インフィニット・ストラトス~IF(インフィニット・フェイト)~   作:カイナ

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第六話 クラス代表決定パーティ

放課後の第三アリーナ。キイイィィィンと空気の裂く音が二つ響き、キィンキィンッと鉄製の物体がぶつかり合う音が幾度となく響き合う。

 

「やああぁぁぁっ!!」

 

その音の主――白式を駆る少女――壱花は左手に持つ円形盾で防御の構えを取りながらカリバーンを振り上げる。

 

「甘いっ!」

 

「ぐっ!?」

 

しかしその防御の隙間を縫い、IS用近接ブレード(日本刀バージョン)が壱花の左胴を狙い白式のエネルギーシールドを斬り削る。

 

「ぅ~……」

 

「盾に頼り過ぎだ。左側への注意が疎かになっているぞ」

 

[確かに、今までのデータを分析してみると左側からの攻撃に対する回避行動が一歩遅れている事が多い。防御用の盾が逆に目隠しになってしまっているのかもしれないな]

 

実体ダメージこそないもののジクジクときそうな痛みに壱花が唸るとそのブレードの持ち主――篠ノ之総司がブレードを肩に担ぎながら答える。

普段訓練の相手は専用機を持つセシルが行い、総司はそれを見ながら壱花の剣術指南を担当しているが本日は総司が打鉄の使用許可を取れたため実際に刀を合わせながらの指南を行っていた。総司の指摘に今回はデータ収集係になったセシルが今までの訓練のデータと合わせて統計を取ったのかアドバイスを送る。

 

「い、言われてみればそうかも……」

 

壱花もしゅんとなる。今までの訓練でも本来死角である頭上や真下からの攻撃以外にも盾に重なった攻撃がたまに見えなくなってしまう事があった気がする。と彼女は思い返す。

 

「せっかくの武装だ。使うなとは言わないが効果的に使えなければ意味がないぞ」

 

「うん。盾を使った戦闘方法とかコツとか調べてみる」

 

「よし……ではアリーナの使用時間もそろそろ終了に近いし、これで最後にするか」

 

総司と壱花はアドバイスとその対処法を決めると、総司は静かにブレードを両手で握り、左半身を前にして身体の横に自分の身体と、そして地面と平行になるように構える。壱花も円形盾を収納(クローズ)すると同じ構えになった。

 

「「秘剣――」」

 

互いの気が最高潮に高まった瞬間、二人は相手目掛けて突進。その時カリバーンから純白の光が溢れ出す。

 

「「――燕返し!!!」」

 

一瞬の交差の後、その突進の勢いによって互いに離れる。互いのシールドエネルギーはそれぞれ……()()。いや、白式のシールドエネルギーがぐんぐん減っていき、最後に0を示した。

 

「え、うそ……」

 

「まだ、純粋な剣の腕なら俺の方が上のようだな」

 

ぽかんとする壱花に総司がそう答え、ブレードをしまう。そして二人はセシルの待つ管制室――今回はデータ収集を目的としている――へと移動した。

 

「最後の、壱花さんの大技、ツバメガエシだったか?……そこの映像の確認でいいか?」

 

「ああ。時間もない、早く済ませよう」

 

セシルの確認に総司は頷き、セシルも了解と返すとキーボードを叩いて操作、壱花と総司がまるで鏡合わせのように同じ体勢で向かい合っているシーンをモニターに映す。そして二人は突如静から動へと変化して突進、一瞬の交差で同時に高速で斬り下げ、そのまま同じ拍子で斬り上げへと繋げる。一拍子で二つの太刀を放っていた。

 

「ほとんど、いや人間の目からだと全く同時にさえ思える斬撃だ……しかし」

 

セシルは全く同時にさえ見える二発の斬撃に感嘆の息を吐く。が、彼は納得のいっていないように首を傾げていた。

 

「僕が受けたのは()()()()()()()()()()()()()だ」

 

そう。セシルが受けたのは初撃の弾丸を防ぎ、追撃の銃槍を逸らし、首を落とさんとばかりに放たれた三発の斬撃である。しかしここで見せたのは二発の斬撃だった。

 

「そう、なんだよね……あはははは」

 

壱花も目を逸らしながら頷き、引きつった笑みを見せる。セシルとの戦いで見せた一呼吸の内に三つの太刀を重ねた斬撃。それが今はどうしても放てなくなっていた。

 

「壱花は昔から本番に強いタイプだったんだが……まさかここでもとはな」

 

総司も昔の壱花を思い出しながらため息をつく。

 

「しかし、ソウも壱花さんと同じ斬撃を行えるとはな」

 

「それはそうだ。俺がオリジナルだからな」

 

「いや、そうではない。壱花さん、いや……白式(第三世代)と同じ攻撃を行えている。それがすごいと言っているんだ」

 

セシルは真剣な目で答える。壱花の剣の才は当然だが白式は最新鋭の第三世代、それも壱花に合わせて日々最適化される専用機。対して総司が使うのは第二世代の打鉄、しかもそれは学園から貸し出されるもので毎回初期化(イニシャライズ)されてしまう。つまり毎回初めて使うのと同じ状態のスペックも劣る機体で最新鋭の機体と渡り合う。それは機体のスペック差を搭乗者の技術で埋めている、という意味だった。

 

「そういえばそうだね。零落白夜が当たらなかったって事は二発とも防がれたって事だし」

 

壱花もうんうんと頷く。カリバーンがまとう純白の光、その正体は零落白夜という特殊能力。相手のエネルギー全てを無効化する対エネルギー兵器。例えばセシルのブルー・ティアーズから放たれるレーザー攻撃はもちろん全てのISに標準搭載されているシールドも無効化、これまたISに標準搭載された絶対防御を強制的に発動させ、相手のシールドエネルギーを一気に削る一撃必殺の能力である。

もっともそんなものをノーリスクで使えるはずもなく、零落白夜の起動及び維持に使われるの白式自身のシールドエネルギー。つまり考えなしに使いすぎれば逆に自分のシールドエネルギーが枯渇する諸刃の剣というわけだ。なお彼女の兄――織斑千雪のIS――呉桜に唯一搭載されていた武装――ロンゴミニアドも全く同じ能力を持っていた事を追記しておこう。

その一撃必殺の斬撃を二回放ったにも関わらず総司は無傷。つまり壱花の燕返しを自分の放った燕返しで相殺、というか二つの太刀を二つの太刀で重ねて防いだ。ということだ。先ほどのスペック差の話から考えると総司の剣の腕は壱花より遥か上、少なくとも第二世代と第三世代のスペック差を埋める程度にはあるという証明である。

 

「まあ、俺は刀を振るうしか能のない人間だからな」

 

だが総司はあくまで壱花についていけるのは剣術だけ。と謙遜する。そして彼は「それより」と続けた。

 

「アリーナの使用終了時間が近い。そろそろ着替えて食堂に向かうとしよう」

 

「あ、うん。そうだね……行こうか、セシル君」

 

「あ、ああ……」

 

総司はそう言ってどこか浮足立った様子で管制室を出て行き、壱花はにこっとした笑顔でセシルに声をかける。セシルもモニターを消しながらこくり、とどこか暗い表情で頷くのであった。

それから三人は総司を先頭に次を壱花、最後をセシルという順番で食堂へと行き、総司がドアを開ける。

 

「せーのっ――」

『――織斑壱花さんっ! クラス代表おめでとうございますっ!!』

 

その瞬間響くパンパンッという破裂音、続けて男性の低い声による唱和、空中を大量に舞い踊る紙吹雪。どこからどう見てもパーティの様相だった。

 

「すまないな、壱花。皆に頼まれて黙っていたんだ」

 

悪戯成功、というように総司がニヤリと笑って答える。普段壱花にからかわれる事もある彼からすればちょっとした仕返しのつもりらしい。

 

「ふっ、ふふふふふ……」

 

しかし呆けていた壱花は直後、何がおかしいのか笑い声を漏らしていた。

 

「ソウちゃん、これで私の裏をかいたと思った? 甘いわね!」

 

そして腕組み仁王立ちでドーンという擬音を背後に背負わん勢いで声を上げる。何の悪ノリか男子達が「な、なんだってー!?」と唱和した。

 

「馬鹿な、作戦は完璧だったはず。俺とセシルが壱花を誘導し、その間に皆が準備をする手筈。ばれないよう細心の注意を払っていたのに……」

 

「そう。ソウちゃんにしては珍しく完璧に隠してた……だけど」

 

そう言い、壱花はセシルへと目を向ける。彼は今にも下される処刑申告を待つ処刑人のようにうつむいている。それを見て総司もクラス中のメンバーも全てを察した。

 

「ま、まさかセシル……」

 

「セシル君も隠し事は苦手のようね。ちょっと様子がおかしかったから問い詰めたらすぐにゲロったわ」

 

その瞬間セシルががくりと崩れ落ちた。

 

「我が忠誠を誓う(プリンセス)に隠し事など……紳士として出来るはずが……」

 

「まあそういうわけで。ちょっとしたお返しよ」

 

そう言い、壱花はすたすたと食堂へ入ると厨房前へと立つ。

 

「食堂のおばちゃん!」

 

「はいよっ!」

 

壱花の号令を聞き動くのは、天然パーマ染みた薄茶色の髪を三角巾で覆い割烹着を着た恰幅のいい妙齢の女性。正に食堂のおばちゃんというに相応しい格好の女性だった。なお食堂のおばちゃんといっても別に「お残しは許しまへんで~」とは言わないし学園最強というわけでもないので注意。

彼女は冷蔵庫に保管していたらしい数々のケーキやクッキーを取り出すとレンジに入れて温めていく。そのてきぱきとした手際に男子達がぽかんとしていると、壱花は悪戯っぽく笑いながら男子達を一瞥した。

 

「私からのお返し、私お手製のお菓子よ♪」

 

悪戯っぽい笑み&ウィンクの小悪魔コンボを決めながらそう言った瞬間、「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」という歓声が一年生食堂に響き渡った。

 

「それでは改めましてぇっ、織斑壱花さんのクラス代表決定を祝しまして……かんぱ~いっ!!」

 

男子の一人が音頭を取り、ジュースを入れた紙コップを高々と掲げると他の面々も「かんぱーいっ!」と続く。食堂に並ぶのはポテトチップスやポッキーなどのお菓子やオレンジアップルグレープ数々のジュースや麦茶のペットボトル。学生の宴会という感じのラインナップだ。だがすぐそこのコンビニで買ってきました感溢れるお菓子の中に壱花の手作りケーキやクッキーはある意味で異彩というか心なしか後光を放っており、男子達は市販のお菓子を食べているように見せながら壱花手作りケーキやクッキーをちらちらと見ていた。なんだか互いにけん制しているようにも見える。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるなあ」

 

「そうそう。一年一組、注目度ナンバーワン間違いなしだ!」

 

「ラッキーだったよな、同じクラスになれて。この一年、華のある学校生活だ!」

 

「ほんとほんと。っていうか織斑さんのISスーツ姿ハァハァ」

 

「や、やめろ! お前はあの地獄を忘れたのか!?」

 

一部不穏な発言があるものの、とりあえず壱花が一年一組の代表になった事を祝っているのに変わりはない模様。ちなみに本来サプライズのはずが失敗しており、その原因となったセシルはむしろ壱花の手作りお菓子を食べるチャンスを作ってくれた&その材料費を全額セシルが負担してくれたことを知ったクラスの男子から「GJ(グッジョブ)!」と言われていた。

 

「はいは~いっ、しっつれいしま~すっ! 新聞部で~すっ! 話題の新入生、織斑壱花さんに突撃インタビューに来ましたっ!! はい通して通してー」

 

すると人ごみをかき分けて一年生食堂に黄色のネクタイを締めた少年が入ってきた。ベレー帽に一眼レフカメラ、胸ポケットに入れたシャーペンとボールペンと手帳、キラッと輝く赤縁メガネがマスコミという雰囲気を見せている。新聞部からの取材に男子達が「わーっ!」と歓声を上げ、「よっ待ってましたっ!」なんて囃し立てる者もいた。

 

「どもども。僕は二年生の(まゆずみ)(かおる)、よろしくねっ。新聞部副部長やってま~っす。はいはいこれ名刺~」

 

壱花の前に立った二年生男子――黛薫は簡単に挨拶をすると両手で名刺を差し出す。無地の一般的な社会人が使うような名刺に書かれているのは「(まゆずみ)(かおる)」という先ほど名乗ってきた男子生徒の名前と「新聞部副部長」という肩書。さらには携帯電話の番号らしきアドレスとメールアドレスという連絡先まで記載され、おまけにペロッと舌を出して目に重なるようにした横向きピースをしている顔写真まで掲載されていた。しかも兎佐程ではないが幼げでどこか女性風な顔立ちのせいでやけに似合っている。

 

「“世界に真実届けます”?」

 

「あ、それキャッチコピー。やっぱそういうのあった方がかっこいいじゃん?」

 

名刺に書かれたキャッチコピーを壱花が読み上げると薫は笑いながらそう返す。

 

「ではでは、織斑壱花さんっ! 早速ですが、ずばりっ、クラス代表になった感想を、どうぞっ!」

 

薫はテンション高くボイスレコーダーを有名人にインタビューするマスコミのように壱花の口元へと近づける。その目は無邪気にキラキラと輝き、口元にも綺麗な笑みが浮かんでいた。

 

「え、えーっと……まあ、なんというか、頑張ります」

 

しかしいきなりのハイテンションな取材に飲み込まれた壱花は無難なコメントを残す。

 

「あらあら普通。もっといいコメントはないでしょうか? 例えばこう、“IS学園を私の魅力の虜にします♪”的な」

 

「ねえよ」

 

きゃは☆と握った両手を自分の口元に持っていってウィンクを決めながらコメントを残す薫(やっぱりやけに似合っている)に思わず壱花も素でツッコミを返す。

 

「ん、じゃあじゃあ適当に捏造しておくとして」

 

すらすらとメモ帳にシャーペンで何かを書き込む薫は「捏造するな」という壱花のツッコミを聞き流しつつ、今度はセシルの方を向いた。

 

「ほいほいじゃあ次にセシル・オルコット君、コメントちょうだいっ」

 

「ああ、はい。分かりました」

 

薫からのお願いにセシルは素直に頷く。

 

「コホン。ではまず、私が(プリンセス)に忠誠を誓うにあたって――」

「あ、ごめんごめん。男の話なんて誰も聞きたくないだろうし、やっぱ写真だけでいいや」

 

話が長くなりそうだと新聞部副部長の勘が告げたのだろう。薫は自分からインタビューを振ったにも関わらず強引に終わらせてカメラを用意する。

 

「じゃあ織斑さんとオルコット君、二人並んでくれる?」

 

「「あ、はい」」

 

インタビューをぶった切られたセシルはぽかんとしつつも壱花の横に立ち、その前のテーブルがどかされる。

 

「……そうだ」

 

と、セシルは何か思いついたようにパチンと指を鳴らした。

 

「壱花さん、ちょっとお手を」

 

「あ、うん? 握手?」

 

セシルの言葉に壱花はこくんと頷いて右手を差し出す。するとセシルはその手を自分の右手で指先同士が重なるように優しく持ち上げ、跪くとその手に唇を軽く付けた。

 

「あなたに忠誠をお誓いいたします、我が(プリンセス)、織斑壱花」

 

「っ、えええぇぇぇぇっ!!??」

「ふおおおぉぉぉぉっ!!!」

 

キラキラオーラを纏ったセシルの言葉に壱花が仰天、薫が奇声を上げながら連続でシャッターを切る。さらにクラスの男子の一部が「きたでござるきたでござる!」「セシル×壱花キタコレ!」「姫と騎士の恋愛物語キタコレ!」「ハーレムものといい騎士×姫ものといいこれは連日徹夜覚悟だぁ!」と歓声を上げながらスマホのカメラ機能を連射していた。

 

「いっやーいい写真が撮れました! ぃよし出血大サービス! クラス写真も一緒に撮っちゃいましょうっ! さあさあ皆さん並んで並んでー!!」

 

薫はキラキラとした笑顔を見せながら一組のメンバーを集めていく。総司も壱花の隣へ移動するとそっと手を差し出し、壱花もそれに気づくとそっと手を繋ぐ。

 

「はいはーい、それじゃあ撮るよーっ。35×51÷24は~?」

 

「え? えっと……2?」

 

「ぶー、正解は74.375でしたー」

 

「なにそれ」

 

突然薫が言った計算問題に壱花は一瞬詰まった後お約束を返す。だが薫は普通に答えを言い、壱花はついおかしくなってしまい笑みを浮かべる。その瞬間を逃さぬように薫はシャッターを切った。

 

「はいはいオッケー、お疲れさんっしたーっ! じゃ、このインタビューは今度新聞部発行の学園新聞に載せますのでお楽しみにっ! クラス写真の方は現像したら持っていきますので! ではでは僕はこれでっ! ばいばーいっ!」

 

そういうや否や薫はぴゅーんっと去っていく。凄まじいフットワークの軽さに壱花も少しぽかんとなってしまっていた。

 

「ん? まだ馬鹿騒ぎは終わっていなかったか」

 

すると今度は千雪が食堂に入ってきた。

 

「わ、織斑先生!?」

 

「そう驚くな。少し様子を見に来ただけだ」

 

男子生徒の一人が驚くと千雪はそう返し、食堂内を歩き回る。

 

「む、これは壱花のケーキだな」

 

そう言うと千雪は手近なナイフでケーキをホールの半分切って皿に乗せ、ついでにクッキーを数枚ほど一緒の皿に乗せて寮長室の方に向かう。

 

「ではな、あまり遅くなりすぎるなよ」

 

一言釘を刺して千雪は食堂を出ていく。

 

『…………』

 

無言の後、男子メンバーはがくっと膝をつく。千雪にしれっと壱花手作りケーキを半分とクッキーを数枚持っていかれてしまっていた。

 

 

 

 

 

「壱花さん、二組に転入生が来たそうです」

 

翌日。教室に入って早々セシルがそう話す。

 

「え、そうなの? というかなんでこんな中途半端な時期に転入?」

 

「ええ。IS学園の転入は厳しい条件をクリアしなければならない上に国からの推薦が必要、となっている」

 

「つまり、それほどまでの実力者って事ね?」

 

「詳しく聞いていると、どうやら中国の代表候補生だと……」

 

セシルは噂で聞いた情報をまとめて壱花に提供しているようだった。

 

「代表候補生かぁ。セシル君もだけど、代表候補生って皆IS学園に入ってくるの?」

 

「いえ、そういう訳ではないですね」

 

「という事は、わざわざ入学してくるにも理由があるはずだよね。もしかしてイギリス代表候補生のセシル君がいるから勝つために、とか?」

 

「国の威信をかけて、というやつですか?……」

 

「そうなると、代表候補生であるセシルに勝った壱花の存在を知り、転入。という可能性も捨てがたいな」

 

「あ、ソウちゃん」

 

壱花とセシルの考察に総司が割り込む。

 

「まあ、既にこの時期だ。全クラスのクラス代表は決まっているし、今気にするべきはクラス対抗戦。それに出てこないだろうそいつの事は後回しで構わないだろう」

 

「それもそうだね。情報ありがとう、セシル君」

 

「いえ……」

 

総司は今はクラス対抗戦の方を考えようと話し、壱花もそっちの方を優先すべきと頷いてセシルにお礼を言う。それにセシルも一礼を返して席に戻った。

 

「織斑さん頑張って~」

「そういや俺、クラス対抗戦の優勝クラスは半年間学食半額のフリーパスが貰えるって噂を聞いたんだけど!」

「なにっ! それは織斑さんに優勝してもらわなければ!!」

「織斑さん、優勝していただければ我ら一組一同織斑さんを女神と称えます!!」

 

細目に袖が長い制服を着用した男子が間延びした声で言うと別の男子生徒がそんな話題を出し、それを聞いた男子生徒が一気に大盛り上がりになる。学食半額は確かに節約において大きな比率を占める。

 

「まあ、やれるだけやってみるね」

 

「頑張ってください!」

「織斑さんが勝てばクラス皆が幸せです!」

 

壱花の言葉に男子生徒達が盛り上がる。しかし盛り上がり過ぎて変な一派が「よっしお前ら団扇持って来い団扇! 織斑さんを扇ぐぞ!」「フルーツも忘れるな!」と騒ぎ出す。どこのエジプト王家の女王と奴隷だよ。と壱花が心中で呆れた。

 

「でもよ、噂によると一年の代表候補生ってセシル除いたら四組に一人だけだから、その代表候補生のセシルに勝てた織斑さんならなんとかなるんじゃね?」

 

「あ、俺も噂聞いたな。しかもその四組の代表候補生は専用機がないとかなんとか?」

 

「なんだよ~、じゃあ楽勝じゃねえか!」

 

不意に出てきたそんな噂から、一組内が楽勝ムードに包まれる。しかし専用機を使えるからとて量産機に確実に勝てるとは限らない。実際壱花も量産機の打鉄を使う総司に未だ純粋な剣術では勝てず、スペックと零落白夜でごり押ししてどうにかしている状況。壱花は油断大敵だと伝えようとする。

 

「その情報、古いよ!」

 

その時、バーンという音がして教室のドアが開かれた。

 

「何奴!?」

 

思わず総司がそんな時代劇染みた声を上げる。

 

「ふっふっふ、一年二組に中国代表候補生が入ったからには、そう簡単に優勝なんて出来ないと知るがいい!」

 

勢いよく発されるのはそんな幼さの残る少年の声だ。

 

「この声……」

 

それを聞き、壱花が驚いたように入り口を向く。そこにかっこつけて立っているのは茶色い髪を後ろで三つ編みに結った小柄な体躯の少年。その姿を見た壱花は目を丸くして驚いたように席を立った。

 

「……もしかして蓮! 蓮君!?」

 

その言葉を受け、少年――蓮はにっと笑ってしゅぴっと右手を挙げた。

 

好久(ハオジョウ)、壱花! 中国代表候補生にして一年二組クラス代表(仮)! (ファン)蓮音(レンイン)。ただいま登場さ!」

 

にひひっと健康的な笑みを浮かべて挨拶をする蓮。それは壱花にとって総司に続く幼馴染との再会であった。




今回はクラス代表決定のお祝いがメインに、新登場黛薫子性転換キャラ、黛薫。はい、女の子っぽい子を外しただけの超手抜き命名です。(汗)
でも原作ではあまり描写がなかったので開き直って思いっきり詰め込みました。薫って名前がまだ女の子っぽいから造形は女の子風にカメラにシャーペンにメモにベレー帽とマスコミイメージで作成しました、いや一般的にマスコミがこんなイメージか分からない個人的なイメージですけど。
でもって冒頭の壱花と総司ですが、イメージはFate/staynightのセイバーとアサシン(小次郎)です。平均的なパラメータはセイバー(壱花in白式)の方が上だけど剣術に限って言えばアサシン(総司in打鉄)の方が圧倒的に上だから攻めきれない、というイメージで書きました。
そして蓮と壱花の再会。次回はちょっとオリジナル展開を入れたいかなって思ってその布石も入れています。ちなみに蓮の言っていた「好久(ハオジョウ)」ですが、中国語の挨拶をググって「久しぶり」にあたる意味の言葉をチョイスしました。間違ってたらごめんなさい。
さて次回はオリジナルの部分は間違いなく書くとして原作でいえばどこまで書けるだろうか。まあ自分、ああいうのを長引かせる癖があるから最悪そのオリジナルで一話潰れるかもしれない……うん、そこはまた後で考えるとしよう。
今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。
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