インフィニット・ストラトス~IF(インフィニット・フェイト)~   作:カイナ

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第十九話 水着と強盗と・・・

駅前ショッピングモール――レゾナンス。壱花は蘭と一緒にここの水着売り場で新しい水着の物色をしていた。

 

「それにしても壱花、知らない間にまた知らない男どもを落としたの?」

 

「落としたって何さ。友達だよ」

 

蘭の唐突な問いに壱花が呆れたように目を細め、抗議の声を出す。

 

「え? でも犬って――」

「ごめん本当に言わないで。あれラウル君が勝手に言ってるだけなの、私は止めてるの……」

 

続けてのその言葉に壱花は首を力なく横に振りながらそう答え、からかえる雰囲気ではない事を察すると蘭も苦笑しながらこくこくと頷いた。

 

「オ、オッケー了解……じゃ、水着選ぼっか」

 

「うん……」

 

水着を選ぼうと蘭は言い、壱花も首肯すると水着に向き合った。

 

「さてと。今年の流行ってどうだったっけ?」

 

「ん~……私は流行よりは自分が気に入ったのを買いたいかな」

 

「そっか。じゃ、私も良さそうなの壱花に持ってくね」

 

「うん、お願い」

 

蘭は壱花のリクエストに答えるつもりらしく、壱花も親友を信じてお願いと返す。

 

「んじゃ早速……これからいってみよっか!」

「ふぇ!?」

 

蘭は水着売り場を見回すと、ニヤッと笑って一つの水着を壱花に差し出す。それは紫色を基調に紺色のラインが入った、布地面積がやや狭いビキニ。

 

「ら、蘭ちゃん、流石にそれはちょっと……」

 

「まーまー着てみれば案外気に入るかもしんないじゃん」

 

初っ端から過激な格好にあたふたしながら首を横に振る壱花に対し、蘭は楽しそうに笑いながら水着を壱花に押し付け、試着室に向けて押していく。

 

「せ、せめてこれ付けさせて……」

 

壱花がせめてもの抵抗に近くにあったパレオを取ると共に蘭は彼女を試着室に押し込むとカーテンを閉める。すると壱花は観念したのか着替え始めたのを示す服を脱ぐ衣擦れの音が聞こえ始め、蘭はニヤニヤしながら壱花の着替え終わりを待つ。そして衣擦れの音が消えてからしばらくし、やがてカーテンがゆっくりと開く。

 

「ら、蘭ちゃん……」

 

頬を赤らめ、目を潤ませながら壱花が呟く。彼女のビキニ姿はかなり煽情的で、さらに壱花が取った、布越しにも向こうの光景が見えるほどにスケスケの薄紫のパレオが目隠しどころか逆にセクシーさを強調していた。

 

「こ、これはすごい……間違いなく目立つよ。もうバッチリ! ビーチの視線は独り占め!」

 

「絶対やだ!!」

 

熱く語る蘭に対し、壱花はシャッとカーテンを閉めると着替え始めたらしく、蘭もからかいすぎたかと苦笑すると他の水着を探し始める。

 

「はい、壱花。次の水着持ってきたよ」

 

「……」

 

蘭が持ってきた水着を、壱花は警戒心マックスで確認する。水色を基調としたもので今度もビキニタイプではあるが先ほどより面積は広く、トップスの胸部の間には蝶々をイメージしているのかリボンがついており、ボトムスの後ろにもまるで波を象ったようなヒラヒラが付いていた。先ほどのビキニをセクシーとすればこっちはキュートというイメージである。

 

「……うん、着てみる」

 

「うん、あとこれ麦わら帽子。きっと似合うよ」

 

とりあえずさっきのよりはマシと頷いて水着を受け取った壱花は続いて蘭が差し出した麦わら帽子も受け取り、試着室のカーテンを閉めて着替え始める。それから着替え終えてカーテンから出てきた壱花は先ほどより上機嫌で水着を着て麦わら帽子を被っていた。

 

「うん、可愛いじゃん」

 

「えへへ、そう?」

 

嬉しそうに麦わら帽子を被り、くるっと回転。ボトムスのヒラヒラがふわっと揺れる。が、壱花は何か納得いかないようにそのボトムスを見下ろした。

 

「でも、なんかこのヒラヒラが気になるなぁ。泳いで濡れたら足にひっつきそう」

 

「……多分、泳ぐこと想定じゃないんじゃないかなぁ……」

 

壱花の言葉に蘭が苦笑しながら呟く。と壱花は不思議そうに首を傾げた。

 

「水着で泳がなくてどうするの?」

 

「あーほら、ビーチバレーとかさ。泳ぎ以外にも海の楽しみってあるじゃん?」

 

「そっか……じゃあこれ、私には合わないかも。せっかくだし泳ぎたいし」

 

壱花は残念そうにカーテンを閉め、服に着替え直すと蘭に水着を元の場所に片づけてもらう。それから今度は自分で水着を選ぼうと、彼女は試着室から出て水着売り場の散策を開始した。

 

「……あ」

 

と、水着売り場の一角で壱花は足を止め、一つの水着に目を向ける。それは白色を基調に脇から下を黒色に変え、黄色で縁取りしているワンピースタイプの水着だ。

 

「ん? なに、それ気に入った?」

 

「ん~。悪くないかなって……あ、でもこれ背中結構空いてる……恥ずかしいかな?」

 

「ま、着てみなさい。第一印象は大事だし」

 

「うん」

 

蘭に背中を押され、壱花は試着室に戻ってカーテンを閉めると水着に着替える。そしてカーテンを開くと蘭は「ほほう」と声を出した。

 

「結構似合ってんじゃん」

 

「うん、サイズもぴったりかな……背中を出してるのがちょっと恥ずかしいけど……ま、いいよね」

 

蘭の褒め言葉に壱花も頷き、しかし背中が気になるのか呟くがすぐにいいよねと返す。一番最初が露出のでかい水着だったから判断基準が曖昧になってるんじゃないかと蘭は思ったが、別にいいかと言わない事に決めてうんうんと頷く。

 

「うんうん。セクシーだよ」

 

「もう、やめてよ」

 

蘭の言葉をからかいと捉えたか壱花は苦笑する。しかし肌に貼りつくようなワンピースタイプの水着だからこそか体型が強調されており、本人は大きく空いた背中を気にしていて相対的にあまり気にしていないようだが、胸の大きな膨らみはもちろん、後ろから見たらむっちりとしたお尻も大分強調され、さらに美脚も腰元から晒している。前から見たら完全防備といえる水着だからこそか、後ろから見るそのギャップが先ほどのビキニとはまた違うセクシーさを垣間見せていた。

 

「じゃ、これにするね。着替えるからちょっと待ってて」

 

「はいはーい」

 

その隠れた色気を持つ水着に気づくことなく壱花は購入を決めて着替え、蘭はやや悪戯っぽい笑みを浮かべたままレジに行った壱花を待つのであった。

 

 

 

 

 

「さってと。どうする?」

 

一方男子勢。こっちもレゾナンスの散策に決めたらしい彼らはしかし目的がなく――そもそも休日の朝から壱花が出かけていくのを偶然見た彼らがとにもかくにも追いかけたのだから当然だが――蓮がそう尋ねていた。

 

「そうだね~……」

 

蓮の言葉にシャルルが少し考える様子を見せる。

 

「そういえば、お腹空いたと思わない? 僕、朝ご飯食べてないんだよね」

 

「さっきクレープ食べてなかったか?」

 

実は朝食抜きだったことが明らかになったシャルルに対し総司がツッコミを入れる。

 

「んじゃ、どっかで軽く食うか。食いながら何するか相談すりゃいいだろ」

 

しかしやる事は決まり、土地勘があるらしい蓮を先頭に彼らは歩いていく。

それから彼らがやってきたのはショッピングモール内の一角に店を構えた某ファーストフード店。それなりに賑わっており、総司達と同じく学校が休みで遊びに繰り出している中高生が多人数用のテーブルを占拠してハンバーガーを食べながら雑談に興じたり逆にたった一人でハンバーガーをもっきゅもっきゅしている客もいる。

 

「……」

 

「どうかしたか?」

 

「いや。僕はこういう店に来たことがないからな……レストランが騒がしいというのは新鮮だ」

 

セシルは珍しいものを見るように辺りをきょろきょろと見回しており、蓮の問いかけにそう答える。筋金入りのお坊ちゃまだからテーブルマナーが当たり前に要求されるような静かなレストランにしか来た事がないのか、と蓮は思う。

 

「俺もこういう店にはきた事がない……何をすればいい?」

 

「あぁ、じゃあ僕に任せてよ」

 

ラウルもファーストフード店には詳しくないらしく、首を傾げる彼にどうやら比較的経験があるらしいシャルルが注文は任せてと答える。それから総司と蓮、シャルルがセシルとラウルから希望を聞き出してオーダーを進めていき、ここで食べる事にしたためハンバーガーやポテトを乗せたお盆を手に適当な席に向かう。

 

「ん?」

 

と、その道中。総司は客の一人とすれ違い、足を止めてその客の青年に目を奪われたように目を向ける。

 

「店員、ハンバーガーとナゲットとポテトを5個ずつ。持ち帰りを頼んだはずだ。とっとと出せ」

 

青年は店で食べていた分のハンバーガーの包み紙――とても一人で食べたとは思えない量なのが遠目でも分かる――をレジの近くに置かれていたゴミ箱に捨ててお盆をゴミ箱の上に置いた後、横暴とも言える言葉遣いで店員にまるで命令するように話しかける。そして持ち帰り用のジャンクフードを手にすると金を支払い、足早に店を出ていった。一階に鎮座するこの店は店内だけではなく外にも直通しており、彼が外に出ていくと自動ドアも静かに閉まっていった。

 

「おーい、どうしたんだよ総司」

 

「ああ、すまん……見覚えのあるような顔がいてな」

 

「知り合いでもいたのか?」

 

「いや……ちらっとしか見なかったが、多分気のせいだろう」

 

五人用の席を確保した蓮が総司を呼び、総司も空いている席につく。

 

「…………」

 

セシルはハンバーガーの包み紙を開け、ハンバーガーを出すと不思議そうな目を見せながら観察する。

 

「セシル、ハンバーガーはこうやって食べるんだよ」

 

「ふむ、手づかみで食べるのか」

 

「うん。テーブルマナーなんてないから、がぶっとね」

 

食べ方がピンと来ていないらしいのに気づいたシャルルが自分のハンバーガーをお手本のように食べ、セシルもハンバーガーを掴むと齧りつく。ラウルも見よう見まねで後に続き、総司と蓮もハンバーガーを食べ、さらに彼らは一緒にセットで注文したポテトやサラダも食べ進める。

 

「さてと、飯食ったらどこに行く? 俺、中学時代によく遊んでたから結構詳しいぜ」

 

蓮が食事をしながらそう聞き、カラオケだろうがスポーツだろうがなんでも来いだと続ける。とはいえセシルはそういう庶民の遊びに詳しくないようで首を傾げており、ラウルに至っては軍人育ちのため遊びそのものにピンと来ていない模様。実質総司、蓮、シャルルでスケジュールを決めるしかなかった。

 

「全員、動くんじゃねぇ!」

 

そこにそんな怒号が轟く。自動ドアを破らんばかりの勢いで雪崩れ込んできた四人の男、そのリーダー格が発したものだ。一瞬何が起きたか分からない様子の店内スタッフや客が固まるが、男の一人が銃の引き金を引くと共に発された銃声を聞くとつんざくような悲鳴が起きる。

 

「きゃあああぁぁぁぁっ!!!」

 

「騒ぐんじゃねえ! 静かにしろ!」

 

接客スタッフの女性の悲鳴に男の一人が怒鳴り声を出す。そんな男達の格好はそれぞれ見分けやすくするためか赤青黄緑の革ジャンにこれまたシンプルなジーパン、目出し帽を被り手に銃を握っている。そして背負っている鞄には札束が溢れんばかりに入っている。あからさますぎるほどに銀行強盗の逃走犯である。

 

「君達は既に包囲されている! 大人しく投降しなさい! 繰り返す!」

 

しかも店の外にパトカーで道路を封鎖し、ライオットシールドを構えた武装警官が包囲。警官がそう呼びかけるというお約束の展開だ。

 

「人質を安全に解放したかったら車を用意しろ! もちろん、追跡者や発信機なんか付けるんじゃねえぞ!!」

 

一際体格のいいリーダー格らしい男性が店の外の警官隊に要求を出し、続けてサブマシンガンを持った男性が威嚇射撃を行う。幸い店内の自動ドアを割ってパトカーのフロントシールドに穴を空けるだけで済んだが、店外にいた野次馬達が悲鳴をあげて逃げ出すには充分だった。

 

「へへ、びびってやがる」

 

「平和な国ほど犯罪はしやすいって話、本当ッスね」

 

リーダーがハンドガンを手に呟き、サブマシンガンを持った男性がそう軽口を叩く。他の二人は銃など武器を構えて店員や客を威嚇しており、おいそれと近づかせないようにしている。

 

(ショットガンが一人、ハンドガンが一人、サブマシンガンが一人。そしてバールが一人)

 

それを物陰から冷静に観察、ハンドサインで他のメンバーに伝えている者がいた。その名はラウル。目立たないように隠れつつ店内にあった鏡を利用して犯人の装備を確認していた。

その観察通りリーダーらしい男はハンドガン、先ほど店外に発砲した男はサブマシンガン、他の二人はそれぞれ一人はショットガン、一人はドアをこじ開けるためなのだろうかバールを持っている。しかしバールには血が付いており、ドアをこじ開ける用途以外に暴力的な使用をした事が示されていた。その血のついたバールに威嚇されて客やスタッフは犯人に近づくことが出来ず、そもそも下手な事をすれば銃でハチの巣にされるのは想像に難くない。

 

(他に予備を持っている可能性もあるが、今確認できる装備はこれだけだ)

 

(僕の記憶している限り、幸い入り口近くの席に客はいなかったはず。今の状況から人質を取られる可能性は低いと考えていいだろう)

 

(スタッフさんも奥の方に避難してるみたいだし、そっちから人質を取られることはないと思うよ)

 

ラウル、セシル、シャルルがすぐさま思考を組み立てる。ちなみに蓮はいつの間にかその場から消えていた。

 

(位置についた。いつでも行動可能だ)

 

(流石、小さいと隠密行動が上手いな)

 

(るせえ)

 

すると彼らのプライベートチャネルに蓮からの通信が飛び、セシルのからかいに蓮も軽口で返す。なお総司にはシャルルが同時通訳だ。

 

(よし、3カウントでいくぞ)

 

セシルがプライベートチャネルで通信、シャルル達が頷き、蓮からも小さく「了解」と声が飛ぶ。

 

(トロワ)――)

 

シャルルが数え、

 

(ツヴァイ)――)

 

ラウルが数え、

 

(ワン)――)

 

セシルが数え、

 

走你(いくぞ)!!!」

 

蓮が叫んで立ち上がる。突然の叫び、それも中国語に犯人たちがぎょっとしたのもつかの間、蓮は紙コップから氷を掴み取ると手の熱で溶ける前に勢いよく投擲、氷の礫がショットガンのように犯人たちに襲い掛かる。

 

「ッざけやがって、このガキッ!!」

 

しかし投擲しただけの氷の礫ではせいぜい怯ませる程度、バールを持つ男が巻き込まれないように下がると共に銃を持つ男達がそれぞれの銃を一斉に蓮へと向ける。

 

「消えた!?」

 

が、その時には蓮は既に射線上から姿を消していた。

 

「遅いね」

 

「がっ!?」

 

違う。蓮は気配を察知させる事なく男達の懐に入り込んでいた。さらに掌底の一撃がサブマシンガンの男の腹に突き刺さり、相手を一撃で昏倒させる。その上小柄な体躯を生かしてその男の影に隠れて壁にし、銃弾から身を守る構えも取れていた。

 

「GoGoGo!」

 

「!? 後ろから!?」

 

突然の襲撃者に男達の意識が向いていた一瞬、後ろから飛ぶ掛け声にバールを持つ男が振り返る。そこには狭い店内を侍のような風格を見せる青年が突っ込んでくる光景があった。

 

「くそっ!!」

 

男はバールを振るい、素手のその男を止めようとする。しかしその次の瞬間彼の手からバールが消えた。

 

「な――」

 

それに男が気づくのと、何かに殴られた男が意識を失うのはほとんど同時だった。

 

「無刀取り……冥途の土産に持っていけ」

 

侍青年――総司は相手が振り下ろそうとした一瞬で懐に入って瞬時に奪い取り、さらに打撃を叩き込んだ後バールを持っていた男に向けてそう呟いた。

 

「くそ、ふざけやがってっ!!」

 

先程ショットガンを撃った男性の一人が総司に銃口を向けようとする。

 

「そうはいかん!」

 

「ぐげっ!?」

 

しかし引き金に人差し指がかかる前に、その頭にお盆がぶち当たった。

 

「ナイスコントロール」

 

ショットガンに気づいたセシルが投げつけたのだ。さらに怯ませた隙に懐に入り、至近距離から膝蹴りをくらわせて怯ませ手の力が緩んだところで相手のショットガンを奪うと、その柄で相手の顎をかちあげる。顎への衝撃で脳を思い切り揺らされてノックアウトしたのか男はゆっくりと地面に倒れ伏した。

 

「くそ、テメエ!!」

 

いきなり学生が襲撃したことに一瞬呆けていた隙に他の仲間が制圧された事にリーダーは驚きつつも、なんとか再起動してセシル達にハンドガンを向ける。

 

「遅い」

 

しかしその前にラウルが立ちはだかり、彼は相手のハンドガンを持つ右腕を取って捻り上げ、ハンドガンを取り落させる。それを素早く物陰に隠れていたシャルルが回収、それを確認したラウルはリーダーを思い切り後ろへと突き飛ばした。

壁に向かって倒れたリーダーにもう逃げ場は無く、振り返ったリーダーの目にはショットガンを構えた蓮とサブマシンガンを構えたセシル、ハンドガンを構えたシャルルがその銃口を自分に向けている光景が映る。さらに今は銃を持つメンバーの後ろに下がっているが、もしこちらに突進してくればすぐにバールを持つ総司が飛び出せるようスペースが空いている。しかも現在は掌底を受け、バールを受け、顎に打撃をくらって気絶している部下はラウルが見張っておりこちらも穴はない。

 

「命が惜しけりゃ大人しく降参しなよ!」

HoldUp(手を挙げろ)!」

 

蓮が吼えるように降参しろと呼びかけ、セシルも手を挙げろと続く。

 

「ふざ、けんな……」

 

それに対し、リーダーは怒りに震える。

 

「どうせ捕まってムショ暮らしになるくらいなら、いっそ全部吹き飛ばしてやらぁ!!」

 

そう叫び革ジャンを開くリーダー。そこにはこの店一帯くらいは軽く吹き飛ばせそうなプラスチック爆弾が巻き付けられていた。起爆装置とそれに繋がるスイッチも右手に握られている。

 

「げっ! おい馬鹿落ち着け!」

「止むを得んか……」

 

店内が先ほど以上のパニックに陥り、蓮が慌てて説得に入るとセシルはサブマシンガンの銃口を男の額に向ける。ヘッドショットで相手がスイッチを押すより先に射殺するつもりだ。

 

パァン!

 

しかしセシルが引き金に指をかけるよりも早く銃声が響く。その銃声の主――ハンドガンから放たれた銃弾はリーダーが右手に握っていたスイッチを的確に射抜いていた。その威力にリーダーがスイッチを取り落とした直後、さらに四発の銃声が響いたかと思うと起爆装置を的確に射抜いていた。

 

「チェック・メイト」

 

ハンドガンを持っていた少年――シャルルは冷静な声で呟いた後、にこっと綺麗な微笑みを見せる。

 

「まだやる?」

 

そこまで言った瞬間、彼の微笑みが変わる。

 

「それなら今度はその腕を吹っ飛ばすよ?」

 

目元に影を作り、笑みの質も人畜無害なものから獰猛な獣のそれへと変わる。その圧力についに抵抗の手段がなくなったリーダーは恐怖に負け、がくりと膝をついた。

 

「す、すみっ、すみませんっ! も、もうしまっ、しませんっ。い、命ばかりはお助けをっ……」

 

リーダーからの降参宣言が聞こえ、今度こそ助かったと客やスタッフが歓声を上げる。と、それを聞いたか警官隊やマスコミが一斉に店内に詰めかけてきたのを見張りをしていたラウルが見る。

 

「ほう、日本の警官は優秀だな」

 

「まずい! 僕達は代表候補生で専用機持ちだ。こんな騒ぎを起こしたと公になったらややこしい事になるぞ!」

 

「あー。俺はいつもの事だけど、小言はたくさんだな。逃げようぜ!」

 

「オッケー! スタッフさん失礼します! 皆、こっちから逃げよう!」

 

ラウルの感嘆の声にセシルがまずいと言うと蓮は慣れっこだが面倒は面倒だと逃げる事を提案、シャルルも恐らく裏にあるだろう従業員専用口から逃げ出そうと、ハンドガンを放り捨ててカウンターに乗り込むとセシル達もすぐ銃やバールを投げ捨ててその後に続く。最後尾のラウルがカウンターの向こうに消えるのと警官隊が店内に雪崩れ込むのはほとんど同時だった。

 

 

カフェ(アット)クルーズ。壱花と蘭は水着を買った後レゾナンスを後にし、街を散策していて足が疲れたので休憩がてらここでティータイムと洒落込んでいた。

からんから~ん、とドアに付けられた来客を示す小さなベルが鳴り、数人の客が入ってくる。

 

「なあおい聞いたか? さっきレゾナンスに銀行強盗が入ったらしいぜ?」

 

「ああ。だけど客が銃を相手に大立ち回りをして、犯人全員捕まえたんだってな」

 

「いやいやそりゃねーだろ。どこのドラマか映画の話だっつーの。あ、すいません三名でーす」

 

三人の客は笑い話をしながら、メイド服着用の女性店員に席に案内される。

 

「ふ~ん、銀行強盗ね~。物騒な世の中だわ」

 

盗み聞きのつもりはないが聞こえてしまった話に正直な感想を呟く。

 

「客が大立ち回り……」

 

ドラマか映画の話と馬鹿にされた光景。しかしそれをやらかせそうな面々に心当たりがあり、壱花がひくひくと頬をひくつかせる。

 

「ねえ、蓮達って……」

 

「……多分出来ると思う。ソウちゃん除いて皆代表候補生だし、そういう訓練受けてるって聞いたことある……」

 

蘭の言葉に壱花がため息をついてそう返し、「一応後で連絡取って確認する」と続ける。

 

「本当に大変ね、あんたも」

 

蘭も苦笑しながら壱花の苦労を労い、それからふと壱花が買った水着を見る。

 

「にしてもさ。あんたも私ばっかりと遊んでていいの?」

 

「ふえ?」

 

「いや、さっきの蓮達とか。学校には休日一緒に遊びに行きたい人とかいないの?」

 

「ん~……正直蘭ちゃんとかの方が気が楽なんだよね。男の子ばっかりのところだからかな?」

 

実質男子校に放り込まれていて同い年の女性が周りにいないからこういう時に男子ではなく女子を選んでしまうのだろうか。と壱花は首を傾げる。

 

「共学の私には分かんない悩みね、それ。でも彼氏を作るなら苦労しそうにない環境だわ。よりどりみどりだし」

 

「何言ってるのよ蘭ちゃん」

 

テーブルに頬杖をついた蘭のにやにや顔での言葉に壱花が呆れ顔でツッコミを入れ、クッキーに手を伸ばす。

 

「でもさ、あのポニテイケメン。篠ノ之君だっけ? 幼馴染で昔別れたけど偶然同じ高校に入学した、そういうのなんか運命感じない?」

 

「ふぇ!?」

 

蘭から唐突に発された言葉、それに壱花はびくんと小さく飛び跳ね、同時に動揺で落としたクッキーが床に落ちて破片を散らす。その直後、壱花の顔が真っ赤に染まり上がっていった。

 

「あ、あれ? あれ?」

 

「……」

 

顔に熱が集まるのを自覚したのだろう。しかしなぜそうなったのか分かっていない様子で両手を頬に当てている壱花に蘭が呆然とする。

中学時代は成績優秀スポーツ万能、美人でスタイルよし、おまけに性格も良好と学校中から男女問わず人気があり、しかし相当の鈍感で告白を本人無自覚で袖にし続けたという伝説を持つ壱花。一番猛アタックをし、最終的にはプロポーズまがいの台詞まで言った蓮でさえ再会後それも通じておらず玉砕したと聞かされていた蘭は、本人こそ無自覚だが今までとは全く違う反応に何も返す事が出来なかった。

 

(でもまぁ……ちゃんと自覚するまで黙っときますか)

 

恐らく、という前置きがつくのだが壱花自身が分かっていない感情の正体は蘭には分かる。しかしそれを人が教えるのは野暮というもの。蘭は頬杖をついたまま、何か微笑ましいものを見る様子で壱花を眺めるのだった。




今回は前半水着ショッピング。ちなみにイメージは全てFGOからそれぞれスカサハ、マリー・アントワネット、アルトリア・ペンドラゴンの水着をモチーフにしています。で、最終的に購入したのはアルトリアです。水着でアーチャー、うちのアーチャーの切り札です。
で、中盤はシャルロットとラウラのあれをアレンジし男子勢全員での袋叩きにしてみました。ジャンクフード店になったのは……まあ、趣味で。流石に原作通りのバイトを五人でさせるわけにもいかないし。
で、後半はちらっと。壱花と蘭のお話をやって今回は終了。次回からこの話の最終章、臨海学校編に入る予定です。
では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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