南方海域ひとりぼっち   作:Colonel.大佐

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ログ 78日目

[ミッションログ 78日目]

 繋がった!!

 通信が繋がった!!やったぞ!!ついに繋がったんだ!!

 かれこれ2ヶ月ぶりに、海軍と連絡がついた。これで私は1人ではなくなった、遥か彼方の距離で離れているだけで、私の声は向こうに届き、向こうの声もこちらに届くようになった。今日はめでたい!酒でも飲もう!最高だ!

 

 しかし改良すべき点がある。

 現状、通話だけ可能な状態なので複雑なデータ受信は不可能。つまり会話しか繋がれる方法がないという事だ。

 幸いにも、通話先に艦娘開発部の技術者がついているらしく、艦娘用通信装置を介してデータの受信が可能なよう改造する方法を教えてくれるそうだ。必要なものは軍が採用しているラップトップと接続ケーブル、それから通信デバイスをまた分解するための工具一式。運がよければまだ司令棟に残っているはずだ。

 簡単だと伝えられているとはいえ、ソフトのプログラムをいじる必要がある。それについては通信で教えてくれるが、困った事に手順書はないため、すべて口頭での説明となる。恐らく1日では終わらないだろう。

 あーあ、夕張のやつが隣にいてくれたらなあ。

 

 

[ミッションログ 80日目]

 データ通信用の改造が終了した。

 三樹原という技術者はいい仕事をしてくれた、的確な説明と程よいアドバイスで、素人である私にも分かるように手配をしてくれたおかげで、司令棟から持ってきたラップトップでデータの送受信が可能になった。インターネットに繋がらないのが癪だが、これでメールや画像データを司令部へと送ったり、逆に受信が可能になる。

 しかし、この三樹原という技術者、どこかで聞いた声と名前だが、果たしてどこだったかな……デジャブや勘違いというのもあるかもしれないが。

 

 さて、通信が繋がった事で色々な恩恵を受けた。

 まず、開発部や技術部が全面的な技術サポートを申し出てくれた事だ。この孤島で1人ぼっちになっている私は、何もかも1人で事に対処しなければならないので、こうした技術支援によって私が指示通りに手を動かして色々と直したり作ったり出来るようになった。

 アポロ13号の事故で“メールボックス”の作り方をNASAの技術者がクルーへ教えたように、何か不測の事態があれば技術本部がヘルプに答えてくれる。近いうちに、機能停止している海水淡水化施設の修復方法について乗り出してくれるそうだ。ひとまず水問題には目処が付きそうだ。

 

 それから、気象衛星を利用して天候についての情報を知る事が可能になり、様々な情報を得る事が出来るようになった。本土で起こってるニュースや、現在の海軍内部の反攻作戦についてもある程度知る事が出来た。深海棲艦の活動情報もだ。孤島に閉じこもりきりで何も知らなかったので、これは大いに役立つだろう。

 

 そして一番は、仲間たちと連絡が繋がった事だ。

 とにかく一番嬉しいのは、皆が無事に本土までたどり着いた事だ。一番危険な最後の脱出作戦で脱落したのは私1人で、長門、陸奥、榛名、妙高姉さん、羽黒の5人と提督は無事に艦隊と合流し、その後、怪我もなく横須賀へと到着した。みんな元気で、あれから戦死者を出す事もなく職務を遂行している。私の無事を伝える事が出来た。

 

 だが、私は既に死んだ事になっていたようで、私の艤装登録番号は欠番にされ、私の戦死通知が両親の元へと届いたらしい。現在、海軍の事務員たちが必死になってそれを取り消しているようで、私の無事はようやく両親の元へ届いた。

 私は軍事作戦中なので、細かい会話こそ出来なかったが、両親に無事を伝える声を届ける事も出来た。ひとまず何も告げずに死ぬような事態は免れたわけだ。

 ちなみに、どうして無事の知らせを届けなかったのかと言うと、私の生存が公に出ると、仲間を置き去りにしたとかで士気が下がるとか海軍のイメージが悪くなるとか何とか、そんな理由があるとの事だ。知った事ではないし、多分、民衆も私が置き去りにされても「あっそ」の一言で済ますと思うぞ。

 

 次に悪いニュースも耳に入ってきた。

 深海棲艦の大攻勢以来、深海棲艦が太平洋の制海権を握りつつある。強力な敵が大量に出没し、無尽蔵に敵が現れて海域を奪取しては取り返されのいたちごっこが続いており、南方海域の攻略はいつになるか分からないという。つまり、私の救出作戦は今の所絶望的というわけだ。くたばりやがれ上層部。

 

 それから、軍は私がこの基地でタダ飯食らって生活している(この圧倒的なぼっちの辛さを考えた事がないのか、分からず屋の将校どもめ!)と思ったのか、正式な命令として「南方海域での敵情勢ならびに敵艦の調査任務」を言い渡した。定期的に監視の結果や、目撃する全ての深海棲艦にまつわる情報を送信しなければならない。まあ、給料が発生するから仕方ない。

 

 ただまあ、私が軍にとって利用価値があり、生かしておくに値すると考えているのならこの状況はマシだと見ていいだろう。

 本来なら、私はとっくに見捨てられてもいい艦娘である。問題児で、艤装なしで孤島に放置されているのなら助ける義理は無い筈だ。気にかけてもらえてるだけマシだろうな。

 

 また、私用通信に関しては軍もある程度の許容をしてくれたらしく、日に10分ほど仲間たちとの会話が可能になった他、メール機能によるやり取りも出来るようになった。検閲はするらしいが、そのうち縦読みで秘密の文章でも書いてやるつもりだ。

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