魔法少女リリカルなのはAnswerS  ~共に歩んだキミの答え~   作:アチャコチャ

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それは本来なら魔女のオプション

 あの不思議空間で目覚める時に感じたのと同じような浮遊感。

 それがオレの意識を取り戻させた。

 だが、今回はそのまま浮遊―、何て事はなく。

「ッテ!」

 地面より少し高い位置に放り出されたオレは重力に従い、そのまま落下した。

 幸い地面が柔らかい草地だったので、それほどの痛みは感じなかった。

「ったく、神様の奴も、もうちょっとマシな跳ばし方をしてほしいもんだ」

 愚痴をこぼしながら立ち上がり、パンパンと服を払う。

 ―その時、ふと、違和感をおぼえた。

「あ…れ?」

 服を払った両手に視線をやる。

 オレの手、こんなに小さくなかったよな?

「それに…」

 この声。こんなソプラノヴォイスじゃなかった!

 さらに、目線の位置。これも、もっと高かった!

 ―Q。つまり?

 ―A。小さくなっています。

「って、マジか!何だ、コレ!?」

 いや、転生という以上、確かにこういうこともあるかもしれないが、年齢設定が半端じゃないか?赤ん坊からやり直しとかならわかるが…。

 ひょっとして、これが神様のヤロウが言ってたデメリットってヤツか――、って、そうだ。

「アリシアは?」

 一緒に現世に跳んできているはずだが、その姿が無い。

「アリシアー?」

 声を上げて、周囲に呼びかけてみるが返ってくる声は無い。どうやら離れた場所に跳ばされたらしい。

「仕方ない…」

 迷子になった訳でもなし。ここでじっとしている意味もないので、探しながら人気のある場所へ向かおう。

 人がいれば聞き込みもできるし、最悪、探すのを手伝ってもらえる。

 それにここが何処なのか分からない以上、やはり少しでも情報を集めないとならない。

「よし…!」

 とりあえずの方針を決め、気合いを入れ直す。

 小さくなった身体は若干動かす時に違和感を感じるが、それも歩いていればいずれ慣れるだろうと考え、オレは歩き始めた。

 

>>>

 

 歩き始めて十分と少し。

 どうやら跳ばされた場所はどこかの林の中だったらしく、途中で林道のような舗装されていない道を見つけたオレは、闇雲に動くよりは、とその道に沿ってひたすら歩いていた。

 その間も、アリシアの名前を呼びながら周囲を探しているのだが、あの金髪ツインテールの姿はおろか他の人間の姿すら見当たらなかった。

「そうとう人里離れた場所にでも跳ばされたのか?」

 ―いや。そもそも、ここは日本…、地球なのか?

 神様は「オレの管理する世界」とはいったが、それが地球とは言ってない。

 ひょっとしたらここは異世界で、住んでいる奴らも映画でみるエイリアンみたいなのかもしれない。

 そうなっては聞き込みどころではない。エンカウントした瞬間、

「すみません。お聞きしたい事が―」

「オレサマ、オマエ、マルカジリ」

 DEAD END。

 何てことにもなりかねない。

「………」

 いやいや、待て待て。

 そういった時の為に、神様から能力を貰ってるんだろう?

 だから、大丈夫。…きっと。…多分。

 何てことを考えていたら、いつの間にか、かなりの時間が経っていたらしい。林の中から見る空の端がわすがに朱を帯び始めている。

「まずいな…」

 日が落ちてしまったら、単独でアリシアを探し出すのはより困難になる。

 さらに、今のオレは子供だ。遅い時間になれば、「迷子を探してます」って言ったオレが迷子扱いされてしまう。

 そうなる前にアリシアだけでも見つけておかないと。

「と言うわけだから、とっと出てこーい」

 徐々に茜色の色彩が強まる世界にオレの声だけが木霊する。

 反応が無いことに嘆息しつつ、周りの茂みや木陰を注視しながらアリシアの名を繰り返し叫ぶ。

 何処とも知れない場所でただ一人、少女の名を子供になって呼び続ける。

 冷静に考えれば、今、自分はかなり異様な体験をしているんじゃなかろうか?

 気が付いたら、よくわからない不思議空間に神様らしき人物と美少女と豪語する少女と三人きり。

 そして、世界の異変を止めろと言われ、了承するやいなや、一瞬で別の知らない場所に放り出されている。

 時間にしてみるば三十分も経っていないだろう。

 その間に不思議空間や瞬間移動?といった普通じゃ考えられない体験をしている。

 にもかかわらず。

 オレの頭も心もありえないくらい落ち着いていた。

「いや、違うか…」

 落ち着いているんじゃない。

 投げやりになっているだけだ。

 どうでもいいことだと。無意味な行為だと。

 今の自分を嘲笑するオレがオレの中にいる。

「…………」

 それを無理に否定しようとは思わなかった。

 背負っていたものの重さの分だけ、それを捨て去る諦め(チカラ)も重みを増す。

 気持ちの有り様が少し変わったくらいでは、この胸にある氷のような感情は溶けたりしないだろう。

 だが、新たに生まれた想いとてホンモノだ。

 戸惑いながらも、もう一度前に進もうという気持ちも。

 かつての自分と似た想いを背負った少女を助けてやりたいという気持ちも。

 決して偽りではないのだ。

 ――折り合いをつけていくしかないのだろう。

 少しずつ。少しずつ。

「さしあたっては、アリシアを見つけることなんだか…」

 探し始めて、随分と時間が経つ。

 いくら離れた場所に跳ばされたとしても、跳ばされる前には一緒にいた以上それほど距離が離れるとは思えない。

 さすがに何かあったのではと不安になってきた時だった。

 

>>>

 

 日が完全に落ち、辺りが薄闇に包まれた瞬間。

 まるでそのときを待っていたかのように、ソレはドクンッと胎動した。

 鼓動のように続く振動。

 同時にキィィィッ、と耳障りな不協和音を響かせる。

 ソレは石だった。

 子供の掌にすら収まりそうな小さな石。

 その石は鼓動のような振動と金切り声のような高音を繰り返した後―、爆発したかのように発光した。

 そして、現れる。

 最初は染みだった。発光する石の中にできた小さな染み。

 次いでそれは石を包む炎のようなモノに変わり―、発光が終わる頃にはゆらゆらと揺らめく物体に変わっていた。

 果たしてその存在を生命と呼んでいいのかは分からない。

 しかし、その存在には意思があった。

 ギョロッと見開いた赤い両眼が、目の前の物体を捉える。

 目の前にいたのは小さな子供だった。

 自身にくらべれば取るに足らないくらい小さな少年。

 だが石から生まれたその存在は、少年の中にあるご馳走(魔力)を正確に見抜く。

 そして。

 その生命なき物体は獲物と決めた少年を見据えると、咆哮し踊りかかった。

 

>>>

 

 あまりに突然の事態に呆然となる。

 いきなり肌に振動が伝わるや、耳に生理的嫌悪感を及ぼす音が響き、目が眩む発光がしたかと思えば、目の前に急に現れた黒い生き物のような物体がオレに一直線に飛びかかってきた。

 その突進を回避できたのは奇跡に近かった。

「つか、何だよ。コイツ」

 いきおいがありすぎたのか、ソイツはオレの後ろにあった樹にぶつかり、大きくめり込んでいた。

 その姿はやはり異様だった。

 デカい毛玉のようでいて、うねうねと動く身体は軟体動物を思わせる。

「ペルソナのシャドウみてぇ」

 その姿は元いた世界で、ゲーマーな友人が見せてくれたゲームの敵シンボルにそっくりである。

 コイツが異変なのか?それとも―。

「まさか、本当にマルカジリ系の住民がいるのか!?」

 そんな軽口を叩きつつ―この状況下でそんな余裕のある自分に驚きと軽い苛立ちを覚えつつ―何とか身動きが取れるようになった化物を凝視する。

 コイツが異変であるにせよないにせよ、見過ごすことは出来ないだろう。

 ここの住民は分からないがアリシアには明らかに危険な存在だ。

 現実世界に跳ばされて、さほど間を置かずエンカウント。

 少々作為的なモノを感じなくもないが、まぁ、今は置いとこう。

 化物に視線を固定したまま、意識を自分の内側に向ける。

 オレが神様から貰った能力はシンプルなもので、第五次聖杯戦争で召喚された七騎のサーヴァントの能力を使えるというもの。

 しかも憑依経験により、そのサーヴァントが培ってきた戦闘技術も自分のモノになる。

 平たく言えば、能力使用中は素人でもサーヴァントと同等の戦闘力を発揮できるというものだ。

 意識を集中させる。

 能力と共に付与された知識(マニュアル)によって、昔から使っていたかのような感覚がある。

 そして、いざ能力を発動させようとした時、それは起こった。

「――え?」

 能力が発動しない。

 確かにきちんと発動した手応えはあったのに発動されていない。

 再度、発動を試みるが結果は同じ。

 嫌な予感が身体を駆け巡る。それを確認するため、頭の中に能力のマニュアル画面を展開して、確信した。

 不思議空間では確かに読めたマニュアル画面。

 だが今、それは文字化けを起こし、無意味な記号と数字の羅列となっていた。

 それが意味すること。すなわち―。

 デメリット。

 その言葉が脳裏に響く。その次の瞬間―

「右に避けて!」

 突如響いた声にハッとなって、言葉通り右に避ける。

 一瞬前までいたその場所を黒い影が弾丸のように駆けていった。

 助かったことに安堵しつつも、後一瞬遅ければ直撃を受けていたという事実に冷や汗が流れる。

 危険を教えてくれた人物に感謝しなくては、と思ったところでその人物の声が探し人の声に酷似している事に気付く。

「大丈夫?」

 後ろから声をかけられる。

 先程と同じ声。間違いない。アリシアの声だ。

「ああ、助かったよ。ありがとう、アリ―」

 背後を振り返りつつ、感謝の言葉を口にしたオレはその光景に言葉が詰まってしまった。

「…………」

「…………」

「アリ…シア?」

「うん」

 絞り出したオレの問いにアッサリ頷く。

 アリシアなのは間違いないらしい。

 だが、その姿はここに跳ばされる前の金髪ツインテールの少女の姿ではなく―

「なんで…、黒猫?」

 黒い毛並みの子猫の姿だった。

 

 

 




どれ位の文章量が丁度良いんだろうか…
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