南方海域ひとりぼっち   作:Colonel.大佐

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第三章 反乱と反撃
ログ 127日目


[ミッションログ 127日目]

 

 悪いニュースと最低の悪いニュースがある。

 まず一つ目。救出作戦が失敗に終わった事だ。

 

 詳細な報告がメールで私にも送信された。伊58とまるゆの救出部隊は順調にサイパン、グアムを越え、マリアナ諸島も越えて敵の前線を掻い潜った。

 だが、彼女たちを待ち受けていたのは駆逐ニ級、軽巡ツ級のエリート部隊による対潜哨戒部隊が1ダース分という執拗な追撃、さらに追い討ちをかけるように6隻の軽巡棲姫と駆逐棲姫による絶え間ない爆雷攻撃によりトラック諸島近海にて彼女たちは大打撃を受けた。何とか反撃し、駆逐棲姫を2隻撃破できたものの、私を運ぶ予定だった運貨筒は破壊され、彼女たちは艤装大破かつ重症、深海棲艦前線を攻撃中の友軍艦隊にギリギリで救出されるという大失敗に終わってしまった。2人が生きて帰れたというだけでも良しとしよう。

 

 次に最低の悪いニュース。私は見捨てられる事が決定した。

 恐れていた事態が現実になってしまったのだ。作戦指令部長の通達により、今後、南方海域における那智の救出作戦は打ち切りにされ、友軍が海域を取り戻すまで自力で生存しなくてはならない。軍は私の救出に対して、一切の援助を行わず、それと同時に今後ともいつも通り、私に上層部へただ情報だけを送るように要求した。

 見方を変えれば、私はこの島で自給自足で生活し、単に戦況が好転するまで待てばいいという事だ。それほど悲観的なニュースだと思えるだろうか?

 いや、確実に私は危機に晒され続けるだろう。

 ナンバー10(最低最悪)だ。

 

 撤退から4ヶ月目、仲間から聞かされる反抗作戦についてはどれもいい話を聞かない。

 そもそも、海軍の上層部――主に作戦指令部長立案の計画――では、南方海域を見捨てるという計画が持ち上がっている。そのまま手薄になっているミッドウェイ、ハワイ諸島を攻略し、それから敵の背後から攻撃を行う形で南方海域を奪還する手筈を取る、というそうだ。

 ただでさえ膠着していた戦線は放棄され、私はさらに莫大な時間、ここへ放置されるのだ。そして、深海棲艦を撃退し、前線を押し戻したとしても、私の住むこの島が深海棲艦の新たな拠点にされるという危険性すらある。

 冷静に考えてほしい、ミッドウェイはここ数年ずっと赤色の海域だ。それこそ赤を通り越して黒に見えるぐらいの深い赤色をした海域であり、過去に幾度と無く攻略作戦が立てられては失敗していた。深海棲艦の本拠地と化しているハワイ諸島に関しては、開戦後に米軍がICBMで核攻撃をしてもなお深海棲艦の活動が止まらなかった本拠地だ。あの米軍ですら、艦娘の開発により反撃を開始し、物量と火力を大量投入して奪還どころか敵主力撃破すら適っていない難航不落の要塞である。

 どんな采配をしてるんだ。あの作戦指令部長(無能デブ)め。

 

 まあいい。もう決まってしまった事は仕方ない。今日からお祭りモードを切り替えて、自給自足体制確立のために農園を再スタートさせよう。レーションも倹約し、出来る限り食い延ばす。

 唯一の薄い望みは、ポートモレスビー、ガタルカナルを含む南方海域を米軍の豪州派遣艦隊とオーストラリア海軍艦娘部隊、EU連合軍の太平洋派遣艦隊が奪還してくれる事を祈るだけだ。両軍も防戦一方のため、状況は芳しくないが、それでも日本海軍に比べて優秀な指揮官がついているし、艦娘の性能もいい方だ。可能性は0%ではない。

 

 それにしても、頼みの綱が自軍ではなくかつて劣勢だった他国の軍隊というのも情けない話だ。日本はそのうち海軍戦力ナンバー1の座から転げ落ちるだろうな……昔2位じゃダメなんですかと言ってる政治家がいたが……ホントに2位でいいのか海軍よ。仕事してくれたら、私も喜ぶんだがなあ。

 

 とりあえず有休が長引いたと思う事にしよう。少なくとも給料は私の口座に振り込まれてるだろうし、今のところ減給もされてないらしいし、こうなったらとことん不労賃金を稼いでやろう。

 あと帰還が長引いたので酒も密造しよう。明日の楽しみをどんどん増やすぞう。

 

 

[ミッションログ 129日目]

 

 驚くべき事が起こった。

 今日は米軍からメールを受け取った。横須賀鎮守府からではなく、沖縄の米軍基地からである。何をどうやったかは知らないが、米軍側から私にコンタクトを取る事が可能になったと言う。

 たどたどしい日本語の字面で送信してきたのは、何とアイオワだった。

 まず最初に、私の置かれた境遇に関しての同情と励まし、それから救出作戦失敗は残念だったという事、そして私を見捨てる事を決めた日本海軍に対する嫌悪と侮蔑が書かれていた。

 いいぞ、もっとやれ。

 

 それから、アイオワは長らく私と連絡を取れなかった事についての侘びも添えていた。

 私は別に気にしていないと返しているが、アイオワ本人はかなり気にしているのだろう。無理も無い。米海軍の合同演習や敵泊地強襲作戦の一件もあったのに、あまり連絡を取れなかった私にも非はある。すまんなアイオワ。

 でもあのベジタリアンメニューのMREに関しては許さん。

 

 私が長門からアニソン攻撃を受けていると知って気の毒に思ったのか、メールに添付する形で気の利いた音楽をアイオワが送ってきてくれるようにしてくれた。

 今日の一曲はCreedence Clearwater Revival から「Fortunate Son」。

 何でこの曲?と聞くと私の趣味と答えられた。

 

 それから、メールの末尾には「がんばって、私たちも応援するから」と言葉が添えられていた。サンキューアイオワ、これからもよろしく頼むぞ。

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