[ミッションログ 18日目]
食料についての目処が経ってきたので、次は通信手段の回復を考える。
まず現状を整理すると、
・通信アンテナは破壊されている
・同じくレーダーも破壊されている
・通信設備は部屋ごと流れ弾を受け即死状態
の3つにより、現在私は外部との連絡手段を絶たれている。
軍隊において通信手段の確立は兵站と並んで大切な事だ。狼煙から始まり、伝令、伝書鳩など様々な“速い”情報伝達手段が試されては戦場において投入されてきた、第二次世界大戦では無線技術の発達により、この最新鋭の連絡通信がいかに効率的に軍隊を動かすための武器になるかという事を実証してみせた。
現在の海軍の連絡手段は複数あり、そのどれもがスマートだ。アンテナを介した衛星通信、従来の無線通信、さらに無線を駆使した電子ネットワークなど、その通信手段は様々である。どれもがスマートな情報の流れで戦況を前線から後方へ、指示を後方から前線へと伝えている。
が、そんなものは今のここにはありはしない。テレビもない、ラジオもない、オラの鎮守府電話がねぇ。
などとふざけている場合ではない。私は早い所生存を伝え、司令部との通信を確保しなければいけない。
そこで、考えうる通信の回復手段を、私なりに考えて見た。
基地の内部にも電話はある。しかし、そちらは内線電話であるし、そもそも電力喪失により使用できない。また、パソコンにはネットワーク接続がない。
開戦初期に深海棲艦は海底ケーブルを根こそぎ破壊し、世界各国との通信網を真っ先にぶった切った。それ以来、ネットワーク接続はすべて無線によってやり取りされていたが、それを受信するアンテナが死んでいるのでパソコンを用いた通信手段は望めない。
つまりネットを使うのは無理だ。秘書艦の控え室にラップトップはあったと思うが、通信用のデバイスは乗せてなかったと思うし……流石にネットが繋がっても通販サイトの宅配はここまで来れまい。
次に艤装内蔵の通信装置だ。
艦娘は離れた場所にいる仲間といつでも交信できるように、通信装置でやり取りが出来るようになっている。専用の無線装置は艤装の中に収納されていて、妖精さんのテクノロジーで誰とでも簡単にやり取りできるように作られている。
ただし、このシステムには難点があり、あまりにも距離がありすぎると、いくら妖精さんのテクノロジーとは言え通信が成り立たなくなる。地球が球体で、まっすぐにしか飛ばない電波を遠くへ飛ばすために中継局を利用するのと同じ理屈だと明石から聞いた事があった。
仮に、この通信範囲内に艦娘がいたとしても、私の艤装は全壊に近い状態のため修復は無理に近い。奇跡が重ならない限りこの案は却下だ。雪風がいれば別かもしれないが。
そして、一番最後のばかげた手段。
基地設備の損害が軽微な基地へ行き、そこの通信設備を使う事だ。
本当にばかげた手段である。まず私は艤装がないため、生身でこの海を渡る必要がある。そして、深海棲艦とカチ会わない事を祈りながらひたすら船に乗って、近場の基地へと向かい、通信設備が生きてる事を祈るというのだ。限りなく恐ろしい方法だ。
最寄の基地でも、距離は100キロ以上もある。移動手段はまだ目処が経ってない。よしんば最寄の基地へ移動できていても、深海棲艦の攻撃でここよりもひどく破壊されている可能性があるし、目当ての通信設備は生きてないという可能性もある。
危険すぎる!考えるだけで嫌になるが、これは最後の最後の追い詰められた時の手段にしよう。
となると通信手段としてのもっともマシな選択肢はひとつ。
艤装内蔵のものを修理して使うしかない。
[ミッションログ 19日目]
撤退翌日から、司令棟の脇へ捨てたままにしていた艤装を調べてみた。
艤装の損害については度合いが存在する。軽度のものは艦娘(とは言っても明石に限ったが)でも簡単に直せるもので、中程度の損傷は大体ドック行きだった、大破状態の場合は絶対にドックへ行くし、最悪の場合はパーツを殆ど取り替えるか、いっそ新しい艤装へと交換する。
私の艤装は一番最悪の大破状態だ。
かろうじて形を保っているが武装は全損していて使用は不可能だ。機関も完全にお釈迦になり、主機は回りもしない。なんで私が生きてこの基地までたどり着いたかが分からないぐらいだ。もしかしたら提督の指示で付けたままで忘れていたダメコンが発動したのでは無いだろうか。通信装備が生きてるかどうか試すために、再び装着してみたがスイッチのオンオフを繰り返しても、雑音やマイクの音すら拾わない。つまり通信ユニットは完全に死んでいる。
この艤装の修理については絶望的だと私は踏んでいたが、改めて破損の状態を見てそれほど悪くはない賭けなのではと思う。
修理について、私はスペアパーツの事を考慮に入れてなかった。艤装格納庫は爆撃を受けて壊滅しているが、同じ運命を辿った予備艤装も中にはあるのではないかと思うし、撤退前に爆破処分した記憶も無い(本当に爆破処分してないとしたら、相当のヘマだが)ので、もしかすれば使えるパーツを残している予備艤装の残骸があるかもしれない。
問題は修復マニュアルだが、兵舎A棟の2階には大淀と明石の私室があったので、そちらを漁れば何か出てくるかもしれない。念のため司令棟の資料室も漁ってみるか。
とりあえず艤装の残骸を住処の中に運んで、今日は活動終了だ。
晩飯に艦娘用レーションのカレー弁当でも食べながら、黒潮が持っていた映画を見る事にする。
今日見るタイトルはサメが竜巻になってくる襲ってくる映画だそうだ。