魔法少女リリカルなのはAnswerS ~共に歩んだキミの答え~ 作:アチャコチャ
無気力な思考と気だるい身体とは裏腹に心地良い浮遊感がオレを包んでいた。
何でこうなっているのかとか、どうしてだとか思い出そうとしてみるがさっぱりだ。
「お~い」
いや、そもそもそれ以前の問題か。最近のことなんて何にも覚えちゃいない。
「やほー」
そのくせ“あの日”のことは夢に見るくらいハッキリ覚えてやがる。
「もしも~し」
…あぁ、余計な事、思い出してしまった。
何にせよ、どうでもいいことだ。
現在(いま)の事も。
過去(いままで)の事も。
オレにはもう、どうでもいい。
「…………(すぅ)」
そう。
諦めてしまったオレにとっては…。
「聞けえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「!!?」
ごすっ、という鈍い音と共に頭に激しい痛みが走る。
その衝撃に思わず目を開くと一面に少女の顔があった。
―正直ビビった。
目を開けたら人の顔だなんて一種のホラーものだ。
驚愕のあまりに思考が止まっていなかったら不様に叫んでいたかもしれない。
「あ、やっとこっち見た」
頭の上から覗き込んでいる少女がにへらっ、と表情を崩す。
「…きみ、は?」
言葉が漏れる。
先程まで感じていた倦怠感もいつの間にか消えており、自然と唇が動いた。
「見て分からない?」
分からない。そもそも何を分かればいいのかも分からない。
分かることといえば目の前の少女が金髪ツインテールで瞳は紅。いたずらっぽい表情が似合う活発系の女の子だろうということくらいである。
さらに言うなら、その額が赤くなっていることから先程の衝撃はこの少女の頭突きによるものであり、あれだけの頭突きをしてもケロリとしていられる程の石頭の持ち主であるということくらいだ。
「ワタシはね~♪」
何て考えていたら少女がニコニコとしながら喋り出す。どうやら答えを言ってくれるようだ。
「美、少~~女、だ!!\(^O^)/」
・
・
・
「あり?なーんか、反応薄くない?ほら、美少女だよ。美×少女=美少女さんですよ。ほらほ―」
無気力な思考と気だるい身体とは裏腹に心地良い浮遊「ちょちょちょ、ちょ、まっ、待って待って!」何でこうなっているのかとか、どうしてだとか「だから、待て~!すとっぷ ざ りせっとーー!」
ゴスゴスゴス、と連続で頭突きをかましてくる自称美少女。これ以上されると額が割れそうなので仕方ないからやめてやる。
「むぅ、美少女にこんな仕打ちが許されるとは。昨今の世の中では美少女補正は効かないのか…!」
ブツブツと呟きながら、何やら戦慄している美少女(仮)。つか美少女と言うより、美幼女だろう。
…話が逸れた。
「で。結局、キミは誰?それでここは何処?」
ぶっちゃけ、どうでもいいという心境は変わっちゃいないが目の前の女の子は放置したらかえって面倒な事になりそうなので仕方なく現実と向き合うことにする。
「ひょっとして、ワタシの美少女レベルが足りてなかったり?いや、しかし、ワタシの妹は屈指の――、って、うん?」
一人でトリップしていた少女はこちらの問いかけに気付いたのか、小首を傾げている。
「いや、だから、キミは誰で、ここは何処だと…」
「あーッ、うんうん!そうだね!っていうかそうだよ!そのことについて教えてあげようと思ったのにキミが無視するから話が拗れたんじゃないか~。責任とれ~!」
…悪かったな。話しかけてもかけなくても面倒くさい奴だとは思わなかったんだよコンチクショウ。
「むぅ、いまいち反省してるようには見えないっていうか、むしろ失礼なことを考えていそうな感じだけど、ま、いっか。それじゃ「それについてはオレが教えてやる」って、え?」
不意に少女の声に被さるように別の人間の声が聞こえてきた。
少女も予想外だったのか驚いた顔をしており、そのまま二人で辺りの様子を伺ってみると、オレと少女がいる位置よりも少し上、何もない中空に腰かけるように浮かんでいる一人の男の姿が目に入った。
「よぉ。思ったより元気そうだな。こんな自体は初めてだったからチョイとばっか不安だったが、結果オーライってとこか」
男がこちらに向かって話しかけてくる。表情は…見えない。
この空間自体、薄暗いところであるがそれでも相手の姿が見えない程じゃない。だが男の顔の部分だけ不必要に暗闇が濃くなっている。
「それで?アンタは?」
色々疑問は残るがそれらはひとまず置いておき、男の正体を尋ねる。
「見て分かんねぇか?」
―流行ってるのか、コレ?
「神だ」
「わかるかあぁぁぁぁぁ!!!」
と、ツッコんだのは隣にいる美少女らしい物体。
自分のしたことを棚に上げて、神と名乗った男に向かって拳を振り上げ喚いている。
「うるせぇ」
ごもっとも。
「そこはぶっちゃけどうでもいいんだよ。とにかくオレが神なんだよ。納得しろ」
隣の美少女?といい、この神様らしい男といい、会話に疲れる奴しかいないのか?この不思議空間は。
「オーケー、お前は神様。こっちのが美少女。理解した。そんで?神様と美少女がオレに何の用だよ。それとここは何処だ?まさか、あの世とか言わないよな?」
「その通りだ」
「すご~い。よく分かったね!」
…………
(キョロキョロ)
「夢のカケラもない場所だな」
「あれ?予想外の反応。もっと驚いたりすると思ったのに」
「別に…」
死んだのなら、それはそれだ。それに死んだのなら彼女に…。
「――――」
頭を振って、脳裏に浮かんだ考えを振り払う。
何を考えているんだか。
そもそも、今のオレに彼女に会う資格なんてない。
「正確には、あの世と現世との境目といったところだかな。大丈夫なようだし、本題に入るぞ」
物思いに耽っている間に神様が話を進めていた。
…ん。ちょっと待て。
気になることがあり隣の少女に問いかける。
「あっちが神様でオレが死人だっていうなら、お前も…?」
「ソイツは成仏できていない魂のひとつさ。時折、そういった魂がここに迷い込んでくることがあんだよ」
答えたのは神様の方だった。
少女はというと先程とはうって変わって曖昧な表情でいる。
「話を戻すぞ。実はオレが管理する世界で重大な異変が起きてな。それを修正する為に上位世界の人間を転生者として送り込もうとしたんだがな…」
「上位世界?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返す。
「読んで字のごとく、だ。問題が起こった世界より上の世界――、端的に言えば、その世界を漫画やゲームのように捉えることができる世界だ。世界そのものの異変だからな。上位世界の魂でもないと干渉出来ねぇんだ」
なるほど。
「理解できたか?それでこのままだと世界がヤバいことになりそうなんで、今言った通り転生者を送り込んでその異変を修正して貰おうと思ったんだが、ここで問題が起きてな…」
問題?
「ぶっちゃけると、お前死んでねぇんだわ」
「……は?」
死んでない?
「恐らくお前の身体は原因不明の昏睡状態か仮死状態になっているはずだ」
「どういうことだよ。オレは死んだからここにいるんじゃないのか?」
「本来ならそうだ。上位世界で理不尽に死んだりした人間の魂をランダムでこちらの世界のこの場所に召喚して、ここから現世に送り込む」
「なら矛盾してるじゃないか」
オレは死んでなかった訳だし。
「だからそれが問題ってわけなんだよ。本来の手順に則って召喚したのに何故か生きているお前が引っかかって召喚されてきたわけだ」
―つまり。
「オレはお前(神様)に間違いで殺されたのか!」
ひでぇ。生き死にはどうでもいいとは言ったが、間違いで殺されたとかあんまりだ。
「別に死んじゃいねえって。事が済んだら戻してやる。つか、お前も悪いんだぜ?生きている癖に其処らの死人より死人らしかったんだからよ」
このヤロウ。間違って人を殺しておいて何て軽薄な態度だ。
…最後の死人より死人らしかったというのは否定できないが。
……うん?
『事が済んだら』?
「ちょっと待て。今の話をまとめるに、お前はオレにその世界の異変とやらをどうにかさせるつもりか?」
「そうだが?」
「―ムリだ」
「何だ?能力的な事を言ってんのか?なら安心しろ。転生者らしくきちんと能力特典を―」「そうじゃない。オレは―、誰かを救えるような人間じゃない。まして、世界そのものをどうにかなんて―」
思い出すのは「あの日」より前の光景。
白い病室と白いベッド。
そこに向かう無力なガキとそれを迎える――。
そこまで思い出して慌ててその光景を頭の隅に追いやる。
「…ふむ。 転生に際して、ある程度お前の情報を得ている。そこから、お前の心情は察する事ができるが…」
「なら、分かるだろ?オレはできなかったし、『なれなかった』んだ」
救う事も。
そうなる事も。
そんなオレが世界を救う?
笑い話にもならない。
「さっさと新しい転生者ってのを喚ぶんだな」
「生憎と転生者の複数召喚はできねぇんだわ。だから、お前が死んでゲームオーバーにならない限り再召喚は不可能ってわけだ。まぁ、普段は死んだらそこまでだが、お前の場合は元の世界に戻れるわけだし、イヤならさっさと死んで来ればいい」
「いくら大丈夫だと分かっていても、そんなホイホイ死ねるわけないだろ」
生きている以上、死に対する恐怖は本能だ。どうしたって『もしも』の事を考えて躊躇ってしまう。
「それにオレが失敗して、結果、その世界が滅んだらどうするんだよ?」
「その時はその時だ。まぁ、成るように成るだろ?」
…分かってはいたけど、やっぱコイツ、神様とは思えない。
「冗談はさておき、お前がやってくれると、こちらとしては助かる。ぶっちゃけ再召喚とか手続きがめんどくさいんだよ。書類作成とか」
悪いけど、そういった事は黙っててくれないかな。何かこう、夢とか希望とかそういったものを信じる少年の心ってヤツをバキバキと壊されていってる気分なんだよ。
「巻き込むカタチになってしまったから無理にとは言わねぇが――。だが、お前とて、このままでいいとは思っていないだろ?」
何気なく紡がれた言葉。
だが、その一言に。
ドクン、と脈打つ想いがあった。
同時に、先程、隅に追いやった光景が再び脳裏に甦る。
―もし、私に間に合わなくても、絶対に――
―キミなら、きっと――
―じゃあ、約束。私が――
次々と浮かんでは消える、かつての言葉。
それは裏切ってしまった彼女の想い。
「オレは―」
言葉が続かない。
燃え残った小さな火の様な感情が胸の奥で燻ってる反面、氷の様な冷たい感情がじわじわと染み出る。
無駄だ。
何の意味も無い。
例え約束を果たしても、その先に彼女はいない――。
その通りだと思う自分がいる。
どんなに頑張っても本当に叶えたい願いは、もう、叶わないのだから。
分かっている。
「イヤか?なら――」
「いや―」
分かっている、はずだった。
「やって、みるよ」
考えも何もまとまっていない。
答えなんて出ていなかったのに、そう口にしている自分がいた。
「そうか…。いいんだな」
「ああ」
さっきまでからは想像もつかない神妙な態度で聞き返され、思わず苦笑する。
「よしッ!なら早速、能力特典の方を―」
そう言って、神様はオレの方へ手を翳す。
「お前が、使えそうな能力は―、そうだな。こんなところか?」
ぼんやりと翳された手が光り、同時に何かがオレの中に入ってきた。
コレは…。
「FATEの?」
どうやら生前(っても死んでないが)、ハマったメーカーのゲームの一つである、FATEに関する能力を使えるようになったようだ。
「能力の使い方も一緒に送っておいた。後は現地で試してみろ」
神様がそう付け加える。
確認してみると確かに能力についての知識もあるし、集中すれば頭の中にFATEのステータス画面のような感じで更に詳しい情報が記載されていた。
大丈夫そうなので神様の方へ視線を戻しすことで、その意思を伝える。
「よし。なら、今から現世に送るぞ。…まぁ、あれだ。頑張れよ」
「ああ、…やれるだけ、やってみるよ」
「ヨ~シッ!ハリキってイッてみよー!」
「「ちょっと待て」」
オレの声と神様の声が重なる。
というか、妙に大人しかったこともあって、すっかり忘れていた。
神様と二人、金髪ツインテールの少女に視線を移す。
「どういうつもりだ?」
「決まってるでしょ?ワタシも行くの!」
なにやら自慢気に胸を張って、そう主張する少女。
「ムリだな。転生者じゃない、純粋な死者の魂を送ることはできない。大人しく成仏する瞬間が来るのを待ってろ」
「イヤ!行くったら行くの!」
聞く耳持たず、といった風に癇癪を起こす少女。
呆れて、オレも何か言おうとした時だった。
「お願い。連れていって」
子供とは思えない声音と表情に口まで出かかった言葉を飲み込む。
「助けたい人がいるの」
そのままの声と表情で少女は続ける。
「ワタシのせいで悲しんで苦しんでいる人がいるの。ワタシはその人を助けたい――。だから、お願い!連れていって。何でもするから!」
その真摯な願いに、どう答えたらと言葉に詰まる。
「さっきも言った通り、お前を現世に送るのは本来不可能だ」
黙るオレの代わりに答えた神様の言葉に少女の表情が歪む。
「だが、ソイツに送った能力を分ければソレを楔に、お前も一緒に行けるかも知れない」
続く言葉に少女の表情が少しだけ明るいものに変わる。
「とはいえ、あまりオススメはできないがな。どんなデメリットが起こるか分かったもんじゃねぇし」
決めるのはオレじゃねぇけどな、と締めくくり神様はオレを見る。
少女もオレに視線を移し、懇願するように見上げてきた。
そして、年端もいかない少女にそんな風に見つめられては断れる訳もなく――。
「…やってくれ」
「ん?マジで?」
「マジで」
何より先程の言葉――。
―助けたい人がいるの。
ソレを果たせなかった人間としては、その願いを叶えてやりたいと思った。
「~~ありがとう!!」
少女が目の端に涙を浮かべながら、満面の笑顔で抱きついてくる。
正直、照れくさい。
「そんじゃま~。そういう訳で、今度こそいくぞー」
神様がそう言うと薄暗い空間が輝き始め、視界が白に染まっていく。
そこでハタと気付く。
「そう言えば、名前を言ってなかったな」
未だに抱きついている少女にそう言うと、少女は顔を上げてこちらを見た。
「オレは神崎ゼン。ゼンでいい」
先に名乗ると少女も笑顔で自分の名前を口にする。
「ワタシはアリシア!アリシア・テスタロッサ!」
ソレを最期に視界は白で埋め尽くされ、オレの意識も薄れていった――。
小説の編集の仕方が今までと勝手が違うので慣れるまで更新が遅くなりそうです。…慣れても亀更新かもしれませんが。