インフィニット・ストラトス~IF(インフィニット・フェイト)~   作:カイナ

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第二十五話 再戦、銀の福音

海上200m。ステルスモードを起動させ、膝を抱いて身体を丸めまるで胎児のようにうずくまった状態で銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は空中に浮遊していた。すると福音は何かに気づいたように頭部を上げたその瞬間、その頭部に何かが激突して大爆発を起こす。

 

「初弾命中! 続けて砲撃を行う!」

 

そういうが早いか砲撃を行った青年――ラウルは肩に装備されているレールカノンから福音目掛けて砲撃。彼が纏うIS――シュヴァルツェア・レーゲンは通常装備とは大きく異なる装備をしており、先ほど砲撃を行ったレールカノン《ブリッツ》を左右の肩にそれぞれ一門ずつ装備、さらに正面と左右を相手からの砲撃および射撃対策として物理シールドで守っている。

これこそがシュヴァルツェア・レーゲン砲戦パッケージ《パンツァー・カノニーア》を纏ったラウルの姿だ。

 

「敵機接近まで……4000……3000――くっ! 予想よりも速い!」

 

しかし停止中の隙を狙ったならまだしも高速移動を開始した銀の福音のスピードの前に砲撃は空を切る。

砲撃の反動を相殺するため機動力を犠牲としているラウルに攻撃力と機動力を両立させている銀の福音から逃れる術がなく、あっという間に福音はラウルの懐へと飛び込んだ。

 

「はぁあああああああっ!!」

 

だが直後福音は上空から猛スピードで突っ込んできた青い閃光に弾かれる。青い閃光、それはステルスモードで強襲したセシルの駆るIS――ブルー・ティアーズによるものだ。それもまた普段の装備とは異なるものとなっており、IS名の語源ともなっている武装ブルー・ティアーズの六機のビットはスカート状となって腰部に接続、スラスターとして使用している。

これこそがブルー・ティアーズ強襲用高機動パッケージ《ストライク・ガンナー》を纏ったセシルの姿。彼はバイザー状の超高感度ハイパーセンサー《ブリリアント・クリアランス》より送られてくる情報を元に最高速度から素早く反転、全長二メートル以上もある大型レーザーライフル《スターダスト・シューター》で福音目掛けて射撃を行う。

 

[敵機Bを認識。排除行動へと移る]

 

「遅いよ!」

 

その射撃をかわしている福音からそんな電子音声のような声が聞こえるがそれは直後の連続する銃声にかき消される。先ほどセシルの突撃時に同じくステルスモードとなって彼の背中に乗り、タイミングよく離れて福音の背後を取っていたシャルルだ。その両手にはショットガンが一丁ずつ握られており、福音は背後から攻撃してきたさらなる敵に気づくと自身の武装銀の鐘(シルバー・ベル)による射撃で反撃を行う。

 

「おっと!」

 

しかしシャルルは二枚の実体シールドと二枚のエネルギーシールドで福音より放たれる弾雨を受ける。

 

「悪いけど、この《ガーデン・カーテン》はそのくらいじゃ落ちないよ」

 

シャルルはシールドで弾雨を防ぎながらどや顔で福音に呼びかける。ISのシルエットはノーマルのリヴァイヴに近いものだが二枚の実体シールドと二枚のエネルギーシールドを装備することにより防御力を向上させている。

これこそがリヴァイヴ専用防御パッケージ《ガーデン・カーテン》を纏ったシャルルの姿だ。

セシルとシャルルが時間を稼いでいる間に距離を取り再び砲撃を始めたラウルと、高速で機動しつつ精密な射撃を行うセシル、計四枚のシールドを用いて弾雨を防ぎ、その隙をついてアサルトカノンで射撃を行うシャルル。その三人からの攻撃に福音はじわじわと押され始めていた。

三人とも頭上の優位を活かして果敢に攻めたて、いよいよ銀の福音は海面のすぐ上へと追い込まれる。このままでは海に叩き落とされるのも時間の問題だ。

 

[……優先順位を変更。現空域からの離脱を最優先に]

 

そんな時、新たな電子音声が響いたと思うと福音は全方向に弾幕を張り、全スラスターを稼動させてその場を脱出する。

 

「させるかあああぁぁぁぁっ!!!」

 

しかし福音がその場を離脱する前に海面が爆ぜ、そこから姿を現した蓮が駆る甲龍が福音目掛けて突進、その肩に装備されている衝撃砲が開き、増設された計四門の砲口が姿を見せる。

しかし蓮の身体はその正面を向いた衝撃砲の砲口をまるで福音から逸らすように、福音に対して背面を向けていた。

 

「崩山の一撃、受けてみな!!」

 

蓮が吼えると同時に衝撃砲から放たれる弾雨が放たれ、本来は不可視の弾丸である衝撃砲が赤い炎を纏って蓮のスピードを増幅させるブースターの役割を果たす。そしてブースターによって速度を上昇させ、威力を引き上げた鉄山靠が福音へぶちかまされた。

これこそが甲龍の機能増幅パッケージ《崩山》を纏った蓮の姿だ。

 

「まだまだぁ! 行けぇ総司ィ!!」

「くらえええぇぇぇぇっ!!!」

 

さらに蓮は素早く正面を向いて今度こそ福音目掛けて炎を纏った衝撃砲を連射。それを援護に総司が二本の刀――雨月と空裂――を手に福音へと斬りかかり、その卓越した連続斬りをかわしきれずに福音はその身で受ける。

 

「――よし、一気に!」

「総司! 下がって!!」

 

相手が動けない隙に連続攻撃を選ぶ総司だが、そこにシャルルの声が飛ぶと我に返ったかのように咄嗟に下がり入れ替わるようにシャルルが彼の前に出てシールドを構える。

 

[《銀の鐘(シルバー・ベル)》最大稼働――開始]

 

シャルルが前に出てシールドを構えた直後、眩い程の光が爆ぜる。福音の射撃による反撃が開始されたのだ。

それも以前の戦いで一瞬にして壱花のラウンドシールドを破壊した一斉射撃モード。防御しているシャルルの顔に苦悶が走り、そうこうしている内に物理シールドが一枚耐久力危険域に入っている。

 

「ラウル!」

 

「言われずとも!」

 

しかしシャルルの掛け声を聞いたラウルが射線を移動。シャルルに砲撃の流れ弾がいかないよう留意しながら福音目掛けて砲撃を開始。福音も砲撃の防御が不可能と判断したのか素早くスラスターを吹かせて高速機動を開始した。

 

「チッ、セシル!」

 

「任せろ!」

 

ラウルが舌打ちの後吼え、その高速機動の先を呼んだセシルの精密射撃が福音の動きを止める。セシルも福音には及ばないものの高速機動&精密狙撃型、福音の機動先を読んだ正確な射撃に加え、ラウルの砲撃がプレッシャーを与えて相手の動きを鈍らせる。

 

「動きが止まればこっちのもんだ!!」

 

そこに蓮の咆哮が響いた。彼はいつの間にか福音の頭上、それも相当高い上空へと陣取り槍の穂先を下に構えて己もまたまるで空中で逆立ちをしているかのようにさかさまになっていた。

 

「おらああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

再び衝撃砲をブーストに使い、蓮は急降下。重力を味方につけた突進に対し福音も咄嗟にエネルギー弾で対抗するがもはやそんな攻撃で蓮が止まる事はない。

蓮はまるで隕石の如く威力をもって福音に直撃。いや、福音の身体への直撃こそ外した。しかしその突進攻撃は福音のメイン武装である頭部のマルチスラスター《銀の福音(シルバー・ベル)》の片翼をもぎ取っていた。

 

「どうだぁっ!?――ぐっ!?」

 

片翼を抉られ、僅かにバランスを崩す福音。しかしそれはほんの一瞬、崩した姿勢を逆に利用して上下さかさまの変則体勢に持っていくと、右足を脚部スラスターによって加速をつけてまるでオーバーヘッドシュートのような軌道の回し蹴りを蓮にお見舞い。蓮も咄嗟に槍で防ぐものの、加速した回し蹴りは槍を真っ二つにへし折るだけでは飽き足らず蓮の身体ごと海へと叩き込む。

 

「くそがっ!!!」

 

蓮も負けじと衝撃砲を連射。炎纏う拡散衝撃砲の熱波が福音を襲い、着弾を見届けるか見届けないかの内に蓮はオーバーヘッドシュートの威力をPICで押さえきれず海へと着水した。

 

「行け! 総司!!」

 

ただ、その一言を戦友(とも)へと託して。

 

「一歩音越え」

 

シャルルの構えたシールドの後ろから総司が飛び出し、ゴウ、と音を立てて一気に加速する。熱波によって相手の視界が封じられた一瞬、狙いは一つ。

 

「――二歩無間」

 

視界を取り戻した福音が、自分に刃を向けている総司に気づき銀の福音の残る片翼の砲口を向け、エネルギー弾がチャージされる眩い光が砲口から射す。

 

「――三歩絶刀!」

 

しかしエネルギー弾が放たれる直前、総司の姿が消えた。かと思うと福音の背後から総司の声が響く。

 

「無明――三段突き!!」

 

一度の突きに見えるがその実同じ個所に三発の突きを放つ、新選組最強と謳われた剣士――沖田総司の秘技。それをISによって人を超えた感覚を得た総司は忠実に再現し、福音を刺し穿った。

いや、辛うじて攻撃に反応した福音は回転して急所こそ外す。だがしかし目の前にいたはずの敵の背後からの攻撃はやはり想定外だったのだろう。急所を外すことが精一杯。

 

「取った!」

 

その刃は銀の福音のもう片翼をたしかに貫いていた。

 

「セシル! 総司を救出しろ!!」

 

ラウルが指示を出し、セシルがスラスターを全力で稼働させて総司に突進し彼を抱きかかえてすぐさま離脱。これでラウルの射線上から邪魔者が消えた。

 

「これでトドメだ!! 堕ちろ!!!」

 

マルチスラスターである銀の福音を失った福音の動きが明らかに鈍っている。ラウルの叫びと共にブリッツから放たれた砲弾が福音に直撃、その爆発に耐えきれなかった福音は海面に叩き付けられ沈んでいった。

 

「……無事か!? 全機報告せよ!!」

 

敵機撃墜を確認し、安全を確認すると同時にラウルは仲間の無事を確認するため声を張り上げる。

 

「こちら総司、俺は大丈夫だ」

 

「こちらセシル。僕も問題ない」

 

一番に返すのは総司とセシル。

 

「こちらシャルル。僕は大丈夫、それと蓮の救出も完了だよ」

 

「ぶっは! こちら蓮! 海に叩き落とされたけど、身体がびしょ濡れ以外何の問題もねえ!」

 

撃墜を見て蓮の救助に向かっていたらしいシャルルが無事を報告。海面から上がったばかりの蓮も続き、「帰って温泉に入れば完全回復だ!」とジョークも飛ばしながら総司達に合流する。

 

「それより福音は――」

 

総司が残身というのか、油断を消していない様子で先ほど福音が沈んだ海面を睨みつける。しかしそこは波一つない凪の海面。何かの脅威があるとは到底思えない平和な海だ。

 

「僕達の勝利だ」

 

セシルが勝利を確信し、呟いた瞬間。ラウルがばっと素早く海面に目をやって目を見開いた。

 

「全員!! 油断するな!!!」

 

叫びの直後海面が強烈な光の珠によって吹き飛ぶ。球状にへこんだ海面、その中心には青い雷を纏った銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が自らを抱くようにうずくまっていた。

 

「な、なんだ?……」

 

「っ、まさかこのタイミングで……まずいぞ、第二形態以降(セカンド・シフト)だ!!!」

 

総司の呟きの後、ラウルが苦虫を噛み潰したような表情で叫んだ。

自らを抱くようにうずくまっていた銀の福音が起き上がると同時に切断されたはずの頭部マルチスラスター銀の福音がひび割れ、それからゆっくりと、まるでさなぎから蝶が生まれるかのように神秘的な輝きを放ちながらエネルギーの翼が生えていく。

先程までの勝利の余韻を忘れ、構えを取った彼らは福音、その無機質なバイザーから伺える操縦者の、なんの感情も読み取れない顔を見た瞬間背筋に寒気を感じていた。

しかし彼らは仕掛けない。下手に仕掛けたが最後、均衡が崩れれば一瞬先が見えなくなる。彼らに出来るのは何故か動かない福音を前に最初に立てた作戦通り、壁役のシャルルを前に箒と鈴が前衛、セシルとラウルが後衛に回れるよう隙をついて僅かに動きを取るだけだった。

 

「……」

 

『!』

 

福音の右腕が動き、それに反応した代表候補生メンバーも身構える。しかし福音は攻撃を仕掛ける様子はなく、ただ右腕を前に出しただけ。総司達が困惑を見せるが、福音はまるでカードでも構えているかのように右手を前に差し出しているのみ。

いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!!!」

 

そのカードを見た瞬間、ラウルが絶句、

 

「全員!! なんでもいい、手持ちの射撃武器で攻撃しろ!!」

 

直後にラウルから攻撃指示が飛ぶ。

 

()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

即座にブリッツから砲撃を放ちながらラウルが叫び、何がなんだか理解できていない様子の総司達も射撃武器を構え一斉に射撃を開始する。

 

夢幻召喚(インストール)

 

しかし一瞬遅く、なんの感情も読み取れない顔をした操縦者はなんの感情もないような平坦な声で呪文を唱える。その瞬間、彼の目に狂気の光が宿ったのを総司達は確かに見るのであった。

 

 

 

 

 

「ここは……どこ?」

 

緑に覆われた森に囲まれた、清浄な空気の中に小鳥達が澄んだ声でコーラスを響かせる、清らかな水が揺蕩う湖。

そのほとりに立ちながら、壱花はぼんやりとした声でそう呟いていた。しかし返されるのは小鳥の響かせる声や草が風で揺れる音だけ。人の気配はなく、返答など期待できない。

 

全て遠き理想郷(アヴァロン)……ここがどこか、と聞かれれば私はそう答えましょう」

 

「!?」

 

いや、返事があった。それも自分のすぐ後ろから。壱花はぎょっとした顔で振り返り、自分の言葉に返事をした相手を見る。

その相手は自分よりやや小柄だろう金髪の女性、しかし鎧を身にまとったその凛とした雰囲気からは騎士という風情が感じ取れた。自分の目の前に立て、両手で杖のように支える剣も眩い光を放っており、彼女の騎士らしさをより引き立てている。

 

「問おう――」

 

突如、金髪の少女がそう声をかける。

 

「――貴方は力を欲するか?」

 

「え?」

 

「――貴方は力を欲するか? 何のために?」

 

可憐な少女然とした姿に似合わない凜とした雰囲気に違わぬ強い口調。

その言葉に対し、壱花は頭をかく。短いポニーテールがゆらゆらと揺れた。

 

「難しい事を訊くね……ん~……」

 

小鳥のコーラスを聞きながら、壱花は考える。

 

「うん、これだ」

 

そして彼女は一つの答えに行き当たり、にこっと笑みを浮かべた。

 

「友達を――ううん。仲間を守るためかな」

 

「仲間を……」

 

壱花の言葉に金髪の少女がぼそり、と呟く。それに壱花は迷いなく頷いた。

 

「セシル君は紳士だ騎士だって言ってるけど、それにしてはすぐ熱くなって、すぐ危ないところに飛び込んじゃう。だから放っとけない」

 

IS学園にやってきてから出会った最初の仲間、セシル・オルコット。

いつも冷静で爽やかな紳士であり弱い者を守らんとする騎士ぶっているが、すぐ熱くなってしまうところがある。だから放っておけない。

 

「蓮君は昔から目を離したらすぐ怪我するんだから。放っとけるわけがない」

 

IS学園にやってきて再会したセカンド幼馴染、鳳蓮音。

昔から短気で喧嘩っ早く、中学時代は喧嘩をしては怪我をしているところを何度も見ているしそれはIS学園に来てからもあまり変わってない。だから放っておけない。

 

「シャルル君は口が上手くって軽薄っぽく騙されちゃうけど、実は繊細なの。目を離したら壊れちゃうから放っとけない」

 

IS学園にやってきてから出会った仲間、シャルル・デュノア。

最初は女装をしていたという衝撃の出会いで、全てが終わってからは本来の明るさを取り戻すと同時にちょっと軽薄さも見せてくる彼だが、実は誰かに側にいてほしがっている繊細なところがある。だから放っておけない。

 

「ラウル君は生真面目で強くって、だけどそれだから危なっかしくて目が離せない。放っとけない」

 

IS学園にやってきてから出会った仲間、ラウル・ボーデヴィッヒ。

最初は険悪な関係だったがぶつかり合って分かり合えた。それからは自分を犬だと言い、壱花を主と崇めているがそれも全ては彼の生真面目さからくるもの。だがなまじ力がある分、また力に憧れる分、あの謎のIS暴走などがあったから危なっかしい。だから放っておけない。

 

「そしてソウちゃんはね。強くなったんだけど、まだまだ泣き虫。だから放っておけないの。目を離さずに私が守ってあげなきゃ」

 

そしてIS学園にやってきて再会したファースト幼馴染、篠ノ之総司。

昔泣き虫だった彼はすっかり男の人になって強くなっているように見えたものの、やっぱりまだまだ泣き虫。だから放っておけない。

 

「だからね――私は皆を守りたいの。この世界で一緒に戦う――仲間を」

 

「守る……それがあなたの王道ですか」

 

壱花が力を欲する理由を聞いた金髪の少女はそう呟き、ふっと笑う。

カチャリ、と音を立てて彼女が立てかけていた剣が地面から抜かれ、彼女はそれを両手で支えるように持つ。

 

「それを聞けて安心しました。あなたに――この剣を託します」

 

「ありがとう」

 

少女が手渡してきた剣を壱花が両手で受け取る。金色の光を放つ剣、人々の願いの結晶たるその剣の重みを壱花はたしかに感じ取る。

 

()()()()()

 

そしてそれは同時にその剣の担い手の真名さえも彼女に教えた。

しかし己の真名が知られたにも関わらず金髪の少女――アーサー王は不快さを見せず、むしろ真剣な表情を彼女に向ける。

 

「貴方は行かなければならない」

 

「うん、分かってる」

 

アーサー王の言葉に壱花はこくりと小さく頷いて答え、託された剣を右手でしっかりと握る。

 

「マスター」

 

その時また後ろから声が聞こえ、壱花は振り返る。そこにはやはりいつの間にか一人の少女が立っていた。

黒いピッタリとした服に同色の皮鎧。色素の薄い紫色の髪は片目を隠す程度に伸び、隠れていない方の目には穏やかながら何者にも屈さない力強い輝きが秘められていた。その片手にはラウンドシールドに巨大な十字架を取り付けたような独特の形をした巨大な盾が握られている。

そして彼女が促す先には不思議な黒い穴が開いていた。壱花はその穴を一瞥し、迷いなく歩みを進める。

 

「マスター、こちらを」

 

盾の少女の目の前を通ろうとした時、少女が己の持つ大盾を差し出してきた。壱花はそれをまるで分かっていたかのように受け取り、左手でしっかりと握り締めて穴へと歩みを進める。そして穴へと到達した瞬間、彼女の視界が遠くぼやけていく。

 

「マスター……頑張ってくださいね!」

「マスター……いや、貴方の兄によろしく」

 

大盾の少女のエールと、アーサー王の言伝を聞きながら彼女の意識はゆっくりと全て遠き理想郷(アヴァロン)を離れていった。

 

 

 

 

 

「織斑さん! 気がついたんですね!」

 

兎佐の歓声と共に壱花の意識が覚醒する。そこは全て遠き理想郷(アヴァロン)ではなく旅館の一室、寝かされていた壱花は起き上がると辺りを見回して状況の確認に努めた。

今この部屋にいるのは布団の脇で見守っていたらしい兎佐と部屋の入り口で見ている千雪、それを確認した壱花はゆっくりと立ち上がろうとする。

 

「わ、や、やめてください織斑さん! あなたは絶対安静なんです!」

 

「でも……皆は行っちゃったんでしょ? なら私も行かなきゃ……」

 

「み、皆!? な、なんのことですか!? べ、別に篠ノ之さん達が勝手に福音討伐に向かったなんて事はないですよ!」

 

わたわた慌てながらしかも墓穴を掘る兎佐だが壱花は気にも止めず、千雪を見た。

 

「お兄ちゃん」

 

「なんだ?」

 

ついに立ち上がった壱花の言葉に千雪もそう聞き返す。すると壱花はにっとどこか悪戯っぽく微笑んだ。

 

「あの剣の担い手が、お兄ちゃんによろしくだって」

 

「……ふっ、そうか」

 

壱花の言葉に千雪は短く笑い、彼女の側に歩き寄る。

 

「いいだろう、奴に免じて好きにさせてやる。後の事は任せておけ」

 

「お、織斑先生!? や、奴って一体……」

 

「ただし――」

 

兎佐の言葉を完全に無視の方向で、千雪は壱花に指を突きつける。

 

「――俺()を失望させるな」

 

「もちろん!」

 

その言葉の意味を当然のように理解した壱花は迷いなく頷き、同時に部屋の窓を開けると躊躇いなく外に飛び出す。

 

「来て、白式!!」

 

白い十字架型のペンダントが輝き、空中で白式が展開される。

しかしその形状は大きく変化していた。穢れ一つない純白のドレスを思わせる形状だった機体は青色を基調に、先ほどまで基調となっていた白色はその青を際立たせる形に。女騎士という風情はそのままに、しかしどこか未熟を思わせた姿は一人前の女騎士へとクラスチェンジしたかのような風格を漂わせていた。

それはまるで先ほど彼女が夢の中で出会ったアーサー王の姿。壱花は第二形態移行(セカンド・シフト)によって追加された大型四機のウイングスラスターを展開、一気に仲間達が戦う海上へと飛んでいった。

 

「ふっ……壱花め。たしかに奴に認められたようだな」

 

開け放たれた窓際に立ってそれを見送る千雪も笑みを浮かべ、そう呟くと目を閉じる。

 

「どうだ、俺の妹は身も心も可愛く、それでいて強いだろう? アーサー王……いや、()()()()()()()()()()()

 

静かに紡がれるその言葉は、まるで久しく会っていない旧友に届けるような懐かしさと優しさが込められていたのであった。




お久しぶりです。やっと書けました。

今回は専用機持ち男性メンバーVS銀の福音。
銀の福音第一形態は危なげなく倒させます……だってこの後が鬼畜になるんだもん。(愉悦笑み)
そして今回の目玉というか壱花の心象風景的なところでの邂逅。彼女達との出会い、それが壱花の成長のきっかけとなり、あの武器が解放されるキーとなります。
次回は銀の福音との最終決戦、そしてそれが終わればこのお話の本編終幕となる予定になっております。最後までお付き合いいただければ幸いにございます。

では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。


ところでおまけの雑談ですけども。まず最初に告知いたします。
この作品の読者の一人であり、小説投稿サイト「Arcadia」で活動中のゴリアス先生の作品「<IS>一夏は私の愚兄(おにい)ちゃん」とのコラボ作品、後編が投稿されましたのでお知らせいたします。
詳しい事は活動報告の方に掲載しておりますので、目を通してくれれば嬉しいです。特に次回からお披露目の設定をふんだんにフライング登場させてますので。楽しんでいただければ幸いです。

で、FGO、セイレム……あー、もうSAN値直葬のシナリオでしたね。というかクトゥルフTRPG思い出したわ。いや俺一回しかした事ないけどさ。
ちなみに恒例のピックアップですが。オケキャス一人、ミドキャス一人、アビーちゃん二人ゲットしました。しかもミドキャスはピックアップ最初の10連、アビーちゃんはその次の10連で一気に二人入手という超幸運。んでナタクは……諦める。ボクッ娘好きなんだけど、なんとなく当てられる気がしないってのとクリスマスや新年が近いから石を残しておこうと思います。

そしてDMMゲームからインフィニット・ストラトス公式外伝「インフィニット・ストラトス アーキタイプ・ブレイカー」が配信開始されましたね。
自分もβ版をプレイしてましたが、パソコンのスペックが足りないのか動作遅いわ音ズレ酷いわ最悪フリーズするわの有様です。(泣)
今はちょっとお金に余裕がないけれど、小金を貯めたらメモリ増設が出来ないかを近くの電気店かたしかあったような気がするパソコン専門店に持っていって確認する事を心に決めました。

ちなみに最終的には乱ちゃんとヴィシュヌちゃんが仲間になった第二章をクリアしたとこでβ版配信終了となりました。のんびり進めてたからね、是非もないネ☆
今も時間の空いた時にのんびり進めて今は臨海学校に入ったところです。すなわち現在第四章。

しかし僕的にはストーリーには絡まない所謂モブ生徒がノーマルカードで出てくることも期待してたからそこはちょっと拍子抜けでした。まあ戦闘ではCGとか作ってるんだったらそれも仕方ないと納得はしていますが。(比較対象が(一応)同じ学園ものの恋ヶ崎女学園だったのもあると思われる)
ああいうストーリーに絡む事のないモブキャラに独自の設定を付け加えていっそオリキャラにしちまうのが二次創作の面白いとこなんだけどね~。(昔はそういうのやってた奴)
実はこの作品を終えた後、男オリ主もの一本設定だけでも考えてたので、そのヒロインにアキブレのオリジナルキャラを使えないかと思ってたんですが。残念ながら没っぽいね。流石に専用機持ちはまず学園に放り込む方法から考えなきゃならんし。
……っと、専用機で思い出した……なんでのほほんさんが専用機持ってんの!?思わずツッコミ入れたわ!のほほんさんヒロインもの考える時にどうにかしてこの専用機設定放り込んでやろうかと思うくらいには衝撃だったわ!
つーかのほほんさんの声優ってイリヤの人だったんだね。初めて知った。

話が大分逸れましたが。もしも読者様にもアーキタイプ・ブレイカーやってる人がいるならお互い楽しみましょう。改めてそれでは。
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