名有りの艦娘   作:因幡の白ウサギ

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自分で自分の作品を見返したら、あまりにもダメ過ぎたので書き直し。と言っても、これだって出来が良いとは言えないんだけど……。


depth:00 名前を知る者達

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キラキラと輝く海の上で、轟音と爆発が幾つも発生する。露出した肌に張り付く水滴に言いようもない不快感を感じながら響は前を見た。視界の先には駆逐艦が5隻、ロ級が1隻とイ級の後期型が4隻、響に向かって来ていた。

 

「数だけは多い。全く嫌になる」

 

戦場を高速で駆ける響の憂鬱としたその声は、真正面から襲い来るロ級の雄叫びにかき消された。くるりと半回転しながらロ級の突進を回避すると、ロ級の無防備な背中に砲弾を一発放つ。砲弾を避ける事も出来ずに直撃したロ級は、苦しそうな呻き声を上げながら動きを止めた。そしてそのまま水底へと沈んでいく。

 

「次、来なよ」

 

響の言葉に反応するかのように、イ級の後期型が4隻飛び掛って来た。今度は馬鹿正直に真正面からではなく、前後左右から挟み撃ちにする形での攻撃だ。

イ級の口内にある砲門が火を吹いた。前後左右同時に放たれた砲弾は、響より手前の地点に着弾して大きな水柱を発生させる。この海域で既に沈んだ深海棲艦の血と遺骸が混じった水柱だ。

 

「そう来るんだ……」

 

数秒とはいえ、四方向全部の視界が閉ざされた響を喰らわんばかりの勢いで全てのイ級が加速して水柱と、その先に居る響へ突っ込む。下手をすれば正面から来る別のイ級に激突しそうな勢いであるが、響を仕込められればそれで良いと考えているのか、その目に一切の躊躇いは存在しなかった。

水柱を突き抜けたイ級は、突っ立っている響の姿を捉えて更に加速する。逃がしはしない、とでも言うかのように吼えた4隻のイ級が、たった1隻の駆逐艦の少女目掛けて捨て身の突進を仕掛けた。

 

「……でも」

 

響は袖から取り出した小太刀を宙へと放り投げると、自分もその後を追うように跳躍した。イ級の高さを遥かに上回る、人間では到底不可能な大跳躍だ。

急に目の前から獲物が消えたイ級が速度を落とせる筈もなく、その全てが別のイ級に激突して動きを止めた。少なからずダメージを負い、そのうえ動きも止めたイ級達を宙に居る響が見逃す筈もなかった。

 

「甘い」

 

響が逆手に持った小太刀がイ級の脳天に突き刺さる。急に頭に走った痛みにイ級が悶えて小太刀と響を振り落とそうとするが、響はそれより早く小太刀を振り抜いてイ級を足蹴にしながら跳躍、対面に居る別のイ級に振り下ろした。同じように逆手持ちで小太刀を突き刺し、振り抜いて跳躍し、今度は海へと着地する。──いや、この場合は着海という方が正しいのだろうか。

 

「■■■■■■■‼︎」

「■■■■■ ■■■‼︎」

 

人間で言うところの頭を切り裂かれて活動を停止した2隻が力無く海に浮かぶ。残った2隻は、死体を無理矢理押し退けると、方向転換をして響に砲撃した。

瞬時に2発、続けて2発の計4発が放たれる。1隻は直撃コースで放ち、もう1隻は回避先に置くように放っていた。

それを見た響は、一瞬たりとも躊躇わずに前へと突き進む。迂回など一切せずに、最短距離でただまっすぐに。

響は再び宙へと跳ぶ。帽子が飛ばないように片手で押さえながら、それなりに高く跳んだ。そうして1発目をやり過ごすと、今度は着地地点を見据えて海へと降下する。そして、後を追うように飛んで来た2発目の砲弾、その側面に着地して、そのまま大ジャンプした。

まさかそのようにして跳ぶとは思わなかったのか、イ級から僅かに動揺の色が見て取れた。それを上から見た響は、装着している通信用のインカムのマイクに向かって口を開く。

 

「視点は引いた。後は頼むよ」

『任せなさい』

『狙い撃つわ!』

 

耳元から加賀と瑞鶴の声が聞こえたと同時に、響の背後の方から二本の弓矢が音速で飛んで来て正確に2隻のイ級の脳天を貫いた。きっと何が起こったのか分からぬままに死んだであろうイ級の上に着地した響は、周囲を見渡して状況を確認する。

 

「助かった。ありがとう」

『へへっ、どういたしまして!』

『礼を言われる程の事では無いわ。チームメイトを助けるのは当たり前よ』

 

周囲に敵影は無かった。海上にはポツンポツンと深海棲艦の遺骸が残されていたりはするが、それ以外に深海棲艦らしき敵影は見えない。どうやら、この付近にはもう深海棲艦は居ないようだった。

 

「川内、片付いた?」

『ん〜まあ概ね。そっちは?』

「こっちも今ちょうど終わったところさ。夕張は?」

『私の方も終わってるわ。ちょーっと物足りなかったけど』

「時雨、そっちはどうだい?」

『いや、まだ。ちょっと面倒くさくて……ねっ!』

 

時雨がそう答えると同時に爆発音が聞こえた。どうやら相当苦戦しているようである。

 

『……さっきからキリがない。援護を頼めるかな?』

「オーケー。皆、今のは聞いてたね?時雨の援護に向かうよ」

『あいあ〜い』

『了解。すぐに向かうわ。行くわよ瑞鶴』

『はーい』

『了解っと。すぐに向かうね』

 

それぞれがそれぞれらしい返事をして、各々が時雨と、この海域のボスがタイマン張ってるであろう場所へと向かう。響もそれに遅れないように背中の推進機関の出力を最大まで上げた。一瞬でトップスピードへと到達した響は、目の前の敵が本拠地にしている無人島へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官。交戦中の第1艦隊から、最後の詰めに入ったとの報告が入りました」

 

執務室。書類を片手に持つ香取の報告を聞いた提督──名を志木(しき) 終夜(しゅうや)という──は書類仕事をしていた手を止めた。そして時計を見て、その表情を意外そうな物に変える。

 

「思ったより遅かったな。何かイレギュラーでも起きたのか、それとも単に数が予想より多かっただけなのか。何にせよ、良い事ではないのは確かか」

「しかし提督、戦場は常にイレギュラーが起こる場所ですし、この程度の誤差ならば許容範囲内なのではないでしょうか?むしろ上々とさえ言えるかと思いますが……」

「そうなんだがな……たった数分の誤差で、生きるか死ぬかが決まる事もある。無論、俺だって常に戦場で定刻通りに事が進むと思ってる訳じゃないし、その程度の誤差であいつらが死ぬとは考えられないけどもさ、そういう事もあるだろ?」

「それは、そうですね」

 

終夜は時計から目線を外し、そして香取に片手をさし出した。最初はその行動の意味が分からずに首を傾げていた香取だが、次の終夜の言葉で気が付いたのか顔を赤くしながら書類を差し出した。

 

「その書類、俺にだろ?」

「へ?え、ええ。そうです、どうぞ」

「ありがとう」

「それでは私はこれで失礼します」

「ああ、少し待ってくれ。ついで……って言うのもアレなんだが、ちょっと頼まれてくれるか?」

「はい?何でしょうか?」

「これなんだがな」

 

香取が振り向くと、終夜は片手で机の引き出しから4枚の書類を取り出して香取に差し出した。香取がそれを受け取り、その書類に書かれた文面を読み進めるにつれて、段々と顔色が険しくなる。数分後、それを読み終えた時の香取の目には、信じられないという気持ちと、嘘であって欲しいという気持ちの二つが、ハッキリと滲み出ていた。

 

「……提督。これは、冗談ですよね」

「俺も冗談であって欲しかったさ。だがな、これが現実だ」

 

香取は一旦目を閉じると深呼吸をした。そして気持ちを落ち着かせると、決意の籠った目で終夜を見る。香取のその様子を見た終夜は頷くと、指示を香取に出した。

 

「一枚を長門に、一枚を陸奥に渡してくれ。後の2枚は香取と鹿島のだ。そして時雨達にも連絡。戦闘終了後、直ちに航路を横須賀へと向けさせてくれ。補給は近くの鎮守府で出来るように手配するのも忘れずにな」

「了解しました。至急手配を行います」

「すまんな。本来なら俺がやるべきなんだろうが、こっちも緊急で招集されててな。これからすぐに集まらなきゃいけないんだ」

「承知しています。……なら提督、秘書艦代理は誰にいたしましょう?」

「そうだな……春雨に頼むとしようか。春雨、居るな?」

「はい司令官。春雨は此処に居ます」

 

床の一部が外れると、そこからメイド服姿の春雨が俊敏な動きで這い出てきた。終夜は立ち上がると、素早く移動した春雨から壁に掛けられていた軍帽を受け取り、それをかぶりながら扉の方へと歩いていく。

 

「すぐに戻るが、留守の間は頼んだ。行くぞ春雨、遅れちゃ悪いからな」

「はい司令官」

「いってらっしゃいませ、提督」

 

終夜が執務室を出て、廊下の角を曲がったのを見送った香取は、渡された書類を持って港へと小走りで向かう。この時間は、待機中の艦娘は港で各々が訓練に勤しんでいるのだ。あくまで自主的な物だが、職務に真面目な2人は必ずそこに居ると、香取は確信を持っていた。

その香取の予想通り、長門と陸奥は海上で近接戦闘の訓練を行っていた。小走りでやって来る香取に、何やら良からぬ気配を感じ取ったのか、長門と陸奥は訓練を中断して香取の近くまで来る。

 

「どうした香取。何かあったのか?」

「はぁ、はぁ……提督が、コレを……お二人に、緊急で渡すようにと……」

「書類?しかも緊急でなんて……何があったのかしら?」

 

2人は書面に目を通し、香取と同じように表情が険しく変わる。読み終えたのか、書類から目線を外した長門は、少し震えた声で香取に問う。

 

「香取……この書類に書かれた事は真実なのだな?」

「……私も信じられないです。しかし、提督が事実だと仰っていたので、嘘の類いではないと思います」

「…………そうか」

 

少し長い沈黙の後にそう答えた長門は、胸元にぶら下げたホイッスルを吹いた。ピィーーーーーッという音が海の上に響き、訓練に勤しんでいた全艦娘が長門に注目する。

 

「訓練中止!総員集合‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと少しなのに……随分と姑息なマネをするじゃないのよ!」

 

奥に居る傷ついた泊地棲鬼を護るように、イ級やロ級などの駆逐艦が肉壁となって先へ進むのを妨害してくる。空を飛ぶ航空機を撃ち墜としながら、苛立ちを隠さずに瑞鶴はそう吼えた。

 

「これ、どう考えても自己再生までの時間稼ぎだよね……!」

 

響は戦艦ル級改flagshipを小太刀で真っ二つに斬り裂きながら、奥の泊地棲鬼を睨んでそう言った。その泊地棲鬼は、響の言葉が正しいと証明するかのように失った片腕と艤装を再生している真っ最中である。

 

「もう少し、あと少しなのに……!」

 

この物量だけでも手に余るというのに、泊地棲鬼まで戦線に加わると今の自分達では勝ち目はないという事は、この場に居る6人全員が感じている事だった。

 

「このままじゃジリ貧だ……加賀、瑞鶴。一点集中で突っ切るから、突破用の穴を開けて欲しい」

「了解したわ」

「穴を開ければ良いのね?」

 

この状況を打破するには、戦力を一点集中させて突破するしかない。そう考えた時雨は、6人の中で最も穴を開けるのに適した2人にそう頼んだ。

2人は矢筒から一本、他の弓矢と矢羽の色が違う弓矢を取り出すと、それを弓に番えて放つ用意をする。

 

「その後は夕張と川内で穴を広げて、トドメは僕と響でやる。行けるね?」

「任せて。敵の撹乱は得意だから」

「足止めって事は、私の新発明品『足止めーる君3号』が活躍する時ね!」

「やってやるさ。要はアイツの首を取れば良いんだろう?」

 

主砲を発射しながら帰って来る気合いの入った答えに時雨は笑みを見せて、次の瞬間には一切の油断を排除した真面目な表情で泊地棲鬼への最短ルートを頭の中で思い浮かべる。

 

「そうさ。……加賀、瑞鶴、頼んだよ!」

「穿つ」

「どんな装甲だろうと、撃ち抜くだけよ‼︎」

 

放たれた弓矢は、泊地棲鬼の真正面を塞ぐように密集している浮遊要塞の一つに突き刺さり、大爆発を起こした。その大爆発は、弓矢の先端に取り付けてあった小型の爆弾による物だった。

その小ささに見合わぬ爆煙と爆風が発生し、浮遊要塞や浮遊要塞から発艦した艦載機が吹き飛ばされて、数秒ではあるが泊地棲鬼へと繋がる道が出来る。

 

「穴は開けたわ。川内、夕張、広げなさい!」

「言われずとも!」

「それっ、道を開けなさい!」

 

慌てて空いた穴を塞ごうとする深海棲艦達を、川内が瞬時に投げた何十本もの魚雷と、夕張の艤装から放たれた砲弾が妨害する。

夕張が放った砲弾は、少し距離を進むと急に真っ二つに割れて中から幾つもの爆雷をばら撒いた。それは数秒で海に落ち、落ちた直後に超巨大な水柱を何度も発生させる。その勢いは、爆発地点からそれなりに離れた位置に居た筈のイ級を転覆させる程に強い。

 

「申し訳ないけど、此処は通行止めよ!」

「やったぁ!現場での実験も成功ね‼︎」

「響!」

「殺す」

 

4人が作った道を時雨と響は最大速力で駆け抜け、泊地棲鬼へと肉薄した。もう周りの深海棲艦はアテには出来ないと悟ったのか、泊地棲鬼も片腕を失ったままで時雨と響を相手取る。

 

「イマイマシイ……!」

「それはこっちの──」

「──セリフだよ!」

 

だが、元々白兵戦に慣れていなかったのか、あまりにお粗末な動きだった泊地棲鬼の首が宙を舞うのに、1分も必要とはしなかった。片腕と装備の9割を無くしても、なお粘り強く抵抗を続けていた泊地棲鬼の最後は、思いの外あっさりとした物だった。もっと苦戦するだろうと思っていた時雨と響が、拍子抜けするほどあっさりとしていた。

ポーンとあらぬ方向へと飛んでいった泊地棲鬼の首に目を奪われて動きを止めた深海棲艦は、次々に加賀と瑞鶴の弓矢や川内の魚雷や、夕張の『秘密兵器4号(徹甲弾)』の餌食になって沈んでいく。

負けた事を理解したのか、海域から逃げ出そうとした深海棲艦も居たが、それらも例外なく仕留められた。

 

 

こうして、時雨達は無人島を本拠地にして活動していた深海棲艦を殲滅し、また一つ海域を解放する事に成功したのだった。

 

 

「制圧完了、かな?」

「もう増援も来ないし、恐らくはそうでしょうね」

 

油断なく周囲を警戒している加賀は、弓に矢を番えたままそう答えた。

 

「そうであって欲しいけど……予想外の出来事が予想通りに起こるのが戦場だから、油断は禁物よね。響もそう思うでしょ?」

「……………………」

 

体内に流れる燃料に引火したのか、洋上だというのに蒼く燃え盛っている戦艦ル級の改flagshipだったモノが海中に徐々に沈んでいくのを眺めている響は、瑞鶴の問いを無視した。その瞳は蒼い炎を無機質に映しているだけで、そこから感情のような物を読み取る事は出来ない。

そもそも聞いているかどうかすら怪しい響の様子を見た瑞鶴は何かを考えるようなポーズを取った。

 

「相変わらず、私には冷たいわね。まだ警戒されてるのかしら」

「いや、あれは単に聞いてないだけだと思うけど……」

 

白から蒼へと色が変わって若干の血生臭さを漂わせているマフラーを両手で持ち、このまま海に不法投棄するか否かを考える川内は瑞鶴の少々大きな独り言にそう答えて、そしてチラッと加賀と時雨の方を見た。

 

「川内、何か私に用かしら?」

「どうしたのさ川内。盗み見なんて君らしくない」

「いや……何でもないよ、うん。何でもない」

 

やっぱり持ち帰らなきゃダメかぁ。

不法投棄は絶対許さない二人はしっかりバッチリ川内を見ていた。いや、見ていたというよりも川内が二人の方を見た瞬間に川内の方を見た、と表現するのが正しいか。マフラーを海に投げ捨てる事を諦めた川内はマフラーを片手で持ち、もう片方の手で蒼い血が滴るクナイをくるくると回す。

 

「うんうん、良いデータも取れたし、後はコレを使って改良するだけで……」

 

夕張は1人、取っていたデータを見て想像を膨らませては勝手に盛り上がっていた。

ロクな補給もせずに3時間以上も戦闘を続けていた為か、全員の艤装は細かい傷が付いていた。常に前線で敵の注意を引いていた響と時雨は、その頬に一筋の紅い線が走っている。

 

「さて、じゃあ帰ろうか。さっさと帰って海域巡回のコースとかを決めないとね」

「解放した筈の海域が奪い返されるとかは、もう無いようにしたいわね」

「あれは……悪い夢、だったわね」

「その前に時雨、提督に連絡しておかないと」

「ああ、そうだった。忘れるところだったよ」

 

夕張に言われて戦果の報告をするのを思い出した時雨は通信用のインカムを、短距離通信モードから長距離通信モードに変更した。前者は戦闘中のやり取りに、後者は鎮守府との交信をする時に主に用いられる。

 

「聞こえてるかい?こちら時雨。海域は無事に解放したよ。これから帰投するから、補給の準備をお願い出来るかな?」

『ああ、良かった!やっと繋がりましたね!』

 

鹿島のその言葉に時雨は違和感を覚えた。普段の鹿島はやっと繋がった、という様な趣旨の言葉を使わない。

不審に思った時雨は、全員にインカムを長距離通信モードに切り替えるようにハンドサインで指示した。

 

『第1艦隊の皆さんへ、提督から次の作戦指令が下されています。戦闘終了後、直ちに横須賀に向かってもらいたいと』

「次って……ちょっと待ちなさいよ。私達は今戦闘を終えたばかりなのよ?まだ補給すらも行ってないのに、私達にまた死地に赴けって言うわけ?」

 

瑞鶴の言い分も最もだ。生きるか死ぬかの戦場を何とか生き抜いた6人は、心身共に疲労している。今は時雨と響が軽い怪我を負う程度で済んではいるが、この状態で次の戦闘に向かうと、少なくない被害が出るのは想像に難くなかった。

 

『それは分かってはいるのですが……何分、緊急ですので』

「そもそもさ、何でこの周辺じゃなくて横須賀へ向かわせるの?」

『……それは、ですね……』

「……何か、あったのかい?」

 

鹿島はそこで一瞬、躊躇いを見せたのか息を飲んだ。しかし、覚悟を決めたような声色で次の言葉を放つ。それは、時雨達を驚かせるのに十分な威力を持っていた。

 

『横須賀鎮守府、及び大本営が、敵新型深海棲艦からの襲撃を受け、現在壊滅状態だそうです。現在大急ぎで復旧作業を行ってはいますが、鎮守府の防衛に回っていた高練度の艦娘の半分ほどが轟沈、守備戦力が全く足りない状態で、このままでは再び鎮守府が襲撃された時に陸地への侵攻を阻止出来ないと。

なので皆さんには、横須賀鎮守府が再興するまでの間だけでも、襲撃する深海棲艦から横須賀鎮守府を守って欲しい、と提督から指令が下されています』


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