私はソーマのパートナー 作:サンリアフレ
オリ主はソーマの2歳年上の設定です。
第1話 セナside
私のパートナー、ソーマ・シックザールは15歳で体の半分がアラガミだ。
見た目は健康的な褐色な肌に綺麗な光沢を放つ白髪と普通の人そのものでも、彼の体にはアラガミの偏食因子が組み込まれているからだ。
私たちゴッドイーターにも腕輪を介して偏食因子を注入されているが、私たちの持つ偏食因子とソーマの持つ偏食因子は種類が違う。
私たちのはゴッドイーターの誕生を成功させた、謂わば主流のもの。
ソーマは理論上人に投与可能と謳っているものの投与実験では全て失敗している危険なもの。
そんな危険な偏食因子を、ソーマは胎児の状態で埋め込まれた。
彼は見事偏食因子に打ち勝ち適合することができ、他のゴッドイーターと一線を画する身体能力や五感を獲得し、さらに腕輪が無くとも自ら偏食因子を生成できる身体になった。
素晴らしい成果だがその反面、他の誰よりも最もアラガミに近い身体ということであり、その異質さ故に周囲から距離を置かれていた。私が知り合った時には"死神"と陰口を叩かれていたほどである。
ただ、私こと
特殊な出で立ちゆえに性格は荒く、目には他人を突き放すような剣呑な光が宿っているけれど、ただ人付き合いが苦手で不器用なだけなのだ。
普段は斜に構えた態度でも、任務中に不測の事態に見舞われた時は真っ先に同行者の安否を確認したり、無事に乗り切ったときは心底安堵した表情を見せたりと根は優しい。
それでいて女性ボーカルの歌が好きで、背が小さいことを誤魔化すためにフードを被ったりする。
これはみんなには秘密だよ。
付き合いが長くなればなるほど彼の魅力が解る。
それに、私の振る話に口数こそ少ないもののきちんと応えてくれるし、少しからかってやればすぐに年相応のあどけなさを見せてくれて普段とのギャップも楽しめる。
可愛くて和む存在だ。
「ここに冷やしカレードリンクと初恋ジュースがあります」
「……いつものくだらないじゃれ合いか?」
「いやいや、今回は真剣な話だよ。アナグラの職員の間で話題になっててね? この二つの商品の売れ行きが芳しくないんだって」
「当たり前だ。誰がそんなゲテモノ買うかよ」
「まぁ否定はしないよ。でも、だからこそ惹かれるものがあると思わない?」
「……率直に言え」
「二人で品評会しよう」
「一人でやってろ」
「ふーん? もしかしてソーマ君、怖いんだぁ?」
「……何?」
私とソーマの間に緊張が走る。
こんなプレッシャーなんてオウガテイルと睨めっこしてるより軽いもんよ。
持ち前の視線の鋭さはいつもに増して研ぎ澄まされており、眉間に皺が刻まれる。
こんなチープな煽りでも彼は幼さゆえにキレちゃうようだ。
私から見ればちっちゃい弟がムキになってるようにしか見えない。
ただ、常人より遥かに強化されたゴッドイーターたる私の身体と言えど、ソーマのグーパンは冗談抜きで痛い。
手が出るギリギリを見極めて仕掛ける。
「ふふ、いいよ無理しなくて。誰にでも怖いものはあるものね……。
「誰も怖いなんて言ってないだろ」
「そう? じゃあ品評会しましょ」
「いいだろう」
いつもやってることだけど、この子素直すぎじゃない?
しかも挑発に乗せられてることに気づいてないご様子。
これでからかい終わった後にようやくからかわれていたことに気づいてポカンとするんだから楽しいことこの上ない。
両手に持った二つのカンをニヤニヤ顔と共にソーマの眼前にぐっと押し出して言ってやる。
「好きな方を選んでいいよ」
「フン」
私の手から冷やしカレードリンクを奪うように取った。
もし飲むなら私もそちらを選ぶ。
ただソーマの場合、思春期真っ最中の彼には"恋"という単語に抵抗感を覚えるものなのだろう。
ピンクのラッピングが輪に掛けた結果だ。
当然読み通り。
ソーマ検定一級を持ってる私に掛かればお茶の子さいさいだ。
「じゃあせーので飲もうか」
プルタブを空けるとぷしゅっと炭酸の抜ける音が鳴る。
そして
「はい! せーの」
私が呷る素振りを見せるとソーマも慌てて口を付ける。
私は飲んだフリをしたけど彼は馬鹿正直に飲んだらしい。
液体が舌に乗った瞬間、ソーマは予想外の味に仏頂面から一変させて、驚きと顰蹙をブレンドさせた表情をした。
「ウッ、ッえっ、テメ、これ何だ!?」
「ぷっ、あっはははは! ほんと可愛いなぁ、それ初恋ジュースだよ」
「はぁ!? でもラッピングは……」
「そんなの元のやつ外して冷やしカレードリンクのラッピング付ければいいだけじゃん」
「……あ」
私の期待通りソーマは間抜けな声と共に幼さ満点の呆け顔を晒してくれた。
ここまで予想通りにリアクションされるとさらに嗜虐心が燻られるけど、からかい過ぎると手加減抜きの腹パンが飛んでくるのでフード越しに頭を撫でるだけで我慢する。
ソーマはようやく声を掛けられた時から遊ばれていたのだと気づいて顔を真っ赤に染めてカンを紙屑のように握りつぶした。
中身の液体が勢いよく飛び出したが私はその前に離れていたから問題ない。
もちろんソーマの握る手はベトベトだけど。
「で、どうだった? 初恋の味は」
「……ッ、最低の味だったよクソッ」
ギリギリと歯軋りをしてぺちゃんこになった鉄くずを私に投げつけ、出撃ゲートに足音高く向かっていってしまった。
その小さな後ろ姿もおかしくてひとしきり笑い、波が落ち着いたころで自分の初恋ジュースに一口。
「初恋ってこんな味なのかなぁ……」
案外イケる味で飲みきったあとカウンターへ向かう。
「セナさん、あまりソーマさんをからかわない方が……」
「ちゃんとほどほどにしてるよ。それで今日のミッションは?」
「そ、そうですか……。今日のミッションはソーマさんと二人で『コンゴウ二体の討伐』ですね」
ほんの少し苦笑いしながら応えてくれるのはヒバリちゃん。
最近入ったばかりの私より年下のオペレーターさんで、隣に指導官のツバキさんに付いてもらいながら研修している。
けれどその若さに見合わずしっかりとしており、現時点でもかなり優秀なオペレーターとしてアナグラを支えている。
その愛らしい容姿と相まって男性ゴッドイーターたちの視線の的である。
それはそれで問題ありそうだから私心配。
年の近い女性が少ないこともあってヒバリちゃんと友達としての付き合いもあり、度々休憩を共にする仲だ。
「おっけー。それなら二時間くらいで帰れそうかなー。そうだ、ヒバリちゃん今日暇? リッカと一緒にご飯食べない?」
「すみません、今日は指導の予定が入ってまして……」
ヒバリが窺うように視線を向ける先は鬼教官と名高いツバキ。
当の彼女は無言で私に目線を突き刺してきた。
この顔は『後輩を困らせるなバカ者』と言ってるな。
「そっか、それならまた今度だね。いってきまーす」
「神機の手配は済ませてありますので準備ができ次第出撃してください。いってらっしゃいです」
可愛い後輩に見送られながら私は出撃ゲートをくぐる。
ちなみに移動中どころかミッション中もソーマは口を利いてくれなかったり、想定外のヴァジュラ乱入に遭ったりと散々な目にあった。
丁度《獣神大牙》が欲しかったところだから顔面をピンポイントに殴り続けてたらソーマとヒバリさんにドン引きされた。
解せぬ。
しかも出なかったし。
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