そうだ、キャラで遊ぼう!(短編集)   作:NAIADs

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元ネタは大学のとある授業の課題です。


Case.EX1 「桃太郎後日談、NAIAD編その一」

桃から生まれた桃太郎は、犬、雉、猿を従者にして鬼ヶ島へ行き、鬼退治をして宝物を持って帰る。

桃太郎はそんなハッピーエンドで終わりますが、現実はそう甘くはありません。

実は後に大変な不幸が桃太郎一家を襲うのでした。

 

桃太郎が住む島の沖合、数キロメートル。

4隻の戦艦と1隻の航空母艦が単縦陣で展開していた。

それぞれ300m以上もの大きさで、それぞれ従来の船の構造から逸脱している。

その艦隊の最前列に浮かぶ旗艦、常陸の艦長室には日本人とドイツ人が居た。

ドイツ人はドアのそばに立ち、何かを待っているようだ。

一方、日本人の方は、パソコンと睨めっこしている。

『大條司令、艦隊展開完了です』

「よし、じゃあ航空隊と陸戦隊の展開準備にかかれ」

『アイ・アイ・サー!』

「しかし、我々PMCが出撃するなんてどういう風の吹き回しですか?」

ドイツ人が口火を切った。

そう、彼らは『日本平和維持軍』という民間警備会社(PMC)の部隊である。

精鋭が集う中でも、さらに精鋭と言われる特務第一機動艦隊。通称、N.A.I.A.D。

彼らはこの部隊の司令と副司令なのだ。

日本人のほうが、艦隊司令の大條透中佐。

ドイツ人のほうがノイマン・ジュペー大尉である。

 

「ノイマン、最近国連に加盟したオーガ連邦ってあるだろ?」

「はい、”鬼”と呼ばれる人間の一種だけで構成された新興国家ですね」

「ああ。そこの先住民族が、隣島の海賊によってほとんど全滅したらしい。それで隣島の海賊を殲滅せよっていうのが俺たちの任務」

オーガ連邦とは、5つの島で構成される総面積300㎢、人口40万の島国である。

カメルーンの南東5000㎞程に位置し、全国民がオーガという新しい現生人類で構成されている。

 

オーガは学名ホモ・サピエンス・オーガレンシスと呼ばれ、いわゆるサピエンス化において新たな感覚器官としてホーン器官(日本語で角)が頭蓋骨に形成された現生人類をさす。

オーガの特徴として、頭頂部の角や平均身長200㎝という高い身長、そして婦女子でも300㎏前後を軽く持てるという他の現世人類をはるかに超える膂力が挙がる。

はるか昔にオーガの一部は移住し、オーガやゴブリン、鬼という名称になって社会に溶け込んでいった。

ゴブリンとは主にオーガの子供や低身長のオーガを差し、鬼はオーガ全般の日本語読みとなる。

 

オーガ連邦は最近まで存在すら感知されず、まず連邦政府は最初に日本政府に接触してきた。

酒呑童子に代表される鬼(=オーガ)の移住が多かったことなどが、理由として挙げられている。

以後、オーガ連邦政府は日本政府と協力関係を結び、いくつかの日系企業も進出するなど、日本と良好な関係を築いている。

 

「普通、こういうのって米軍とかの任務だと思いますが…」

「米軍も英軍もロシア軍も嫌って言われたんだとさ」

「はぁ、で、我々ですか…」

「ま、わが世界平和維持艦隊としては、国連の手先というのも悪くないが」

大條は呆れたように手をひらひらと振る。

ナイアッドとは、特務第一機動艦隊の計画名の『新方法の実行による世界平和維持、防衛コンセプト機動部隊』(carryout by New wAyto worldwIde peAcekeeping and Defense consept taskforce)の一部の頭文字を使いた略称である。

 

「で、海賊組織の名前は何なんだ?」

「えーっと、『モォ・モォータ・ロウ』ですね。なんか日本語みたいです」

「まぁアフリカ系の言葉には時々日本語っぽいのがあるしな。どこの言語か忘れたが、ミヤシタとかサカタって言葉があるって聞いたことがある」

「でも、そこまで解っておきながら、どうしてオーガ連邦軍が出ないんでしょうか?」

「まぁ新興国家だから、軍人が少なくて装備もアレなんだ」

「成程」

「では、そろそろCICのほうにお願いします。大條司令」

「了解」

大條が席を立とうとした途端に、パソコンからピーッと音が鳴る。どうやら通信が入った様だ。

分割された画面に、パイロットスーツを着た黒人と、ベレー帽を被る日本人が映し出される。

『司令、航空隊の出撃命令はまだか?隊員達が待ちくたびれてる』

『そうですぜ、大條の旦那。早く出撃させてくだせぇ。陸戦隊の連中も命令を待ってますぜ』

黒人の方が航空隊隊長のマイク・フランクスで、日本人の方が、陸戦隊隊長の百舌鳥隼人。

双方とも大條の部下である。

「仕方ねぇなぁ。よし、オペレーション・アルゴー発動。存分にやってこい」

『『アイ・アイ・サー!』』

大條からのゴー・サインに、百舌鳥とマイクは嬉しそうに返答した。

 

最後尾の船から、次々と航空機が発進していく。

全長500m、全幅350mもある巨大な船体はまるで島の様だ。

舷側より張り出す片舷4基もある連装砲台は、見る人を要塞空母と呼ばせる。

 

この船の名は瑞竜。N.A.I.A.D唯一の航空母艦である。

船としての火力や、150機以上を運用できる航空機運用能力は、世界一といっていいだろう。

また、陸戦隊発進用のドックも備えている。

ただし、機動力は機動艦隊の中でも鈍重であるため、空母というか洋上基地と言った方がいい。

 

マイク以外のN.A.I.A.Dの航空隊は12個の飛行隊で構成され、コールサインは12星座で統一されている。

このうちヴァ―ゴ(乙女座)、ジェミナイ(双子座)、サジタリウス(射手座)はヘリ部隊である。

残りは固定翼機の部隊で、リーブラ(天秤座)が電子攻撃部隊、アクウェアリアス(水瓶座)が早期警戒部隊、スコーピウス(蠍座)が輸送隊であり、それ以外は戦闘攻撃部隊で構成されている。

 

今回の作戦は近接航空支援が主の対地戦だ。

衛星では戦闘機は確認されていない為、対空戦は発生しないだろう。

敵を発見し次第攻撃、撃破する。それ以外は無い。

つまらないのは、自分が出られないことだ。

 

「バルチャー3から偵察隊、状況はどうだ?」

『こちらリーブラ1、火砲や対空火器の類は見当たらない。レーダーの類もないぞ』

『アクウェアリアス1からバルチャー3、こちらも異常なしです』

「リーブラとアクウェアリアスは帰投せよ。キャンサー隊、パイシーズ隊は発艦」

『了解』

『了解しました』

キャンサー隊とパイシーズ隊の機体が発進していく。

「いいなぁ…、ケホン。エアリーズ隊、トーラス隊、発艦せよ」

 

マイク・フランクスは前線に出る隊員たちを羨望した。

 

陸戦隊はAからZのコールサインで統一されている。

百舌鳥隊長はアルファ、イワノビッチ副隊長はブラボー、チャーリー以降は4両小隊で構成される。

 

今回の作戦は、島の海岸に設定されたユタ、ゴールド、、ジュノー、ソード、オマハに上陸、橋頭保を確保したのち、内陸部へ侵攻するというものだ。

偵察の結果トーチカの類はないようなので、数分で確保できるだろう。

 

『こちらチャーリー、ユタに上陸』

『ノヴェンバー、ゴールドに上陸開始』

『タンゴ、ジュノーに上陸せり』

『フォックストロット、ソードに上陸した』

『ウィスキー、オマハを確保した』

 

…予想より数分速かったな。

「よし、内陸へ侵攻せよ」

『了解』

「いいなぁ、お前ら」

『ん?隊長、何かおっしゃいましたか?』

「うんにゃ、何でもない」

百舌鳥は頭を振った。

 

その頃、島の西側上空。

4機の戦闘機が、太陽の光を浴びて飛行していた。

「キャンサー1より2、何か見えるか?」

『い―え、なーんにも。ただのだだっ広い平原ですね』

『キャンサー3より1、燃料と弾薬の無駄だ。帰りませんか?』

『1より3、もうちょっと行けば何かあるだろ。このまま続行する』

『キャンサー3、了解。交信終了』

 

通信を終えた、その瞬間だった。

バァン!と、何かがぶつかる音がした。

見上げると、風防に小さいながらも蜘蛛の巣状の罅が入っている。

 

『キャンサー2から1、どうかしました?』

「風防に罅だ、大きくはないが。多分バードストライクだな」

『支障が発生する可能性があります。帰投しては?』

「そうだな。キャンサー1より瑞竜、バードストライクの為帰投する」

『了解、帰投してください』

「けっ、つまんねぇの」

キャンサー1は進路を転換し、母艦へ帰投していった。

 

地上では、一羽の雉が骸を晒していた。

キャンサー1とぶつかった衝撃で全身の骨が砕け、即死している。

こうして桃太郎の従者の一匹である雉は、誰も知らないところで撃破された。

 

その頃、島の東部では上陸した陸戦隊が内陸へ進撃していた。

戦車隊が疾走…ではなく時速9kmの速度で移動している。

別にこの戦車が遅いという訳ではない。

砂漠地帯など遮蔽物が少ない場合の安全確保や、精密射撃がしたい時などはこうして速度を落として運転する場合がある。

現代の戦車砲は強力なため、一撃必殺になる場合が多い。

なので普通は遮蔽しながら戦うのが基本だ。

 

「チャーリーよりフォックストロット、敵兵は確認できるか」

『いやチャーリー、敵兵の姿すら確認できない。何かが妙だ』

「各車警戒に当たれ」

陸戦隊で使用されているM-05グラント・シリーズは車体に4条の履帯を装備した戦車だ。

所謂キャタピラーを通常の戦車の2倍付けている為、不整地踏破力は他の戦車より上である。

グラント・シリーズの特徴はこの4条の履帯と、共通化した車体だ。

これによって、色々な車両をより低コストで開発できる。

M-05t ノーマル・グラントが戦車、M-05aグラント・アーティラリが自走砲、M-05cグラント・キャリアーが歩兵戦闘車、M-05bベルゲグラントが戦車回収車である。

 

チャーリー小隊はノーマル・グラントの4両編成で、2門の155mm電磁加速砲が砲塔に搭載されている。

交互射撃による高い発射速度を持ち、同時に斉射することも可能だ。

衛星とのデータリンクによる高い精密射撃能力も兼ね備えている。

 

フォックストロット小隊はグラント・キャリアーの4両編成で、砲塔に30mm機関砲と対戦車ミサイルというオーソドックスなデザインだ。

歩兵が10名搭乗できる。

 

ハッチから顔を出したチャーリー小隊の戦車長は、向かってくる人影を確認した。

甲冑の様な物を身に着け、槍を持って突撃してきている。

「チャーリーよりフォックストロット、敵兵だ!突撃してくるぞ!」

『何?カミカゼか?』

「さぁな、解らん。機銃でどうにかするぞ!」

『了解!』

チャーリー小隊は12.7mm同軸機銃、フォックストロット小隊は30mm機関砲を発射した。

銃弾の雨は甲冑を着た武者に降り注ぎ、百名の武者はなすすべもなく壊滅した。

 

『こちらサジタリウス1。チャーリー、フォックストロット、大丈夫か?』

轟音を上げながら、AH-64D アパッチ・ロングボウの部隊が4機飛来する。

「ああ、こちらは大丈夫だ。先行してくれ」

『了解、前進する』

アパッチ・ロングボウは砂煙を上げて前進していく。

 

「俺たちも前進だ!サジタリウスに全部取られるぞ!」

『了解!』

チャーリー隊とフォックストロット隊も90kmもの最大速力で前進を開始した。

 

この時、70tもあるグラントの車体に押しつぶされ、犬が伸し餅になっているのは誰も居ない。

桃太郎の従者の一匹である犬は撃破され、砂漠に血の華を咲かせていた。

 

先行したサジタリウス隊は、10分ほどで目標付近に到着した。

アパッチ・ロングボウは高度9mという低い高度で飛行していた。

これは墜落寸前なのではなく、NOE飛行(Nap Of theEarth:地形追随飛行)という攻撃ヘリの基本的な飛行である。

燃費が悪くなるという欠点があるが、隠密性能の高い飛行方法だ。

 

『サジタリウス3より1、目標を確認した』

「了解サジタリウス3、何に見える?」

『まるでダンジョンだな』

「ダンジョン?地下迷宮か、面倒だな…」

『違いますよ、天守閣です。百舌鳥隊長と一緒に見に行ったでしょうに』

「よし、俺は天守閣を攻撃する。2、3、4は散開して周辺施設を攻撃」

『了解いたしました』

『了解』

『はっ、了解しました!』

4機は高度を上げてバラバラに展開し、それぞれ攻撃を開始した。

 

桃太郎一族が住まう天守閣を守る兵士は、初めて恐怖に遭遇した。

弓矢を撃つも効果はなし。その時点で兵士たちは抵抗力を失うことになる。

兵士たちは次々と撃破されていった。

あるものはチェーンガンで、運の悪い奴らはロケット弾でまとめて吹き飛ばされた。

兵士たちは次々と殺戮されていく。

 

天守閣に居る者たちも、殺戮者の手から逃れる事は出来なかった。

サジタリウス1による30mmチェーンガンの機銃掃射を受けたのだ。

30mmもある装甲榴弾は壁を易々と貫通し、中に鉛弾の雨を降らせていた。

家臣や女中は風船のように破裂し、血を辺りに撒き散らす。

桃太郎の正室も、従者である猿も砲弾の犠牲となり、ブチュッという音を立てて消滅した。

 

桃太郎は幼い息子を連れ、命からがら地下へ逃げ込んだ。

 

サジタリウス1は天守閣を虱潰しに銃撃すると、天守閣の上まで上昇する。

「燃料がそろそろやばいな」

『こちらも帰還できるほどの燃料しかありません』

「よし、後続隊も来る。帰還するぞ」

『了解』

アパッチ・ロングボウの編隊は母艦へ帰還していった。

 

数分も経たないうちに、チャーリー隊を含めた陸戦隊が次々と到着し、殺戮劇の舞台へ砲撃を開始する。

戦車や自走砲の砲撃に晒され、天守閣は爆炎を上げて崩れていく。

5分も経たないうちに、3分の1を吹き飛ばしてしまった。

 

その頃、桃太郎は地下で宝物庫を開けていた。

ボロボロになった城を捨て、宝物を持って船で脱出する算段だったのだ。

当然のことながら、地上への出口は空いている。

これがアダとなった。

戦闘機が投下した爆弾の一発が、運悪く出口を通って宝物庫に着弾してしまったのだ。

しかもそれは気化爆弾であった。

エアロゾルとなった酸化エチレンが拡散し、信管によって火が付く。

 

桃太郎は一瞬で1200度以上の爆風に飲み込まれ、消滅した。

 

天守閣は風に流されるように崩れ落ち、炎の柱はまるで墓標の様である。

 

『こちらパイシーズ2、帰投します』

桃太郎にとどめを刺した張本人は、何事もなかったかのように離脱していった。

 

後に大條達が、熱によって液状化した宝の回収に手間取ったのは言うまでもない。

 

人生、そううまくいかないものですね。

くわばら、くわばら。

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