戦闘シーンは淡々としすぎでお遊戯会みたいです。戦闘とか全然思いつかない(´・ω・`)
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▼ サイドエピソード【
高い高い山の上にある、建設途中の神殿。
この世界に神殿など大して珍しくないのだが、何の神のものかは謎のままである。周りの町に住む人間でも知らず、ましてや働かされている奴隷も知るよしはない。
そんな謎の神殿を少しのぞいてみよう。
神殿を造るために奴隷たちが働いている。その近くにいるのは監督官のようだ。奴隷をまとめる者がいるのは当然のことだが、よく見ると人外の顔をしている。
魔物が人間を支配する。
勇者が存在しない世界の、のちの未来。
そんな奴隷たちの中に、ひときわ目立つ者がいる。2人組で働いているようだ。
片方は萌黄色の髪で、片方はターバンを巻いている黒髪である。他より長い時間働いているため、比較的ケガは少ない。しかし肩や背中には鞭で打たれた痕がある。それでいて光を失っていない眼で常に周囲を見回している。
1日の労働を終えて牢屋に戻ると、美しい女性がいるのが見えた。まだ洗礼を受けていないようで、眼には光がある。
「アベル。あの女って…」
「新入りのようだね。…でも無理矢理連れてこられたわけじゃなさそうだ」
「だな。自ら来たっぽいが…建設作業だけですめばいいんだがよ」
黒髪のほう、アベルは周りを見渡した。老若あるが、全員男だ。
建設作業は力仕事だ。石を運び、土を運び出して、また石を運ぶ。石は石でも白い大理石のような重い定石だ。そのため、この辺りの牢屋には男の奴隷ばかりである。ここで女性ということは『そういう意味』で使われる予定で連れてこられたかもしれない。
「珍しいね。ヘンリーがそんなこと気にするなんて」
「女には優しくって言われてたからな。…ただそれだけじゃなくて、うーん…」
「それだけじゃなくて?」
「…なーんか、気になるんだよなぁ…」
久しぶりに見た女性というわけではない。ただ雰囲気に惹かれる。不思議なことだ。
ヘンリーとアベルは女性に近づいて、奴隷になった経緯を聞いてみた。驚いたことに、兵士の中に兄がいるという。そして奴隷になった理由が教祖の皿を割ってしまったからだという理不尽であると。
「「器が小さいヤツだな。皿だけに」」
「…不注意な私が悪いんです」
光がある眼に、ほんの少しの諦念が宿った。
それを見た2人は早く計画を立てることにした。
ーーーそして夜。
疲れのせいで泥のように眠っている奴隷たち。しかし女性の奴隷が入ったことで、アベルとヘンリーは交代制で見張ることになった。成長期を迎えて、この辺りでは一番と二番の力を誇る彼らに逆らって、余計に立場を悪くする奴隷はいない。今はヘンリーが見張りをしている。
アベルは不思議な夢を見ていた。
多くの魔物を従えて、顔が見えない女性と子供2人と旅をしている。そして空色のドラゴンが飛んでいる。
「(何なんだ?この夢は一体…?)」
場面は変わり、翠のドラゴンを模した白銀の武具を装備した誰かが現れる。それは正しく、彼ら親子が捜していた者。
「(天空の勇者…!?)」
勇者の後ろには1人の青年と、先ほど見た女性ともう1人の子供。そして多くの魔物。青年の姿だけが見える。紫のターバンに杖を持つ姿はアベル自身とそっくり、いやアベルそのもの。
「(勇者を見つけろということか…)」
「そういうことだ」
「(!?)」
今まで1人でスクリーンを見ている感覚から、どこかの部屋に立っている感覚に変わった。しかし暗闇しか見えず、声の主も見えない。
「待つ時間は終わったぞ」
「(待つ…?)」
「もはや秒読みだ。貴様の役目を果たす時が来たが、どうする?」
その瞬間に目覚めた。
「ーーーー何をしているんですか」
「ん?神託」
「アレが神託ですか」
「選択肢しか与えられないオレなりの、な。ドランはあの女奴隷と、近くの教会に神託を与えろ」
「分かってます」
あれから数千年。前マスタードラゴンは任期を満了し、今はドランがマスタードラゴンを勤めている。なかなか慣れない人型で動くのはつらいのか、時々雲から足を滑らせている。
「…納得した」
あのエンドレストロッコはこいつの自業自得である。大昔、共に戦った彼らに連れて行ってもらったダンジョンの滑る床を思い出し、擬似的にでも体験したかったらしい。だが残念なことに、【知識】は【知恵】ではなかった。止め方を知らなかったのだ。魔物に云々は大嘘。
最高神マスタードラゴンともあろう存在が情けない。
「…よし。できました」
「おう。しばらくは地上に行ってもいいぞ。天空も危なくなってきたしな。なるべくオーブの近く…天空城の近くにいるように」
「わかりました」
「…今だけしか楽しめないと思う。『ドラン』として行ってこい」
「はい」
雲に開いた穴は今も無くなっていない。彼らがいたという証拠はいくらでもあるが、これは禁断の力の恐ろしさの象徴の1つでもある。
マスタードラゴンを見送った神は、神殿の方角を見すえた。
「なーんでドラゴンオーブをそこに投げてしまうのか…」
墜落する瞬間、天空人を救うために力を使い果たしたドランは、かねてからドラゴンオーブに溜めておいた力を使おうとして、不安定な空中で掴もうとした。
結果、このザマである。
「アレスとソロには200層目指してもらおう。あと3人くらい欲しいな」
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▼ メインストーリー【夢の国の鏡姫】を 再生します_
2つの大地が存在する6の世界。ゼニス王、ポセイドン、ルビスが治める天空シリーズ最古の世界である。
現実世界とされる下の大地。夢の世界とされる上の大地。2つの世界は異なるが等しい。
その夢の世界で、4人の若者たちが馬車をひいて旅をしていた。彼らが目指すのは砂漠の中にある魔術師が住まう塔。フォーン王が恋い焦がれる姫が閉じ込められている檻である。
蒼い髪の少年は"バトルマスター"の特技で一番槍をとっていく。
逞ましい肉体の男は"武闘家"として高い戦闘力を発揮している。
亜麻色の髪の少女は"僧侶"の魔法で回復を担当し、金髪の女性は"踊り子"の特技でサポートをしている。
戦闘はずいぶんと慣れているようだ。これまでにも修羅場を潜り抜けてきているのが窺える戦い方である。
「…レック、邪気が強くなってるわ」
「そうか。みんな、体力と魔力を回復してから行こう」
金髪の女性、ミレーユは階段の先を見据えながら言った。彼女の感知能力はとても優れているため、ボスが近いことが分かったのだ。
それを聞いたレックと呼ばれた蒼い髪の少年は、血が付いた剣を拭いながら言う。どうやら彼がリーダーのようだ。
「おう!」
「ええ」
「りょーかい!ほらみんな、ケガ見せて!」
亜麻色の髪の少女、バーバラが回復呪文の準備をする。
元気に返事をした武闘家の男、ハッサンは大きな裂傷がある腕を差し出した。
「魔力使い切っちまった」
「ハッサンは途中まで回復担当だったもんね。はい『ベホイミ』!」
「…おっしゃ!まあ、ここからは武闘家として『せいけんづき』で闘うぜ」
「僕も"僧侶"やっとけば良かったなぁ」
レックは"戦士"と"武闘家"を極め、現在は"バトルマスター"という回復要員から程遠い位置にいる。魔力もといMPも少ない職業だ。
ハッサンは"パラディン"を目指すために、早く成長する"僧侶"を極めた。だが現在の"武闘家"はMPが少ない職業であるため、早々になくなった。
「私が回復にまわるから、バーバラは攻撃に入ってもいいわよ?」
「ホント?やったね!」
ミレーユは職業につく前から回復呪文を覚えている。"踊り子"とはいえ"戦士"や"武闘家"よりはMPは高い。攻撃呪文は少ないことが難点だが。
バーバラは攻撃呪文を多く覚えている。"僧侶"はMPがとても高いため、今は外の馬車にいるチャモロと並んで、ボス戦などで回復担当となっている。が、彼女は攻撃のほうが得意だ。
彼らは薬草や食糧を食べながら体力を回復していく。どんな呪文を使ってくるかわからない敵が相手だ。万全の状態で挑む必要がある。
警戒を怠らず周囲の音に気を配っていると、少しずつ足音が近づいているのが聞こえた。
レックは指で合図し、念のために剣を抜いた。ハッサンも戦闘の準備は整えている。ミレーユとバーバラは、もしものために回復呪文と補助魔法の準備だけだ。
もしものためというのは、自分たちよりも強い敵か、冒険者という場合である。敵なら先手を取りたい。傷ついた心正しい冒険者ならば助けるということにしている。
足音がすぐそばの角まで近づいて止まった。気付かれたようだ。
敵か、冒険者か。扉を開けた後には誰だって入ることはできる。宝目的で、敵対する可能性が高いのは確かだ。
レックは脱力した状態で剣を握った。仲間モンスターを連れてこれば良かったと後悔する。
モンスターは鼻が効くため、モシャスをしている敵をすぐに見分けられるのだ。
とにかく問いただす。
「誰だ」
「…そんな殺気立つなよ。出にくいじゃねーか」
両手を上げたまま現れたのは、整った顔立ちの緑髪碧眼の少年。黄銅色の鎧"リフレクトアーマー"を身につけ、肩に"ドラゴンの盾"を引っかけている。腰には"プラチナソード"だ。"ふくろ"を手にしているが、他に何かがある様子はない。盗賊特有の気配もない。
どうやら人間のようだ。むすっとした表情から、不満が丸見えである。
レックはなぜか、少年を見て何かを感じた。警戒しなくてよい相手だと直感した。なんとなく、彼には感じるものがあった。それに、レックには人を見る目がある。自他共に認めるそれは、レックにとって最大の武器である。
そして剣を仕舞った。敵対心がない証拠を見せているのもあるが、直感を信じることにしたのだ。それを合図にハッサンたちも警戒を他に向ける。
「俺の名はソロだ。お前らは?」
「僕はレック。こっちはハッサン、ミレーユ、バーバラだ。ところで、なんでこんな所にいるんだ?」
「よろしく。実は"まほうつかいの壺"ってのを探してんだ」
「壺?」
「そ。なっかなか見つからねーんで、魔法使いの噂を聞いてここに来たんだ」
「一人で?」
「仲間いっけど別行動。早めに欲しいしな」
「…確かに強いようだけど」
「手に負えないって時は逃げてたから大丈夫だったんだよ」
発見する確率を増やすためか。一人で魔物の巣に突入は危険な行為だ。
キリッとした顔のソロに、レックたちは感心半分呆れ半分だ。見えていなかった時も強いと感じ取れたが、ここまでだと能天気にも感じる。状況把握に長けていることは理解できた。それだけの戦闘経験を積んでいるということだ。
彼らは知らない。ソロは単騎で"ある洞窟"を120階まで制覇したということを。
「お姫様のことは?」
「姫?」
「噂って、悪い魔術師がお姫様を閉じ込めているってのじゃないの?」
バーバラの問いに対し、ソロは首を傾げた。
「俺が聞いたのは『ここには悪い魔法使いがいるっていう塔があった』っていう昔話だったけど…」
「昔話…まさか」
「ミレーユ、どうしたんだ?」
「ねぇ、もしかして井戸に入ったの?」
レックたちが驚いてソロを見る。昔話ということは、もう下の世界には塔はないか、元々存在していないということ。だが上の世界は夢であり、信じる者がいれば存在する。
下の世界では、時々不思議な井戸がある。別の世界につながっており、神隠しされると恐れられているのが大半だ。
「ああ。旅の扉と同じ感じがしたからな。仲間には向こう側で活動してもらってる」
ということは彼は下の世界の住人ということになる。アグレッシブな人物だと把握した。
「で、先に行ってもいいか?悪い魔術師ってのがいんだろ」
ソロはジッと階段を見つめた。上から感じる気配に気づいていたのか、目つきがさらに悪くなった。
ハッサンたちはリーダーであるレックを見る。そういう判断はレックに任せているから。
「僕たちも魔術師に用があるんだよ。せっかくだし、一緒に行かないか?」
「…別にいいけど、お前らはいいのか?」
「おれはいいぜ。強いやつが仲間になるんだしよ!」
「あたしも!戦力は多いほうがいいわ!」
「私もいいわ。呪文が使えるんだったらお願いしたいんだけど、いいかしら?」
「別にいいぜ。"ベホマズン"と"ギガデイン"が得意だ」
「「「「え?」」」」
"ベホマズン"は仲間モンスターのホイミンとベホマンしか覚えていない上級回復呪文。職業で覚えるのは不可能である。
"ギガデイン"はダーマ神殿の職業で手に入るデイン系の呪文。最高職"勇者"しか覚えられない呪文だ。
「…職業は?」
「
「いや、リアルな職業じゃなくて。ダーマ神殿での職業だよ」
「だったら無職だ」
さらりと嘘をついた。ダーマ神殿の職業は"勇者"のままである。役目を果たした後でも、転職はできないままだ。
これらの呪文はソロ自身の才能である。Lv99になってから何度も何度も転生し、地の能力を底上げしたおかげで、"メラミ"もシャレにならない威力になっている。
トンデモナイ才能を持つソロに、レックたちは驚いた。
「回復は任せとけ。"ザオラル"も使えっから」
「強力な助っ人ができた…!」
ソロからすればレックのほうが生きる伝説である。遥か昔、"天空の剣"に別の名前があった時代の人間なのだ。ソロと違い、運命に選ばれただけの人間だ。それだけでなく、魔物さえも仲間にしている。カリスマ性はいうまでもない。
ソロは"プラチナソード"に手を添えて、階段を昇りながら考えた。
「(俺とは大違いだ)」
意地があってもいい。許せなくていい。あの人達のことを忘れないために。心をなくさないために。
ふーん、という気のない返事で終わる会話でアッサリと憎悪を認められた。
運命神は本当に興味があること以外には無関心なのだと実感した。
上にいたのはイカれた魔術師と、捕えられた姫。明らかに行きすぎた行為だと気づいた。
レックが魔術師のそばに行き、話しかける。
「お前がミラルゴか?」
「ん?」
振り返った顔は、まるで肥えた蛙のような豚のような。いや、蛙と豚に失礼だ。愛嬌のある動物に対して、相手は好いた相手を問答無用で閉じ込めるような屑。
ミラルゴはよく分からない薬を作りながらご高説を垂れた。
「くだらねぇ」
「…なに?」
「くだらねぇってんだよ。テメェの話なんざ関係ない」
「は?」
「俺の目的はその壺だ。テメェとお遊びしてる暇はねぇんだ。だいたいな、好きだったら姫さんの意思を尊重しろよ。その姫さんにあんな顔させるヤローが、幸せにするとか口にすんな」
ソロはそう吐き捨てて剣を抜く。
好いた女に庇われたソロにとって、恋や愛はとても尊く、時として残酷なものと知っている。好きな相手は護る。大切に想うなら護る。
それが当たり前だと言い捨てられる経験を積んできた。
綺麗事を吐いてるのは重々承知している。だがソロは役目を果たしても勇者だ。綺麗事を吐いて非難される謂れもなければ、それを有言実行する力も意志もある。
「くっ…貴様に何がわかる…!そのように恵まれた容姿を持つ貴様ごときが!」
「わからねぇな。テメェみてーなクズの気持ちなんざ興味ないんでね」
ミラルゴは変形して魔物の姿をとった。
レック達は素早く戦闘態勢に入る。ソロの挑発は成功し、ミラルゴの攻撃はソロに集中している。回避率はソロが圧倒的に上なため、通常攻撃は全て避けているようだ。
ソロが気を引いている間に、レックとハッサンは"きあいだめ"をした。ミレーユは"フバーハ"をかけて、バーバラは"スクルト"を唱えた。
ソロが位置をずらしたと同時に、レックとハッサンは一気に距離を詰めた。
「「『せいけんづき』!!」」
"きあいだめ"のおかげで更にダメージが追加されている。
呻き声をあげて態勢を崩したミラルゴは、仲間として"ランプのまじん"を二体呼び寄せた。バーバラが急いで"マホカンタ"の準備に入る。
ランプのまじんAが"バギマ"を仕掛けてきた。
ソロがレック達の前に出て、詠唱破棄して高速で呪文を唱える。
「『マホステ』」
風の刃は霧の中に消え去った。ランプのまじんBも攻撃を加えようとしたのを見たソロは、次の呪文を唱えた。
「邪魔だから寝とけ。『ラリホーマ』」
あっさり眠らされた二体は崩れ落ちた。二体以上の仲間は呼べないようで、ミラルゴは次の呪文を用意していた。
"マホターン"と"ベギラゴン"だ。これで攻撃は物理のみとなった。
『ハハハッ!わしの呪文はどうだ?』
"ベギラゴン"によりHPが一番少ないバーバラが瀕死状態になる。全員に大ダメージだ。まだまだレベル不足の彼らにとって、上級閃光系呪文はキツイ。
さらに厄介なことに、ソロの装備がここに来て効果を発揮した。"ベギラゴン"をはね返したものの、"マホターン"でまた返ってきたのだ。2回もやられたら死んでしまう。
「『マホステ』!そして『ベホマズン』!」
もう一度呪文を唱える。さらに全体全回復をすれば、ここからはレック達のターン。
回復したレックとハッサンは再び"きあいだめ"をする。
呪文攻撃は無理に出来ないため、"スクルト"をミレーユとバーバラの2人掛かりで唱えた。
ソロはそれを確認した後、呪文を準備しながら2人に駆け寄る。
「あいつらが攻撃した後、俺があの壁を消す。その後お前らが最大限の呪文攻撃をしろ」
「消すって、"いてつくはどう"でもあるの?」
「どっかの魔王サマなら出来たが、俺はムリだ。が、代わりがある」
レック達の"せいけんづき"が命中したのを見て、ソロは用意していた呪文を唱えた。
とても懐かしく、久しく使っていなかった呪文だ。使えば経験値が手に入らないことに気づいてからは、己に厳しくするために一切使うことがなかった呪文。
「『二フラム』」
邪悪なものを消し去る呪文。ただしレック達には一切効かない。ここに仲間モンスターがいなくて良かった。
聖なる呪文をはね返して役目を果たした壁は消え去り、無防備な魔術師がすぐに呪文を唱えようとした。
それを逃す彼女らではない。
「「『メラミ』!」」
残り少ないMPではこれが限界であった。だが効いている。あと少し。
ソロは眠っている魔物を見て、そろそろ起きる頃だと気付いた。全体攻撃ができる呪文を唱えた。
勇者や数種類の魔物のみが扱える攻撃呪文。中級電撃系呪文。今この場で使えるのはソロのみ。
「『ギガデイン』」
ソロの前に出来た魔法陣から雷電が放たれた。全体的に放たれた呪文は"ランプのまじん"2匹を焼き尽くした。ミラルゴはまだ倒れない。
ソロは舌打ちして少し茫然としたレックを呼んだ。
「レック!」
「っああ!」
いくら転生をしようと、MPはこれ以上上がらない。ソロは"ベホマズン"のためにMPを節約している。すぐに必要になりそうな呪文の用意に入った。
物理はレックとハッサンの得意分野。再び"きあいだめ"をしてから"せいけんづき"を食らわせにかかる。
それに対してミラルゴは"ベギラゴン"を唱えた。
「「『スカラ』!」」
ミレーユとバーバラはレック達の守備力を高めた。ソロも攻撃に加わった。
「とりあえず、その腕もらうぜ!」
ソロは杖を持っているほうの腕を斬り落とした。杖がなくとも呪文は唱えられるが、一瞬の焦りが生じてしまった。
その隙をついてレックとハッサンが攻撃した。
「「『せいけんづき』!」」
トドメの一撃。
ミラルゴは崩れ落ちて、魔物と同じように消えていった。
「…終わったのか」
「あ、鏡姫は!?」
「…き、消えちゃったの?」
「いいえ、下の大地にいるはずよ。今すぐフォーン城へ行きましょう」
ミレーユの声に3人とも同意して"リレミト"を唱える。その前に、レックはソロに尋ねた。
「ソロ、これからどうするんだ?」
「ん?この壺を持って仲間と帰る」
「…じゃあもう会えないのか」
「いや、そうとも限らねーぞ」
「え?」
「旅してるわけだし、どこかで会えるだろ」
この先様々な"世界"で起こるだろう事件を運命神は知っている。
それに対抗するために戦力を集めていることも。
どういう風に戦うつもりなのかも。
本当のことを言わずに、まるで気遣うように、または明日の天気を言うようにアッサリと言った。
「またな」
レック達が消える瞬間に、それだけ言った。次に会うのはおそらく闘技場だ。俺たちは勇者として、先人として力を奮うことになるだろう。
初代勇者を見送って、何代か先の勇者はこれからの運命を想った。
だがすぐに頭を切り替える。
立ち直るとか、すぐに別のことを考えるのは得意な方だ。
ソロは目的の壺を見上げた。デケェ。
「……これを持って帰るのか」
どうやって持って帰れと言うのか。ふくろに入るはずもない。いくら四次元につながる不思議な袋だからといって、それはない。
紐でくくって引きずるとか、アレスと一緒に持ち上げてとか、色々考えた末に思いついた。
「そうだ。なんで俺は『手に持って』帰ろうとしていたんだ」
ここまで大きいのを持ち帰るのに、そんなリスクは犯したくない。
ならばどうするか。こうするのだ。
空間操作系呪文。
「『ルーラ』か…?」
指定するものごと移動する呪文だ。考えてみると、"ルーラ"ではいつも船も馬車もついてきていた。
と、いうことはだ。
"ルーラ"は一度行ったことがある場所ならば使い手、その仲間、所有物なども運べる呪文である。
"まほうつかいの壺"はもうミラルゴのものではなく、ソロのものだ。
「まあ、ダメなら他の世界に行くか」
そう言ってアレスと合流するために壺に触れながら"リレミト"を唱えたのだった。
結果として。
予想通り、"ルーラ"で持ち帰ることができた。
残りの材料を集めるために"破邪の洞窟"へ向かおうとするソロとアレスを、運命神は「連れて行ってほしいやつらがいる」と、ソロからすればデジャブを感じるセリフを言って止めた。
「よろしくね!」
「よろしくお願いね」
「へ!?」
「は!?」
彼女達が参戦するとは思ってなかった。
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ここは運命神が一から創造しているDQMB系列の世界である。徐々にではあるが小さな町や国ができており、中心となる神殿の周囲にはなぜか屋台がある。
白亜の神殿の奥にある和洋折衷の建物は、創造神である運命神の寝室である。
その日、神殿中に運命神の叫びが響いた。
「敵が増えたァアアアアアアアアアアアッ!!!」
鏡の前で叫んでいる彼(格好が男のものであるから『彼』とする)こそが、"運命神"フェイトである。
練金窯の材料を手早く集め終えた彼は、他の世界も確認しておこうと鏡を取り出した。そして見た世界でトンデモナイ結果を見た。
「ヒーローズ1,2は苦手なんだよぉ…。立体的なの酔うからあまりやってなかったのが仇となった…」
情けない弱点が暴露されてしまったが。
"世界"は今も増え続けている。ほとんどが並行世界だが、それらはどうせすぐ自然消滅していく。それが普通のことである。
だが主軸世界は違う。それは決して消えることはない"世界"だ。忘れ去られようとも、生き物が絶滅しようとも、消滅することはない。
このヒーローズ世界も主軸が誕生したということだ。
「いや、でも…DQH1と2の技術があれば、たくさんの人間や魔物を招くことができる…」
ナンバリングのキャラが助っ人として登場するのだ。素材だけでなく武具も道具も、人間も魔物も呼び放題だ。改めて字にすると危険すぎるような気がしてきた。
本当に人材不足が深刻化している。神がこんなことを考えるくらいには。
「確かヒーローズって世界を超えて影響を与えられるほどのラスボスがいたよな…」
天敵とも言える相手だ。
世界を超える権限を与えられているのは神鳥ラーミアのみである。
「うぁああああ……。とりあえずソロ達が帰ってきたら、招待状を配りに行ってもらうか」
ソロとアレスは練金レシピをかき集めに行っている。練金しようにもレシピがなければ何も分からない。
ついでに別世界のモンスター図鑑を完成させてくるらしい。大量の"宝の地図"を持っていったところを見ると、おそらく半年程はいないだろう。
「あいつらもすぐに戦力になるだろうし」
洞窟に行っているのは新入りの2人。余裕で150層まで行くかもしれない。そんな期待を抱いてしまえる力を、2人は持っている。
大賢者と呼ばれた一族の末裔と、勇者の血を引く始祖。
「……バトルロード中に修羅場が起きそうなメンバーが多いような」
まあ、それもご愛嬌ってことで。
現実をすぐに受け入れられない、そんなところも人間らしさだと思うから。
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