[ミッションログ 20日目]
今日は一段と基地の中を歩き回った。
艤装格納庫はひどい有様だったが、実は改めて見るとそれほど手痛いダメージは無かったようだ。おそらく天井から抜けた爆弾が床に着地した際に爆発し、風船が破裂するようにガラスと天井をぶっ飛ばしただけで、まだ形は保っている。
一通り確認して見たが、艤装はその爆撃の衝撃と破片をもろに食らって殆どが大破していた。
奇跡的に中破していた物もあったが、妙高型重巡の予備艤装は残念ながら無かった。
人間によって合う・合わない艤装があるため、無事な艤装があっても使えない事が殆どだ。たとえば私が無理やり陽炎型駆逐艦の艤装を身体に付けたとしよう。艤装の機能そのものは生きているが、それを動かすための「指令」が届かず、結局動かない……という風に使えないのだ。
稀に使えるのもいるが、そういった場合は指令が届くまでのタイムラグが長すぎたり、また同時に「移動しながら複数目標に砲撃」「回避行動を取りながら対空射撃」など複数のタスクをこなす事が出来なくなってしまう。そのために艤装は完璧に適合するもののみを付けるように言われている。
一回、忘年会で酔った勢いで伊58の艤装とスクール水着を無理やり着て「潜水母艦那智でちー!イピカイエざまあみろ!」と騒いだ時があったが、その時は微妙に舵が反応した事を覚えている。その翌日、どうして提督の服を着て宴会場の窓ガラスに突っ込んでいたかまでは覚えていない。
無事な58の艤装があったとしても二度とやらないからな。二日酔いの状態であの始末書を書いた時の恥ずかしさは過去トップクラスだった。
とりあえず、陽炎型駆逐艦、伊勢型戦艦、飛鷹型軽空母の合計3つの程度のよいスクラップ艤装を見つけたのでトラックへと積み込んだ。
次に大淀と明石の自室を調べて見た。
あの2隻は艤装適合者が大量にいる割には艤装が滅多に生産できないというよくわからない艦娘で、大抵はどの基地でも提督補佐艦娘として配置されている。もちろん、私が知らないような事も知っているような女だと思うので、艤装に関する事ならまず明石だ。
彼女が泊地修理の際に使っていた装備があると踏んでいたが、結果は空回りだった。普通の女の子の部屋がある事は喜ばしいが、私はもっとギークな女だったと思っていたぞ。
代わりに艤装整備用のマニュアルを入手した。RPGでいう「ひのきのぼう」程度の効果しかないと思うが、このマニュアルだけでも儲けものだ。
次に大淀の自室を調べたが、役に立つ物は無かった。
最後に司令棟も漁ってみた。資料室から何冊かの資料を見つけた、艦娘の艤装整備要綱、各艦ごとの艤装マニュアル(メーカー別)を数冊。思ったほどの戦果ではなかったが、これらのマニュアルとジャンクパーツで頑張って通信を生き返らせてみよう。
ソーラーパネル移設の際に使った工具しか手元に無いが、現状は手元にある武器で戦うしかない。
[ミッションログ 22日目]
艤装の修理は煮詰まっている。
艤装から通信ユニットを外す所までは行った、同じように他の艤装から拾ってきたジャンクパーツからも通信ユニットを抜いた。
通信ユニットを見て見ると、これが意外とすごい。妖精さん謹製のテクノロジーで、一部のパーツはブラックボックスとも噂されるほどのそれは、厚い文庫本ぐらいのサイズである。このサイズで、何とありとあらゆる艦娘と繋がれて、広範囲をカバー出来るという優れものだ。現物が目の前にあると感動してしまう。
とは行ってもここまでに有した時間は丸々一日だ。艤装というものは思いのほか硬く、そして解体にとても手間がかかるものだと私は痛感した。もっとも、簡単に壊れるような艤装なら軍用に向かないのだが……
取り外した全ての通信ユニットを机の上に並べて、今度はドライバーでネジを片っ端から外して分解し、比較している。
電子工作は苦手な部類だが、夕張から教わった知識が何となく生きている。私の通信ユニットは基盤の部分が壊れているようで、どうもそれが怪しいと思われる。
それぞれのパーツから取って来たパーツを合わせて試行錯誤しているが、果たしてどうなる事やら。
[ミッションログ 25日目]
やった!!
やったぞ!!
修理開始から5日かけて、通信ユニットの完全な回復に成功した!
艤装に再度はめ込んで試して見たが、見事に通信機能の回復に成功した。ノイズやマイクの音すら拾わなかった通信ユニットが、立派に私の声を拾っている。ノイズも微かに聞こえる。これは通信機としてよみがえった事に他ならない。
だが、それと同時に私は大いに落胆した。
通信相手がいない。
私がここに取り残されたのは100%確定のようだ。