インフィニット・ストラトス~IF(インフィニット・フェイト)~   作:カイナ

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第二十二話 臨海学校、紅の新星

合宿二日目、本日の予定は朝から夜まで一日中ISの各種装備試験運用がぎっしり詰め込まれており、訓練場所である海岸には各国から試験装備がたくさん送り込まれている。壱花はその光景を唖然とした様子で眺めていた。

 

「……なんというか、すごいね……」

 

「ええ。情報提示の必要なく装備の試験運用が行えるのは世界広しと言えどIS学園だけですので」

 

「この日のために装備はわんさか送られてくるわけさ」

 

壱花の言葉にセシルと蓮が説明を行い、壱花は試験装備の山を眺めながらへーと頷く。

 

「ご主人様」

 

「どうしたのラウル君。あとご主人様はやめて」

 

「もうすぐ集合時間です」

 

「おう。んじゃ整列しとくか」

 

声をかけてきたラウルに壱花はツッコミを入れつつ用事を尋ね、ラウルがもうすぐ集合時間になると答えると蓮が整列に向かうかと返す。と、壱花は誰かを探すようにきょろきょろと辺りを見回し始め、それを見たセシルが首を傾げた。

 

「どうかしましたか、壱花さん」

 

「ううん、ただ……シャルル君がいないような……」

 

「シャルル?……ああ、そういや。たしか千雪さんに相談して……ラウル、お前と二人部屋になったよな?」

 

壱花の言葉通り、海岸に集まっている中にシャルルの姿が見えない。それに蓮は昨夜の事を思い出してラウルに問いかけた。

 

「ああ、何か警戒していて随分遅くまで起きていた事を覚えている」

 

「何やってんだか……まあいいや。とりあえず並ぼうぜ」

 

蓮の質問に対しラウルはシャルルが遅くまで起きていたと証言、蓮が呆れたため息を一つついた後整列のため他生徒達のいる方に歩いていった。

 

 

 

 

 

「ようやく全員集まったか……おい、遅刻者」

 

「はいっ!」

 

集合時間から五分後、生徒達の前に立っている千雪の言葉に遅刻者ことシャルルが肩を震わせる。

 

「そうだな、ISのコア・ネットワークについて説明してみろ」

 

「は、はいっ!……ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っています。これは元々広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられたもので、現在はオープン・チャネルとプライベート・チャネルによる操縦者会話など、通信用に使われています。それ以外にも『非限定情報共有(シェアリング)』をコア同士が各自に行うことで様々な情報を自己進化の糧として吸収していることが近年の研究で分かりました。これらは製作者の篠ノ之博士が自己発達の一環として無制限展開を許可したため、現在も進化の途中であり、全容は掴めていない。とのことです」

 

千雪の問いかけにシャルルはまた一つ肩を震わせた後説明を始める。その淀みない説明が終わると千雪はよし、と頷いた。

 

「模範的な回答だな。遅刻はそれで許してやろう」

 

「は、はい……」

 

その言葉にシャルルはほぉっと安堵の息を吐く。

 

「シャルル君、寝坊なんて珍しいけどどうしたの?」

 

「あ、うん……夜襲を受けないかと心配で寝付けなくて……」

 

「夜襲なんて大袈裟だなぁ。日本はそんなに治安悪くないよ」

 

「ハハハハハ……」

 

夜襲を心配して眠れなかったというシャルルに、日本生まれ日本育ち、日本の治安をよく知る壱花は大袈裟だと呆れる。しかしシャルルは苦笑を返す事しか出来なかった。

 

「それでは各班に振り分けられたISの装備試験を行うように。全員、迅速に行え!」

 

『はいっ!!!』

 

そこに飛んだ千雪の指示に男子達が返す。ここの地形は四方が崖で囲まれているドーム状の状態。音が反響し壱花は驚いて耳を押さえてしまった。

 

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

 

「は、はい」

 

と、機材運びに向かおうとしていた総司を千雪が呼ぶ。

 

「お前には今日から専用――」

 

そこまで言おうとした瞬間、千雪はある一ヶ所の虚空を睨みつけ、そこ目掛けて足元に転がっていた石を思いっきり蹴り飛ばす。

 

「あいたっ!?」

 

すると石が虚空でまるで何かに当たったようにバウンドし、またそのバウンドした地点から一人の男のものらしい声が聞こえた。

 

「束」

 

「あいててて……ふふ、相変わらずやりますね。ちぃくん」

 

千雪が何者かの名前を呼ぶと共に、その虚空から何者かが徐々に出現する。そしてその何者か――小柄で華奢な体躯をした中性的な少年――は手に持って自らの周りにとぐろを巻くように設置していた一枚の布を掲げる。するとその布はひとりでに動いてまるで魔女の帽子のような形に変化。少年はそれを自分の頭にかぶせるように置いた。

 

「束さんの新発明。一人~多人数用ステルス装置、ハデスの隠れ兜を見破るなんて」

 

そう言って怪しげに笑う束。すると彼は唐突にすったった~と別の方に走っていった。

 

「やあ!」

 

「……どうも」

 

その先にいたのは岩陰に隠れていた総司。束の挨拶に彼は僅かに頭を下げて返すのみだった。

 

「えへへ、久しぶりですね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなりましたね、ソウくん」

 

まるで全てを見透かすようなニヤニヤ笑いを浮かべながらのその言葉。だが直後、総司の木刀による打撃が束に入り、ゴィンという音が響いた。

 

「殴りますよ」

 

「――な、殴ってから言ったぁ……ひどい! ソウくんひどい! ひどいですよね、いっちゃん!」

 

総司の言葉&木刀ぶん殴りに対し束はそう言い、壱花にも意見を求める。それに対し壱花は笑顔のまま彼に歩き寄った。

 

「おぉ、流石は優しいいっちゃん! 慰めてぐへっ!?」

 

束の言葉が悲鳴で途切れた理由は簡単。壱花に抱き付こうと大きく両腕を広げた彼の無防備な腹に彼女が無言且つ完全に不意を突く形で腹パンを叩き込んだからだ。

 

「せい!」

 

「げふ!?」

 

「とう!!」

 

「がはっ!?」

 

のみならず、腹パンを叩き込んだ右手を引くと同時に腹に追撃の膝蹴りを入れ、苦悶の表情で前かがみになった束の背中目掛けて右足を上げ痛烈な踵落としを叩き込む。

 

「とりあえず、私が藍越学園じゃなくってIS学園に来る羽目になったのは束お兄ちゃんのせいだって事で。無言の腹パンを叩き込もうと心に決めてたの。このコンボは数ヶ月分の利子だって事で……うん、すっきりした」

 

「い……いっちゃん……たくましくなりましたね……がくっ」

 

そう言い捨てて満足したのか束を心配する様子など欠片も見せずに壱花はすたすたと元いた場所に戻る。いっそ冷淡な扱いに不意打ちの腹パンからのコンボで地面に沈んだ束はそう言い残し、がくっと言って頭を地面につけた。が、ものの数秒でノックアウトごっこに満足したのか「とうっ」と言って起き上がる。

 

「え、えっと、この合宿では関係者以外――」

「んん? 珍妙奇天烈なことを言いますね。ISの関係者というなら、一番はこの僕をおいて他にはいないのでは?」

「――え? あ、はい、そうですね……」

 

そこに兎佐が入ってくるが束の言葉にあっという間に涙目モード。千雪はやれやれとため息をついた。

 

「おい束。自己紹介くらいしろ」

 

「えぇ~……めんどうですねぇ」

 

「さっさとしろ。うちの生徒達が困っている」

 

「仕方ありません」

 

最初の言葉にはめんどくさがるが、ギロリと睨みつけながらの追撃の言葉にようやく了承。それから束は生徒達の方を向いてにこり、と可愛らしく見える、しかしそれでいて無機質な笑みを浮かべた。

 

「僕が天才の束さんです。終わり」

 

あっという間の自己紹介。しかしそれだけでも彼がISを開発した天才科学者篠ノ之束だと分かったのか周りにざわめきが走り出す。

 

「それで、頼んでおいたものは……」

 

「頼んでおいたもの?」

 

するとそんな空気の中総司が束に話しかけ、壱花がつい彼の言葉を反芻する。

 

「ふふふ。それはすでに準備済みですよ。さあ、大空をご覧あれ!」

 

突然束が勢いよく頭上を指差し、つい全員が大空を見上げてしまう。とそこから巨大なコンテナが急落下して地面に突き刺さり、コンテナが開くと中から紅色に染められた機体が姿を現した。

 

「……IS?」

 

「これぞ、ソウくんの専用機こと紅椿! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISですよ」

 

壱花がそう呟く、と直後束が説明を行い、総司を見てにぱっと微笑む。

 

「さあソウくん、今からフィッティングとパーソライズを始めましょうか! 僕が補佐するのですぐに終わりますよ♪」

 

「……それでは、頼みます」

 

「あはは、堅いですね。実の兄弟なんだし、こうもっとキャッチーな呼び方で――」

「早く始めましょう」

 

総司は束に対しいやに頑なな態度を取る。それに壱花は妙なものを見るように首を傾げていた。

 

「ん~。まあ、そうですね。じゃあ始めましょうか」

 

束がそういうと共に総司は紅色IS――紅椿に乗り込み、束は空中に六枚のキーボードとディスプレイを出現させる。

 

「ソウくんのデータはある程度先行していれてあるから、あとは最新データに更新するだけですね。ピ、ポ、パ♪」

 

のんきに擬音を口にしながら、しかしとんでもない速さでのタイピング。IS知識に関してはようやく素人の域を出た壱花ですらその速さは別格と直感させていた。

 

「近接戦闘を基礎にして万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思いますよ。あとは自立支援装置もつけておきましたからね! お兄ちゃんが!」

 

「それは、どうも」

 

束の明るい言葉に対し総司の言葉は素っ気無かった。しかし束は笑みを見せたままだ。

 

「ん~、ふ、ふ、ふふ~♪ ソウくん、また剣の腕が上がったねえ。筋肉の付き方を見れば分かります。やあやあ、お兄ちゃんは鼻が高いですねぇ」

 

「……」

 

「あはは、無視されてしまいました……はい、フィッティング終了です♪」

 

無駄話をしながらもあっという間にフィッティング終了。その時だった。

 

「あの専用機って篠ノ之がもらえるのか?……身内ってだけで?」

 

「だよなぁ。なんかずるいよな」

 

突然聞こえてきた声。それに対し意外な事に束が反応し、口を開いた。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのですか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

その言葉にさっき発言した二人はうつむいて口をつぐみ、気まずそうに作業に戻る。が束は特に気にしていない様子でこっちも作業に戻った。というよりも先ほどの皮肉の合間にも作業自体は止まっておらず、やがて作業も終了したのかたたたんっとディスプレイをタップすると次々にそれを閉じていく。

 

「あとは自動処理に任せておけばパーソライズも終わりますね。あ、いっちゃん。白式見せて。束さんは興味津々なんですよ」

 

「え、あ、はい」

 

束の言葉に壱花は一瞬驚いたような様子を見せた後頷き、白式を展開すると束はその装甲にコードを差し込む。すると空中にさっき紅椿のフィッティングを行っていた時に現れていたディスプレイが浮かぶ。

 

「ん~……不思議なフラグメントパターンを構築してるね。なんだろ? 見たことないパターン。いっちゃんが女の子だからかな?」

 

「束お兄ちゃん、そのことなんだけど……なんで女の私がISを使えるんですか?」

 

「ん? ん~……どうしてでしょうね。僕にもさっぱりですよ。ナノ単位まで分解すれば分かる気がするんですけど……してもいいですか? 優しくしますよ?」

 

「束お兄ちゃんのことだから、分解対象は白式だけじゃなくって私もでしょ? 却下」

 

「そ~いうと思いました。まあそもそもISは自己進化するように作ったし、こういうこともあるでしょうね。ふふふ」

 

「はぁ……あ、そうだ」

 

束の煙に巻くような、それでいてこれ以上何を聞いても無駄だと分かる笑い声、それに壱花は呆れたような諦めたようなため息をついた後思い出したように声を漏らし、再び束に話しかける。

 

「そういえば束お兄ちゃん。白式って束お兄ちゃんが作ったの?」

 

「へえ、そう思った理由は?」

 

「……なんとなく」

 

いきなりの質問に対して束は興味を持ったように微笑み、問い返す。それに対し壱花は首を小さくこてんと傾げながらそう返すだけだった。しかしその返答で満足なのか、束は再び笑う。

 

「ふふ、半分正解。と言っておきましょう……白式は日本が作ってて欠陥機としてポイされてたのを僕がいただいて、動くようにいじっただけですから。でもそのおかげで第一形態から単一仕様能力が使えるでしょ? しかし元々そういう機体らしいですよ? 日本が開発してたのは――」

「馬鹿たれ。機密事項をペラペラとバラすな」

 

満足の笑みを浮かべた束はペラペラと喋りだすがそこに千雪の拳骨が突き刺さり、束はあててと声を漏らしながらにやにやと微笑んでいた。

 

「あてて。は~、ちぃくんの愛情表現は今も昔も過激だよね」

 

「やかましい」

 

束の言葉に千冬は呆れたように息を吐きながらもう一発拳骨を叩き込む。ゴチン、という激突音が聞こえて束の頭から星が舞った時、一人の男子生徒が声をかけた。

 

「あ、あのっ! 篠ノ之博士のご高名はかねがね承っております。もしよろしければ、僕のISを見ていただけないでしょうかっ!?」

 

「(ヤバい!?)セ、セシル君待っ――」

 

束に声をかけた男子生徒、それはセシル。彼はIS開発者に会えた興奮からか顔が紅潮して目をキラキラさせているが突然声をかけた彼に対して壱花がぎょっとした様子でそこに口を挟もうとする。

 

「はぁ? なんだよ、雑種」

 

が、その前に感情の篭ってない声がその場に発される。

 

「雑種如きがどういう了見で(オレ)に話しかけてるんだよ。そもそも今はソウくんとちぃくんといっちゃんとの数年ぶりの再会なんだよ。そういうシーンなんだよ。雑種如きの空っぽの頭じゃ理解できないのか」

 

「え、あの……」

 

「黙れよ雑種。あっちに行け」

 

視線、口調、声質全てが無感情、無理矢理感情を探せば辛辣。そんな束の言葉がセシルを貫き、ここまで罵倒交じりの拒絶をされてはどうしようもないのかセシルは無言で引き下がる。

 

「まぁったく、図々しい雑種ですね」

 

「束お兄ちゃん、あれ私とソウちゃんの友達なんだけど……」

 

「へぇ……あんな不敬な雑種がねぇ」

 

やれやれ、と大袈裟に肩をすくめ両手を肩まで上げる束に壱花が呆れ顔で一応セシルのフォローを行う。が、束はそこらに這いつくばる虫けらを見るような目でセシルを一瞥。一瞬でもう興味を失ったように彼から目を離すと再びにぱっと可愛らしく微笑んだ。

 

「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか。それよりいっちゃん、白式改造してあげましょうか?」

 

「え? えーっと……ちなみに、どんな改造ですか?」

 

束の言葉に壱花は一応と聞き返す。それに束は腕を組んでええと頷いた。

 

「ええ、メイドの格好になるってどうですか? いっくんには前々からメイド服が似合うと思っていたんです」

 

「ノーサンキューです」

 

キラッ、と異性を魅了せんばかりの輝く笑みもなんのその一刀両断する壱花。すると総司がゴホンゴホンと咳払いをしながら会話に入ってきた。

 

「こっちはまだ終わらないのですか?」

 

「んー、もう終わりますね」

 

総司の言葉に束が返した瞬間、プシュップシュッという音を立ててケーブルが外れていく。言葉通り束が言った瞬間セッティングが終了したようだ。

 

「んじゃ、試運転もかねて飛んでみてください。ソウくんのイメージ通りに動くはずですよ」

 

「ええ。それでは試してみます」

 

束の言葉に総司は頷き、彼が意識を集中させるようにまぶたを閉じると、次の瞬間紅椿はものすごい速度で飛翔、その余波の衝撃波で砂が舞うが壱花はかまうことなく白式のハイパーセンサーで赤椿を追う。他の代表候補生も同じくハイパーセンサーを使っているらしく顔を上げて険しい顔を見せている。

 

「セシル君、ソウちゃんは!?」

 

「二百メートル上空です!」

 

「速……」

 

一番近くにいたセシルに聞き、セシルが答えると壱花はその情報を目印にセンサーで確認。総司の姿を発見する事に成功する。

 

「どうですか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

[え、ええ、まぁ……]

 

束の言葉に対する総司の返答がオープン・チャネルを伝わって壱花にも伝わる。

 

「では刀を使ってみましょう。武器特性のデータを送ります」

 

束はそう言って空中ディスプレイに指を躍らせ、同時に赤椿の腰の両側と背中に一本ずつ刀が展開(オープン)される。

 

「右のものが雨月(あまづき)で左のが空裂(からわれ)、背中の長刀は物干し竿(ものほしざお)です」

 

束の解説を聞きつつ、武器データを受け取った総司は慣れた動作で腰の二刀を引き抜いた。

 

――雨月:対単一仕様武装。打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を連続して放出する。

 

転送された武器データにちらりと目を通し、総司は右手に握る雨月を突き出す。同時に紅色の閃光が針のような形のエネルギー刃となって射出。射程範囲にあった雲に次々と風穴を開けていき最後には薙ぎ払った。

 

「なんという威力と連射性能だ……見る限りでは射程距離はアサルトライフル程度、僕の得意距離である超遠距離のスナイパーライフル程の射程ではなさそうだが、あの加速を考えれば例え届かない間合いだろうとも関係ない」

 

「射程範囲まで近づきゃいいんだからな……」

 

その光景を見たセシルが悔しそうながらも己の考えた正しい評価を呟き、蓮もしかめっ面でそれに同意する。

 

――空裂:対集団仕様武装。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーを展開、放出する。

 

「次は空裂ですね。では、これを撃ち落としてみてください」

 

総司が空裂の武器データを確認、左手の空裂を構えたのを見た瞬間束がそう口にし、彼の周囲に金色の光の粒子が集まる。その光の粒子が円状の何かを形成した瞬間その円状の何かから金色の光を浴びた剣、いや、剣の形を模したミサイルが射出される。しかも一つではない、剣、斧、槍、様々な武器の形を模したミサイル計十六発が総司目掛けて放たれていた。

 

「ソウちゃん!」

 

「――やれる! この紅椿なら!」

 

思わず壱花が声を上げる、が総司は笑みを浮かべながらそう言うと右脇下に空裂を構え、一回転するように一閃。その刹那、剣を振るった軌跡が赤いレーザーとなって帯状に広がり、十六発のミサイルを全弾撃墜した。

 

「すごい……」

 

誰だろうか、率直な感想を思わず口にする近くで壱花も驚きを隠せずに立ち尽くす。他の生徒達も紅椿の力に驚愕、魅了されて言葉を失い、束はその光景を満足そうに眺めていた。

 

(……千雪お兄ちゃん?)

 

と、壱花はただ一人束を厳しく見つめている人物――織斑千雪に気づく。その眼光はまるで敵を見つめているかのように鋭いものだった。

 

「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」

 

するとそこにいつもより当社比三割り増しに慌てている兎佐が乱入、千雪も厳しい視線を止めてそちらに向き直った。

 

「どうした?」

 

「こ、こっ、これをっ!」

 

そう言って兎佐は小型端末を千雪に手渡し、その内容を見た彼の表情が曇る。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……」

 

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼動をしていた――」

「しっ。機密事項を口にするな。生徒たちに聞こえる」

「――す、すみませんっ……」

 

「専用機持ちは?」

 

「ひ、ひとり欠席していますが、それ以外は」

 

千雪と兎佐はそこまで言い合うと千雪が数人の生徒の視線に気づき、なんと手話で会話し始めた。

 

「……ラウル君、分かる?」

 

「……いえ、どうやら軍の暗号手話のようです」

 

それを見た壱花はラウルに解読を頼むが、流石のラウルも当然とはいえ他国軍の暗号手話は解読不能、顔を小さく横に振って返した。

 

「そ、そ、それでは、私は他の先生たちにも連絡してきますのでっ」

 

「了解した。全員、注目!」

 

話が終わるや否や兎佐はそう言って走り去っていき、千雪がぱぁんっと手を鳴らして全員の注目を集めた。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテストは中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機を義務付ける。以上だ!」

 

「え?……」

「ちゅ、中止? なんで? 特殊任務行動って……」

「状況がぜんぜんわかんないんだけど……」

 

千雪の言葉に辺りがざわめき始め、困惑からかどうにも行動に移らない。と、業を煮やしたかラウルがキッとした目で彼らを睨む。

 

「貴様ら、上官の命令は絶対だ!! 即座に撤収しろ! 教官の手を煩わせるなっ!!」

 

『は、はいっ!!!』

 

それは壱花を主と呼び自らをその犬と称する残念イケメンではなく軍人ラウル・ボーデヴィッヒの姿。一喝が響くと生徒達は慌てて行動を開始、ISや運んでいた装備を片づけ始める。

 

「以後、許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する! そして専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ!……それと、篠ノ之も来い」

 

「はい!」

 

千雪の言葉に一番に返事したのは総司、その声は嬉しそうな妙に気合の入ったもの。それを聞いた壱花は妙に不安にかられたような表情を見せていた。

 

 

 

 

 

「では、現状を説明する」

 

旅館の一番奥、宴会用の大座敷・風花の間に壱花達専用機持ち全員と教師陣が集められていた。照明を落とした薄暗い室内にはぼうっと大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働だったアメリカ、イスラエルの共同開発の第三世代のIS銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)、以下福音とする。が制御下を離れて暴走。監視区域より離脱したとの連絡があった」

 

その言葉と共に壱花と総司を除く専用機持ち、つまり代表候補生の表情が変わる。特に軍人であるラウルは本来軍人で今回はその本業の任務にあたるためか真剣そのものだ。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二km先の空域を通過することが分かった。時間にして五十分後。学園上層部の通達により、我々がこの事態に対処することになった」

 

千雪は淡々と続け、専用機持ち達を見回す。

 

「教員は学園の訓練機を使って、空域及び海域の封鎖を行う。よって、この作戦の要は、専用機持ちに担当してもらう」

 

「……ちょ、ちょっと待って! つまり、私達でその福音っていうISを落とすの!?」

 

「そうなります」

 

千雪の言葉を聞いた壱花が驚きの声を上げるとラウルがこくりと頷いて返した。

 

「それでは作戦会議を始める。意見がある者は挙手するように」

 

「はい」

 

千雪の言葉に一番にセシルが挙手をした。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

 

「うむ。だが、決して口外するな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」

 

「了解しました」

 

千雪はセシルの言葉に頷き、同時に警告を口にする。それにセシルが了解の言葉を発し、他のメンバーも首肯で了解の意を示すと同時にモニターに情報が映し出され、代表候補生メンバーは一斉にモニターに注目する。

 

「広域殲滅を目的とした、特殊射撃型……僕のISと同じ、オールレンジ攻撃を行えるようだな」

 

「攻撃と機動の両方を特化した機体ってとこか。厄介だな。しかも、スペック上では俺の甲龍(シェンロン)を上回ってるから、向こうの方が有利……」

 

「この特殊武装が曲者って感じはするね。ちょうど本国からリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」

 

「しかも、このデータでは格闘性能が未知数。持っているスキルも分からないか……」

 

「「……」」

 

モニターの情報を見ながら代表候補生一同は次々と意見を交わしていく。壱花と総司は正直会話についていけておらず立ち尽くしていた。

 

「教官、偵察は行えないのですか?」

 

「織斑先生と呼べ。無理だな、この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは一回が限界だ」

 

「一回きりのチャンス………という事はやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」

 

ラウルの質問に千雪が首を横に振ると、次に兎佐が結論を示す。全員の視線が壱花に集中した。

 

「え?……」

 

「……壱花、お前の零落白夜で落とすって言ってるんだ」

 

視線の意味を理解できていない壱花に蓮が説明する。

 

「それしかありません。ただ、問題は……」

 

「どうやって壱花をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから、移動をどうするか」

 

「目標に追い付ける速度が出せるISでなければいけない。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」

 

蓮の言葉に続いてセシル、シャルル、ラウルが意見を出し合う。

 

「ちょ、ちょっと待って! わ、私が行くの!?」

 

その横でいきなり話を振られたというか作戦の中核に放り込まれた壱花が慌てて口を挟む。すると千雪がキリッとした目で壱花を見た。

 

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。もし覚悟がないなら無理強いはしない」

 

普段のシスコンではなく、あくまでも教員にしてこの場では上官の目。覚悟がないもしくは中途半端な状態でやらせても逆に被害が広がるだけ、という冷静な判断に対し、壱花はびくりとなりつつもその目を真っ直ぐに見返す。

 

「もし、私が行かなかったら?」

 

「その時は別の作戦を考えるだけだ。成功率が下がる可能性は高いがな」

 

一撃必殺に相応しい零落白夜。最高時速二四五〇キロを越え、超音速飛行が可能であるISを確実に倒すにはそれによる一発で勝負を決めるのがもっとも効果的だろう。その合理的な判断に壱花はぎゅっと拳を握りしめて自らの中に宿る恐怖を押さえつける。

 

「やります……私が、やってみせます!」

 

壱花は千雪の目を真っ直ぐに見、自分の胸に拳を当てながら強い口調で言い切る。

 

「よし、それでは作戦の具体的な内容に入る。現在、この専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ?」

 

「それなら、私のブルー・ティアーズが。ちょうどイギリスから強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』が送られて来ていますし、超高感度ハイパーセンサーもついています」

 

セシルは目上である千雪相手か一人称を「私」に変えつつ返答。今回の作戦に使用可能なパッケージが届いている事を伝える。

そもそもパッケージとは追加アーマーや増設スラスターなど、単純な武器ではなく機体の性能や性質を大幅に変える換装装備のことをいう。

 

「オルコット、超高速下での戦闘訓練時間は?」

 

「二十時間です」

 

「ふむ……ならば適任――」

「おーっと、その作戦。ちょっと待ってもらえませんか?」

 

セシルの言葉を聞いた千雪が頷いてそう言おうとしたところに突如響く声、それが聞こえてきた天井の方を見ると壱花が唖然とした表情を見せた。

 

「た、束お兄ちゃん……」

 

「……佐藤先生、室外への強制退去を」

 

「えっ!? は、はいっ。あの、篠ノ之博士、とりあえず降りてきてください……」

 

壱花の呟きに続いて千雪が頭を押さえながら兎佐に指示、それに兎佐は頷いて束にそう言い、その言葉に従ったわけではないのだろうが束はとうっという掛け声と共にサーカスのピエロも顔負けの身のこなしで空中一回転して着地した。そしてすったったーと千雪の元に駆け寄る。

 

「ちぃくんちぃくん! もっといい作戦がこの天才の頭脳にありますよ!」

 

「……出て行け」

 

束の底抜けに明るい声に対し千雪は頭を押さえながら低い声でそう言う。その間に兎佐が束を室外に連れて行こうと捕まえようとするが、束はするりとかわしてみせていた。

 

「ふふふ、ちぃくん。ここは断然紅椿の出番なんですよ」

 

「なに? どういうことだ?」

 

束の声に千雪が反応、彼が興味を持ったことに束はニヤリと笑って素早く何かの操作を行うと、千雪を囲むように何枚かのディスプレイが浮かび上がった。

 

「紅椿のスペックデータ見てください。パッケージなんてなくっても超高速機動ができるんです。紅椿の展開装甲を調整して……どうです? これでスピードはばっちりですよ」

 

「……展開装甲?」

 

束の言葉の中にある聞き覚えのない単語に壱花が反応、首を傾げる仕草をしてみせる。

 

「では説明しましょう。展開装甲というのは、この天才の束さんが作った第四世代ISの装備なんですよ」

 

その言葉に代表候補生メンバー全員が絶句する。ちなみに既にメインディスプレイも乗っ取られておりさっきまで銀の福音のスペックデータが映っていた画面が紅椿のスペックデータに映り変わっていた。

 

そもそも、第一世代というのは『ISの完成』を目的とした機体。

次の第二世代は『後付装備による多様化』を可能にしたもの。学園所有の打鉄やラファール・リヴァイブ、シャルルの駆るラファール・リヴァイブカスタムⅡはこれにあたり、今世界でもっとも普及しているのもこの世代だ。

第三世代IS――セシル達大体の代表候補生の専用機はここだ――は空間作用兵器にBT兵器、AICなどの『操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊兵器の実装』を目指したものである。

そして第四世代というのは『パッケージ換装を必要としない万能機』という現在絶賛机上の空論中のもの、と言われている。

 

「ちょ、ちょっと待って、束お兄ちゃん……今、世界はようやく第三世代型の一号試験機が出来た段階だよ!?」

 

頭の中で今までのISの歴史を辿った壱花はようやく彼がおかしい事に言っている事に気づき指摘する。そもそも世界では第三世代ISが出来たばかり、特にセシルは自分の専用機であるブルー・ティアーズがその第三世代の試験機、つまり少なくともイギリスでは第三世代は試験機こそが最先端である証明であるし、それは蓮やラウル達の所属する他の国だってあまり変わらないだろう。しかし束はそんな事気にも止めてないようににこり、と微笑んで見せる。

 

「ふふ、束さんはそんじょそこらの天才じゃないんですよ。紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてあります。システム最大稼動時にはスペックデータはさらに倍プッシュ。全ステータスランクA、あるいはEXも夢じゃありませんよ」

 

「……全身が、展開装甲?……それにスペックデータが……倍!? そ、それってつまり……」

 

「うん、無茶苦茶強いですよ。一言で言うと最強ですね」

 

壱花の唖然とした呟きに対し束はあっさりと頷いて返す。その言葉に千雪を除く全員が絶句してしまっていた。

 

「ちなみに紅椿の展開装甲はより発展したタイプだから、攻撃・防御・機動の用途に応じて切り替えが可能。これぞ第四世代型の目標即時万能対応機(リアルタイム・マルチロール・アクトレス)というやつですね」

 

その言葉に全員が黙り込んでしまう。

 

「おや、どうしてみんなお通夜みたいな顔してるんですか? 誰か死んだんですか? 変なの」

 

そしてそれに対し暢気にそう言ってのける束なのであった。

 

(変なの、どころの騒ぎじゃない……)

 

壱花は心の中で呟き、紅椿を見る。

 

(国が全力で、多額の資金に膨大な時間、さらに優秀な研究者。それを全てつぎ込んだ第三世代型ISの開発……それが、()()()だなんて……そんな馬鹿な話が……)

 

「束、言ったはずだぞ。やりすぎるな、と」

 

「ふふ、失礼しました。つい興が乗ってしまいまして」

 

壱花が紅椿を見ながらそう心中で呟いていると千雪がたしなめる、というには少しどころではなくきつい表情で束に言い、それに束はふふっと無邪気に笑いながら返した後壱花達の方を向く。

 

「まー、今の話は紅椿のスペックをフルに引き出したら、という話ですから。でもまあ、今回の雑種を追い払う程度なら楽勝でしょう」

 

束はまたそうさらっと言い、千雪の方を向いてニコニコと微笑みだした。

 

「それにしてもアレですね。海で暴走って言うと、十年前の白騎士事件を思い出しますね」

 

ニコニコと微笑んでそう言う束。その横では千雪が『しまった』という顔を浮かべている。白騎士事件。ISに関わる者なら、いや、一般人でも知らない者はいない大事件だ。

そもそも束が十年前ISを発表した時、当初は世界はそれを認めなかった。いや、『現行兵器全てを凌駕する』などという言など信じられないし、信じるわけにはいかなかったのだ。

 

その事件が起きたのはIS発表から一ヶ月後であった。

日本を攻撃可能なミサイル、総数二千三百四十一発のミサイルが何者かのハッキングを受けて制御不能になり日本に発射され、日本、いや、世界が大混乱に陥った。

 

そこに現れたのが白銀のISをまとった一人の男性だった。初期バイザー型ハイパーセンサーで顔を隠していたため正体は分からず、しかしまるでアニメや特撮、漫画に出てくるヒーロー然とした、さらにヒーローらしい中世の騎士を思わせるいでたちをした彼は――

 

「ぶった斬ったんですよね、ミサイルを」

 

束の言葉通りである。比喩表現抜きに騎士然とした英雄はその騎士という評価に見合う武器である剣一本を超音速で飛翔して振るい、近代兵器であるミサイルを撃墜したのだ。しかも距離的に離れたもの、物理的に斬るのが不可能と思われたミサイルに対しては剣が光輝いたかと思うと謎のビームをぶっ放して撃ち落とした。

さらには世界中がそのミサイル以上の脅威に対し偵察という名の攻撃を開始したものの、ISはそれら全てを相手に死者ゼロ人に押さえるという離れ業をやってのけた。そして最後にはレーダーでも肉眼でも判別できない完璧な光学迷彩を使って消失。その性能差に世界が敗北してしまったという恐るべき事件、そしてそれを機に篠ノ之束が開発したISは世界中に普及した、というわけである。

 

「しかし、それにしても。白騎士って誰だったんでしょうね? ね、ちぃくん?」

 

「知らん」

 

「ふむ、僕の予想では身長百八十一センチの――」

 

束の言葉に千雪は静かに返すが、束が言葉を止めずそう言いだすと千雪は素早くいつも出席簿でやっているかのように情報端末の角で彼の頭をぶん殴る。金属製のものによる容赦ない一撃に壱花達が痛そうな表情を見せて頭を押さえた。

 

「話を戻すぞ!」

 

第四世代ISの説明から白騎士事件まで話が脱線したが、千雪は束を睨むように見ながら口を開く。

 

「束、紅椿の調整にはどれくらいの時間がかかる?」

 

「お、織斑先生!?」

 

千雪の言葉にセシルが声をあげ、自分の胸に手を当てる。

 

「わ、私とブルー・ティアーズなら必ず成功させてみせます!」

 

「そのパッケージは量子変換(インストール)してあるのか?」

 

「そ、それは……まだですが……」

 

セシルの言葉に対し千雪は辛辣な口調で尋ね、彼は痛いところをつかれたというように勢いを失いもごもごと呟く。と打って変わって束が天真爛漫な笑みを見せた。

 

「ちなみに紅椿の調整時間は七分あれば余裕ですね」

 

「よし。では本作戦は織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦開始は三十分後。各員、ただちに準備にかかれ」

 

ぱん、と千雪が手を鳴らすと教師陣はバックアップに必要な機材の設営を始める。

 

「おに……織斑先生、私は何をすれば?」

 

「お前は白式のセットアップを済ませておけ。あと、エネルギーは満タンにしておけよ」

 

「了解!」

 

千雪の指示に従い壱花は白式のコンソールを開き、エネルギーの残量を確認する。エネルギーは満タン、他も特に具合の悪いところは見当たらず、いつでも出撃可能と判断する。

 

「壱花さん」

 

「ん、どうしたのセシル君?」

 

「いえ、僕の知る限り壱花さんは高速戦闘の訓練は未経験だと思うので、少し僕の知る事を教えておこうかと」

 

セシルがそう声をかけ、いつもの王子様スマイルを見せる。実際壱花はISの訓練を始めたのはIS学園に来てからで、まだ高速戦闘のカリキュラムは受けていない。嬉しい申し出である。

 

「そうだね、わざわざありがとう。お願い」

 

「ええ。まず壱花さんは超高感度ハイパーセンサーを使った事はありますか?」

 

「ううん」

 

「ではそこからですね。高速戦闘用に調整された超好感度ハイパーセンサーというのは――」

「使ったら世界がスローモーションに感じるんだよ。ま、最初だけだけどな」

 

セシルの様になった説明に蓮が横入りしてきた。運搬の手伝いでもしているのかモニターやらの機材を入れた段ボール箱を両手で抱えている。

 

「――レン!? 僕の説明の途中だぞ!? そもそもお前は高速戦闘の訓練を受けているのか!?」

 

「おう、十二時間くらいな。ま、お前程じゃねえよ」

 

「そ、そうか……」

 

蓮も高速戦闘の訓練を受けていると知って調子が崩れたのか、セシルはこほんと息をつく。

 

「では、どうしてスローモーションになるかというと――」

「ハイパーセンサーが操縦者に対して詳細な情報を送るために、感覚を鋭敏化させるのが原因だよ。だから逆に操縦者からみれば世界が遅くなるように感じるんだ……でもこれは最初だけだし、すぐに慣れるよ。作動時にちょっとびっくりするくらいに思っておけば大丈夫」

 

と、今度はシャルルが説明を横取りする。こっちも運搬手伝い中のようだ。

 

「シャ、シャルル……僕の説明の途中だが――」

「それよりも注意するべきはブーストの残量だ。高速戦闘状態だとブーストの残量が普段の倍近い速度で減っていくからな。特に瞬時加速(イグニッション・ブースト)はエネルギー消費が激しいから一層気を配るべきだ」

「――ラウル、お前まで!?」

 

セシルがシャルルに注意しようとした隙に今度はラウルが説明を横取りする。なお状況が状況か壱花の犬ではなく軍人モードに入っており、その説明には淀みがなくむしろ戦いを乗り越えてきた歴戦の凄みがあった。

 

「あとは通常時よりも相対的な速度が上がっているために、射撃武器のダメージが大きいんですよ。当たり所が悪いと、一発でアーマーブレイクになったりしますから、木をつけてください」

 

「佐藤先生まで! どうして皆僕の邪魔をするんだっ!!」

 

しまいには話を小耳にはさんだ様子の兎佐まで横入りしてくる始末。自分から教えにきたのに結局まともな説明一つ出来ていない結果にセシルはついに癇癪を起こした。

 

「え、えっと、セシル君」

 

「なんだっ!?」

 

「色々教えてくれてありがとね。他にも何か注意するところがあったら教えてほしいな」

 

声をかけてきた壱花に対しても癇癪のせいで乱暴な返答になっていたセシルは、彼女からの柔らかな微笑みでの言葉を受けてきょとんとなる。それから二度ほどまばたきをした後彼の顔が淡く赤色に染まり、はにかんだ顔になった。

 

「い、いえ。これくらいの事なら。紳士として当然のことです、また何か分からない事があればいつでもお聞きください」

 

「ともかくアレだな。今回の鍵は壱花の零落白夜だ。さっきラウルも言ってたけど、瞬時加速(イグニッション・ブースト)はエネルギーの消費が激しいから使うんじゃないぞ? お前攻撃に転じる時とか状況打破の時とか、とにかく多用するクセがあるからな」

 

セシルの言葉に続けて、運搬の手伝いをしていたはずの蓮がそれを切り上げたのか話に割り込んできた。

 

「あとは防御をどうするかもだね。壱花も一応盾持ちだけど、本当なら突撃用のシールドを装備させた方がいいんだよね……」

 

「まあ、そこに関しては白式は装備の後付け出来ないんだし。手持ちの武器でどうにかするしかないよ」

 

同じく手伝いを切り上げた様子のシャルルがむむ、と考える様子を見せると壱花は開き直ったように笑う。

その後はラウルや兎佐も交えて本格的な作戦会議がスタート。壱花は作戦のためとはいえ自分の周りに集まってくれる人達を見て微笑を浮かべる。

 

(……なんとしても成功させないとね……)

 

彼らを守るためにも、今回の作戦は絶対に成功させる。壱花は心の中でそう決意を固めるのだった。




最近ISのTSものが増えたな~と思いつつ、仮に第二期やるとしたらそういえば学園祭ではシンデレラだったかがあったなぁと思いうちの子ならどうなるかと考えたら……全員壱花には手を出さず男性同士でバトルロイヤル開始からの一般生徒入場の瞬間――
男性メンバー「「「「「壱花(さん)(ご主人様)と同室になりたければ俺(僕)達を倒してからゆけ!!!」」」」」
――と一瞬で壱花を旗印に同盟を組むまで思い浮かんだ……。(汗)

さて皆様お久しぶりです。ようやっと書けました。今回ついに登場、総司の専用機紅椿。現状の装備は基本的に原作準拠、それに加えて佐々木小次郎の武器である物干し竿を追加しました。二刀流前提な感じの雨月と空裂で燕返しとかやりづらそうでしたし、その二刀に零落白夜みたいなビームサーベル機能の追加も考えたんですが、やっぱ物干し竿がいいよね!という結論に至った次第です。
次回は福音戦を予定。最終回も近いですがこれからもお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。それでは。


追記:FGO、2017年水着イベント開催。カイナさん的にはやはりネロこそ至高。設定的にはブライドがベースになってるからぐだといちゃいちゃしてても問題はない。(ブライドはCCCネロではなく、ザビに会う事のなかったIF派。同時にその代わり赤ネロには存分にザビといちゃいちゃしてもらいたい派)
とりあえずネロ、ノッブ、フランちゃんを当てるべく日々祈りを捧げガチャに勤しんでいます……なお経験上比較的レア鯖を当てやすい(気がする)早朝ガチャは「金キャスキター→玉藻の前みこっと登場♪」に枕を涙で濡らしました……いや、星5は嬉しいんだけどね。今は君じゃないんだ。ごめん……。(泣)
そしてフランちゃんはぶっちゃけ最初は興味なかったんですが、立ち絵のメカクレから覗く綺麗な片目&水着で映える綺麗な美脚にハート撃ち抜かれた次第です。(真顔)
ニトクリス「解せぬ」

改めまして、次回も頑張ります。それでは。
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