毎日同じ夢を見る。
何もない、上下すらない、真っ白なその空間で夢の中の僕は、消える事のない光を放つ『何か』を見ている。
「明日の僕は…今日までの僕でいるのか。それとも明日からの僕は、今日までの僕を飲み込むのか。」
どこかに悲しみを感じさせるような、俯いた表情で呟いていた。
そして、夢の中の僕は光を放つ『何か』に歩き、手を伸ばす。ゆっくりと、ゆっくりと近づき、立ち止まり、光を掴もうとした瞬間…
「はっ…」
そんな夢を毎日のように見るが、意地でも僕に夢の結末を見せないと言わんばかりの現実の悪意に、僕はいつも邪魔をされる。今日もそうだ。僕は夢の続きを見たいのに、いつも肝心な所で目が覚めてしまう。
「今日も駄目か…諦めた方がいいのかもしれないけど…いや、もっと粘ろう。」
そう独り言を呟きながら、僕は重い掛け布団を剥ぎ、ベットから体を起こし、のびをした。
「んーっ、ふぅ。さて、母さん達は旅行に行っちゃったし、今日はどうしようかな。」
3月29日、春休み真っ只中だ。特に用事があるわけでもないので、毎日をぐうたらに過ごしていた。そんな有り余るほどの時間の中、相も変わらずずっと夢のことを考えていた。考えど考えど謎は深まるばかり。身内は皆バカバカしいと揶揄するが、僕は心のどこかでそれを追求する事を楽しく感じていた。
「うーん、春休みだからって全然外に出ないのは、やっぱりよくないかな。用事もないけど今日は出掛けよう。」
外に出れば、何か思わぬ発見ができるかもしれない。想像もできなかったような何かが、見つけられるかもしれない。それがせめてもの理由だった。だが、この時の僕はまだ知らなかった。その興味本位が、探究心が、変哲のない現実から僕を数奇な運命へと引きずり込む事になるという事を、僕はまだ何も知らない。
必要なものを手に取り、そのまま部屋を出た。2階にある部屋から、木組みの階段で1階へと降りる。家には僕一人だ。あかりは付いていない。直ぐに出かけるつもりなので、電気を付けずに洗面台へと足を運んだ。歯磨きと洗顔を済ませ、『雪裂製薬(ゆきざきせいやく)』と、裏面に書かれた歯磨き粉を、箱の中にしまった。
「よし、出掛けるか。」
紺色の防寒着を羽織って、荷物が入れっぱなしのショルダーバックを背負い、
そのまま靴を履いて家を出た。春とはいえ
「とりあえず隣町の公園でも行こうかな。」
僕は気分のままに公園へと足を運んだ。
尺余り。by作者