春季例大祭で配布しました短編です。ドレミ―とサグメの抒情的な対話を印象的に表現したつもりです。超現実主義的な文章をお楽しみください。


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あの時、あの場所で、もう一度。


春季例大祭配布小説

私は不安がった。

 

「サグメさんまたむすっとしちゃって、なんかあったんスか?」

「あなたには関係ないことよ、ドレミ―。赤の他人であるあなたにはね。」

「相変わらず冷たいっスね、私でいいなら相談にのりますよ。」

 月の都もいつぞやの危機はどこへ行ったのやら。平凡すぎる日々を取り戻していた。それはまた何も変わらない日々が始まるという事で、あの忙しすぎる日々が懐かしくもあり苦々しくもある。

「あぁ、サグメさん今日も悪夢見てたみたいなんで食べときましたよ。ほんと悪夢以外の夢見られないんスか?悪夢って結構味がくどいんですよね。それにそんなにストレスばっか溜めてると将来禿げますよ?」

「月の民に将来とかはないのよ、それに禿げもしない。分かる?あなたはどうなのか知らないけどね。」

「わ、私ですか?そりゃ禿げるかもしれませんけどあんまりストレスとか感じませんもん。あなたよりはよっぽど健康的です。」

 そのドヤ顔に軽い殺意を覚える。ただここで彼女を痛めつけても何にもならないので無視することにした。私あまり大きな騒ぎを起こしたくないタイプの女神なのでなるべく波のたたないようにひっそりと生活しているのだ。

 それも月の民の平和を守るため、といえば恰好は良いのかもしれないが実際にはそんな大層なことはしていない。ただ自分の持つ能力ゆえ人づき合いというのか妖怪づき合いというのか、とにかく生命との付き合いが上手くないのだ。    

 私が口を閉ざすことでこの平穏が保たれるのならそれで良い。苦しむのは私だけで良いのだ。私だけで。

「それで何か用でもあるの?いつも私の前に出てきて。」

「いや別に、わたしゃただサグメさんの夢を美味しく頂いていただけです。むしろサグメさんもたまには何かしたらどうです?ていうか私以外に友達いないんですか?」

「別にあなたのことも友達だなんて思っていないわ、あなたがそう思ってるだけ…」

「あら、冷たい。まぁそんなことだろうと思ってましたよ、サグメさんって口下手ですもんね。うふふ。」

 本当になんでこいつはいつもちょっかいを出してくるのだろうか?『わざわざ』私がほかの者と関わらないようにしているのに。

 月を救った英雄も事件が終わればただの疫病神。こいつもそんなゴミを嘲笑っているのだろうか。どちらにしろ迷惑千万である。

「それじゃ私は帰りますよ、どうやら私は邪魔者のようなので。」

「えぇ、本当にね。早く帰って頂戴。それともう二度と来なくていいから。」

所詮私は疫病神。心の傷を増やすなら友達なんて要らない。

「あ、でもきっと私が必要になると思いますよ。近々必ずね。」

そういうとドレミ―は不敵な笑みを浮かべゴミの前から消えた。

 

 まったくあいつは何なんだ。いくら私が無口といっても感情ってものがあるのが分からないのだろうか?底知れぬ殺意とどこから来るか分からない歯がゆい無気力感が腹部で渦巻く。

 やっぱり私は一人でいるのが良いのかもしれない。友達なんて作ったところで私も苦しむし私に関わった者も苦しむのだ。良いことなんて何もない。

 私は塩水一粒落として家から出た。

 

 家を出たものの行く宛がなかった、ましてや一緒に行く仲間などいるわけも

なく自分の人脈の無さにため息が出る。

 途方に暮れながら道を行くと一つだけ心に残る場所を思い出した。そこは時という概念を捨てたものにとっても懐かしく思える場所。そしてあの場所なら疫病神も受け入れてくれるかもしれない。

「幻想郷、穢れの多い場所だけどあそこに行けばまた突飛な生活ができるのかしら。あの忙しくも充実した生活を。」

 片翼の女神は穢れた地を目指し飛び去る。私が充実した時を過ごした地へ、願いを叶えるために。

 

 今まで自分がいた場所が遠くに見える。しかし、この地からでもはっきり光り輝いてみることができた。

『幻想郷』

 もちろんこの地に来たからといって宛があるわけではない。この世に生きとし生けるものはみな放浪者なのだから答えを求めて彷徨い行くのは当然のことだ。だがなぜ私はさまよっているのだろうか。だれからも相手にされないことを望むのなら自分の守ってきた土地でひっそりと首にナイフを当てればよい。ただ自分はなぜそれをしなかったのだろうか。ひょっとしてまだ未練が残っているのだろうか。まだ私は誰かを、自分のことを分かってくれる誰かを求めているのだろうか。

 私は自分でも分からないまま道なき道を行く。

 ここがどこかなのか分からない。迷える異星の民は知らない道をただひたすら歩く。歩けば答えが見つかるという確証もない。誰かが声をかけてくれるという保証もない。ただ歩いた。今までと同じように。

そして…

 

「疲れた。」

 

 やはり私も生物だったのだ。ただ少し変わってしまった愚かな女神。もし本当に神様がいるとしたらなぜ私にこんな足枷をはめたのか問うてみたい。ただ私もそんな神と同類なのだから。案外そんなことを聞いたところで答えは出ないのかもしれない。酷く滑稽な質問である。

 そして私はもう十分生きたと思う。生きたという言い方には少々語弊があるか、周りは私の存在を「生」とは認めず。「道具」としてみていたのだから。

 しかも運命を逆転させる使いにくい道具、自発的存在価値の無いものだと。

 とはいえ私はやはり生きていたのだ。こうして疲れると思えること。そしてこのようなことに悩めること。これは一つの「生」への表れなのだと思う。

「できれば他の者にもそれを認めてもらいたかったな…。」

 別に大勢に認めてもらいたかったわけではない。たったひとり。一人でも私の気持ちをわかってくれる者がいたなら…

 胸の鼓動が大きくなる。誰にも伝えられていない私の本当の想い。

 もちろん誰かに向けた言葉ではない。ぼそっと空気を軽く振動させただけの言葉だった。しかし、この地幻想郷では到底予測もつかないようなことがおきるのである。

 ぐいーんと地面が割れて懐かしい金髪の彼女が現れた。

 

 手には刃物と小さな装飾箱。

 

「あなたは私を殺しにきたの?」

「いや、そんなことはしないわ。月の女神さん。月を救った英雄が私たちの世界に何しに来たのか疑問に思っただけよ。」

「相変わらず私はどこに行っても歓迎されないのね。」

「それはあなたの返答次第だわ。」

「。…」

 刹那彼女のナイフは空を切った。私の首跳ねるのに十分な速さを持って。

 今日は死ぬにはいい日だ。そんな気がする。しかしその銀の刀身は私の首ではなく彼女の装飾箱に振り下ろされた。

中から手のひらほどの種が1つ。あまりきれいな種ではない。黒くどろどろした半分液体のようなものだった。

「折角遠くまで来てもらったみたいだしこの種はあなたにあげるわ。この種には不思議な力があってね。何か一つ願いを込めて種を植えるとその花が咲くときに願いをかなえてくれるの。どう?魅力的でしょ?」

「穢れを嫌うものにそのようなものを渡すとはあなたも変わっているわね。」

「あなたほどではないわ。じゃあね迷える月の女神さん。また会えたら会いましょう。」

 金髪の彼女は再び地面を割るとずぶずぶとその中に身を落として帰っていった。

 先ほどと何も変わらない幻想郷の夜。変わっていることと言えば私の手のひらに残された1つの爆弾だけだった。

「願いが叶うといってもねぇ…この種が…。」

 これは救いなのか、それとも神の悪戯なのか、なにはともあれこの話が本当ならば私の悩みは解消されたことになる。何しろどんな願いもかなえてくれる

のだ、こんなにおいしい話はない。

「しかし、植えるとはどういう事なのだろうか?この地の習慣はいまだに慣れないな。」

 もうすぐで長年探し求めていたものが手に入るという高揚が体を軽くし疲れを忘れさせる。それに答えが見つかるのならこの地にいる必要もないだろう。どの道私はどこにいても歓迎されないのだから誰も来ない私の作った繭の元へ戻ろう。私は穢れた地から足を離した。

 

「おやおやサグメさんようやくお戻りですか。一体何してたんですか?おかげで夢を食べ損ねたじゃないですか。ほんと困りますねぇ。」

「まずなんであなたがここにいるのよ。ここは私の家よ。それにもう来ないでって言ったでしょう?」

「どうせいつも一人なんでしょう?私が相手してあげますって。だからその代りに夢を食べさせてくださいな。」

「そんなの誰も頼んでないって。ずうずうしいなぁ。」

 私が作りあげた繭にネズミ、いやバクが一匹居座ってしまったようだ。今度から出かける時はネズミ取りを仕掛けておかなければゆくゆくお出かけもできない。

「今日も私にちゃちゃ入れに来たわけ?ほんとあなたも暇人ね。」

「あなたほどではないかもですね。こう見えても私は計画的な方ですから。」

不埒者はむふぅとドヤ顔を決める。殴ってやりたい。

「私は忙しいの。このさびれた生活からようやく抜け出すことができそうなのよ。だから邪魔しないでくれる?」

「ほう、それがその手に持っている種と。なんか汚い種ですね。穢れを極端に嫌う月の民が物理的な汚れは許せるとは面白いものです。」

「この種を手に入れた時からもうこの状態だったの。洗っても落ちないみたいだしこのまま育ててみるわ。折角だから見ていきなさい。この種は願い事を願って植えると花が咲くときにその願いを叶えてくれるんだって。」

「そんな単純なものですかね?」

実際そんなものはやってみないことには分からない。もうほとんど自力で叶えることができないのだから可能性にすがってみたい。

 私は家の庭に穴を掘りその希望をゆっくりと埋めた。もちろん願いを込めて。

 二人しかいない空間を沈黙が支配する。そして空気の読めないバクが口を開いた。

「なんてお願い事をしたんですか?」

「あなたホントに空気が読めないわね。別にあなたからしたら大した願い事じゃないわよ。だから教えない。」

「えぇ!?教えてくださいよ。私とサグメさんの仲じゃないですか。」

「私とあなたにどんな関係があるっていうの?まぁ、気の合う友達が欲しいって願っただけよ。どうせあなたのことだから笑うんでしょうけど。」

「いや別に笑いませんけど。ていうかそれ私じゃないですか。」

「それってどういう意味?」

「いや、気難しいサグメさんと友達になれる者なんて私しかいないじゃないですか。ほんと馬鹿ですねぇ。」

「あなたは数に含みたくない。」

「相変わらずバッサリですね…まぁ素敵な友達ができることを願っていますよ。じゃあまた来ますね。」

「来なくていい。」

 翼をばさばさはためかし感情をあらわにする。

 私は今日から変わるのだ。この花を咲かすことができたなら私という存在は他者から認められ生の証を残すことができるのだ。

「なんとしてでもこの花を咲かせなければいけないわね。ちゃんと咲いてねお花さん。」

 土の中で時を待つ希望にそっとかたりかけ場を後にした。

 

 私はその晩願い事について考えていた。もし私のことを思ってくれるものがいたらどうなるのだろう?今までの生活から大きく離れた楽しい生活が待っているのだろうか。その友達は私の辛さを理解してともに問題に立ち向かってくれるのだろうか?それはまだ分からない。それにまずどのように願いが叶うのだろうか?まだまだ未知数なところが沢山ある。ただそのことに対する不安なんて今までの苦難に比べればいともたやすいものだろう。なぜならそれに対する期待の方が大きく上回っているから。

「今日は寝て、明日からがんばって育てよう!」

 一体どれくらいの日数がかかるのか、肥料は必要なのか。まだまだ不確定な要素はたくさんある。

 ただ私は期待に胸を膨らませて布団に潜るのだった。

 

 その晩私は夢をみた。そこにはドレミ―がいた。どこか悲しい顔をしている。私はその顔見てなぜか悲しい気持ちになった。そしてドレミ―は私に背を向けた。

「ドレミ―ッ、待ちなさい!!」

 刹那、視界がまばゆい光に覆われ彼女の姿を隠した。非常にそれが煩わしい。そして意識は現実へと向けられ、目は乾燥を始めた。

 おぼろげな意識のなか窓の外を覗く。すでに時は朝。太陽の光が私の白肌を焦がす。ベッドにはいつもでは考えられないほど汗をぐっしょりとかいており心地悪かった。そしてなにより私は無性に腹がたった。なぜ私があのバクの夢をみなければならないのだ。そしてそのことによって睡眠が妨害されたことがなにより腹だたしい。

「それにしても夢をみるなんて何年ぶりかしら。彼女に出会ってから夢をみることはなくなったから…」

 実際には彼女が食べていたということなのだろう。そう考えるともう一つの変わった事象に気付く。

「そういえば今日は彼女来てないわね。いつもならおこがましく朝食まで食べていくのに…まぁ平和な一日が過ごせそうで何よりだわ。」

 私は特に何を気にすることもなく支度を始めた。特に食事をする必要もないのだが幻想郷に降り立って以来、向こうの習慣の影響をうけて食事を作ることにしているのだ。そんな訳で私は現在料理に勤しんでる。しかしここでまた新たな異変に気付いた。

「あら、いつもの癖で二人前作ってしまったわ。」

 テーブルの上には皿が二つ。料理も無意識に二人前作ってしまった。自分では意識していなかったがあいつの存在は想像以上に自分と深く関わっていたのかもしれない。 

 幸か不幸問題のあいつは来ていない。ゆえに私は久々に一人での食事を摂ることになった。もちろん喋る相手もいない。罵る相手もいない。

「あいつがいないってだけでこんなにも静かな朝なのね。」

 当たり前が消えてしまい。心にぽっかり穴が開いてしまったようだ。そこに寂しさを覚える。

「まぁ、いいわ。あの花が咲けば私は晴れて孤独から解放されるのだから。」

 月に降る光が一層強くなってきた

 

 あいつのせいですっかり忘れていたが。例の種はどうなっただろうか?流石にまだ花は咲いていないだろうが。芽ぐらいは出ているかもしれない。          

 私は食事を簡単に済まし期待と不安を抱えて外へ出た。

そこにあったのは相変わらず何も変わらない私の庭。ただ一つあることを除いては何も変わっていない。

「なんてことなの!もうこんなに成長するなんて…」

 私の前にはすでに私の背丈と変わらない例の植物があった。一日でこれほどの成長力。花を咲かせるのに案外時間はかからないのかもしれない。

 まず一般的な花がどれほどの速さで育つのか分からないのだがこの速さは異例だろう。この速さだと一週間ほどでこの家を覆ってしまうくらいの大きさになるかもしれない。

「流石にそこまで大きくなってしまうのは問題ねぇ。どうにかならないのかしら。」

 ただその心配は大きくなってからでいい。今はこの成果に喜んでいたかった。私はそのほかにすることもなかったので今日の出来事を日記に書き込み。特に何をすることもなく一日を終えた。

 

 次の日、また彼女は現れなかった。そして一人の食事を摂り、一人の一日を終えた。

 そして肝心の花は最初の急激な成長以来変化は現れなかた。なにかがおかしい。

 あともう少しで咲きそうなのだが、なぜか咲かない。やはり肥料が必要なのか、それともそもそも月では育たないのか。理由ははっきりしない。孤独。

 

次の日も。

 

また次の日も。

 

花を咲かせることはなかった。そして彼女が私の前に現れることもなかった。見るのはいつも同じ夢。

 

悪夢。

 

 そんな不毛な時が一か月ほどたった。

「なんで、花が咲かないのよ…花が咲けば、花が咲けば…」

 なぜ花が咲かないのだろうか。私はもう心身共にぼろぼろだ。見る夢に押しつぶされ。現実には裏切られ。相変わらず訪ねてくるものもいなかった。せめてあのバクがいたなら軽言をふまえつつ私に注意を喚起してくれたかもしれないのに。

こんなことならあの種に執着しなければよかった。きっと私はあの種に魅入ってしまったのだろう。生活リズムも崩れてしまっている。

そして久しく見ていない鏡を覗くとそこには私であって私でないものがそこには「あった」

 もはや人型を保っていない。黒くドロドロとした何か。

「ち...違う。これは私じゃない…はッ。きっとドレミ―のせいね。彼女が悪夢を見せているんだわ。そうに違いない。」

 もちろんドレミ―はいない。

 自分の腕に触れると皮膚が裂けて、中からは赤い血ではなく恨みのようなドス黒い液体が溢れだした。もうどうにでもなれ。

「ドレミー。私はあなたにあんなことを言っていたけど。あなたのいない時間は酷くつまらなく暗いものだったわ、やはり私の友達はあなたしかいなかったのかもしれない。ごめんなさい。どちらにしろ私はもう私ではなくなってしまったから…今の姿を見てきっと笑うでしょう。自業自得だと。

ただ一度だけ。もう一度だけあなたに会いたかった。あなたに謝りたかった…」

 もう上手く動かない足を使って最後の希望の元へ寄った。すでに自分の三倍はある巨体は大きく禍々しい。

 

 そして

 

 私の体が溶け始めた。足の方から黒い液体が生成されていくそして。そして皮肉にも私の体を吸って希望の花がゆっくり花を開いてき、間もなく真っ赤な花を咲かせた。今までどんなことをしても咲かなかった花。その希望が見事に私の背丈と同等の大きな花を咲かせた。

 

 そして夢は現実へ。   

 

 その神秘に応えるように彼女はやってきた。

「なんとなく久々に会いに来てみれば。おやおや、サグメさん少し見ない間に随分と変わってしまいましたね。」

 そこには必死に涙をこらえる彼女の姿。

「それでも最後にあなたに会えたのだから。それにあなたのことだから今の私を見て笑うと思っていたのに。良く笑わなかったわね。」

「言ったでしょう?私はサグメさんの友達だって。今までだってあなたの辛さは分かっていましたよ。ただ…」

「ただ?」

「あなたの闇が怖くて。あなたの力が怖くて。ずっと近くにいたはずなのに…その場から逃げてしまった。その種が意味するものもなんとなく察しがついていた。それなのに。」

 そして彼女は泣いた。私にはその涙が意味するものが分からなかった。なぜ彼女が泣くのだろうか?悪いのは私なのに。

「なぜあなたが泣くの?悪いのは私なのよ?私があなたを遠ざけた。私の勇気がなかったばっかりに。」

「もう、終わりですよ。サグメさん。お互い臆病すぎました。もう時間がありません。」

「そんなことはないわ。ほら。最後に分かり合えたじゃない?それにあなたにはまだ未来があるわ。」

「いえ、無いんですよ。あなたのいない未来に意味は無い。私の居場所なんてあってないようなものなんですよ。それに…」

「それに?」

「あなたが願ったことの答えが私だとしたら?」

「えぇ、そうよ。私が欲したのはあなたのような友達だったの。あなたのいない空白の時間が教えてくれたわ。」

 刹那、時間が止まった。

 

 そして歯車は回り始めた。逆方向に。

 

 今まで真っ赤に咲いていた花が裂けた。

 

 口のようなその裂け目からは黒くドロドロとした液体を唾液のようにたらしている。

 そしてゆっくりと首をもたげると自分のつるを使って彼女を捕らえ、おいしそうにと飲み込み始めた。私の長い生命の中で唯一の友達は足から徐々に姿を消していく。

「さようなら、サグメさん。あなたに会えて本当に良かったですよ。

欲を言えば。分かりあえてからもう少しお話したかったですがね。

ただそれも叶わないことになってしまいました。悔しいですが仕方の無い

ことです。それでは次の夢で会いましょう。」

「まって行かないで。やっと分かり会えたんじゃない!もう行くなんて

許さないわよッ!」

 彼女は何も言わずに微笑むと花の中に消えて行った。

 苦痛の表情もなく安らかに。

こうなるってわかってたんならもう私のもとに来なければよかったじゃないッ!去り際まで本当に腹が立つやつだ。 

「最後の最期まで腹の立つやつだったわね。私の友達は…」   

 あいつは確かに馬鹿なやつだった。腹の立つやつだった。それでもやはり友達は友達だったのだ。たとえどんなに腹の立つやつでも馬鹿なやつでも大切な『生命』だったのだ。それを私が奪ってしまった。大切なモノを自分の力で葬ってしまった。一番の馬鹿者は私自身に違いない。

 

私は不安がった。

 

生命として認識されないことを

 

だから欲した。

 

私を認めてくれる友達を。

 

自分の探していたものはいつも近くにあった。

 

ただ私はいつでも見当違いの方を探して。

 

大きな欲望に目を奪われ。

 

答えにたどり着くまでに大分時間をかけてしまった。

 

そして時間をかけ過ぎた。

 

答えにたどり着く頃には何もかもが終わりを目指していた。

 

私はこの世で最も馬鹿な神だ。

 

「それでもあなたに会えてよかったわ。別に突飛な生活もいらない。私の力を恐れていても構わない。だってあなたという存在が私の生命を『生命』として具現がしてくれたんだもの…今度会えたら沢山お話をしましょうね。料理を作って待っているわ…ドレミ―。」

 そして私は意識を失った。私の体は黒くドロドロした液体に変わり、徐々に種を形成した。月は再び静寂を取り戻し、何食わぬ顔でいつも通り時を刻み始めるのだった。

 

 その頃金髪の彼女は遠いところでそれを見ていた。

「やれやれ、彼女もまた生きものだったのね。生きものならだれもが幸せを望むもの。」

 金髪の彼女はその種の近くから這い出してまた一回り大きくなった種を拾った。そしてその種を自分の装飾箱に入れた。




いかがだったでしょうか? 誤字脱字は見受けられるかもしれませんが大目に見ていただけると幸いです。報告を受け次第直します。また基本的にどの小説にも言えることですが文章は読者さんの解釈次第でどのようにも受け取ることもできます。そのすべてが正解であり一つ一つに価値があるのです。私のような若輩小説にそういった感情を抱いてもらえるか分かりませんが少しでもそういった感情を持ってもらえれば幸いです。

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