魔法少女リリカルなのはAnswerS  ~共に歩んだキミの答え~   作:アチャコチャ

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な、長かった…


インスタント・ヒーロー

 自分から少し離れた場所でひっくり返るように倒れている異形を見据えながら、オレは今、自分が何をしたのかを振り返っていた。

 あの瞬間―。

 アリシアと手を重ねた瞬間、世界が変わった。

 知識が、技術が、感覚が、本能さえも書き換えられ、別人になっていく様な奇妙な感じ。

 時間にすれば一瞬、しかし、とても長く感じた一瞬を超え、オレの瞳に映ったのは神崎ゼンの世界のではなくアーチャー・エミヤの世界だった。

 その世界に飛び込んで来る異形。

 高速で突っ込んで来るその異形を。

 

 研ぎ澄まされた感覚が捉え。 

 

 鍛え上げられた本能が身体を動かし。

 

 積み重ねられた経験が手段を選択し。

 

 精練された技術が捌いた。

 勢いをそのままに、まるで風が吹き抜けていく様を思わせる剣技と体捌きが異形を遠くへ弾き飛ばす。

 一朝一夕では決して叶わない、才能という原石を持たない者が鍛練に鍛練を重ねて得た一つの芸術。

 当然、神崎ゼンの記憶にはそれらの技術を得るために積み重ねてきた過程がない。

 しかし、身体には知識と技能という結果がある。

 記憶は現状を否定し。

 身体は現状を肯定する。

 もちろん、どうして自分にそんな技術が備わったのか理解はしている。

 だが、本能的に戸惑っている自分もいる。

 記憶と身体のアンバランスさ。

 そこから来る違和感。

 正直、心地よいとは言えない奇妙な感覚ではあるが―。

「…悪くない」

 視野が広がる。世界が広がる。

 知らなかった事を知り、出来なかった事が出来る。

 まるで狭い部屋の中から外に出た時にも似た解放感。

 それは奇妙な感覚を伴っていても尚、悪くないと思わせるものだった。

≪ふむふむ。ほうほう。これが世間一般で言われるところの『合☆体』っていうやつか~。なんか変な感じ~!≫

「アリシア?」

 聞こえてきた少女のどこまでも明るい声に思考を断ち切られたオレは、その声の主を探して首を廻す。しかし、いくら周りを見渡しても半透明な金髪少女の姿はもちろん、黒猫の姿も見えない。

「どこにいる?」

≪貴方の後ろ…、と言いたいところだけど正解は貴方の中にいま~す!≫

 呟くように漏らした問いの答えは耳の奥、自分の内側から響くようにしてもたらされた。

「オレの、中?」

≪正確には憑依とか意識の混在だとかになるんだろうけど、細かい事は言いっこ無し無し! ほら、あそこに転がってる奴もそろそろ動きだしそうだよ?まずはそっち、片付けよ?≫

 色々気になるところではあるが、アリシアの言い分がもっともな事も確かなので。

 胸に残る疑問に一時蓋をしたオレは、もぞもぞと起き上がろうとしている異形―確か位相体だったか―に意識と視線を固定する。

「%#●*※!!!!!」

 起き上がった位相体が咆哮を上げる。

 それは餌だと侮っていた存在から思わぬ反撃を食らったことによる怒りからか、こちらを威嚇するためか。

 どちらにしろ、まだまだやる気らしい。

 腰を軽く落とし、体内の魔術回路を稼働状態に持っていく。

 初めて行うのにも関わらず慣れ親しんだ動作を行ったかのような感覚。

 再び生まれた感覚に戸惑いを覚えるが、今度はそれを無視する事に成功したオレは臨戦態勢を整えながら、頭の中―正確には身体の内側?―にいるアリシアに呼びかける。

「アイツの止め方は核となる部分を露出させて封印魔法を叩き込む…、でいいんだよな?」

≪もしくは、高威力の攻撃で構成している魔力を丸ごと吹き飛ばすか―、だったんだけどぉ…≫

「? どうした?」

 尻すぼみに消えたアリシアの発言に疑問を感じて聞き返す。

≪あ~、え~とね。今言った方法は私のいた世界の魔法には当てはまるんだけど、その…≫

「? ―ああ」

  一瞬の間の後、アリシアの言わんとしていることを理解する。

  つまり、先程の方法はアリシアの知る魔法を使う分には確かな方法だが―。

「それが魔術にも当てはまるとは限りないってことか」

 もし、この2つが似通ったモノなら可能性としては有るんだろうが、アリシアが言い淀んだとこをみると可能性として挙げるには少々憚れるのだろう。下手したら、逆に火に油ってことにもなりかねない。お仕置きメテオやメギドラオンでございますをリアルで食らう趣味は無い。

「なら、少々方針に変更する必要があるな…。ゲームとかだと怪しい敵キャラとかと遭遇した場合、防御を固めたり無難な攻撃を仕掛けながら相手の出方を見たりするもんなんだが、そこら辺どうだ?」

≪う~ん、まあ、無難な攻撃で地道に削りながら反応を見て対処していくのが一番安牌、かな?≫

 オレの出した案に賛同しアリシアは頭の中で≪よ~し!≫と声を上げる。

≪そんな訳で! 作戦は『ガンガン行こうぜ!』ならぬ『ボチボチやろうぜ!』に、けって~い! 核の部分にだけ攻撃が当たらないように気を付けて超究して殺劇してスターバーストしちゃおうぜぃ!≫

「なにそれコワイ」

 全部で50Hitくらいはあるぞ、そのコンボ。急所外してもオーバーキルまっしぐらっす。

「つか、そもそも核がどの辺にあるかわからないと…って、ああ、あそこか」

 目に魔力を集中して視たら、すぐにわかった。赤い目玉の真ん中より若干下方、身体の中心という分かりやすい位置にある。

 核を狙う分には少々手間かもしれないが今は都合が良い。多少外側を剥いても中心部分にあるなら、そうそう影響は出ないだろう。

「よし」

 ともあれ準備は出来た。確認も済んだ。

≪あ~ゆ~れでぃ?≫

 アリシアの問いかけに首肯で答える。

 あとは―。

「やるだけだ」

≪GO!!≫

 掛け声と同時、魔力反応に警戒していたのか此方の様子を伺っていた位相体に向かってオレは駆け出した。

 

>>>

 

 アリシアと合流し特典能力が戻ったことで戦う力を得たとはいえ、つい先程まで一般人だった自分が正真正銘の怪物と本当に戦えるのか、ちょっとだけ不安だったのだがどうやら杞憂に終わりそうである。

 英霊の力を得るという能力は、まぁ、なんというか、思っていた以上にとんでもなかった。

 あえて言葉にするなら「英霊スゲー」の一言に尽きる。

 何てったって―。

「♯×■※●☆!!!!」

 位相体が次々と繰り出す触手の攻撃を避けながら、こんなことを考えていられるくらいである。

 右に。左に。あるいは後ろへ。下へ。

 繰り出される攻撃を完全に捉え、僅かな動きで避けていく。

 一撃避けるのに大慌てしていた数分前が懐かしい…。

「!!!!!!」

 そうこうしていると中々当たらない攻撃に痺れを切らしたのか、位相体の動きが変わる。此方を攻撃していた触手が束ねられ一本の大きな触手となって降り下ろされる。

 だが、巨大化したことで初動が遅い。加重が加わり速度が増す前に前方―、敵の方へ向かって回避する。

 そのまま、位相体の脇に滑る様に移動したオレはそこで停止。半回転しながら両手にある二振りの剣を異形の脇腹?に叩きつけた。

≪ほ~むらん!!≫

 吹っ飛んだ位相体を見て、同化している金髪幽霊幼女が歓声を上げる。子供の身体、その細腕から繰り出された攻撃にも関わらず、野球ボールよろしく数十メートルもぶっ飛んだ位相体だが、ここで攻撃を止めるつもりはない。

 再度、接近したオレは今度は下から交差するように剣を振り抜いた。

「¥▲●◎#&!!!!」

「!」

 咆哮か、あるいは悲鳴か。

 金切り声に似た雄叫びを上げる位相体にさらに追撃を行う。

 だが、畳み掛けようとしたこちらの攻撃は後ろに飛び退かれてたことで不発に終わる。

 ゴムボールが弾むように上空へ跳ね上がる位相体。

その身体がぶるりと震え、弾けた。

 まるで散弾銃のように放たれた攻撃が、木々を薙ぎ倒し、地面を抉る。

 当たれば一溜まりもない攻撃が驟雨の如く降り注ぐ。

 しかし、その攻撃も英霊の力をこの身に宿した今のオレに脅威を感じさせるには至らない。

 冷静に攻撃を見極めながら駆け出す。こちらに向かってくる攻撃をかわし、剣で弾き、落下してきた位相体に肉迫した。

 走ってきた勢いを殺さず、慣性を利用して放った蹴撃が相手に突き刺さる。

 確かな手応えと共に、蹴り飛ばされた位相体の姿が木々の奥に消えていった。

「どうだ? アリシア。上手くいったか?」

 消えていった位相体の方へ向かいながら、アリシアに問いかける。

≪んー…、とりあえず問題はなさそぉ、かな? うん、おっけーおっけー♪≫

「そうか。なら、後は最後の仕上げをどうするかだが…」

 このままでは弱らせることは出来ても、安全確実に封印しきることは出来ない。今のオレには『魔術』の知識はあれど『魔法』の知識はない。

 どうする?危険を承知で魔術での封印を行うか?ギリギリまで弱らせてからキャスターで魔術を使用すれば、あるいは―。

 可能かもしれない、と考えていたところでアリシアから声が上がった。

≪アイツの封印なら大丈夫。私に任せて!≫

「出来るのか?」

 振って沸いたアリシアの発言に驚きながら聞き返す。

≪ん、いちおーね。ただ、知識として知っているだけだから、確実に封印出来るようにギリギリまで弱らせておきたいの。頼める?≫

「ああ。問題ない」

 条件は全てクリア。これでコイツはなんとかなるだろう。

 とはいえ、問題はコイツだけではない。目の前のことで手一杯だったために忘れていたが、未だ現状は何処とも知れない異世界に黒猫幼女と二人きりという有り様なのだ。

 …ヤバい、改めて考えなければ良かった。状況が悲惨過ぎて涙が出そうになる。

 そんな事を考えていたら、視界に再び黒い毛むくじゃらな物体が映った。

 先程の攻撃が効いているのか、その動きは目に見えて遅い。

「丁度いい。一気に決める」

 のんびり戦ってる暇はない。このまま一気に押しきる!

 しかし、そんなこちらの思惑が読まれたというのか。こちらの接近に気付いた位相体は。

 あろうことか、逃げ出した。

「あ」

≪逃げた!≫

 いそうたい は にげだした!

「って、待て待て!」

≪襲ってきておいて逃げるな~!≫

 とか言ってる間もピョンピョン跳ねながら逃げていく位相体。

 逃げてくれるなら、それはそれで良いのかもしれない。

 だが、アレはアリシア曰く危険な物らしいし、また、襲ってこられるのも面倒だ。

 ここで後顧の憂いが断てるなら断っておこう。

「よっ…と」

 近くにあった木の上に飛び乗る。

 遠くなっていく標的を視界に収め、魔術回路を起動する。

 魔術回路に魔力が奔るのを感じながら、その言葉を口にする。

「投影(トレース)、開始(オン)」

 撃鉄が下ろされる。想像(イメージ)するのは二つ。

 アーチャーが持つ黒き洋弓。そして、矢となる剣、―『偽・螺旋剣(カラドボルグ)』

 脳内に設計図が展開され、それを基に魔力が組上がっていく。

 そして、それがこの手に収まろうとした瞬間、―それは起こった。

「え?」

 硝子が割れる様な軽い音を立ながら、『偽・螺旋剣(カラドボルグ)』の投影が破棄(キャンセル)された。

「な、どうして…!」

 投影の工程に不備はなかったはずだ。事実、オレの左手には無事に投影が完了した黒弓がある。

「アリシア! どういうことかわかるか!?」

≪わ、私にもわかんない!≫

 原因が分からず、アリシアに問いかけてみるも返ってきたのは混乱し慌てる声。

 特典能力については、オレよりアリシアの方が理解していた。そのアリシアが分からないのなら、即時対応は不可能だ。

 だが、投影魔術の行使自体は干将・莫耶や黒弓の投影が出来たことから可能。

 ならば―。

「投影開始(トレース・オン)」

≪ゼ、ゼン!?≫

 頭の中にアリシアの驚いた声が響く。

 今しがた失敗したにも拘わらず、再度投影を行おうとしていることに驚いているのだろう。

 だが、別に考えなしにやっているわけじゃない。オレの考えが正しければ、今度は大丈夫なはずだ。

「―よし」

『あ、アレ? 投影、出来た…?』

 アリシアの言葉通り、オレの右手には今投影した武器、黒鍵が握られていた。

 やはり思った通り。どうやら投影出来る宝具のランクが制限されているらしい。

≪これって、やっぱりアレかな? デメリット…≫

 尻すぼみに消えていくアリシアの声。

 確かに考えられる原因としては、その可能性が一番高い。

 その引き金となっているアリシアとしては思うところがあるのだろう。

 だが、今は全部後回しだ。

 思考を切り替え、黒弓に矢となる黒鍵を番える。

 そして、前方。千里眼が夕闇の中に消え行く位相体の姿を捉える。

「いけ!」

 狙いを定め、―放つ。

 放たれた黒鍵は狙い通り、急所となる核を避け、位相体の体を貫き、地面に突き刺さった。

 これが『偽・螺旋剣(カラドボルグ)』なら、その余波で位相体の体を削り取れたのだろうが、黒鍵では敵わない。

 しかし、その後に起こった爆発がその不足を補った。

 ――『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』

 本来、切り札とされる宝具を炸裂させ、爆弾として用いるアーチャーにのみ許された荒技。

 本来、黒鍵は宝具には分類されないが、その籠められた魔力が至近距離で爆発すれば、充分な威力になる。

 爆発に巻き込まれた位相体は、その巨体を宙に舞わせ地に落ちた。

 とりあえず、予想通りにいったことに安堵したオレは位相体との距離を詰めるために木の上から下りる。

 高威力の宝具の投影が望めない以上、遠距離攻撃より接近戦の方が効率が良い。

 黒弓の投影を破棄し、干将・莫耶を再投影。

 半ばまで距離を詰めたところで、位相体の身体がのそりと動く。

 思わず舌打ちが出る。思ったよりダメージが浅かったのか予想より回復が早い。

 また、逃げられたくなかったので動けない内に近づいておきたかったのだが。

 だが、立ち直った位相体の行動はオレの予想とは違った。

≪! こっちに向かってきた!≫

 先程の攻撃を食らって逃げられないと思ったのか、位相体もこちらに向かって突進してきたのだ。

「♯#$¥◆□」

 威嚇のつもりか、位相体が雄叫びを上げる。

 ピリピリと肌が震える感覚を感じながら、両手の剣を握り直す。

 そのオレに向かって、位相体が触手を繰り出してくる。

 その数、五本。

 相手も必死なのか、まともに食らえばタダでは済まなそうな攻撃。

 しかし、それでもアーチャーとなった今のオレには届かない。

 一本目の触手を横に避け、二本目を剣で弾く。

 三本目を宙に飛んで避わし、四本目を触手を切り落とすことで防ぐ。

 五本目。横薙ぎの攻撃が来るが、遅い。

 その攻撃が当たるよりも先に、オレの攻撃が入る。

 そう確信したオレが剣を振るうために腕を振りかぶった時だった。

 三度目のアクシデントが起こったのは。

「あ?」

 ぐにゃり、と一瞬目の前が歪む。

 それが戻ったとき、オレの両手からは投影した夫婦剣の感覚が消えていて。

 代わりに先程までいなかった黒猫の姿が目に映った。

「っ!」

 能力が解除されたと理解したオレは咄嗟に黒猫を抱き抱える。

 そして、次の瞬間、身体の側面全体に何かがぶつかる衝撃を感じながら。

 オレの意識は途切れた。

 

>>>

 

 海鳴市の住宅街から、少し離れた道を一台の高級車が走っていた。

 その窓から流れる景色をアリサ・バニングスはボンヤリと眺めていた。

 普段から放課後は習い事やら塾やら、たまに家の用事等で多忙なアリサだか、学校からの帰りは親友達と歩いて帰ることが多い。

 しかし、今日の習い事は場所が遠かったために、同じ習い事をしている親友の月村すずかと共に迎えに来た車を使用していた。

 春先とはいえ、まだ日が沈むのは早い。

 習い事を終え、月村すずかを家に送り届けたころには既に辺りは暗闇に支配されていた。

 ぽつん、ぽつんと置かれた街灯に照らされた夜道は少女の興味を惹くようなものは無い。

 事実、アリサは外を眺めながらもその意識は別のことに向けられていた。

 その別のこととは、もう一人の親友、高町なのはの事である。

 どうにも、最近、少し様子がおかしいのである。

 元々、ぽけーとしている事が多い少女ではあったが最近は輪をかけて酷い。

 何というか全体的に上の空という感じなのである。

 授業中、きちんとノートを書いているように見えるが、それが妙に機械的だったり表情に変化が無さすぎたり。

 三人で話してるときも、気が漫ろだったりしたかと思えば、何でもないような話をしているときに、いきなり表情が明るくなったりするのだ。

 さらには、最近、家の手伝いが忙しいとかで放課後も一人で先に帰ったりと付き合いも悪い。

(なーんか、隠し事されてる気がする)

 アリサの友情センサー(ただし親友限定)が、ビビビッと反応しているのだ。間違いない。

 であれば、力になってあげたいとアリサは思う。

 こと親友二人のことであれば、例え後ろ暗いことであっても力になろうと決めているアリサだか、話してもらえないのであればどうしようもない。

 何度かすずかと二人でさりげなく聞こうとしたのだが、はぐらかされて終わっている。

 力強くで聞き出そうとも思えば、聞き出すことも出来るのだろう。だが、アリサもすずかもそれはしないでいる。

 それは、どことなくなのはの表情が生き生きしているからだ。

 思い詰めたり、悩んでいたりしていたらともかく、あんな如何にも充実してます、という顔をされては強行手段に出るのは憚れた。

 なので隠し事をされているのは甚だ不本意だが。

 それでも何かしら打ち込めるものが見つかったのなら。

 あの気持ちが強い少女の、その気持ちの行く先が見つかったのなら。

(やっぱ今は、黙って見守るしかないか)

 その性格からか。あるいは三人組のリーダー格故か。

 保護者的な感覚になりながら、そう再び結論づけたアリサ。

 そのアリサの意識に、今視界を横切ったものが入り込んだ。

「! 鮫島、止めて!!」

 アリサのその声に急制動をかけて車が止まる。

 理由を聞く前に車を止めた運転手兼執事の鮫島が、何事かと小さな主人に問いかけようと振り向いたが、そこにアリサの姿はなく、車のガラス越しに夜道を走っている姿が見えた。

 お嬢様、という自分を呼ぶ声が聞こえるがアリサは構わず整備された歩道から雑木林の中に分け入る。

 自分を呼ぶ声が強くなるが、それでも止まらずに歩を進めると先程見た光景が再び目に映った。

「お嬢様、一体どうし―」

 追い付いて来た鮫島の声が途中で止まる。自分と同じく目の前の光景に声を失ったのだろう。

「鮫島、救急車―、ううん、私が掛かりつけ医に連絡するから、その間にその子を運んで」

 そう言ってアリサが携帯を取り出すと、鮫島もそれに習い動き出す。

 所々から血を流し衣服もボロボロな少年と、その少年に寄り添うようにして鳴いている黒猫。

 少年が鮫島に抱えられるのを見ながら、電話口に出た実家の担当医にアリサは事情を話し始めた。




中々書けないなぁ。
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