戦争までに中々進まない?
多分原作でも姫路がいないと初日攻撃はしない気がするから多分問題ない(ぇ
「おい、坂本」
「あ、なんだいつの間に前に移動したんだあk―――吉井か」
「何、坂本……吉井と約束でもしてたの?」
目の前の吉井という少年は明久に似ている顔であったため(三つ子である為ほぼそうなのだが)、雄二は一瞬明久と呼びそうになったのだが、髪の色とまとう空気の違いで気がつき、呼び方を改めた。
二人の様子に雄二と試験召喚戦争でのクラス方針について話をするべく行動を共にしていた中林は若干顔をしかめた。
秀吉、康太、島田の3人も後ろについてきており、同様に足を止めて会話が終わるのを待つ。
明久もついてきており出来ることなら、早急にこの場から立ち去りたかったのだが、相手が意識していないのに一方的に意識し続けるのもアレなのでおとなしくしている。
「いや、してないが……何のようだ?こっちは明日からの方針を―――」
「なんで、”Dクラス”もしくは”Eクラス”に試験召喚戦争を挑んでない」
「「「「「……は?」」」」」
「へ?」
何の約束もしていないので早々にどっかに行って欲しいと雄二が要件を聞こうとしたら吉井から出てきた言葉にお前は何を言っているんだ、という感じになり、中林・雄二の二人が共に声を上げる。
……気のせいかほかのところからもこの会話を聴き続けている生徒がチラホラと見受けられる。
外見的にも人間関係的にも共通点は無い……別の観点で見れば共通点は存在しているのだが、まあ……今は関係ないだろう。
「待て待て……なんでそういう話になってるんだ」
「そうよ!そもそも勝率がひっじょうに低いのに初日から戦争を仕掛けるわけないじゃないの!」
すぐに混乱から立ち直り、雄二と中林の両名が反論し出す。
雄二の頭の中では、確かに最初に戦争するのであれば通常その2クラスを相手にするし、他のクラスにしてもそこから攻めていくだろうと予測できるのだが、戦力が足りない。
学力が全てではないという目的や今では無駄になってしまうであろう最終目標の為に試験召喚戦争を行おうという意思は存在するが、まだ戦力を把握しただけで作戦を練らなければならないのだ。
「あんな最低設備にいるからさっさと交換しようと挑むと思ったんだが」
「ああ、小休憩中に何人か覗きに来てたな……確かに酷い環境だが、それだけじゃ初日に挑む理由にはならないぞ」
学年2~3位の学力の生徒が1人でも居れば勝率は上がり、確かに初日に他のクラスに挑んだかもしれないが、と雄二は心の中でだけつぶやく。
現状ではAクラス並みの高成績の生徒が保健体育限定で土屋康太ただ1人だけであり、Bクラス並みも数学Onlyで島田だけである。
後は中林や雄二が万全な状態であれば全科目均等にEクラス・Cクラス並みの成績をたたき出せるだろうが。
「例えば、振り分け試験で病弱な高成績の生徒が入ってたら考えてたんだがな」
一番可能性が高いのは姫路だろうが……体調を崩したものの即座に問題を解けるだけ解いて後は机に伏せて仮眠状態に入ったのである……それでもちゃっかりAクラス上位なので色々な意味で超越しているだろう。
普段からの努力は決して裏切ることはない……効率的に問題を解き、短時間で高成績をたたき出せるのも単に努力のたまものだろう。
(―――ち……やっぱ狂わせすぎたか、島田もなんかおかしいし、これじゃ原作否定とかが出来ないじゃねーか)
「本当に何がしたいのよ
中林がため息混じりに言った言葉に明久は更に複雑な表情をする。
―――一緒に暮らしていた時の弟の名前が思い出せなくなり、明久が篠崎姓を名乗ってから、いつの間にか弟が明久ということになっているのだ。
明久自身、住民票で既に最初から篠崎姓になっている事になっていたのだが、弟の名前も最初から明久であるように変わっていたのだ。
理由は今でも不明なのだが、篠崎姓になった理由だけは朧げにサチコに憑依されていることが関係しているかもしれない。
『―――原作?傍観?……何を考えてるのかしら』
(サチコ……?)
誰にも聞こえないような小声を聞き取れたのか、サチコが吉井を見ながら顎に手を添えて何かを考え始める。
というか学園にいるときに限り、サチコが異常になっているのだが、明久は気がついているのだが割とスルーしている。
「それ以上に用がないなら、そろそろ昼を摂る為に屋上に向かってるからどいてくれ」
「……ああ、邪魔して悪かったな」
そう言って吉井は退散し……同時に遠巻きに見ていた面々も見ている気配が消えたので居なくなったのだろう。
変な圧迫感のようなものは消え去っていた。
「しかし……そこまで見境のない集りに見えるのか?」
「異端尋問会のせいのような気がするのう」
「……失礼な、異端尋問会は3人以上のハーレム状態の相手以外には手を出さない」
「十分過激だからな、それ」
過激派集団として知られている異端尋問会……現在はFクラスにほぼ全員が在籍しており、FFF団として存在している。
団長は須川であり、モテない男子を集めて康太のいっているモテないであろう最大の原因である3人以上のハーレム状態の”男”を襲っているのだ。
恋人相手にも嫉妬はしているが、1:1が相手なら殺したいほど憎いという視線を送るだけで済ませている分、可愛いものだ……多分。
「じゃ、屋上へ行こうぜ……今日の弁当はカツ丼とカレーとラーメンだし楽しみだ」
「食べ過ぎじゃない!!?」
「というか、弁当箱……3つも用意してるんだ」
その内、二つは味噌汁などを携帯するようなタイプであり、そこにカレーとラーメンが入っているのだろう……。
* * *
「……雄二、遅い」
「みんな、二人の邪魔をしたら悪いからいますぐ―――」
屋上にたどり着いたら、そこには無表情ながらも若干不機嫌そうな霧島翔子がシートを敷いて待っていた。
「悪いな、途中で吉井に絡まれたんだ」
「……そう、じゃあ私は仕事が終わりだから」
そう言って立ち上がりシートを残したまま立ち去ろうとする霧島に他の面々はついていけないから説明しろとの視線を雄二に集中させていた。
「屋上は人気が高いから割と遠巻きにされやすい翔子に確保を頼んだ、以上」
「坂本、それって割と最低なんじゃ」
雄二の言葉に中林が呆れながら言葉を発する……明久から見れば好意を利用した最低行為に見えて気持ちを弄んでる(ように見える)雄二をジッと穴が空くように睨みつけていた。
好きな人が居ると(思い込んでいるのだが)分かっていて、その気持ちを知っていて利用しているかのような雄二に明久は友人だとしても許せないのである。
「……私が好きでやってる事……報酬もあるから」
「等価的にはおかしい事だがな、今日のメールに添付して送っておいたぞ」
そう言って雄二が、メールの送信履歴を見せていた――何かの写真を送ったのだろう。
霧島は携帯を開いてメールを確認し……満面の笑みを浮かべていた。
その表情に、この場にいる全員(明久と雄二を除く)が、鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情をしていた。
「…………表情を変えたところ、初めて見るんだけど」
「ウチも」「ワシもじゃ」「……写真に取り損ねた」
「お前らは翔子をなんだと思っているんだ……まあ、表情を変えないのは正しいんだが」
『そうよね、あの時もほとんど青ざめていて―――』
(アレは仕方がないでしょうがサチコ……)
サチコの言う表情の変化は仕方がないの部類でもある。
というよりも、生きているものが少ない環境かつ、知り合いがいない状態での閉じ込められた世界で恐怖しないものがいる筈がない。
「……だから気にしなくていい」
そう言って、一瞬だけ明久の顔を見つめてから霧島は屋上から立ち去っていった。
幼馴染である雄二だけがその視線に気がついており、若干明後日の方向の空を見上げた。