インフィニット・ストラトス~IF(インフィニット・フェイト)~   作:カイナ

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壱花が○○になってしまった話

 目が覚めたら猫になっていた。と言ったらただの夢だと疑いたくもなるだろう。

 

「フォウ、フォーウ」

 

 だがこれは現実だ。確たる証拠があるわけではないが、私の直感がそう囁いている。これは夢でも幻でもない、受け入れるべき現実であると。

 こんな事になった理由は分からない。何者かの企みであるならば犯人など見当もつかない。だがしかし、やはり確たる証拠のない直感だが、その見当もつかないはずの犯人の顔が思い浮かぶ。

 

「タバネオニイチャンシスベシフォーウ!!!」

 

 気づけば私、織斑壱花はそんな咆哮を上げていた。

 

「フォウッ、フォーッウ!」

 

 怒りのあまりに毛が逆立っているのが何故だか分かる。だがここで吠えていても何にもならない、ともかくまずは情報収集だ。そもそも自分は本当に猫なのだろうか。そう思い、ベッドから近くのローテーブルにぴょんと飛び移る。うむ、身軽だ。そのままローテーブルに置いている小さな置き鏡を確認。

 真っ白なふわふわ毛皮に身を包み、ピンと立った一対の耳に、これまたふわふわの長い尻尾。パーツだけ見れば猫っぽい気はするのだが、顔立ちや全体的な造形は明らかに猫ではなかった。

 

「フォーウ?」

 

 なんだろこれ?そんな困惑が不可思議な鳴き声となって口から出て、鏡の向こうの謎生物が首を傾げる。どうやら人語は喋れないようだ、さっきなんだか変な声を出していた気もするが気にしない。何事もに例外は存在するというやつだ。

 

「フォウ」

 

 だがとにもかくにも、こんな訳の分からない状況を脱するためには恐らく束お兄ちゃんの力が必要だろう。最悪殴ってなんとかさせようと鏡を倒さない程度の勢いでシャドーボクシング。ふかふかの肉球が心地よい。

 そのためには束お兄ちゃんと連絡が取れて言う事を聞かせられる者に話す必要がある。よし、千雪お兄ちゃんに相談しよう。そうと決まれば話は早い。私はローテーブルを飛び降りた。空中で一回転して着地、うむ、華麗だ。

 

 

 

 

 

「フォウ、フォウ」

 

 IS学園の学生寮の廊下。何故だか扉にいつの間にか付けられていた飼い猫とかの小動物用の出入り扉から部屋を出て廊下をとことこと四足歩行で歩く。今日は日曜日だがまだ朝も早く、きっと皆まだ寝てる頃だろう。人気が全くない。

 いや、朝からジョギングをしている人達がいるらしいのは外からの騒がしい音や声でなんとなく分かる。普段なら自分もそれに参加しているのだが今はそれどころではなかった。こんな姿でジョギングなんてして人に蹴られたり踏まれたりしたら危ない。せめてラムレイやドゥ・スタリオンと同じくらいの大きさならよかったのに。

 

「フォウ?」

 

 足音が聞こえてきて足を止める。誰かが走ってきているのが足音が近づいてくる事で分かり、急いでいるなら巻き込まれないようにとこそこそ廊下の隅に移動。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「フォウ!!」

 

 走ってきたのは黒髪を侍風のポニーテールに結っている青年──ソウちゃんこと篠ノ之総司。ジョギングをしていたらしく身軽なシャツ姿の彼を見て思わず声を上げてしまい、ソウちゃんが「ん」と声を漏らしてこっちを見る。

 

「こいつは……リスか?」

 

 こんな不思議生物を、姿が分からなかったとはいえ猫だと思った私もどうかと思うがそっちはリスときたものだ。

 

「まさかこいつが……すまない」

 

「フォウッ!?」

 

 ソウちゃんが突然私を抱きかかえて再び走り出した。私は千雪お兄ちゃんの部屋に行きたいのに、と抗議のパンチを繰り出すがふかふかの肉球が当たるだけでどうにも効いているようには見えなかった。

 

「兄さん! いるのか!?」

 

 バンッと自室の扉を開けると同時にソウちゃんが怒鳴り声をあげる。ちなみに現在のルームメイトである鷹月(たかつき)静野(しずの)君は昨日の夜から用事で実家に帰っていて今日はいないらしい。

 ソウちゃんは私を抱き上げたまま、睨んだ目で部屋中をきょろきょろと見回し、部屋に備え付けられているシャワールームを見る、さらには部屋のベッドの下やクローゼットの中までも確認してその全てに人気が無い事を確認するとチッと舌打ちを叩いてベッドに腰を下ろした。

 

「兄さんめ、ジョギング中にいきなり電話をかけてきて。“部屋で待ってますね。あ、途中で変な動物見つけたら拾ってきてください”なんて訳の分からない事を……」

 

 ぶつぶつとぼやくソウちゃん、しかしその内容には聞き捨てならないことがあった。束お兄ちゃんがこの辺にいるかもしれない。そして変な動物というのが誠に遺憾ながら私の事だとすれば、これはやはり束お兄ちゃんが何かやらかしたのだ。

 

「フォウ! フォウ!」

 

 束お兄ちゃんを探そう急いで探そうそうしないのなら私を千雪お兄ちゃんのとこに連れて行って。必死でそう訴えるも口から出るのは謎の鳴き声のみ。それをどう受け取ったのか、ソウちゃんは苦笑を私に返してきた。

 

「腹でも減ってるのか? だが食い物は持ってないんだ。もう少ししたら食堂が開くから、そしたらリスでも食べられそうなもの見繕って持って帰って来てやるからそれまで我慢しろ」

 

「フォーウッ!!」

 

「いてててて! 腹減ってイライラするのは分かるがそれぐらい我慢しろって」

 

 全くもって気づいていない上に失礼な勘違いをしている。抗議のパンチを打ち込むが、いててと言いつつもまるで聞き分けのない子供を相手にしているような困った顔を見せている辺り、やはりほとんど効いていない気がする。だが肉球パンチが通じないのならば他の手段を使うのみ。

 

「こ、こらリス! 噛みついてくるないてててて!」

 

 ソウちゃんの首筋を狙って、牙を剥き噛みつく。慌てて引き剥がそうとするがもう遅い、女の子に向けてお腹が減ってるからイライラしているなんて失礼な事を言った報いを受けるがいい。

 そう思いながら噛みついていたら、突然口に力が入らなくなってほわっと口が開いてしまう。それだけではない、なんだか気になる匂いが鼻をついてくる。

 

「フォウ~」

 

「なんだ、急に大人しくなって……それにしても、今更だがジョギングしていたから汗まみれだな。よく見ればリスも俺の汗で少し汚れてるような……よし」

 

 ヒクヒクと鼻を動かして気になる匂いを嗅いでしまう。それに夢中になっていたからだろうか、ソウちゃんが私を抱いたまま立ち上がって、別の部屋に入ったのに気づいたのはその部屋の扉が閉まった時だった。

 

「フォウ?」

 

「大人しくしてろよ?」

 

 言うが早いか、ソウちゃんが突然服を脱ぎ始め、しっかりと六つに割れた腹筋が見える筋肉質な身体が露わになる。

 

「フォッ!?」

 

 裸になろうとしてる!?それに気づいた私は慌てて逃げようとするが、扉はしっかり閉められていてこんな小さな身体では開けられるはずもない。ガリガリと爪を立てて扉をひっかくのが限界だ。

 

「逃げるな、リス。お前もついでに洗ってやるから」

 

「フォウ! フォフォーウ!」

 

「こら、暴れるなって」

 

 うら若き乙女を風呂に連れ込もうなんてソウちゃんのハレンチな!そう訴えるもやはり通じずに抱き上げられ、じたばたするがどうにもできずにシャワールームへと運び込まれる。更衣室の扉を閉められればもはや逃げ場がなく、私はソウちゃんの裸を見ないようにそっぽを向くしか出来なかった。

 

「普通に石鹸とかでいいよな、多分……」

 

 ソウちゃんがぶつぶつ言いながらタオルを濡らして石鹸を泡立てているらしい。だけどそっちを見るわけにはいかない。

 

「よし、リス。一度お湯で身体を濡らすぞ」

 

 だからだろうか、ソウちゃんがシャワーでお湯をかけてくるのに気づくのが若干遅れてしまった。

 

「ふぉうっ!?」

 

「へ!?」

 

 いきなりお湯をかけられて思わず変な声が出てしまい、同時にソウちゃんの間の抜けた声が聞こえてきた。どうしたというのだろう?

 

「……い、壱……花?」

 

「え?」

 

 ソウちゃんが私の名前を呼んだ。そういえば身体の感覚がさっきまでと妙に違う。

 広げた両手を見る。ふかふかの肉球がない、五本の指がついた人間の手だ。その手で顔をぺたぺたと触る。ふわふわの毛の感触がしない柔らかい肌の感触だ。

 

「……戻った?」

 

 どうして元に戻ったのか見当もつかない、だけど元に戻ったという事実は確か。私は思わずソウちゃんの方を向いてしまっていた。

 

「戻った! 戻ったよソウちゃん! ありがとう!」

 

「な、なんだかよく分からんが……壱花、まずは落ち着いてくれ……」

 

「へ?」

 

 ソウちゃんが顔を赤くして目を逸らしている。そういえばここはシャワールームでソウちゃんは今裸になっている。そういえば自分は?そう思って目を落とすと広がるのは肌色。それの意味する事を頭で理解すると同時、私は反射的に両腕で胸を隠していた。

 

「きゃあああああああああああああああ!!!」

 

 直後、絹を裂くような悲鳴が響くのであった。

 

 

 

 

 

「ハッ! 今壱花に何か起きたような気がする!」

 

「流石はちぃくんですね。ですが、黙って行かせると思いますか?」

 

 IS学園の人気のないアリーナの中、木刀を構えている千雪が何かに気づいたように顔を上げてそんな事を呟くと、眼前にいる束が不敵に笑いながら答える。

 朝も早くから木刀で素振りをしていた千雪は、どうやって警備を潜り抜けたのかIS学園の敷地内を闊歩していた束を発見。不審者として捕まえようとして逃げられたところ、まるで誘い込まれたように人気のないアリーナでのタイマン勝負になっていた。

 

「貴様、壱花に何かしたのか!?」

 

「さあ、どうでしょうねぇ? 僕は兄として弟に少しばかり手助けをしただけのつもりですが」

 

「その手助けの内容をじっくり聞かせてもらう必要がありそうだな」

 

「ええ、聞かせてあげてもいいですよ?……やれるものならね?」

 

 威圧、もはや殺気にも似た気配を漂わせながら木刀を構え直す千雪に対して束も右腕を掲げる。それと共に金色の穴が彼の周囲の空間に開き、その中から剣や斧を模したミサイルが頭を覗かせる。

 世界最強(織斑千雪)VS天災(篠ノ之束)の至極馬鹿らしい決闘が今幕を開けようとしていた。




 フォウ、フォフォウ、フォーウ。


 ……はい冗談ですごめんなさい。
 皆様、「壱花がフォウになってしまった話」読了いただき誠にありがとうございます……思いついたからやってみました。(全力目逸らし)
 いや、正直完全に忘れてたんですが。インフィニット・フェイトの特別編リクエストの中に「ヒーローズor壱花が小動物化する」というものが来ていたんですよ。はい、すっかり忘れてたんですが。(酷)

 で、FGOで小動物といえばフォウ君じゃん?
 動物に変身するといえばお湯をかければ元に戻るじゃん?(らんま1/2感)
 お湯をかけるって事はお風呂で、お風呂って事は男側は裸になってるじゃん?
 小動物化してるって事は壱花ちゃんも裸になってるじゃん?

 はい、ネタ完成です。(鬼畜)

 んでこれをやるとしたら絶対に相手は総司だろという強い確信の元に相手は総司を選出しました。それなら束が何かやらかして壱花フォウ化っていう流れもやりやすいし。

 さて、久しぶりのインフィニット・フェイトの更新ですが、またこれの続きとかはあまり期待しないでください。
 一応「かれきえ」のさらなるIFストーリーに「壱花だけじゃなく、一夏やインフィニット・フェイトヒーローズまで登場するハチャメチャオールスター編」というものの構想も練ってますが、人数多すぎて捌き切れる自信が無いので若干没気味です。(笑)

 では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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