インフィニット・ストラトス~IF(インフィニット・フェイト)~   作:カイナ

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第十二話 ルームメイトはブロンド貴婦人

「アッハハハハハハハハハ!!! さあ始めましょうかぁ!!!」

 

「う、うぎゃああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

ISの格闘及び射撃を含む実戦訓練。それに選ばれたセシルと蓮は一年一組副担任である兎佐との二対一での実戦訓練を始めていた。が、開始直後、兎佐は狂喜の笑顔を浮かべながら両手に機関銃を一丁ずつ構えその銃口を蓮へと向け、ドガガガガガガッと凄まじい轟音を奏でながら機関銃を乱射し弾幕を張る。いきなりの猛攻に蓮は反転し逃げ惑うしか出来なかった。

 

 

「お前達は運がいいぞ。狂乱の獅兎(しと)の戦いを見る事ができるんだからな」

 

一方地上。千雪が腕組みをして、ふっ、と短く笑いながらそう呟いた。

 

「きょ、狂乱の……獅兎?」

 

「ああ。兎佐の現役時代の異名だ」

 

豹変した兎佐の姿をハイパーセンサーで知覚した壱花がやや引いた様子で、兄の言った異名を反芻。千雪もこくりと頷いて返し、上空を見上げる。ISを装着していない生身。それでなお千雪は上空を高速で戦っている三体のISの動きについて行っているかのように目を動かしていた。

 

 

「くそっ! なんだよあいつ!? 戦闘開始した途端キャラが変わりやがった!?」

 

「ジキル博士とハイド氏でもあるまいに!」

 

一方蓮とセシル。現在は背中合わせの格好になって周囲を警戒する二人は、凄まじいスピードで動きつつ急停止と急加速を駆使して翻弄してくる兎佐の警戒を行っていた。

 

「ひゃはははは! ほらそこぉっ!!」

 

「づあっ!?」

 

しかし二人の警戒を嘲笑うように兎佐は笑いながら突進、右手に持ったショートソードで蓮を斬りつけ、ヒットアンドアウェイの要領で素早く距離を取る。咄嗟にセシルがブルー・ティアーズでレーザーを放つが一発も当たっていなかった。

 

「あっははははは! 甘い甘ァい!!」

 

逆に兎佐はいつの間にか左手に握っていたサブマシンガンを乱射し敵の反撃を防いでいた。いや、それだけではない。

 

「ほ~らプレゼントォ!!」

 

瞬時にショートソードを収納(クローズ)し、代わりというように右手に展開(オープン)したグレネードを投げつける。

 

「うおわっ!?」

 

咄嗟にそっちに衝撃砲を向け、不可視の散弾を発射。グレネードを空中で爆破させて処理した。

 

「あまり舐めないでいただきたいっ!」

 

セシルがスターライトMkⅢを構え、レーザーを放つ。しかしそれは肩の物理シールドに阻まれてしまった。

 

「く……遠近中隙がない……」

 

「こりゃ、腹くくんねえとマジやべえな……」

 

代表候補生二人は敵がたった一人と気を抜かず、本気でいかないとまずいと気を引き締め直した。

 

 

「兎佐の奴は普段は兎のようにおとなしい、そこだけ見ればとてもISの操縦者など向かないだろう……だが、ISに乗った時の奴は違う。それは正に羊の皮を被った狼……いや、兎の皮を被った獅子の如く。狂ったような戦い方から、いつしか奴は狂乱の獅兎と呼ばれるようになった」

 

千雪はそう、兎佐の異名を説明。そこで思い出したようにシャルロットの方を見た。

 

「そうだ、デュノア。いい機会だ。佐藤先生の使っているISの説明をしてみせろ」

 

「あ、はい。佐藤先生が使っているISは、デュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは初期第三世代にも劣らないもので、安定した性能と高い汎用性、豊富な後付け武装が特徴の機体です。現在配備されている量産ISの中では、最後発でありながら世界第三位のシェアを持ち、七ヶ国でライセンス生産、十二ヶ国で正式採用されています。特筆すべきはその操縦の簡易性で、それによって操縦者を選ばない事と多様性役割切り替え(マルチロール・チェンジ)を両立しています。装備によって、格闘、射撃、防御といった全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティが多いことでも知られています」

 

千雪からのいきなりの振りに対し、シャルロットはすらすらと説明。鈴が鳴るような明朗でありながら透き通るような声での淀みのない説明に男子達は聞き惚れ、壱花はシャルロットの知識に素直に感心していた。

 

「ああ、いったんそこまででいい……そろそろ終わるぞ」

 

千雪はシャルロットの説明をいったん終わらせるとそう言い、上空を見上げた。それにつられて全員が上空を見る。

 

 

 

「ひゃははははははぁっ!!!」

 

「く、かわしきれないっ!?」

「回避するには、ここしかっ!?」

 

両手に機関銃を握り、辺り構わず乱射する兎佐。その弾幕は壁を作り、いくら機動力のあるISでも回避は困難。しかし二人はハイパーセンサーによって、機関銃の弾幕に唯一の穴を発見。そこに飛び込んで反撃の機会を伺おうとする。

 

「「づっ!!??」」

 

しかし、その唯一の穴に飛び込もうとするのは双方同じ。二人は空中で正面衝突してしまい、動きが一瞬止まる。誘い込み、動きを止める。兎佐は狂ったように見せつつ冷静にチャンスを見計らい戦略を組み立てていた。

 

「フィイイイィィィィニィィィッシュ!!!」

 

狂喜の笑みを浮かべ、兎佐は機関銃を収納(クローズ)すると肩に一本の銃器を展開(オープン)し、両手で構える。その武器の名はグレネードランチャー。構えると同時に放たれたグレネードは一直線に二人の元へと向かう。

 

「「やばっ!!」」

 

回避しようとするがもう遅く、二人の目の前でグレネードはちゅどぉんと爆音を立てて大爆発。その煙の中から二つの機体が急降下。どしゃっと音を立てて地面に落下した。

 

「「きゅ~……」」

 

その機体の主――セシルと蓮は目をぐるぐると渦巻きにして倒れ込んでいた。勝負ありだ。

 

「ミッション、コンプリート」

 

その直後、兎佐は静かにそう呟いて着陸。同時にISを解除してメガネを直す。

 

「ふ。相変わらずの暴れっぷりだな、兎佐。俺達の世代で代表候補生最狂の名は伊達ではないか」

 

「あ、いえそんな……って今“きょう”にどのような文字を当てました!?」

 

「ははは。俺達の中での共通認識だぞ?」

 

ぷんすかと怒る兎佐には先ほどまでの狂気は見えず、いつものように千雪にからかわれている。そして千雪はさっきの“きょう”の件で喰らいついてくる兎佐を無視してぱんぱんと手を叩き鳴らす。

 

「さて、これで諸君にも教員の実力は理解できただろう。以後は敬意をもって接するように」

 

『はい!! 佐藤先生、お疲れさまっした!!!』

 

さっきの狂気を見ての恐怖も少なからずあるだろう。千雪の言葉に男子達は一斉に兎佐に頭を下げる。兎佐はいきなりの生徒達の変貌に「ふええぇぇぇっ!?」と悲鳴を上げた。

 

「オルコット、凰」

 

と、千雪は先ほど敗北したセシルと蓮に声をかける。

 

「何故二人とも、回線をリンクさせなかった? 少なくとも同士討ちは避けられたはずだぞ。それと互いの位置と動き、それを把握できればずっと優位に運べる」

 

負けた二人の動きから気になる点を指摘。セシルと凰は言い返せないのか、むしろ事実であるためかアドバイスを神妙な表情で拝聴していた。

 

「異なる意思を持つ者同士で一つのことを成そうとするのは案外難しいものだ。お前達は個のポテンシャルは高いんだ。これから少しずつ学び、覚えていけ。必要な時、必要なことを出来るようになればいい。分かったな?」

 

「「はいっ!!」」

 

千雪の締めの言葉に二人の代表候補生は真剣な声で返答。千雪は満足そうに頷いた後、他の生徒達も一瞥する。

 

「さて、専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では八人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな? では分かれろ」

 

「織斑さん、一緒にがんばりましょう!」

「わかんないところ教えてください!」

「デュノアさんの操縦技術、見せてください!」

「ぼ、僕もいいよね? 同じグループに入れてください!」

 

千雪がそう言った瞬間壱花とシャルロットの周りに男子達が一斉に群がる。

 

「この馬鹿どもが……出席番号順に一人ずつ各グループに入れ! 順番はさっき言った通り。五分以上かかるようなら今日はISを背負ってグラウンドを百周させるからな!」

 

そこに響く鶴の一声。それを聞いた瞬間男子達は千雪の指示通りに並んでいく。ざっと二分程度で終了した。

 

「最初からそうしろ、馬鹿者どもが」

 

その光景を見た千雪は呆れたように額に手を当て、ため息交じりに呟くのであった。

 

「ええと、いいですかー? みなさん! これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は打鉄とリヴァイヴが三機ずつです。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー?」

 

そして兎佐の指示が飛び、壱花は打鉄を取ってくる。

 

「さて、じゃあ始めよっか」

 

壱花は実習開始を宣言し、ふと他の班をみる。

 

「……あ~、セシルかぁ……さっきボロ負けしてたし。ハァ」

「……よろしくな、蓮。あとで織斑さんの話を聞かせてくれっ」

「……デュノアさん! わからないことがあったら何でも聞いてくれ。ちなみに俺はフリーだっ!」

「……」

 

残る四班、それぞれセシル、蓮、シャルロット、ラウルだが前者三つの班が明るかったりプラスな雰囲気なのに対しラウルの班はかなり暗い。もう話なんて出来そうもない雰囲気だ。まあ、その理由の大半を占めているのがリーダーであるラウルの人とのコミュニケーションを拒むオーラや生徒達を見下したような冷たい眼差しなのだが。

 

「えーと、とりあえず午前中は動かすところまでみたいだから、出席番号順にISの装着と起動。でもって歩行までやってみよっか。一番最初は――」

「はいっ!!!」

 

壱花は兎佐のオープン・チャネルから届く授業の流れを反芻して確認しつつ、自分なりに流れを考えていく。出席番号の一番最初の人が誰かと確認しようとした時、そんな大きな声が聞こえた。

 

「出席番号一番! 相川(あいかわ)(きよし)! ハンドボール部! 趣味はスポーツ観戦とジョギングだ!」

 

「あ、はい……え、っていうかなんで自己紹介?」

 

「よろしくお願いしますっ!!」

 

突然の自己紹介に困惑する壱花だが、続けて頭を下げて右手を差し出すというどこかの昔のテレビ番組でよくあった告白シーンみたいな格好を見て納得する。

 

(悪ノリに慣れてきたなぁ……)

 

最初の頃は自分と話すことさえ躊躇っていた男子達が冗談とはいえこんな悪ふざけをしてこれる辺りお互いに馴染めてきたものだ。と壱花は思う。

 

「おい、やめろ」

 

すると総司が清の頭をぐいっと上げさせ、清は「いだだだっ!?」と悲鳴を上げる。

 

「な、何すんだよ篠ノ之!?」

 

「ふざけるのは勝手だが、あれを見ろ」

 

いきなりの暴挙を訴える清だが、総司がそう言って別の方向、シャルロット班を指差すと壱花班のメンバーもそっちを見る。そこにはさっきの清のように頭を下げて右手を差し出している馬鹿達が千雪にすぱぱぱーんっと出席簿ではたかれ撃沈している光景が映っていた。なおシャルロットは引きつった笑みを浮かべている。

 

「……よっし真面目にやろう! 織斑さん、何をすればいい!?」

 

顔を青くした清は真面目にやろうと宣言。壱花に何をすればいいのかと問いかけた。

 

「あ、うん。相川君ってISに乗った事あるよね?」

 

「ああ、授業でだけだけど何回か」

 

「じゃあ大丈夫かな。とりあえず装着して起動までやろっか」

 

「おう」

 

真面目にやると決めたら真面目にするのか、清は壱花から流れを聞くと、持ってきた打鉄の外部コンソールを開いてステータスを確認。問題なしと確認すると打鉄を装着し、起動、歩行と滞りなく進んでいく。とはいえ歩行は少々ぎこちなかったが。

 

「じゃ、そこで止まって。交代」

 

「お、おう」

 

交代というのに清は緊張が途切れたのかほっとした様子でコクピットから飛び降りる。

 

「あ、やべ、忘れてた……」

 

だが直後焦った声を漏らす。ISが立ったままになり、コクピットが高い位置で固定されてしまったのだ。

 

「どうしました?」

 

と、そんな空気を感じ取ったのか兎佐がやってきた。

 

「あ、えーと、ISをしゃがませるのを忘れちゃって……」

 

「あー。コックピットが高い位置で固定されてしまったんですね。じゃあ仕方ありませんから、織斑さんが乗せてあげてください」

 

「え?」

 

兎佐の提案に壱花がきょとんとする。

 

「それが一番簡単ですし。織斑さん、白式を展開してください」

 

「は、はい」

 

言われるがまま、白式を展開する壱花。練習のおかげですっかり瞬時に展開できるようになっていた。

 

「それで、次の人をだっこして運んであげてください」

 

「あ、はい……えっと、次の人は……」

 

兎佐の指示を受け、頷く壱花。次は誰だろうかと自分の班のメンバーに顔を向ける。

 

「……お、俺だ……」

 

うつむき気味の状態でゆっくりと手を上げるのは総司だった。

 

「あ、りょ、了解……」

 

なんだか恥ずかしいなあ、と思いながら壱花は白式を展開したまま総司を抱き上げる。というかISには背中から乗る関係上背中から抱き上げるわけにはいかないしかといって正面から抱き上げるのは流石に恥ずかしさが大きく勝る。

 

「……何故、お姫様抱っこなんだ?」

 

「あ、うん……ごめん……」

 

ということの折衷案がお姫様抱っこである。流石の総司も困惑を隠しきれずに壱花に問うていた。困惑が混じり合ったジト目での問いかけに壱花もぺこりと頭を下げて謝る。

 

「ん~。ISだとそうでもないけど、やっぱりソウちゃん重くなったよね。昔は私でも抱きかかえられたのに」

 

「いつの話だいつの」

 

壱花の呟きに総司がツッコミを入れる。まあ言うまでもなく小学校低学年の頃だ。

 

(やっぱり成長期過ぎると違うなぁ……それに、すごく鍛えてるし……)

 

ふと上半身に目を向けてしまう。ISスーツ越しからでも分かる程に総司の身体は筋肉がついており、とてもよく鍛えられている事が分かる。

 

「……」

 

なんとなく気恥ずかしくなってしまい、壱花は頬を赤く染めながら顔を逸らし、総司は不思議そうな顔を見せる。そんなこんなの内に打鉄のコクピット付近に到着し、総司は何度か打鉄に乗っているためその要領で打鉄を装着、起動、歩行を行う。

 

「あ、ソウちゃん。しゃがんで解除して――」

 

歩行まで完了した後、壱花が念押ししようとするが総司はその前にしゃがまずにISの装着を解除して飛び降り、すたっと華麗な着地を見せる。

 

「あ、ちょっとソウちゃん!」

 

「すまん、壱花……流石にこの強制力には抗えん……」

 

また運ばなければならなくなった事に壱花が声を荒げると、総司は曖昧な表情でそうとだけ言う。壱花は総司の言う強制力が一体何か分からないが、憮然とした表情を見せるのであった。

 

それから時間が過ぎて夜。壱花とシャルロットと共に部屋に戻っていた。ちなみにシャルロットの部屋は当然ながら壱花と同室となっており、ベッドも運び込まれていた。とはいえキッチンだのお風呂だの色々追加されている中に家具を無理矢理もう一人分追加しているため若干手狭になってしまうが。

 

「な、なんかごめんなさい」

 

「気にしなくていいよ。女子の仲間が増えてくれたことの方が嬉しいし」

 

無理矢理入ってきた事にだろうか謝ってきたシャルロットに壱花は笑って言うと歓迎の証に入れた日本茶を彼女に渡す。シャルロットは最初警戒というか馴染みのないお茶にだろうかやや敬遠の様子を見せていたが、壱花がズズズと茶を飲むのを見て恐る恐る飲む。

 

「ん~、紅茶とは随分違うんだね。不思議な感じ。でも美味しいよ」

 

「気に入ってもらえたようで何よりだよ。あ、そうだ。お近づきの印に今度抹茶でも飲みに行こうよ」

 

日本茶を褒めてもらえたのが嬉しいのか微笑む壱花はそのままの流れでシャルロットを遊びに誘う。とシャルロットは首を傾げた。

 

「抹茶ってあの畳の上で飲むやつだよね? 特別な技能がいるって聞いた事があるけど、壱花はいれれるの?」

 

「抹茶は『たてる』って言うんだよ。私も略式のしか飲んだことないんだけどね、今は駅前に抹茶カフェっていうのがあるんだよ。コーヒーみたいな感覚で飲めるやつ」

 

「ふうん、そうなんだ。じゃあ今度誘ってよ。一度飲んでみたかったんだ」

 

シャルロットの問いに壱花はそう答え、シャルロットはふむふむというように頷いた後にその誘いに乗る。

 

「うん。ついでに色々案内もするよ。せっかくだし今週末の日曜にでも出かけよっか」

 

「本当? 嬉しいなぁ。ありがとう、壱花」

 

「どういたしまして」

 

シャルロットが柔らかな笑みを浮かべてお礼を言うと壱花も笑顔で返す。

 

「えーと、ところでシャワーなんだけど順番とかどうする? その日その日で決めてもいいけど」

 

「あ、私が後でいいよ。壱花、先に使って」

 

「う? うーん……そう言われると逆に使いづらいな……シャルロットだって実習終わってすぐにシャワー浴びたい日とかあるでしょ?」

 

「ううん、平気だよ。私ってあんまり汗をかかない方だから、すぐにシャワーを浴びなくてもそんなに気にならないし」

 

雑談もそこそこに生活の方の相談も開始。まずはシャワーの順番だが、シャルロットが後でいいと申告したためそこはあっさりと終了。壱花はぺこりと頭を下げた。

 

「そっか。じゃあありがたく使わせてもらうね。でもあれだよ、遠慮とかしなくていいからね。なにせ女の子同士なんだし」

 

「ん……うん、ありがとう」

 

壱花の純粋な微笑みでの言葉を受けたシャルロットの笑みがまた少し陰るが、やはり一瞬でその陰りが消え去る。

 

「……どうかしたの?」

 

しかし、何か違和感を感じたのか壱花は首を傾げてシャルロットに問うた。

 

「ん、ううん、なんでもないよ。と、ところで壱花っていつも放課後にISの特訓をしてるって聞いたけど、そうなの?」

 

「うん。ソウちゃんやセシル君達に付き合ってもらってね。私は皆より遅れてるから、訓練時間を重ねないと」

 

シャルロットは誤魔化し笑いをした後、誤魔化すように壱花に問い返す。それに壱花はこくりと頷いて返した。

 

「私も加わっていいかな? 何かお礼がしたいし、専用機もあるから少しくらいは役に立てると思うんだ」

 

「うん。ぜひお願い」

 

「うん、任せて」

 

シャルロットの申し出に壱花はありがたい申し出だとぜひにと受け入れ、それにシャルロットもこくんと頷いた。

 

それから彼女らは床につく。壱花は新しい仲間が増えたという喜びと共にもう一人の女子がいるということが無意識に安心感を与えていたのか、ぐっすりと眠っていた。

 

 

 

 

 

「…………」

 

だが真夜中。寮全体が眠りについた後、シャルロットは静かに起き上がると隣のベッドでぐっすり眠っている壱花を見下ろすようにベッド脇に立つ。そのシャルロットの目元には影が作られ、シャルロットは彼女に向けて手を伸ばす。

 

「……」

 

しかし何かを考える様子でその伸びた手が止まり、やがてぎゅっと手を握りしめると手を下ろした。

 

「ごめんね……」

 

そしてシャルロットは一言謝罪の言葉を口にすると踵を返し、自分のベッドに潜り込む。そのまま朝になるまでシャルロットはベッドの中で微動だにしなかった。




やっと書けました。変貌兎佐先生が書いててある意味楽しかったです。(笑)
原作のVS山田先生はアニメの方はもう覚えてないですけど、原作の方だとほぼカットだから好きなように書けましたし。
まあそこ以外はある程度原作通りだからあまり特筆すべきとこもないか。さて、次回はどの辺まで書けるだろうか。あの戦いも多少はオリジナル展開を思いついてるし、そこまでが思いつけば一気にいけそうなんだけど……ま、そこはまた後で考えよう。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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