南方海域ひとりぼっち   作:Colonel.大佐

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ログ 77日目

[ミッションログ 77日目]

 

 最悪の事態になったらどうしようか、と最近考えている。

 どういう事態かと言うと、深海棲艦の上陸だ。かつて、開戦当初に深海棲艦が上陸してきた際は、輸送ワ級が浜に乗り上げて、口から大量の陸上型深海棲艦――足の生えてるイ級みたいなやつを吐き出して世界を大混乱に陥れた。

 率直に言うと、同じことがこの島で起こったら私は死ぬ。

 

 恐らく戦うヒマすらないだろう。私の手持ち武器は64式小銃が1挺と9mm拳銃1挺、そしてサバイバルナイフが1本だ。弾薬に至っては歩兵が持てる標準量しか持ってない。

 つまり死ぬしかないって事だ。

 そこで考えてみたのだが、どうせ死ぬ事になったら派手に死にたい気がする。

 爆撃で死に掛けた身としては、もう少し面白い死に方をしてみたい。

 例えば迫り来る深海棲艦に、ガスボンベを大量に抱えて「ようタコ野郎帰ってきたぜえええ!」と叫んで特攻して死ぬとか、体中にプラスチック爆薬をくくり付けて突入してニヤリと笑いながらスイッチを押して爆死するとか、なんと言うか面白い死に方があるような気がする。

 

 まあ、結局はこの拳銃で頭をズドンと撃ち抜いて楽になるしか一番簡単な方法はないな。こめかみは一撃で死ねない事があるらしいから、口に銜えるか。

 

 こんな所で面白く死んでもダーウィンアワードには載れない気がするが、それでも深海棲艦の連中にインパクトを残して死ねればそれはそれでいいだろうなという気がする。

 そんな日は来て欲しくないんだけどな。

 

 通信はもうずっとつながらず、レーションを食べて畑の様子を見て、ここに戻るという生活を続けていると気が滅入って来る。退屈をしのげる娯楽もいつまで持つか分からないし、完全に忘れ去られたとしか思えないし、救出の希望が見えない毎日が続いているようではこんな後ろ向きな妄想をするのも仕方なかろう。

 

 通信が回復しなかったら……いや、もうこれ以上考えるのは止めよう。

 あーあ、それにしても長門よ……もっといい音楽は持ってこなかったのか?もうプリキュアの歴代オープニングソング、空で歌えるようになってしまったぞ。次はアイカツだな。

 

 

 

 

同日 横須賀鎮守府

 

 本郷中佐は、執務室の窓の外に広がる横須賀鎮守府の光景を眺め続けていた。

 窓の外には、港に停泊する護衛艦や艦娘母艦、さらに哨戒活動や敵泊地攻撃のために出撃していく艦娘たちの姿も見える。

 この光景を、彼は今朝からずっと眺め続けていた。

「そろそろ、ですね」

 秘書艦のデスクに座り、書類を書いている大淀は時計の針を眺めながら呟いた。

 那智との通信回復のための決死の作戦が、今行われている。上手く事が進んでいれば、今日中に信号が受信できるのだ。

「そろそろ、だな」

 本郷中佐は素っ気無く答えた。

「……那智は恨んでるだろうか」

「……」

 不意にもれた言葉に、大淀は思わず黙ってしまった。

「どうでしょうか」

「元々、撤退に手間取ったせいで、このような事態に陥った。もっと早く撤退許可を出していたら、もっと早く撤退作業を完了させていたら。「もし」「たら」「れば」は戦争に不要だと思っていても、どうしても考えてしまう。私の責任だ、那智も――」

「それは、本人に聞きましょう。まずは通信が繋がる事を祈るだけです」

 大淀の言葉に、本郷中佐は言葉を飲み込んだ。

「そうだったな……らしくない事を言った」

「むしろ那智さんが無事に撤退していたら、またここで騒ぎを起こしていますし、始末書300枚の壁も突破しているはずです。少しぐらいは1人で頭を冷やすべきです」

「まぁ、それもそうだな」

 2人は微かに笑った。

 それでも、不安は完全に払拭できない。

 

 執務室のドアがノックされる。

「入れ」

 提督の声と共に、ドアを開けて艦娘が入ってきた。

「失礼します」

 艦隊の工作艦、明石だった。

「開発部の方をお連れしました」

 明石が案内すると、茶髪で、作業着を着た女性が執務室へと入ってきた。

「艦娘開発部第二装備開発課の三樹原です」

 三樹原はそう簡潔に自己紹介をすると、執務室へと入った。

 

「装備開発課……?」

「え、あ、はい。一応、今回の艦娘用通信機中継装置の開発者っスけど……」

 三樹原の言葉に、本郷中佐は数日前の会議の様子を思い出した。

「そうか、あの時の技術士か。すまない、失念していた」

「今日はこれをもって来たんですよ」

 そう言うと、三樹原は片手に下げた大型のジュラルミンケースを提督の机の上へ置いた。

「よいしょっと……あ、すいません勝手に置いて」

「何だ、それは」

 本郷中佐の言葉に、三樹原は答えた。

「中身は通信装置です。今日の任務が成功していれば、この装置で那智と通信が出来ます。置き場所とセットアップの作業ですが、ここでやっても大丈夫ですか?」

 三樹原の言葉に、本郷提督は即答した。

「ああ。すぐに取り掛かってくれ」




夏イベ終わりました。ウォースパイトもアクィラも伊26も水無月も来ました。
プリンツ来てません。訴訟。
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