・・・・・・やっちまった。
って、感じ丸出しの作品です。
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継承編I
東京の遥か南洋上330km地点には、広大な面積を誇る『夜の帝国』がある。地名は昔と変わらず、絃神島と呼称されている。当初は人工島1つのみであったのだが、『
盟主である第四真祖の本名に肖り、『
本来は日本所有の人工島であったが故に、政治的に複雑な土地であり、第四真祖の縁者に政治に明るい人材が居るとはいっても、所有している領土の広さや国民の数に対処するには、どう考えても人材不足は否めない。それでも、上手く回っているのは、他の力が働いているからである。
領土も、国民も、主権も何もかもが実体を持たない――しかし、裏向きでは強大な力を有する存在が見え隠れしている。そんな幽鬼のような存在が、かの『
つまり、この洋上の『
人々は実体のない存在を、こう呼称していた。
――『
◇
「では、こちらの方で進めて問題無いですね?」
広めの会議室には男性5人、女性が1人だけがおり、内男性2人は対面式で座って互いに何やら書類を手元に置いていた。互いの背後にはSPと見られる人物がそれぞれ控えており、若干剣呑とした雰囲気である。そして、座っている片方の若い男性の方が、白髪混じりの男性へと書面を渡し、確認をした。
「………いやはや、年若いというのに、中々の手腕をお持ちだ。まさか、双方の着地点をそちらから提示されるとは」
「こちらとしても、無用な争い事は避けたいですから。ご納得いただけて、幸いでした」
「えぇ、それはもう。今後とも国交は維持するという方向で話をまとめられて、私の面子も保たれます。今後とも貴国とは良好な関係を築いておきたいですから。……………ところで、これは私的な質問なのですが、奥様の方はご健勝ですかな?」
若い方の男性は一旦間を置いて、1つ息を吐いた後に、再び口を開く。
「……えぇ、すこぶる健康ですよ?なぜ、そんな事をお聞きに?」
「いえ、私も実はファンでしてね。最近、活動されていないようなので、
「彼女も、イロイロとありますから」
「ははは、そうですな。これは失礼しました。奥様の方にもよろしくお願い致します」
「えぇ、伝えておきましょう」
座っていた男性2人は立ち上がり、握手を交わした後、年嵩が上の男性と彼のお付きのSPが会議室を後にした。それを見送り、しばらくした後、若い男性は疲れたようにドカッと腰を下ろす。
「はぁ〜〜〜………政治家っていうのは何たってこう………普通の会話にまで探りを入れるのかなぁ?あー、って言うか、普通の会話を期待する方がダメか……」
そんな彼の隣に座り、女性SPがフレンドリーに話し掛ける。
「ふふ、仕方ないですよ、彼らはそれがお仕事で――って、レーム!ここは禁煙ですよ!」
「ちぇっ……この国は相変わらず喫煙者に厳しいぜぇ〜〜……」
そう言って、レームは靴裏でタバコの火を消した後、手持ちの携帯用の吸い殻入れに放り込む。
「まったく、毎回毎回」
「硬えなぁ、バルメ。もう今日は何も無いんだろう?仕事後の一服くらい――」
「ダメです!私はこの後、ココと食事なんです!臭いが付きます!」
「へいへーい」
「はは、2人とも今日はありがとう。中々頼れる人材がね……今日は助かったよ」
「おいおい、水臭えぞ、今更。俺たちの仲じゃぁないか。なぁ、バルメ?」
「えぇ、そうですね。と、それはそれとして、時間は良いんですか?」
バルメは腕時計を見やって、時間を示す。時刻を見た瞬間に、男性はガタリと急いで立ち上がる。
「しまった!もうこんな時間だったのか!?あぁーー、えっと、報告書とかは……あーーー、仕方ない、家で仕上げて送れば………2人とも、今日は本当にありがとう!また、何かあったら頼むから!」
彼はササっと荷物をまとめて、会議室を飛び出す。その一連の動作はかなり機敏であり、出るまでに数秒と掛かっていないだろう。彼には大事な用事があるのだ。
「あ、そう言えば、ココが――………行ってしまいましたか…」
「相変わらず速いねぇ〜〜。あれで何で
「適材適所だからじゃないですか?人の機微に敏感ですからね、彼」
そう言って、彼らは彼が出て行った方をジッと見つめる。ひょんな事から、こんな事をしなくてはならなくなった『王』たる彼を。
◇
3月10日。春先だというのに、この島では季節の移り変わりを感じさせない。気温は安定して高いし、湿度も高水準である。
夕暮れ時である現在、外では母親や父親に手を引かれ、帰宅、もしくは外食に出かけるといった平和な光景があった。何度も大騒動に巻き込まれてきたこの島ではあるものの、騒動さえなければ普通の平和な光景が広がる。『魔族特区』などという場所なのだ。そこに住む住人は中々に逞しい。
そんな平和な光景をベランダに出て、ボンヤリと眺める女性がいた。ゆったりとした白のワンピースタイプの下にジーンズを着込み、その眼差しはどこか優しげで儚げである。だが、同時に芯の強さを感じさせるように、その瞳はハッキリと意志を孕んでいた。
そんな彼女に背後から声を掛ける人物がいた。
「もう!また、そんな風にベランダから乗り出して!危ないよ、いのり
「……ん、ごめんなさい、凪沙」
そう、ベランダに居た女性とは、楪いのり――否。
「けど、外の風に当たりたかったから」
彼女は風で乱れた髪を手でそっと押さえて、ふっと笑う。少女から女性へと成長した彼女は、以前よりも表情も感情も豊かになり、またその面持ちもよっぽど優しげのあるものへと変わっていた。それでも、以前のような美しい容姿は変わらない。むしろ、より磨きが掛かったくらいだろう。
「はぁ………集
「………はい」
凪沙の剣幕に、いのりは押され気味である。あのいのりが素直に『はい』と言うほどに。
彼女は未だにプリプリ怒りながらも、リビングの中央に置かれているテーブルの上を拭き始める。成長したと言えば、彼女もだろう。以前の快活さはそのままに、少女らしい可愛らしさを残している。端から見ても、可愛らしい美人な女性へと成長していた。余談ではあるが、体の一部が特に仲の良い同級生よりも成長してしまい、若干の不興を買ってしまったのも、昔の話である。
「ただいまー」
そこで帰ってきたのは、この部屋の家主である桜満集であった。いのりと凪沙の2人は耳聡くそれを聞き付けて、笑みがこぼれる。
「集君、おかえりなさい!あれ?今日はだいぶ早いね?早めにお仕事終わったの?それとも、何かあった?あ、そうだ!聞いてよ、集君!また、いのりちゃんがベランダから身を乗り出してたんだよ!集君からも注意してね!」
「あー、はっはっはっ………」
集は空笑いを漏らす。いのりを
「集、お帰りなさい」
「うん、ただいま、いのり。凪沙もただいま」
「はぁ……やっぱ、私がしっかりしなきゃ」
凪沙は2人の呑気さに呆れるようにして、左手を頭へと持ってくる。そこには、いのりと同様の指輪がハマっていた。実は、現在この家の表札は7年前とは違っている。苗字は桜満で統一され、上から集、いのり、凪沙の順で書かれているのだ。
そう、集は獅子王の剣の巫女が、言った様に花嫁を2人も娶る事になったのだ。当然、そこに至るまでは数々の障害があったのは、事実である。
父親である牙城、兄である古城の猛反対や、それに起因する決闘もどきなど、多くの弊害があった。が、今それをここで語るのはやめておく事にしよう。
多くの弊害はありつつも、彼らは現在幸せの絶頂なのだ。
「ごめんね、凪沙。ただ、どうしても浮かれちゃって……」
「はぁ……ううん、いいよ別に。私も楽しみだし♪うーーん、きっと可愛いんだろうなぁ!」
凪沙は小踊りでも開始しそうな足取りで、いのりの元へやって来ては、そっと彼女の大きく膨らんだお腹を撫でる。
「早く会おうね。私も今から楽しみなんだから!」
その凪沙の手を覆う様にして、いのりの手が重なる。二人の表情は優しげであり、同時に満足げであった。当然、いのりの腹部が膨らんでいるのは、太ったからなどではない。一般的な体裁を取っていないにしろ、彼らは夫婦なのである。
彼女の中には新しい
「ふふ、凪沙もでしょ?」
「私はまだまだ、
凪沙は屈託のない笑顔で、いのりに返す。そして、彼女らの後ろでは集が顔を手で覆っていた。今更ではあるのだが、2人ともを妊娠させてしまった事に、若干の後ろめたさがあるのだろう。元々一夫一妻の文化であったはずなのに、妻を2人も娶って、さらにほぼ同時期に妊娠させたとあっては、多少なりとも、そういった感傷は持つのだろう。まぁ、それでも、自らの義兄となったあの男よりはマシだなと思い直す。
「それより、いのり大丈夫?何も異変はない?」
「ん、平気。ひゅーねるも居るから」
その言葉に、足元を白い筐体が走り回る。医療用サポートケアオートマトン、『ひゅーねるMk.30』である。何度もアップデートなどや、オーバーホールを重ねて、ナンバリングも増えたのだ。現在は専ら、いのりと凪沙のケアに集中しており、何かあればスグに対応してくれる。
過去、散々な目に合わされた集ではあるが、現在は24時間体制で、自分の妻達を見守ってくれる頼もしい存在となっていた。お陰で、重要な仕事にも集中できるというものである。
「凪沙も、全然先だなんて言ってないで、気を付けてよ?お腹が目立っていないだけで、身重である事には変わらないんだから」
「そ、それは、分かってるんだけど………やっぱ、いのりちゃんの方が出産日が近いし、コッチを意識しちゃうよ」
「それでも、だよ。重い荷物の買い物は控えること。メールの1つでも入れてくれれば、買って帰ってくるんだし」
「………対外的に、それはちょっと……」
凪沙が言っているのは、集の立ち位置が関係している。彼はこの『夜の帝国』のもう1つの顔なのだ。それが、近所のスーパーで買い物などと………という風に、夫の体裁を貶める事を危惧しているのだ。それを集も察してか溜息を吐く。
「はぁ………ホントに意外と頑固だなぁ。僕は、そんな政治的な判断よりも、凪沙といのりの方が大事なんだよ。だから、お願いする。もっと、僕を頼って欲しい」
「……はぁ〜い」
どうにも渋々といった様子ではあるものの、頷いてはくれた。集もそれを確認して、荷物を自室に置くとキッチンに入って夕食の準備を始める。いのりも手伝おうとしたが、止められてしまい、大人しく席に着く事にした。
◇
「こーんばーんわー」
夕食後、リビングでまったりとしていた、集、いのり、凪沙の元に急な来客があった。軽快な調子の声で挨拶してきたのは、隣である704号室に住んでいる暁深森である。
「あれ、深森ちゃん?どうしたの?」
「やっほ、凪沙ちゃん、いのりちゃん。調子はどうかしら?」
深森はずかずかとリビングに入ってくると、ソファに座っている、いのりと凪沙に並ぶ様にして腰を下ろす。因みに最近、歳は既に40を過ぎた筈であるのに、未だに若々しさを保っているのは、何故なのかとよく聞かれるらしい。
「ん、平気。今日もお腹を蹴ってきてた」
「ふんふー♪どれどれ」
深森は、いのりの大きくなった腹部に手を当てると自らの
「うん、順調ね。ただ、そろそろ入院した方がいいわね。明日にでもウチのラボにいらっしゃい。凪沙ちゃん、明日いのりちゃんを送ってくれる?」
「うん、いいよー。じゃあ、ついでに私も暫くゲストハウスで寝泊まりするね。いのりちゃんの事、心配だし」
「私からしたら、貴女の方も心配なのよ?」
「それはさっき集君にも言われたよ」
「あら、そうなの?集クンがいい旦那さんみたいで、良かったわぁ」
「どうも。………ところで、牙城さんは相変わらずですか?」
「えぇ、相変わらずねぇ。まったく、いつまで拗ねてんだか」
深森の言葉に、集は苦笑いをこぼす。いのりは興味無さそうにしており、娘である筈の凪沙は表情を歪める。と言うのも、凪沙の父である暁牙城は、凪沙の妊娠発覚後、狂喜して踊るように喜んで…………というか喜びに喜び過ぎて喜んでしまい、娘からは暫く近付くなと言われてしまったのだ。
凪沙は頭を冷やせと言いたかったのだが、考えがあれよあれよと脳内で飛躍したらしく……
娘にウザがられた→孫に会わせて貰えない
という考えに至ったらしく、現在はイジケテどこぞの遺跡の発掘に夢中だという。
「も〜〜………牙城君もホントに子供なんだから。娘の私は恥ずかしいよ……」
「ま、いのりちゃんの出産予定日には帰ってくるでしょ。何たって
深森はケラケラ笑って、集といのりを見る。実は集と、いのりの後見人は居ることには居るのだが、それでも親がいないというのは、問題があるかもしれない。という事で暁夫妻は、集といのりを養子縁組して、親子関係となっていた。
集といのりは当初遠慮したのだが、どうせ凪沙と結婚したら同じなのだからと言って、半ば無理矢理に、息子と娘にされてしまったのだ。牙城はこれ以上男が増えてもなぁ……と微妙な顔をしていたのだが。当然、深森の無言の圧力で閉口していた。だが、娘が出来たという方には大喜びであった。
と言っても、集もいのりも未だに慣れない様子ではあるのだが……
「じゃあ集クンも、いのりちゃんが入院する間はゲストハウスにいらっしゃい。離れると心配でしょう?」
「え、良いんですか?」
「いいのいいの。普段から使ってるの私しか居ないし。それと、掃除してくれる人員が確保できるしね♪」
「………そっちが本音ですか」
「やーね、そっちの理由は半分くらいよ」
「多いじゃないですか……」
深森の言葉には呆れつつも、いのりの入院中であっても近くに居る事が出来るというのは、渡りに船だと思い、結局集はその提案を受け入れた。
そして、その日の夜に荷物をまとめ、翌日にはゲストハウスでの生活が始まった。
・・・・・・大元の方が完結してないのに、何やってんだって突っ込みはナシでお願いいたします。反省してますので、はい・・・
ええとですね、某作品を読んでいて、「あ、俺もアフターみたいな話書いてみたい」
と思いまして、はい・・・
あ、途中のルビは、間違えではないです。ワザとああしました。幽鬼=ゲシュペンストでもいいかなー、とも思ったんですが、ダリル坊やの愛機の名前が入るのもなぁ・・・と思って、ああいう名前にしました。
完璧見切り発進なので、見通しも完璧ではないんですが、応援していただければ幸いです。
ではでは、アリーヴェデルチ!