side弥羽
買い物をしてから家に帰るとそこには……音無と遠見と搭城がいた。
「あっ!おかえり弥羽君」
「……ただいま」
音無に返事を返してから台所に向かう。
「意外と普通の家なんだね」
「そうかなぁ?」
遠見が家の感想を言ってくる。
確かに、家は普通の二階建ての家だ。
家賃とかはオレと音無が色んなことをして稼いでいるが……。
「そう言えば弥羽君!何で今日から家の人が増えるって言わなかったの!!」
「……監視だよ」
「そうだけど!!……悪魔だけど、信用……できるよね?」
「……」
その言葉に無言で返す。
オレたちが人間界に来た頃行く当ても金も無いオレたちは別の土地にいた悪魔に保護された。
だが、その悪魔が欲しかったのはオレの力と、音無の身体と能力だけだった。
それを知ったのは音無が襲われた時だ。
その時はその場にいた奴を殺してから逃げた後そいつの首と金を引き換えてもらった。
それからだ。賞金稼ぎをするようになったのは。
だが、金が手に入るというメリットがあったが同時に音無の記憶に悪魔への強い嫌悪ができてしまった。
「……多分。オレたちが何もしなければ何もしてこないと思う」
「……そっか」
ちなみにこの会話は悪魔の二人が上の階に行ったからしている。
「……部屋、どうする?」
「あっ、そっか今まで私と弥羽君同じ部屋で寝てたもんね」
「……オレは別に良いけど音無は恥ずかしいだろ?」
「ははは。昔からずっと一緒に寝てたもんね」
オレたちは冥界で暮らしていたとき寒さや不安などを紛らわせる為にいつも一緒に寝ていた。
それが今でも抜けず二人とも同じ部屋……いや、同じ布団で寝ていた。
他にも二つほどある。
一つは音無の能力の暴走だ。
これは六年前に一度あった。
その時は山の中だったから特に何の問題もなかった……周りには。
問題はオレの方にあった。
一言で言えばオレが可笑しくなっただけだ。
急にファフナーを使っている時のあの衝動が出てしまったのだ。
傷つける事に快感を覚えるあの衝動が。
だが、それはオレが寝るときなどの不安を感じる時にそばにいる事で解消した。
もう一つは音無の能力がオレの『同化現象』の抑制剤になってくれていたのだ。
オレはもうファフナーを使い続けてもう十年は過ぎている。
これまでのファフナーを使い続けていた人の記録によると最短で二年最高で五年で同化現象によりオレたちはファフナーに喰われる。
遠見は恐らく人から悪魔になったことでその制約が消えたんだと思われる。
「……音無はあの二人に家の案内でもしてあげてオレは飯作ってる」
「ごめんね。ありがとう」
「……いや、これはオレの我儘みたいなものだから」
「それでも……だよ」
笑顔を見せた後音無は二階へ上がっていく。
晩御飯を作りながら着替え始める。
そして、ふと右手を見る。
十年以上使っていても、やはりあの衝動に耐えられない。
ファフナーを使っている時は気にならないけど、ファフナーとのクロッシングを解けばあの衝動が怖くなってしまう。
「……そういえば、音無の部屋って片付けてあったっけ?」
「あれ?この部屋だけ散らかって」
「ストップ!!ストップ!!真矢ちゃん!!その部屋を見ないでー!!」
「……意外と汚い」
やっぱり、片付けてなかったんだな。
音無は整理整頓が苦手だ。
だから、音無は基本的に自分の部屋を使わない。
今度、片付け手伝うか。
「……美味しい」
「……これはプライドが壊れるね」
「だよね、私はもう諦めた!」
「……これぐらい、普通だろ?」
そう言うと三人から普通じゃない!!と否定された。
これぐらい、簡単にできそうなんだけどな。
「……そう言えば、何で家に泊まるんだ?」
「……一応、監視役ですから」
「いやいや違うよ子猫ちゃん!!」
「ははは、弥羽君は私たちが来るのは迷惑だった?」
「……オレは……別に」
全員の食器を片付けながらこれからの事を考える。
音無の能力のことを先輩たちに話すべきか話さない方がいいのか。
昔のことがトラウマとなっているオレと音無にとってこれは重要なことだ。
「……それを決めるのは……音無だよな」
音無がオレに頼ってるのは知ってる。
でも、オレはそんな現状が良いとは思えない。
人間である以上ファフナーの呪いはオレの身体を蝕みやがてー。
そんなことを考えていると音無が「お風呂に入るねぇー」と言ってきた。
「……別に、報告しなくてもいいのにな」
癖はそう簡単には抜けないか。
微笑ましいものを見るような目で音無のいる方向を見る。
それと同時に音無がオレの戦う理由を知ったらどう思うだろうと思った。
でも、それを言えるわけがない。
「……オレが、居なくなるために戦う何て知ったら
音無たちが風呂を出てからオレも入る。
そして、何時もの通りにやる。
「クロッシング、スタート」
自分の意識を自分の中に向ける。
そこには卵のような何かがある。
前に来た時よりも大きくなっているような気がするがオレが行くのはその先。
そこには黒い巨人がいた。
ファフナーマークエルフ。
オレが使うファフナーだ。
そして、その巨人にふれいつも通りの事をする。
その巨人の中にいる誰かにオレの何かを与える。
不思議なのは何かを与えていることは分かるけどオレは何も変わっていない。
だから、何を送っているのかオレには分からない。
そろそろあがらないと音無に心配をかけるな。
そう思いクロッシングを解く。
それと同時に頭の中に誰かの歌が響いた気がした。
風呂から上がってオレは自分の部屋に向かう。
宿題とかも全部学校で終わらせてあるし暇だ。
するとドアがノックされた。
ドアを開けるとそこには
「あははー」
「ごめんね」
「……すみません」
音無たちがいた。
全員パジャマを着ている。
少しドキッとしたけど平常心で対処する。
「……どうしたんだ?」
「ごめんね弥羽君。寝る場所がないから今日は弥羽君の部屋で寝てもいいかな?」
「……まさか、他の部屋も?」
「ごめんね弥羽君」
ため息を吐いてから三人を部屋に入れる。
「凄い、紫亜ちゃんの部屋より綺麗」
「……別に普通だろ」
「……普通の男子高校生の部屋はここまで綺麗じゃないと思う」
「だよね!」
驚いてる三人をほっといて一階まで布団を取りに行く。
普段は一つの布団で音無と共に寝るがさすがに他の人もいると、その恥ずかしい。
部屋の扉を開けっぱなしにして一階まで降りていく。
そう言えば、布団って何個あったっけ?
布団を持って戻ってくると音無たちが部屋の物を漁っていた。
正直に言って、そんなことをするとは思わなかった。
「……何してるんだ?」
「いやー、ほら弥羽君も男子高校生なんだからその」
「……兵藤先輩が持ってるような本はないぞ」
「あははー。バレてるね」
そこで搭城がオレの持ってるものを見て目を丸くする。
「……それ、持ってきたんですか」
「……さすがに一つの布団でみんなは無理だからな」
「いや、それよりもよくそれだけ持てたね」
「そう言えば弥羽君学校では手加減してたもんね」
「……その細い腕のどこにそんな力が?」
「それは……確かに」
オレが布団を敷いてる間にそんな話をしている音無たち。
布団を敷いてからオレは一階に行こうとして頭に何かが走った。
あっ、やばい。
急に視界が歪んでいく。
視覚、痛覚などの感覚がしだいに無くなっていく感覚がする。
唯一まともに働いているのは聴覚だけだ。
そして、何かにぶつかりオレは感覚を取り戻す。
頭に柔らかい何かがある。
「……変態」
「弥羽君、これどういうこと?」
搭城と音無の声が聞こえる。
だけど、上手く手足に力が入らない。
それより、オレの部屋にこんな柔らかいものなんて、あったか?
そして、何故遠見がいないんだ?
上手く力の入らない手をなんとか動かして体を立たせようとして下に誰かがいることに気がついた。
視線を前にずらしていくとそこには顔を真っ赤にした遠見がいた。
あれ?それじゃあさっきまでオレがいたのはもしかして?
その答えは遠見が胸を守るように腕を交差させているのを見て理解する。
「……ごめん、遠見」
「……ううん。だっ、大丈夫だから」
正直に言って凄く恥ずかしい。
だけど、それと同時にまさかと思い急いで一階に走る。
一階のリビングに来てすぐに長袖の裾をめくる。
やっぱりな。
腕から翡翠色の結晶が生えてきていた。
腕を抑える。
すると、生えてくる感覚がなくなりそして、砕ける。
まだオレの目は赤くない。
まだ平気だ。
まだ、オレはここにいる。
この時のオレは気づいていなかった。
走り出した俺の姿を見て追いかけていた一人の少女に。
次回予告
「……先輩、悪魔にとって教会は敵地ですよ」
「俺と友達になろう!!アーシア!!」
「そう、なら消し飛びなさい」
「……女の子?」
次回『悪魔〜ともだち〜』