ニセコイ Universitystory 作:ペプチドぺっぺ
「へえ~。夜鳴ってやっぱり姉さんいるんだなあ」
「ええ…ですが、皆様に会わせて良いものか…」
俺はあの後席に戻り夜鳴と会話を弾ませていた。彼女が言うには、自分はまだ唐塚家の人間としてまだまだ駄目らしいのだが、そんなに厳しいのだろうか。
「ヨナキ!お前マネーいっぱい持ってるのカ」
「楽さん…この方は?」
「あぁ…俺の友達のライムだ。で、このオレンジポニーが蜜柑。んでもってこのちょっとチャラそうなのが雅だ」
「俺の扱い酷いぞ楽!…えーとご機嫌麗しゅう…私は貴女のような女性に会うために生まれてきました。よければこの後お食事でもどうですか?」
「え?…えと、あの!」
「バカ!夜鳴さんを困らせないの!バカ崎!」
「バカ崎ってなんだよー!」
…また喧嘩が始まったよ。…どうしたもんか。
「楽!これがいわゆる夫婦ゲンカというやつだナ!」
「「違う!」」
「ライム…これは只の喧嘩だ」
「そうなのカ…日本の文化は難しいなァ」
「あはは…」
「そうだぞ!ライムこれは喧嘩だ!全国の夫婦に失礼だぞ」
「…ったく…ほんとにバカ崎なんだから…」
蜜柑はそう言うと少し顔をうつむせていた。おそらく蜜柑の気持ちを知らないのは楽と雅だけである。
◆◆◆◆
昼食の時間になると楽達は楽の席を中心にご飯を食べる。
「なあ楽!その唐揚げくれよ!」
「お前…自分のは?」
「実はさー今日姉ちゃんが作るの忘れたらしくてさあ、頼む!心の友よ!」
「どこのガキ大将だよ…仕方ねえなあほら!」
「サンキュー」
楽は唐揚げを箸でつまむと雅の口に入れる。それを見て蜜柑は顔を青ざめる。
「オー!これがBLというやつカ!」
「あ、アンタ達…そんな関係だったの…」
「あら!これはまた素晴らしい現場に居合わせましたね」
「「いや違うから」」
「そーなんですカ」
「良かったあ」
「少し残念です…」
楽と雅の否定により女子二人は残念がり、一人は安堵する。
その時ライムはずっと夜鳴の弁当を見ていた。
「ヨナキ!これは何だ?」
「これはですね…サンドウィッチというものです」
「サンドウィッチ?砂でも挟んでいるのカ?」
「いいえ。この中には玉子、ハムとドレッシングのきゅうりなどをパンにはさんで食べる料理です。」
「なんとも旨そうな料理ダナ!…じゅるり」
そう言いながら涎をたらすライム。それを見て楽はやめなさいとチョップをライムの頭に叩きつける。
「いた!何するんダ!楽!」
「女の子がそんなはしたない真似するな…」
「何ヲ!私は確かに下はツルツルだがチャイルドではなイ!」
「んなこと誰も聞いてねえよ!…まったく」
「ライムさん…良ければお1つどうぞ?」
そう言うと夜鳴はライムにサンドウィッチを1つ手渡す。
それをライムは目を輝かせながら礼を言う。
「オー!やっぱりヨナキは違うナ!楽とは大違いダ!」
「へいへい…」
「アンタほんとに損な役目にしかあってないわね」
「それが楽だから…」
ライム以外は楽に同情の眼差しを向けるのであった。
その時、楽の携帯が振動する。携帯の画面を見て楽は少し顔を緩めるが引き締め、教室のドアを開け出ていく。
「楽さんはいったいどちらに?」
「ああ!そうだったね。唐塚さんは知らないんだっけ?何でも外国の彼女らしいよ?しかも超絶美人の」
「彼女さんですか?失礼ですがお名前は…」
「確か…なんだっけ?蜜柑」
「えと…なんだっけ?ライム」
「桐崎千棘…」
ライムはふて腐れながら楽の彼女の名前桐崎千棘の名前を口にする。
「桐崎…ですか…ありがとうございます!私少し用事が出来ましたので、では!」
「え、どこに」
蜜柑の言葉を遮って教室のドアを閉める。
「どうしたんだろうね?」
「さあ?ライムちゃんは何か知って…げ!?」
「あちゃ~…(そう言えば一条の彼女の話はライムの前じゃあ言わないようにしないと駄目だったの忘れてた)」
ライムは頬を膨らませながらずっと夜鳴にもらったサンドウィッチを口の中に入れていた。
ライムが怒る理由はただ1つ。そう、ライムは楽の事が好きだったのである。そして、それが叶わぬ恋ということも…だからライムは不機嫌になっていたのだ。
そして実はもう1つあるがそれはまた今度話すとしよう。
「楽ってどうしてあんなに鈍感なんだろうな?」
「…さあね?…ってアンタが言うな!」
「痛い痛い!耳引っ張んなよ!」
「…バカ崎…」
◆◆◆◆
楽は教室を出て学校の校舎内の広場に出る。
『楽、あんた私がいないからって女子と隠れて付き合って無いでしょうね~』
「んなことするわけねえって!そもそも俺もお前も好きだから付き合ってるんだろうがよ…」
『う…うん…』
楽は自分で言ったセリフで顔を赤らめてしまう。電話越しでも千棘も顔を赤らめているのが分かっていた。
「ところでそっちの方はどうなんだよ?順調か?」
『まあね!鶫にも手伝ってもらってるし!ね!鶫!』
『はい!お嬢の為ならば例え火の中水の中、戦争の中でも手伝いますとも!』
「鶫も元気そうで何よりだな…」
少し呆れた風に楽は喋る。だが千棘の為ならば鶫は本当に火の中にも飛び込みそうだと楽は思う。
『私の事よりも!一条楽!もし、お嬢以外の女と何か不祥事を起こせば…分かっているだろうな?』
「誰もそんなことしねえって!」
『ならば良いのだ…それでこそ私が認めた…』
「何て?」
『何でもない!』
鶫は大声で楽の言葉に否定する。それを耳元で聞いた楽は軽い耳鳴りを起こす。
「おまっ…携帯で大声出すなよ…ったく。…あ、そう言えば今日今まで来なかった生徒が来たんだ」
『来なかった生徒?』
「ああ、確か名前は…」
楽が千棘と話をしている時に後ろから楽に近付く人影があった。それはどんどん楽に近付き楽はそれに気付かす千棘と話す。
「ああ、確か名前は…」
楽がその名前を言おうとした時、楽の携帯を後ろから取り、千棘に電話をする。
「久しぶりですね…ちーちゃん」
『その声は!?よ、よよよ夜鳴!?』
「あまり耳元で大きい声を出さないで下さい。耳が壊れてしまいます」
「夜鳴…お前千棘の事知ってたのか?」
楽は信じられないとばかりに驚いた顔をする。それもその筈、千棘と夜鳴には一切接点はないとばかりに思っていただけでなく、楽と会うのも今日が初めての筈だからだ。
「ええ…存じています。それはもう、ね?ちーちゃん」
『だ、どぅわれがちーちゃんよ!この変態!』
「あら、変態とは失礼ですね…これほどまでにちーちゃんの事を愛しているのに」
『ひぃ!』
「…え…。夜鳴お前、もしかして…百合?」
「そうとも言いますね」
楽は口を開いて唖然としていた。そして、目の前の光景にあり得ないとばかりに思っていた。
千棘は夜鳴の事を知っていて、尚且つ夜鳴も千棘の事を知っているどころか好意すら抱いていたのである。
「けど、千棘とはどこで知り合って…」
「アメリカです。そこで小さい頃私はちーちゃんと出会いそして両思いに…」
『なぁるかあー!』
『夜鳴!貴様、お嬢にまた手を出してみろ。今度は私がお前の頭を銃で…』
「あら?その声は鶫さん?久しぶりです…また一緒に遊びませんか?」
『ひぃ!よ、寄るな近寄るな話し掛けるな!』
電話越しですら鶫は後退りをして夜鳴と話す行為をやめる。
それほどまでに鶫に対してもなんらかの行為を行ったと予測できると楽は思う。
「うっふふ。では私はこれで…また話せる事を楽しみにしています。ちーちゃんに鶫さん」
『『誰が楽しみにするか!この変態!』』
千棘と鶫は声を荒らげそして、小さく息をつく。
『あ、アンタ本当に大丈夫?何もされてない?』
「あ、あぁ…それにしても意外だったな…夜鳴がそんなやつだったなんて…」
『まあ、私も鶫も小さいときはそれなりに良い友達関係だったんだけどね…って……アンタ、今…夜鳴の事下の名前で?』
「うん?あぁ本人がそう呼んでくれって言ってたんだ。本当だぞ?」
『……あっそ』
「本当だって!信じてくれよハニー!」
『ハニーとか言うな気持ち悪い!』
千棘のその言葉に楽はぶちんと血管の切れる音がするや否や、楽は大声で千棘に声を荒らげる。
「な!?キモいってなんだよ!久しぶりに呼んでやったんだろ!?なのにキモいってなんだよ!ゴリラ!」
『誰がゴリラよ!このもやし!どうせ大学でももやしなんでしょ!?この大学もやし!』
「大学もやしってなんだよ!このモンキーガール!」
『うるさいこの貧弱!』
「猿!」
『もやし!』
「猿…っぷ!」
『もやし…っぷ!』
「『あっはっはっはっ!』」
二人は久々に喧嘩をして懐かしく思ったのか、笑いを堪えられず大声で笑う。
それは二人にとって昔ではよくある出来事で二人にはもう良い思い出である。
「いやぁ~やっぱ楽しいなお前と喋ってると」
『私も…ふふっ』
「しょうがねえ!どうしたら許してくれるんだ?」
『そーね。なら、名前でまた呼んで…楽』
「ああ!じゃあ…千棘!」
『うん!またね楽』
「ああ!また…」
プツン…ツー、ツー。
楽がさよならの挨拶を話そうとしているときに千棘は電話を切ったのであった。
「あいつ…マジかよ…」
楽のむなしい声は昼休みの学生の声と共に消え去るのであった。