私はソーマのパートナー   作:サンリアフレ

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第13話 ユウside

僕から見たソーマ・シックザールさんは人として尊敬できる人だ。

 

 いかなる時も冷静沈着で仲間に気を配っている。自分から口を開くことは少ないけれど、内に信念を抱き神機を手に執っている。

 

 神機使いとしても超一流と呼ぶにふさわしく、身の丈に迫る巨大な神機を自在に操り強大なアラガミを次々と屠っていく後姿に胸を熱くさせられる。

 

 "死神"と陰口を叩かれているらしいが、任務に同行させてもらっている身として言わせてもらえば守り神のような人だ。陰口を叩く人はソーマさんを上辺だけで語っているのだろう。

 仮に僕が知る前のソーマさんが"死神"だったとしても、ソーマさん自身が謗りを受けながらも努力し続け生まれ変わったに違いない。ソーマさんの語る言葉の節々に滲み出る優しさは、それ故だろう。

 

 ソーマさんのことを少しでも理解している人は、揃ってソーマさんに信頼を寄せている。第一部隊のみんなは勿論のこと、凄腕ゴッドイーターのエリックさんもライバルとして認めているし、隊長のリンドウさんもソーマさんの腕を買っている。

 

 ひとつ残念なところを挙げれば、口数は少なくちょっとだけぶっきら棒な所があるせいか、コウタには不評のようであることくらいか。

 

 ◆◆◆

 

 任務を終え極東支部に到着した。ようやく任務の緊張感とアラガミへの恐怖に慣れてきたけれど、未だに護送車に揺られ尻を痛めるのは耐え難い。

 

 護送車から降りてゲートへ向かう道中に同行していたコウタが気さくに挨拶しながら肩を組んできた。

 

「俺たちの華麗な連係プレイで大勝利! もう敵無しだよなー」

 

「コンゴウ一体の討伐にサクヤさんとソーマさんが着いていたから無事だっただけだよ。僕たち二人だけじゃまだ無理」

 

 細かい事は気にするなー、とおどけて見せた。それから頭にかぶるミット帽を正しながら続ける。

 

「それにしてもソーマの奴、もうちょい喋ってくれたっていいよなー。護送車の端っこで一人座られると陰気くさくなるじゃんか」

 

「コウタ、ソーマさんは僕たちより年上だし階級も上の人なんだから、せめて敬語で話しなよ」

 

「『ゴッドイーターに年も階級も関係ねぇさ』ってリンドウさんが言ってたぜ! ユウは固すぎなんだよ」

 

「関係ありますー。リンドウの軽口を真に受けちゃダメよ?」

 

 ベシっとミット帽にチョップを落としながら注意をしたのはサクヤさん。極東随一の狙撃手であり、妙齢の美女だ。抜群のプロポーションを際立たせるような服装と本人の包容力の高さも相まって、大人の色気がすごいのなんの。

 

 おかげでコウタがでれーっと鼻の下を伸ばしながら誠意の篭ってない謝罪を述べる。まったくもう、とため息を漏らすサクヤさんに習って僕も呆れの吐息を付く。

 

 ふと後ろを見ればソーマさんは左腕につけた簡素な腕時計に目をやっており、僕たちの会話にまるで関心を示していない様子だ。目の前で不満を言われたというのに一切気にしない態度は貫禄すらある。

 

 あれが冷たい態度と取られているのだろうか、と疑問に思っていると明朗な声が通路に響き渡った。

 

「お帰りー!」

 

 エントランスに入るゲートに目を引くような明るい煉瓦色の髪を持つ女性が手を振って僕たちを迎えていた。離れていて顔まではよく見えないが、少し高めの身長のようだ。

 

 初めて見る人でコウタに視線を投げかけると、コウタも知らないようで首を傾げている。サクヤさんはハっと鋭く息を飲んだ後に安堵の表情を浮かべた。

 

 そして意外な人物が煉瓦色の髪の女性に応えた。

 

「やっと治ったか」

 

 ふてぶてしい口調ながらもどこか柔らかさを感じる声でそう言ったのはソーマさんだった。いつの間に追い抜いたのか、すでにその女性の前に立っておりフードを脱いでいた。

 軍曹のソーマさんと親しげに接する女性は同等か、それ以上の地位の人なのだろうか。

 

 女性はソーマさんに見せ付けるように掲げた左手を開閉させながら笑ってみせる。

 

「えっへへ、お陰様でね」

 

「俺に飽きられる前に治せて良かったな」

 

「またまたそんなこと言っちゃってー。実は二人きりになれて喜んでたんじゃないのー?」

 

「いつでも二人きりになれるのにいちいち喜ぶか」

 

「……いつでも二人きりになってくれるの? 本当に?」

 

「はぁ? いつも任務でそうだろうが」

 

「……はぁ。この朴念仁め。そんなことだろうと思ったよ」

 

「?」

 

 僕たちの知っているソーマさんとかけ離れた姿に驚愕を禁じえない。コウタも目を見開き口をあんぐりと開けて呆けている。

 

 いつになく饒舌に、そして楽しそうに会話をしているソーマさんは僕たちの足が止まっているのに気づき振り向いた。そこには僕たちの知っている仏頂面があった。

 

「ボサっとするな。特にそこのバカ丸出しの奴」

 

「なっ、誰がバカだコノヤロー!」

 

 我に返ったコウタが拳を振り上げて遺憾の念を示すと、ソーマさんはフっと完全に馬鹿にした表情を浮かべた。

 

「誰もお前とは言ってないだろ」

 

「うぐっ」

 

「自覚があるようで何よりだ。バカはうつるからな、お前も治す努力をするんだな」

 

 気にしていない訳じゃなかった。むしろ結構根に持ってた。

 倍返しされたコウタは口角を引き攣らせたが、ソーマさんはさっさとゲートを潜って行ってしまう。あらあらと笑いを零すサクヤさんも煉瓦色の女性に軽く挨拶をして潜った。

 

 ソーマさんとサクヤさんを見送った女性は僕たちに気さくに声を掛けてきた。

 

「やあ。キミがユウ君で、そっちのキミがコウタ君で合ってるかな?」

 

「あ、はい! 最近第一部隊に配属された神薙ユウと申します!」

 

 ソーマさんと対等の人だと思うと無意識に背筋を伸ばして敬礼を取っていた。女性は両手をばたつかせて僕の敬礼を解いた。

 

「あはは、そんなに畏まらなくていいよ。実は私も第一部隊に配属された身でね? 邦枝セナって言うの。よろしくね」

 

 セナと名乗った女性は人懐っこい笑みを浮かべた。しかし緊張は緩めることができずぎこちない笑みを返してしまう。

 と言うのもソーマさんと同等の人という他に緊張する理由があった。

 

「うっわ……すっげぇ美人……」

 

 隣のバカが意図せず漏らした通り、セナさんはサクヤさんに引けを取らないほどの美人なのだ。それも色気があるという感じではなく、大人と子供を足して割ったような綺麗と可愛いが両立した清々しいものだ。

 

 服装も女性用のフェンリル制服をぴちっと着こなしており、理想的な四肢やくびれに張り付く黒い生地が女性らしい艶かしさを醸し出す。けれどいやらしさは一切感じさせない。露出の多い女性陣では珍しいタイプだ。

  

 誰かが言っていた。極東支部の女性陣は美人しかいないと。まさに的を射ていた。

 そしてどの美人を前にしても緊張するのは仕方のないことだった。

 

「ん? 私が? それはありがとう。初めて言われたよ」

 

「初めて言われた!? 恐るべしフェンリル……要求ラインが高すぎる……」

 

「すみません、このバカが何か言ってますけど気にしないでください」

 

極東(ここ)は美人揃いだからね。ただ実力者でもあるから、迂闊に手を出そうものなら何されるか解らないよー?」

 

「セナさんもですか!」

 

「やめなよコウタ」

 

「残念だけど私はもう虜にされた身だから、興味のない人に手を出されたら思い切り叩いちゃうかも」

 

 カラっと笑ってみせたセナさんは「それじゃ任務のときはよろしくね」と言い残し颯爽と身を翻して去っていった。飄々として掴みどころのない、けれどどこか惹かれるものを持つ人だった。

 

 見えなくなるまでセナさんの後姿を追っていたコウタがしみじみと呟く。

 

「俺……ゴッドイーターになってよかった」

 

「はぁっ、だからバカって言われるんだよバカコウタ」

 

 第一部隊が賑やかになりそうだ。

 

 ◆◆◆

 

「ほいっと。任務完了っ」

 

「はぁ……はぁ……セ、セナさん……疲れました……」

 

「ちょうど折り返し地点だから頑張ろう!」

 

「え、ちょっと待ってください、これで折り返し地点って……四回連続ミッションを受けるなんて聞いてませんよ!!」

 

 汗水垂らして訴えるとセナさんは「ピクニックじゃあるまし」と両手を腰に当て困り顔でため息を付く。一番動き回っていたはずなのに汗一つかかず、息もまったく乱れていないのだから恐れ入る。

 

「ソ、ソーマさんも何か言ってくださいよ……さすがにブラックすぎますよこれ……」

 

「この程度で弱音吐いてると先が思いやられるな。大型アラガミ三体同時討伐なんざザラだぞ」

 

「……もうゴッドイーターやめてもいいですか」

 

 新型が今更逃げれると思えねぇけどな、と事実上降伏勧告されてがっくし肩を落とす。ソーマさんもソーマさんで余力が有り余っている様子だ。

 

 セナさんはめちゃくちゃスパルタだった。いや、教え方は解りやすいし、僕が会得できるまで根気強く付き合ってくれるので助かるけど、そのスケジュールが尋常じゃなかった。

 

 セナさんがロングブレードを使うと聞いたのが事の発端で、僕もロングブレードを使う身として先輩に教えてもらいたいと頼むと快く承ってくれた。

 ここまでは問題無かった。けれどその時に「私リハビリしないといけないから、そのついででも大丈夫?」と確認してきたときにイエスを言ったのが過ちだった。

 

 最初に受けたミッションが『サリエル、クアドリガ、ボルグ・カムランそれぞれの堕天種の討伐』という超高難易度のもので、新兵の僕には不適切じゃないかと聞いてみたけどセナさんは「大丈夫大丈夫。良い練習台になるよ」と答えながら僕に三体の討伐を全部やらせた。

 

 丸投げというわけではなく、取り巻きの小型アラガミを排除しつつ危ないときは完璧なフォローを入れ、それ以外は手を出さないという形式だ。

 ようやく一体倒せたと思ったら間髪入れずに次の目標を連れてきて戦わせ、また倒したら連れてくるというわんこソバよろしく状態だった。

 

 本当に身の危険が迫った時は絶対に助けてくれるし、アラガミの動きをコントロールして僕の戦いやすいように調整してくれているため文句を言うに言えず。更に丁寧に解りやすいアドバイスをくれるのでもっと文句を言えず。

 

 言いあぐねている内に本日二回目のミッションに連れて行かれて何とか捌ききったところなのである。様々なアラガミと戦って戦い方が上手くなったかは解らないが、新兵がこなす量じゃないのは確かだ。

 

 ツバキさんに「ミッションは任意制だが数日に一回受けるだけでもいい」と教えられたが、セナさんとソーマさんは一日に三つか四つのミッションをこなしているらしい。それが普通らしい。

 

 未だに納得できないが、それくらいしないと一流のゴッドイーターになれないのだろう。

 僕は明確な意思を持たずにゴッドイーターになってしまった。だからせめて目の前の人たちを守れるくらいに強くなりたい。そう思ったからセナさんに教えを乞うた。

 

「……いえ、弱音を吐いてすみません。次のミッションに行きましょう!」

 

「おっ、その調子その調子!」

 

「フン、少しは見所があるじゃねぇか」

 

 決意を新たにぐっと立ち上がる。と、その時ヒバリさんから無線が入った。

 

『作戦エリア内に大型アラガミが侵入しました。これは……スサノオ!?』

 

「ス、スサノオ!? 《ゴッドイーターキラー》と恐れられる、あのスサノオですか!?」

 

 あまりの凶暴さにゆえに第一種接触禁忌アラガミとしてデータバンクに登録されているアラガミの乱入に真っ青になる僕。

 しかしセナさんとソーマさんはのほほんとした調子で聞き流しており、怖がっている様子は無い。

 

「んー、スサノオか。ソーマ君、いける?」

 

「当たり前だ。お前が寝てた間、俺がどれだけ強くなったと思ってやがる」

 

 そして狩る気満々の会話までしている。

 

「待ってください! スサノオを三人で相手するなんて無謀ですよ!」

 

「いや、ユウ君はさすがに危ないから遠くから見てるだけで良いよ」

 

「なおさら無謀じゃないですか!」

 

「スサノオ程度って言えるくらいにならねぇと話になんねぇぞ」

 

「えっ、僕がおかしいんですか? これ僕がおかしいんですか?」

 

『安心してくださいユウさん、この二人がおかしいだけです』

 

 ヒバリさんの諦念を感じさせるフォローが入る。そして何事も無かったようにオペレートを始めてしまう。

 

『セナさんとソーマさんは乱入したスサノオを速やかに討伐してください。ユウさんは危険ですので回収ポイントに待機してください』

 

「りょーかい」

 

「了解」

 

「……もういいや。了解しました」

 

 かくしてスサノオはものの二分で討伐された。望遠鏡でその一部始終を見ていたが、二人とも一糸乱れぬ連携でスサノオを翻弄し無傷で突破していた。お互いを知り尽くし、信じあっていることが感じ取れる連携だった。

 

 ただセナさんが並走しながら《インパルスエッジ》を撃ち込み続けるという暴挙を行っていたのが気がかりだった。ソーマさんも平然と走りながら《チャージクラッシュ》を溜めては撃って溜めては撃ってを繰り返してるし、僕が予行演習のときに習ったマニュアルとだいぶかけ離れていた。

 

 それからしっかり二つの連続討伐のミッションをセナさん式スパルタ訓練で乗り越えた。三つ目のミッションで限界に来ていたはずだけど、四つ目のミッション中は無心で戦っていたためか疲れを感じずに乗り切れた。

 

 凱旋を兼ねて別行動でサクヤさんに狙撃訓練を見てもらっていたコウタに報告するとドン引きされた。リンドウさんは「良い感じに極東に染まってるじゃねぇか」と笑っていたから、たぶんこれが普通のゴッドイーターなのだろう。サクヤさんが呆れのため息をついていたけど気のせいだろう。

 

 訓練を受けて以来、僕も単騎で連続討伐のミッションに出かけて自主練をしている。最初は辛かったけど日に日にミッションを終えても余裕を感じるようになってきた。評価もSSS+をちらほら貰えるくらいだし、着実にゴッドイーターとしての腕を上げれている。

 

 なぜかコウタは「悟りを開きやがった……」と畏怖の念を抱いていた。甘えているっぽいから僕の自主練にしばらくつき合わせたら「大型アラガミ二頭の討伐? 楽勝楽勝!」と言うようになった。

 

 ようやく並のゴッドイーターになれそうである。




ソーマ君も極東に染まってきてますね(暗黒微笑)
恥辱をバネに3カ月間修行したソーマ君は原作より遙かに強かった。
そして地味にセナに悪戯され続けただけあって大人になっていた。

実は今回の話、結果難産でした。
ユウ君の扱いが意外と難しくて、オリキャラに頭を悩まされるとは思いませんでしたw
コウタ君も2になるまで精神的な成長が乏しくて難しいキャラに感じられます。

──セナ退院後──

ソーマ「で、いつぞやの悪戯の続きは?」

セナ 「ふんだ! 意地悪するならしてあげない!」

ソーマ「じゃあ俺が代わりにしてやるよ」

セナ 「えっ、遠慮しとく」

ソーマ(意外とヘタレだな)
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