[ミッションログ 31日目]
あの日から1ヶ月経った。
大破状態かつ着の身着のままで流れ着いてから1ヶ月。ボロボロの基地を放棄し、コンクリート製の監視所を我が家にして、生存や生活に必要な設備を整え、通信機能も何とか修復したので、1日の行動ルーチンを定めてみた。
まず起床、それから周辺海域を監視。レーションの朝食を食べる。自由時間。昼に周辺海域を監視。2日に1回はレーションの昼食を食べて、それ以外は食い繋ぐため我慢。自由時間。夕方に周辺海域を監視、レーションの夕食を食べる。汗を流したいので軽くシャワーや身体拭き、うち週に3回はドラム缶の風呂。寝る。
1日に3回は通信を試みる。自由時間は決まって読書や映画や技術書を読む勉強に使い、何かしら作業が必要であればこの時間に使う。
技術書は司令棟や艦娘の自室にあったやつを使う。サバイバルにおいては知識=武器である。サバイバルに役立ちそうな知恵と知識はありったけ頭に叩き込んでおく事が必要だろう。無線通信、機械の整備、農業、武術、航法、武器整備と覚えておく必要がある知識は山ほどある。
監視も大切な仕事だ。
深海棲艦の支配地域の真ん中に自分がいる(という“可能性”で済んでいればいいのだが)という事を考えると、深海棲艦の動向を探るために海を監視するというのはごく当たり前かつ重要な事だ。それに、まだ戦闘中であるのだから軍人としての勤めを全うしなければいけないという義務感もある。深海棲艦の動向を記録しておく事で、このデータが司令部にとって重要な存在になる可能性だってあるのだ。敵の上陸にも備えなければならない。
もっとも、深海棲艦の支配地域と言っても上陸侵攻まで及んだケースは、実際のところはそれほど無い。一番は深海棲艦の艦載機による空襲で、深海棲艦上陸の大半は人口過密地帯への無差別攻撃と、重要な軍事基地・要地の占領に限られている。パナマとハワイとスエズが占領されたのもこれが原因であると見られているし、各国の沿岸部への攻撃もその大半が人口数万を超える街への攻撃である。
今のところ、一番の危惧は、深海棲艦本体の巣窟……通称「赤海域」になる可能性である。
衛星写真や肉眼でもわかるように、海が真っ赤に染まっている状態は危険とされている。深海棲艦の姫クラスがうようよ回航し、最悪の場合はその海域に根を下ろして駐留している状態の事を指す。なんで赤色なのかは長年議論を呼んでるが、今の所軍は「深海棲艦による何らかの影響」の一言で片付けている。いい加減すぎだろ。
幸いにも近場を見回してもそうなってはいないが、危惧すべきは本土の方角にドス黒いような赤いオーラが漂っている事だ。
遠いなあ……どこでもドアが欲しいなあ……明石作ってくれないかな……
[ミッションログ 35日目]
そろそろ菜園に手を付ける。
一航戦が残してくれた種を使い、作物を育てるのだ。
島の土壌についてだが、浜沿いはともかく、この監視所の周囲にはそれなりの土壌がそろっており、草の生え具合から見ても農地にするのは中々よいチョイスだと思われる。肥えた土地にするために、肥料なり何なりを用意する必要もある。
という訳で監視所の周囲に農園を作る事にした。まずは土壌からだ。
私の作ったトイレから出る排泄物(お上品な表現)を使うというアイディアだが、まず排泄物に関して言えばそのままはダメなのだそうだ。曰く、菌が強すぎてアウトという事なので、乾燥させたり発酵させた物が一番よいとされている。(一航戦の残した参考書の余談で見た)
とりあえずは、草をむしり、クワを入れて土を耕し、そこからさらに小石や小枝や根っこなどを取り払い、畝を作っておく事から始めよう。農地用の水に関してはどう使うか悩むが、とりあえずは農地を作るだけ作る所から始めたい。
さて、ここで疑問が出てくる。
腹ペコ一航戦はなぜこれを実行に移さなかったかだ。あの2人がすでに農場を作っていて、それをほったらかしにして撤退していたら私はこんなDIY番組にあるような「重巡・那智の家庭菜園チャレンジ はじめての農作」みたいな事をしなくて済んだのだが。
思うに重労働するのが嫌だったんだろうな。
種は未開封だし、参考書に至っては10ページ目の土壌改善の項目に付箋が貼られているだけで、あとのページは読んだ形跡もない。余程の大規模作戦でない限りヒマの多い2人だけあって、時間はある筈なのにしなかったのだからそれで正解と見て間違いないだろう。
よし、こうなったら那智菜園を何が何でも完成させるぞ。
一航戦にドヤ顔で菜園を見せてやろう。