それは良いことだけではなかった。
新しい友達、新しい仲間、新しい家族。
そして、生存限界。
それが、オレの日常を変えようとしていた。
side弥羽
朝ごはんを作るついでに四人分の弁当も作る。
朝起きたら音無が抱きついていたことに驚いて叫び声を上げようとしていたのは秘密だ。
それにしても、
「……同化現象……か」
メモリージングされた知識の一つにある。
ファフナーが大量生産されなかった理由だ。
ファフナーに乗るために必要な『因子』を持つ人間であれば誰でも適合できる。
適合した後なら悪魔になってもファフナーの力は使える。
そして、この因子が同化現象を引き起こしている。
原理は不明だが同化現象があるため本来なら十年未満でファフナーの適合者は同化現象によりファフナーに喰われる。
改良しようにも今はファフナーの製作者も製作方法もその全てが闇の中だからできるはずがない。
オレが今だにここに居る理由は分からない。
同化耐性が高いといってもこれは異常だ。
原因の一つに音無が関係している気がする。
音無の名前が出て来てすぐに考えを消す。
「……卵焼き、作りすぎた」
考え事をしていたからか卵焼きをかなり作ってしまった。
「……兵藤先輩にお裾分けしよう」
するとちょうどご飯が炊けたようで音が鳴る。
すると搭城がリビングにやって来る。
「……おはようございます」
「……おはよう搭城」
挨拶を返して再び朝ごはんの用意をし始める。
するとチラチラと搭城がこちらを見てくる。
「……朝ご飯ならまだ先だぞ?」
「……違います。あの、昨日腕から出てたあれ、何ですか?」
「……っ!?」
昨日のあれ、まさか搭城に見られてたのか!!
「……別に何でもないさ」
「……そうですか」
それきり会話がなくなる。
同化現象の事について聞かれないのはオレにとってラッキーだ。
同化現象について聞かれたらおそらく、誤魔化せない。
そして、搭城にバレるということは音無にその話がいくということだ。
そうすると、おそらく彼女はオレを戦わせないようにするだろうな。
だけど、それではダメなんだ。
今でも音無の能力を求めて悪魔だけでなく堕天使などがこの近くに来ることがあったんだ。
オレが戦わないと、おそらく音無は……。
それに、オレがファフナーで戦う理由は消えたいからだ。
だから、別に良い。
しばらくしてから音無と遠見が一階に降りてきた。
目が完全に醒めている遠見と違い音無はまだ寝ぼけている。
相変わらず、朝に弱いんだな。
「……音無、今日付き合ってくれないか?」
「うん。良いよ……えっ!?」
返事をした後に音無は驚いたような顔をしてオレを見てくる。
「……今日、えっとグレタリー先輩」
「あのさ、グレモリーだよ」
「……グレモリー先輩に音無の能力のことを言っとこうと思って」
「ああ、そうですね〜。……期待した私がバカだった」
遠見と搭城が同情の眼差しを音無に向ける。
何か可笑しかっただろうか?
「……すみませんおかわりをお願いします」
「……搭城って結構食べるんだな」
そう言うと搭城がオレに睨みつけるような視線を送ってきた。
「さすがに今のはー」
「ー弥羽君が悪いかな」
酷い言われようだ。
オレは気になっただけなんだけどな。
登校する時間になった。
何時もは学校の近くまで音無と一緒だけど今日からさらに増えると思うと憂鬱な気分になる。
搭城たちに弁当も渡しておいたし多分忘れ物はー。
「あっ!英語の宿題やるの忘れてた!!」
「……はぁ、後で見せようか?」
「本当に?弥羽君」
「……別にいいだろ。音無には何時も助かってるし」
「そういうことなら」
ふと後ろを見てみると遠見と搭城がオレたちから何歩か離れた位置にいた。
「ははは、気にせずどうぞ」
「……バカップル」
「……何を言ってるんだ?オレは音無と付き合ってないぞ?」
「……鈍感」
搭城がオレに向けて毒を吐いてくる。
すると前から女子の悲鳴が聞こえてきた。
「……先輩か」
前を進んで行きそこに居たのはオレの想像した通りの人物だった。
「……何してるんですか?早瀬先輩」
「よう!真壁!!ちょっと不良どもぶん殴ってたら女子から言い寄られてな!!」
「……どうせナンパしていた人を助けたんですよね」
「あっ!解っちゃう?」
「……早瀬先輩、大人しく生徒会室に行って……くれませんよね」
「解ってんじゃん!!」
そう言って逃げようとする先輩の腕を掴んでそのまま投げる。
「……すみません。生徒会長から見つけたら何が何でも捕まえといて欲しいと言われてたので」
「ははは、バッドな展開ってやつじゃないか」
早瀬先輩が落ち込みオレは早瀬先輩を担ぐと見物していた人たちがずらっと道を開ける。
「……あのさ、真壁。降ろしてくんね」
「……無理です」
「だよなぁ」
ガクッと早瀬先輩が肩を落とす。
この後早瀬先輩は生徒会長にかなりしぼられた後反省文五十枚を泣きながら書いたそうだ。
先輩のところに行き弁当のお裾分けをしてから屋上に行く。
その理由は靴箱の中に入っていた一つの封筒が原因だ。
質素な封筒で手紙の中も一言書かれた紙だけだった。
「昼休みに屋上に来てください」
それだけしか書かれてなかった。
だから例え罠であろうと行くしかない。
屋上に行くとそこには一つ上の女生徒がいた。
「……この手紙を書いたのは先輩ですよね」
オレは警戒心を高めながら聞く。
ここまで来てオレはこの人から何かを感じた。
その何かがオレには分からない。
でも何となくこの人から意識を逸らしてはいけない気がした。
警戒しているとその女生徒がどんどんオロオロし始めた。
……あれ?何で警戒しようと思ったんだ?
「えっと、その一つ聞きたいことがあって」
「……聞きたいこと?」
「真壁君は、その、転生者なんですか?」
……?もしかしてこの人って
「……あの、そういう事は自分の中だけにしといたほうがいいと思います」
「えっ!?あのー」
「……いえ、先輩の言いたいことも分かります。家の同居人も同じような事をしてましたから」
「いえ、そういうことじゃなくて」
「……大丈夫です。思春期なら誰でも通る道だそうですから」
「あの、そうじゃないんですけど」
すると先輩が涙目になった。
それと同時にキュゥ〜と可愛らしい音が響いた。
「……あの、今のって」
「はうぅぅぅ」
先輩の方を見ると顔を真っ赤にして俯いていた。
オレは持っていた鞄を漁って目的の物を見つける。
「……良かったら、食べます?」
「ふぇ?」
先輩はオレの手にある弁当箱を見て驚いたような顔をする。
「いえいえ、さすがに恐れ多いです」
すると再びキュゥ〜と可愛らしい音が響いた。
「……どうぞ」
「……ありがたくいただきます」
申し訳なさそうな顔をして先輩が弁当を食べ始めて……固まった。
「……どうかしたんですか?」
「おっ、美味しいですー」
先輩が笑顔でそう言ってくる。
その笑顔を見て顔が熱くなる。
先輩がお弁当を食べ終わると同時にチャイムが鳴る。
「あっ、ありがとうございました」
「……いえ、別に」
先輩の顔が直視できなくそっぽを向いてしまう。
「……それじゃあ、そろそろ行きますね」
「あっ、あの!!」
教室に戻ろうとして後ろから呼び止められる。
「名前!教えてください!!」
「……知ってるんじゃ」
「その、本人の口から聞きたいなって!!」
「……真壁弥羽です」
「わっ、私は水無月伊織です!!」
パクパクと口を開閉させる水無月先輩の姿が可笑しくてつい笑ってしまう。
「なっ、なにわらってるんですか!?」
「……そろそろ行かないと遅れますよ先輩」
「あっ、ちょっと待ってください」
「……また明日」
小声で言った言葉は先輩ー水無月先輩の耳に届いたらしく先輩もまた明日と言ってきた。
授業が全部終わってオカルト研究部に音無を連れて行く。
グレモリー先輩に音無のことを言うとグレモリー先輩はオレに何が目的なのかを聞いてきた。
「……音無悪い今日特売の卵を買ってきてくれないか?」
「ええ〜、ここまで来てそれ〜」
「……頼む」
「もう!しかたないなー」
そう言って部室から出たのを確認してグレモリー先輩に向き合う。
「彼女に……知られたくないのね」
「……分かりますか」
「何となくだけど」
オレはグレモリー先輩に向かって本題を言う。
今ここにはグレモリー先輩とえっと、姫島先輩以外誰もいない。
「……もし、オレの身体に何かあった時彼女を、音無を守って欲しいんです。その代わりにオレは先輩たちに敵対しないことを契約します」
その言葉にグレモリー先輩たちは驚いた顔をする。
「……それはどういうことかしら」
「……それは、言えません」
「そう、それで良いわ」
グレモリー先輩の答えがオレの望んだ物で助かった。
「ただし、あの子と貴方にはオカルト研究部に所属してもらうわ」
「……そう言うと思ってもう用意してあります」
あら、手際が良いとグレモリー先輩は言って入部届けを受け取った。
あれからイッセー先輩の魔力が子供以下だとわかったりイッセー先輩の依頼主が変人だらけだったりした。
「うう〜、何で俺だけ」
「……日頃の行いなんじゃ?」
「くっそー!!」
そんな会話しながら歩いているとイッセー先輩が走り出した。
オレもイッセー先輩のもとに向かうとイッセー先輩が
その後イッセー先輩がシスターの人を送ろうとしているのをオレは小声で注意する。
「……先輩、悪魔にとって教会は敵地ですよ」
「大丈夫、送るだけだ」
大丈夫なのか?と思いながらシスターの人を送った。
その夜、イッセー先輩が部長に怒られた。
まぁ、当たり前だなと思う。
すると姫島先輩が
「討伐の依頼が大公から届きました」
と言った。
そのはぐれ悪魔がいる場所に向かう。
前ではイッセー先輩が部長に悪魔の駒についてレクチャーされている。
それをオレと音無、遠見は見ながら雑談をする。
そうしながらオレは何時でもファフナーを使えるようにする。
これはもう癖になっている。
しばらく進むとそこには上半身だけが女性の悪魔がいた。
それを見てイッセー先輩が下を見なけりゃ良かったと泣きながら言っている。
グレモリー先輩の指示で先輩たちが動く。
イケメンの先輩は素早い動きではぐれ悪魔を斬る。
「……あの先輩が『
その推測を裏付けるように搭城たちの駒の特性を言って行く。
姫島先輩の駒は……ある意味合ってるな『
搭城と遠見が『
そしてイッセー先輩が『
その説明を聞きながら立てた推測は全て合っていた。
そして、部長がはぐれ悪魔に何か言ったあと
「そう、なら消し飛びなさい!!」
紅い魔力をはぐれ悪魔に向けて撃つ。
すると、はぐれ悪魔の身体が消えていった。
あれが、滅びの魔力。
そして、部長がイッセー先輩の駒を言う。
その瞬間、イッセー先輩は崩れ落ちたように倒れた。
それからしばらく経った今日イッセー先輩の依頼に同伴した。
理由は特にない。
でも、そこに着くと同時に違和感を感じた。
オレはナイフを出してイッセー先輩の後に続く。
しばらくするとイッセー先輩が止まった。
イッセー先輩の横に移動してそれを見る。
「……もう、死んでる」
すると、銀髪のエクソシストがこちらに気づいたようで見てくる。
イッセー先輩がエクソシストに英語で話しているとエクソシストの手が神父服の中に入っていった。
それと同時にイッセー先輩を蹴飛ばし銃弾を弾く。
何かを言ってきているが今のオレはその言葉を無視する。
すると、あの時のシスターさんがやってきて仲間割れをし始めた。
しばらくするとエクソシストがイッセー先輩に光の剣を振り下ろそうとするがそれを阻む様に魔法陣が現れる。
それに気を取られていて
「ぐぁぁー!!」
警戒を怠ってしまった。
すぐにレールガンを出して撃つ。
部長たちは周りを見てイッセー先輩を見つけると慌てるように駆けつけた。
「……部長、イッセー先輩を連れて離脱してください」
「何言ってるの?」
「……堕天使が来る」
そう言うと慌ててイッセー先輩を中心に魔法陣が現れる。
「部長!アーシアは?」
「ごめんなさい、彼女は眷属じゃないからこの魔法陣で転移できないの」
「それって!」
そう言ってイッセー先輩はオレの方を見る。
「……さっさと行ってください。オレなら、平気ですし部長たちいるとオレは全力で戦えない」
そう言ってもイッセー先輩は頑なに拒否するが魔法陣は起動しそのまま転移してしまう。
「……あの、どうします?」
オレはシスターに英語で聞く。
「どうするとは?」
「……イッセー先輩のもとに行くか、堕天使の方に行くかです」
「私は……イッセーさんのところに行きたいです」
その声を聞くのと堕天使が入ってくるのは同時だった。
「あら、何で虫がここにいるのかしら」
堕天使が槍を放つと同時にファフナーを展開する。
ファフナーの持つ能力の一つに光力と魔力の減衰がある。
ファフナーの装甲は光力と魔力に対してかなりのアドバンテージがある。
「……少し、我慢しててください」
そう言うと同時にシスターさんを担ぐ。
そして、一気に加速した。
ファフナーの速さなら、引き剥がせる。
移動しながらレールガンを後ろに撃つ。
それが牽制となり堕天使達のスピードが落ちる。
その間に路地裏などを利用して撒きながら部室に向かう。
部室についたオレを待っていたのは部長のありがたいお説教だった。
その間にイッセー先輩はシスターさんに言葉を言っていく。
シスターさんーアーシアさんの話を聞いたイッセー先輩はアーシアさんに「友達になろう!」と言った。
その言葉にアーシアさんは聞き返す。
「だから、俺と友達になろう!!アーシア!」
その後部長たちは何かを話し合った後しばらくこの部室で彼女を匿うことを決めたらしい。
何時もの如くファフナーの奥に意識を飛ばす。
すると、卵のような何かの前に赤い影が見えた。
近くに行って見ると
「……女の子?」
全身が赤い女の子がいた。
なぁ、神様。
何で女の子一人も守ってくれないんだ?
何で、この子が死なないといけない。
そんな、女の子一人守れない神様なら俺はー。
神様なんかに頼らない!!
次回『覚醒〜あかきりゅう〜』