体不満足なきょうだい。5匹は、いざとなったら囮になる覚悟を決めているが、ぼくは彼らも救うつもりだ。諦めてもらっちゃ困る。

 

「じゃ、Zチーム出発だ。行くよ、みんな」

 

 

 一時的にスケッチしたでんこうせっかを途切れ途切れ使い、アジトの通路を進む。

 5分の1進んだところで、急に研究所の警報が鳴り響いた。

 

 ビー! ビー!

 

「見つかったわ、パレル! どうする!?」

 

 A姉ちゃんが声を上げる。

 

「仕方ない! チーム分けは無しだ! 全員固まって、ぼくについてきて! C兄ちゃんは、しんがりをお願いできる?」

「ああ、任せろ!」

「決死の覚悟で行くよ! それっ!」

 

 きょうだいで固まって、通路を高速で走っていく。

 3つの分かれ道で、ぼくは一番左のルートを通った。

 

「パレル! そっちは一番遠回りよ!」

「わかってる! これも作戦の内だ! ついてきて!」

 

 高速で移動していくと、1つの防火扉にたどり着いた。

 

「A姉ちゃん、ブラストバーン、ハイドロカノン、ハードプラントをお願い! みんな、それをスケッチして防火扉を攻撃するんだ!」

「あなたはどうするの!?」

「ぼくは、奥義を使う」

 

 きょうだい達が一斉に攻撃する横で、ぼくは瞑想をしていた。技ではない。本物の瞑想。たっぷり30秒後やったあと、目を開けて絵の具を塗りたくった尻尾に力を込める。

 

「あくうせつだん———!」

 

 絵の具が尻尾から飛び、紫色になって空間を切断する。

 研究者2が見せてくれたイラストから、想像力を働かせてスケッチした奥義。それは、防火扉に大きなヒビを入れた。

 

「やったわ! C、かいりきよ!」

「わかった! うおぉぉぉぉぉおおお!!」

 

 C兄ちゃんのかいりきで、防火扉にドーブル3体分の穴ができる。

 

「A姉ちゃん! みんなを外に連れて、逃がして! マサラタウン集合だ!」

「わかったわ!」

「C兄ちゃん、力を貸して。防火扉の穴を閉じよう」

 

 かいりきで穴を閉じるが、手遅れだった。

 

ピカ(おや)……? ピカピカチュウ(何してるのかな)?」

「ピカチュウが追いついてきたか……。パレル、戦うぞ」

「うん。ほねこんぼう!」

「スケッチ! ほねこんぼう!」

 

 ぼくのほねこんぼうと、それをスケッチしたC兄ちゃんのほねこんぼうがピカチュウを襲う。

 

「マッドショット!」

「ハードプラント!」

ピカッチュ(エレキボール)!」

 

 技がぶつかり合い、爆発を起こす。

 

「しろいきり! これで視界は覆った! 行くぞ、パレル!」

「うん!」

 

 

 外に出ると、A姉ちゃんが待っていた。

 

「みんなを逃したわ。ピカチュウは?」

「足止めしたよ。そらをとぶで行こう、待ち伏せされにくいから」

「ええ、そうね」

 

 そらをとぶをスケッチし、宙へ舞い上がる。

 森を越え、数分でマサラタウンへ着いた。

 

「みんな揃ってるわね。じゃあ、出発しましょう! この町にも研究者が居るから、危険よ」

「そうだね。でも、集団で行くのは目立たない?」

「いいえ、取って置きの技があるのよ。見てて、へんしん!」

 

 A姉ちゃんのへんしんをスケッチする。みんなとは違い、覚えられる技の上限がぼくには無いから、ちゃんと覚えておく。

 

「Aチームはコラッタ、Cチームはポッポ、Zチームはオニスズメよ! さあ、トージョーの滝で会いましょう!」

「わかった。Cチーム、行くぞ!」

「Zチーム、ついてきて!」

 

 ぼくたちは、飛び立った。

 

 

 

 結果から言えば、ぼくたちは研究者2に追いつかれた。

 ぼくはピジョットにへんしんし、チルタリスと対面する。

 

ドーブ(みんな)ブルルドブブ(先に行って)ドブブール(トージョーの滝で会おう)!」

 

 研究者にわからないよう、ポケモン語を使う。

 ぼくのレベルは80。負けてしまうかもしれないが、時間稼ぎなら出来る。

 

「パレル。何故その能力を無駄にする? 一緒に世界を救おうじゃないか。君さえ残れば、あとのきょうだい達は見逃そう。戻ってくるんだ」

「嫌だ! あんな自然のないところなんて……きょうだい達を苦しめたところなんて!」

「全てはお前を生み出す為だ。……では、バトルしよう。勝った方が、言うことを1つ聞く。これでどうだ?」

「……わかった。だから、ちょっと待って」

 

 ぼくは、マサラタウンにちらりと見えるリザードンにへんしんした。

 

「行くぞ! かえんほうしゃ!」

「うたう!」

 

 チルタリスのうたう攻撃。あれじゃ、眠ってしまう!

 ぼくは素早くへんしんを解き、絵の具を耳に詰め込む。落下により歌声から遠ざかり、さらに絵の具で耳を塞いだからうたうは効かない!

 

 そらをとぶをスケッチし、飛び上がる。

 

「チルタリス、げきりん!」

「キングシールド!」

 

 ギルガルドのキングシールドで防ぎ、ふいうちを叩き込む。

 チルタリスの動きを見るからに、まだレベルは50ほどだろう。なら、いける。

 へんしんをスケッチし、グレイシアに。そらをとぶを解除していない為、浮遊しながら攻撃する。

 

「ふぶき!」

 

 タイプ一致のふぶきで、チルタリスは倒れた。

 研究者2は素早くウォーグルを出して、乗り移ってからチルタリスを回収した。

 

「飛べるポケモンは、もうウォーグルしか居ない。仕方ない、負けを認めよう。何が願いだ?」

「……ぼくのきょうだい達を二度と追わず、見つけても連れ戻さないで欲しい。一応言っておくけど、仲間や部下に追わせるのもダメだからね?」

「いいだろう。すると、お前はこの対象に入っていないわけだが」

「それは……今は、まだ追わないで欲しい。ぼくは、世界の現状を確かめてくる。研究者さんの言うことが正しいとわかれば、また戻ってくる。だから、まだ追わないで」

「……わかった。さっさと行け」

 

 研究者2は、研究所に戻っていった。

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