[ミッションログ 118日目]
朗報が届いた!
ついに私の救出作戦が決まったそうだ。横須賀にいる私の仲間が、助けに来てくれる。私はお出迎えに乗って、はるばるオーストラリアを経由して優雅な船旅をして日本へ帰国するのだ。うれしさで胸が張り裂けそうだ。なんと表現していいのかわからない!キャー潜水艦サマステキー!
よし、少し落ち着こう。
まずプランはこうだ。硫黄島基地から発進した潜水艦娘2隻……伊58とまるゆが、私を連れ戻すために深海棲艦の支配海域、それも最前線を突っ切る。もちろん、敵の目をかいくぐり、安全かつ最短であるルートを突破し、こちらの基地までやって来ると言うのだ。
まるゆが運ぶ、運貨筒を改造した要人移送用カプセル、つまり私を乗せる潜水ボート(棺桶と呼ぶのは止めておこう)に乗ったら、今度はひたすら南下してオーストラリア海軍の制圧海域へと滑り込み、空になった燃料と弾薬を補充、そこで改めて私はピカピカの新品艤装を身に着けて艦娘としてインド洋を経由し、南西諸島を超えて日本近海へ到着、あとは大音量でハンス・ジマーの感動する映画スコアを流してグッドエンドだ!
とはいえリスクが高い作戦だ。どれだけ中破しようがタフに突き進むまるゆ、そしてわが艦隊で最精鋭の伊58。この2人の神がかったナビゲートと長距離隠密航海がなければ、絶対に成功しない作戦だろう。特に大詰めたるオーストラリア方面への脱出作戦、ここでトチれば私は海の藻屑となってしまう。
また、道中で対潜哨戒部隊に見つかれば元も子もない作戦となる。しかし、現状実現可能な作戦で、成功率が高い作戦は今のところこれしか無いだろう。仲間いわく、もう一つの方法として全員に応急修理要員をありったけ載せて、爆撃・砲撃・雷撃を受けながら戦艦6隻で戦線を突破するという物も考えられたそうだが、それでも突破の可能性は極めて低いと結論付けられたそうだ。当然だ。もっとも潜水艦作戦も成功率は低めだが……
しかし実現すれば私はこんな辺鄙な場所から脱出できる。ようやく私は帰れるのだ。
[ミッションログ 120日目]
ジャガイモ農園が収穫の時期に入ったので、イモを収穫する事にした。
結論から言えばジャガイモ農園は大成功だった。イモは順調に育ち、そして順調に実をつけた。掘り起こして、イモがちゃんと地面から出てきたときの感動はひとしおだった。大量のジャガイモを掘り出してご満悦だったが、こいつを連作する可能性は低いだろう、だって私は救出されるから!!
とは言え味見はしたいので、何個か洗ってから、シンプルに茹でたジャガイモを食う事にした。
ホクホクの出来立ての茹でジャガイモに塩を振りかけて食べた。レーションとたまに採れる魚という生活に飽き飽きしていたので、取れたてのジャガイモの味は格別だった。
救出プランができたので、もう片方の農園は作業中止にした。また、救出成功時のお祝い用に、残り少ない酒もキープしておくことにした。
かれこれ4ヶ月ほどのサバイバル期間であったが、それでも4ヶ月という時間の長さは驚異的な数字だ。過去に、戦闘中で仲間からはぐれ、燃料なしで無人島に漂着、14日後に救助された駆逐艦がいたが、私はそれよりももっと長い期間、この無人の島に一人ぼっちで生活していたのだ。記録更新だ。おそらく史上もっとも孤独に暮らし、なおかつ敵の支配海域で生活した艦娘として記録されるだろう。
なんにせよ、この無人島で私は20歳の誕生日を迎えなくて済んだという事だ。
私の救出決定にあたり、司令棟施設、ならびに兵舎はそのまま維持するという方向で話が決定した。
今回の件で、兵舎から物資を拝借した事については艦娘全員から了承を得ていたが、兵舎を破壊するという方法と取らなくて済んだので、また私物を取りに戻ってくるという前向きな方向で話は進んだ。ただし、司令棟施設に残った機密書類などはすべて破棄するよう命令が下った。重要なものは撤退した日に本郷中佐が破棄したそうだが、忙しすぎて時間が回らなかった細かな書類に関しては私が責任を持って焼却処分する。
それから撤退……うむ、ニヤニヤが止まらないな。