そうだ、キャラで遊ぼう!(短編集)   作:NAIADs

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Phace.EX1 「桃太郎後日談:ニーベルゲンの騎士編」

『桃太郎』において、桃から生まれた桃太郎は、犬、雉、猿を従者にして鬼ヶ島へ行き、鬼退治をして宝物を持って帰ります。

フツーはそんなハッピーエンドで終わりますが、現実はそう甘くはねぇってもんです。

実は後に大変な不幸が桃太郎一家を襲うのでありました。

 

そこは、我々が住む世界とは異なる世界である。

魔術や呪術の類が普通に存在し、ゴブリンや龍といったロールプレイングゲームに出てきそうな怪物たちが暮らす、ファンタジーな世界。

 

桃太郎一家が住む島の沖合に、一隻の船が係留していた。

その船は全長300mもあり、流線型の船体は全体的に三角形のような印象を受ける。

船体上の構造物は艦首の構造物以外は艦橋ぐらいしかなかったが、最近になって砲が備え付けられた。

メインエンジンは後方に4基、船の下部に3基付いている。

その船の名はソレイユ。

とある事情でこちらの世界に飛ばされてきた宇宙船である。

 

その艦橋には一人の男が居た。

彼は金髪碧眼で、端正な顔立ちの中に優しさを感じさせる。

身体は華奢ながら筋骨隆々で、一見すると彼はアスリートの様に見える。

その男の名は、イーサン・ギデオン。

この船の主であり、元NASAの宇宙飛行士。

彼もソレイユ同様、元々この世界には居なかった者である。

外宇宙探査を終えて地球に帰還した際に、とある事故で乗艦のソレイユごとこの世界にワープしてしまった。

ひょんな出来事でニーベルゲン帝国という冗談みたいな名前の帝国を救ったイーサンは、その国の栄誉騎士として働くことになったのだ。

それ以降、この船のメインコンピュータであるイーオス「E.A.O.S(Easy AI Operation System)」とコンビを組んで仕事をしている。

 

『イーサン、今回の目標は?』

「ああ、イーオス。海賊組織タオ・ラオ・レンだ」

『はぁ?』

「そうだな。今回の依頼内容を説明しよう」

イーサンは経緯を説明し始めた。

 

事の発端は数時間前まで遡る。

「はぁ?オーガ島?」

「とにかく助けてもらいたいのです!ギデオン!」

自分の執務室で書類を纏めていると、淡い青色の髪の少女が血相を変えて飛び込んできた。

彼女の名はヨルムンガント。

ミラージュという水上都市の元支配者で、『水』を司る龍である。

とある事情でイーサンたちと出会い一時は敵対したが、和解してからは段々イーサンに好意を寄せるようになり、今では自称婚約者の一人として他の龍たちと寵を争っている。

そんな彼女は普段おおらかで大人しく、こんなに焦った表情は見たことがない。

 

「焦らず、ゆっくりとね」

「実は、こういう事情がありまして…」

ヨルムンガンドはイーサンに事のあらましを説明した。

彼女の説明によれば、オーガ島とはミラージュにほど近いところにある島で、島民がオーガだけで構成されているそうだ。

オーガとはゴブリンの上位種であり、ゴブリンとの違いとしては平均200㎝という高い身長と、意思疎通が可能な点が挙がる。

基本的に気が弱い性格で、人間とはなるべく接触しない。

ミラージュとはまぁまぁ仲が良かったそうだが、そこからSOSがあったらしい。

どうやら島が海賊に襲われて島民数十名が殺され、いくつか金品を強奪されたらしい。

 

「まぁ、君がやるわけにはいかないしね」

「そうですね。すいません…」

龍は膨大な魔力を持ち、一匹一匹に固有の特殊能力を持つ。

『水』を司るヨルムンガントは水上ではかなりの強さを誇るのだが、陸上となるとそうもいかない。

 

彼女は除外するとして、他の龍で考えてみよう。

まずは「ギデオンの第一夫人」(自称)でこの国の第一王女のブリュンヒルデだ。

『再生』を司る黒龍の少女であるが…、彼女は問題外だろう。

何せ彼女は”最弱”の龍なのだ。

龍というのは膨大な魔力を持ち、そんな龍に対して魔術攻撃は論外である。

そして彼女は魔術攻撃は得意なのだが、物理的な攻撃はニガテとしている。

対龍という意味での戦力で言えば陸上のヨルムンガントと同等である。

ややサディズムな性格もマイナスポイントだ。

 

では白龍の少女、クリームヒルトはどうだろう。

彼女はブリュンヒルデ王女の妹で、『破壊』を司る龍である。

『破壊』を司るのでこのミッションには最適と思うかもしれないが、あいつは歯止めが効かない。

要を言えば、欲望に忠実なのだ。

破壊とか殺戮だとかいう龍の本能を、あいつは簡単に開放する。

子供っぽく理性的ではないあの性格で、少し前に手酷い目に遭ったのは記憶に新しい。

 

最後はグズルーンか…。

彼女はクリームヒルトの育ての親で、最近までただの魔術師だった。

とある事件で龍と化して面倒をやらかしてくれた、外見は17歳、中身は2×歳の女の子(?)だ。

…彼女はまだ龍としての経験が浅い。

『時間』を司るとはいえ、前線(?)に出すのは避けたい。

そしてクリームヒルトと若干性格が似ている。ろくでもないことになるのは確定だ。

さらに、今は故郷に帰っているので呼び寄せる必要がある。

 

…って、この向き不向きは対龍戦においてじゃないか!

最近龍に関わりすぎて、対龍の観点で考えてしまう。

勿論、人間に対しては圧倒的な戦力を発揮する。

というか、塵芥レベルなのではないのだろうか。

 

「まぁヨルムンガンドの頼みだし、海賊行為がどこまで及ぶかわからないから出てみよう」

「ありがとうございます!さすがわれらが龍の寵を得るお方です」

「ほめ言葉として受け取っておくよ。じゃあね」

 

イーサンは執務室を出てソレイユで発進し、…そして現在に至る。

 

「…というわけだ」

『なんかアレだね』

「しかし、海賊行為があるのは事実なようだ。ここのところ何件か船が襲われている」

『で、作戦目標は?』

「まずは組織の壊滅。そして出来れば奪われた金品の奪還もだそうだ」

『まぁ、奪還は無理じゃない?イーサンは有名だしね』

 

ここの所イーサンは栄誉騎士として活躍しているので、割と顔が知られている。

犯罪組織なら猶更だろう。

 

「そうだな。アジトごと吹っ飛ばすのが得策か」

『まぁ、そうなるよね』

イーサンは格納庫へと向かった。

 

格納庫に着くと、3体の人型ロボットに迎えられる。

全高は4m程で、1機は白系統の塗装で背中に剣を斜めに背負った様な機体で、もう1機は緑系統の塗装で重装甲に覆われており、3機目は青系統の塗装で両肩にマントの様なものを付けている。

全機体に共通しているのは、頭部にある2本の角と、人間のように目が2つある事だ。

 

これは正確に言えばロボットではなくパワードスーツである。

白いのがアストレイ、緑のがドーントレス、青のがパイオニアである。

惑星探査用…というのは表向き。

実際は兵器として開発されたものの、失敗作だったのでこっちに押し付けてきたのだ。

 

アストレイの胸の部分が開き、イーサンは乗り込む。

手足をフットペダルに合わせ、胸部ハッチを閉じれば準備完了だ。

内部は宇宙探査の為の高度な電子機器が搭載され、モニターから全周を見ることができる。

 

四枚の羽根が展開し、背中に背負った刀のようなパーツが後ろに展開した。

同時にアストレイの背後の扉が開き、エレベーターへと誘導する。

エレベーターでカタパルトデッキへ降りると、普段ならばカタパルトに足を掛ける。、

だが今回は船外へ出て、甲板の上に陣取った。

 

「F.L.A.S.H最大出力で起動!」

『了解、F.L.A.S.H最大出力』

ソレイユは海面50m程度まで高度を低下させた。

艦橋周辺にパラボラアンテナが出現し、先端が青い光を放つ。

同時にそのソレイユ周辺の海が、キシキシと啼いて白く固く凍り付いていく。

 

F.L.A.S.Hとは、反射光収束式擬似核融合パワー供給機構(reFlectedlight concLusion style quAsi-newClearfusion powerSuppry mecHanism)の略称で、ソレイユのパワー供給用の設備である。

太陽光線やそれに似た光をを反射鏡で集め、惑星の核融合並のパワーを発揮する。

 

F.L.A.S.Hは、稼働時に吸熱反応を起こしてしまうという欠点がある。

その温度は絶対零度と言うのは過言だが、-270度近くまで下がるのは確かだ。

今までイーサンは宇宙空間で使用していたので、この欠点に気付いたのはごく最近の話である

 

F.L..A.S.Hの本質は、送信されるスーパーラジエイションを、リフレクターで受信し変換する事で、機体や火器の稼働エネルギーとするシステムである。

現実でいうレクテナの概念の延長である。

そしてそれを利用したフォビドゥンは、一瞬にして広範囲を攻撃する非常に破壊力の高いビーム兵器になる。

照準レーザー到達後、リフレクターでスーパーラジエイションを受信するまで4.03秒かかる。

その為、システムの起動からスーパーラジエイションが機体に到達するまでに多少の時間差があるため、受信中は身動きがとれない無防備状態になるという欠点もあるが。

 

『動かないでよ、収束レーザー照射!』

ソレイユから青白い光がパワードスーツ胸部の翡翠色のパーツに照射される。

レーザーを受けたパーツが光り出し、腕部の青色のパーツも光を帯び始めた。

突然、勝手に背部の4根状のパーツがX状に4枚開き、左側にフォビドゥンの砲身が展開する。

 

モニターの画面にタンクのようなものが表れ、だんだん中身が貯まっていくように表示される。

やがて画面内のタンクは満杯になり、『発射OK』と表示された。

「よし、フォビドゥン!いっけぇぇっつ!」

イーサンは引き金を引いた。

 

そ砲口から青白い閃光がほとばしり、周囲が無音になる。

 

次の瞬間、10mはあろうかという極太の光線が放たれた。

青白いその光は海水を押し退けて海を駆け抜け、島に直撃する。

 

島のアジトに居た者たちは、何が起こったのか理解することもなく閃光に包まれた。

ボスである桃老人こと桃太郎も、その息子も光に触れて消滅する。

従者たちは第六感という奴で気付く事には成功したが、逃れる事は出来なかった。

犬も、猿も、雉も、皆アジトごと消滅した。

 

『終わったね…』

「ああ、何もかもすべてが消滅したよ…宝もね」

二人(?)は呆然とした表情で島を包む光球を眺めていた。

イーサンは今更ながらフォビドゥンを使用したことを後悔した。

 

『でも吉報と凶報が生まれたよ。聞きたい?』

「何だ?」

『まずは吉報。地下を抉らなかったから奴らの宝物庫は無事だよ』

「それは良いな。で、凶報は?」

『スキャンの結果、宝物庫はかなりの宝を埋蔵してて、運び出すのに苦労しそうだ』

「マジか…」

『ドール使う?』

「その方がいいだろうな」

『じゃあ発進させまーす』

ドールとは、宇宙空間や惑星で作業をするためのロボットである。

ソレイユには全部で4タイプ、60機のドールが格納されている。

それを制御するためのシステムがD.A.U.G.H.T.E.R(Doll Attack Unittype nextGeneration High mobiliTy OpEration structuRe)攻撃型人形ユニット式次世代型高機動操作機構の事である。

 

ドールを動かすための機構、D.A.U.G.H.T.E.Rは機械で制御する分には問題はないのだが、人が制御する場合かなり人を選ぶ性質があった。

システムに合わなかった場合、ドールが動かなかったり操作できなかったりするのだ。

そんな欠陥のあるシステムを搭載するパワードスーツを、偶然適合者であったイーサン・ギデオンに惑星探査用として押し付けた形となったのだ。

 

61体のパワードスーツとドールを以てしても、宝物庫から略奪品を回収するのに2時間かかった。

 

数時間後。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

イーサンは動く事が出来なかった。

勿論、任務による疲れもあるのだが、別の意味でも動けない。

 

「ぐーぅ…すーう…」

「クー…クー…」

「スゥ…スゥ…」

耳元に響くソプラノとメゾ・ソプラノ、アルト声域の声。

 

ぼーっとする頭をどうにか動かしてみれば、イーサン"を"愛する3匹、白と黒、青の龍がイーサンを挟むように眠っていた。

メゾソプラノの寝息をたてる白い方が、クリームヒルト王女。

艶やかでしなやかな白銀の髪は、膝のあたりまである超ロング。

17歳とは思えないほどむっちりと発達した身体を持ちながら、顔は『破壊』を司っているとは信じられない程、どことなく垢抜けない可愛らしさ。

甲殻で作る、最低限隠さなければならないところだけ隠したその衣装は、目のやり場を困らせる。

天使を思わせるような大きな翼、そしてパレオをめくりあげる逞しい尻尾が、人の姿を取りながらも本来は強大なドラゴンなのだということを言葉なくして語っている。美しくも愛らしく、そして力強い印象を受ける。

 

ソプラノの寝息をたてる黒い方は、ブリュンヒルデ王女。

妹のクリームヒルト王女に劣らず、膝の辺りまである黒絹の髪は夜そのもののような美しさと気高さ。

クリームヒルトと比べると大変華奢で、ほっそりとした手足を、闇色の長手袋とオーバーニーソックスが覆う。

その割りにドレスはミニスカでノースリーブと、こちらもとても扇情的な出で立ち。20歳という年齢にしては若干控えめな胸が、申し訳程度にドレスを持ち上げている。翼は夜の使者たる蝙蝠のようだ。

こちらは『再生』を司っている。

 

アルト声域の寝息は、今回の依頼者であるヨルムンガンド。

白磁の肌はまるで真珠のようで、艶やかに煌めく髪は、海そのもののような蒼。

長く伸びた後ろ髪はポニーテールに纏められている。

ここ最近の服装である青いサンドレスは、豊満な胸を重たげに支えている。

それから黄金の腕輪。

髪留め、そしてほっそりとした腕に巻かれた腕輪は何れもまばゆい黄金で、その少女が王女と同じようにそれ相応の地位にあるらしいことが伺い知れる。

 

可愛い寝息をたて、尻尾をピコピコ動かしながら眠る3匹。

 

よほど寂しかったのか、帰還した直後にイーサンに抱き付いて、そのまま眠ってしまった。

1匹ならどうにかできるが、3匹となるとそうもいかない。

ブリュンヒルデ王女はイーサンの首っ玉にくっ付いて眠り、クリームヒルトとヨルムンガンドは左右の腕を抱き枕にしている。

おかげで不完全な長座体前屈の体制を取らざるを得ず、腰に痛みが走る。

さらに、左右の腕に触れる柔らかくて生暖かい感触に、理性が溶けそうだ。

 

海賊を殲滅したイーサン・ギデオンは、その代償として激しい腰痛と理性攻撃にさらされるのであった。

 

人生、そううまくいかないものです。

くわばら、くわばら。

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