[ミッションログ 193日目]
那智農園と塩作りはいい感じになっている。
ジャガイモの連作は無事に進んでおり、種芋は無事に実を結んでいる。それから、他の野菜も順調に育っている。トウモロコシに、枝豆やトマトなどだ。自家製の肥料も良い感じに仕上がっているし、毎日、農場で汗水たらして雑草をむしったり土いじりしたり虫対策をしたり、水やりをして生活しているとこれがまた楽しいのだ。退役したら家庭菜園をやってみるのも悪くはないな。
完成した畑を一航戦にメール経由で見せてやるのが最近の楽しみだ。今日はこんなものが実を結びました、今日はとれたて野菜でこんなもの作りました、とか。
そして、次の画像に私のドヤ顔を自撮りして送る。私も最近は「こいつの鼻っつら折ったら気分いいだろうな」と思われるくらいのドヤ顔練習をこの時のためだけにしている状態だ。
一航戦は「一航戦の誇り…こんなところで失うわけには…」「頭にきました」と淡白な反応だが、羽黒からのメールによれば対抗心むき出しで横須賀鎮守府の宿舎の裏庭に家庭菜園を作り始めているとの事である。
私も負けてはいられないな。
次に塩作りだが、海水を天日干しして、さらに海水を足してと、昔ながらの製法で塩を作ってみたが、時間がたっぷりあるおかげで好調な進み具合だ。
作った塩は調理に使っている。野菜関係は素材のうまみと塩のシンプルな味付けで質素に堪能しているが、レーション続きの食生活の中でずいぶんと助けられている。
レーションの残りは1日分が132個。グループレーションは手付かずだ。
いよいよこのレーションが無くなったら、この那智農園が最後の希望となる。
[ミッションログ 198日目]
誕生日も近いのでメール経由で艦隊の仲間に、兵舎A棟の私物で使っていいものがあれば私に恵んで下さいという乞食めいた募集をかけた所、何人かの艦娘が「使っていいぞー」とOKを出してくれた。
このサバイバル初期に兵舎の私物を漁っていたものの、引っ張り出してきた食品類はすべて食べてしまったし、酒類はホントにちびちびと飲んでいるが残りはウイスキー1本のみ。
さらに、娯楽となる本やDVDはすべて読みつくしたり見尽くしてしまったので、全体的に暇なのだ。確かにやる事はあるし、まがいなりにも軍人としての仕事もあるので暇つぶしとは何事だ!という話になってしまいがちだが、暇つぶしは古今東西、ありとあらゆる戦場で見かける行為だ。大目に見てほしいしガス抜きだって必要だろう?
まあ、私の場合は「あんた暇つぶしとイタズラの合間に戦争やってんだろう」と言われる事が殆どなのだが。
黒潮がとっておきのDVDの他に、超秘蔵DVDも持っていたので見たければどうぞ、とロッカーの暗証番号と一緒に持ち出しを許可してくれた。提督にバレてないのが奇跡と言わんばかりのマジ物の秘蔵DVDであるが、これはこれで暇潰しにはなるので堪能させてもらうとしよう。
陽炎型のイメージが変わるなあ……最近の駆逐艦の趣味がわからない。
一航戦はこれ以上隠してる種はないと前置きしつつも、ロッカーに貯蔵した結構な量のフルーツ缶詰や惣菜缶詰を差し出してくれる事に合意してくれた。種の一件もあるので、内地に帰還できたら給料で好きなだけ食い放題に連れて行ってやると伝えた所、私の銅像を建ててもよいと言われてしまった。
しかし一航戦を満足させれる食費を捻出する給料なんて無いんだがな。アイオワに丸投げしよう、あいつ給料いいらしいし。
さて、次に期待していた隼鷹は「もうあらかた飲んでたから酒は殆ど残ってないぞ」と無慈悲な答えを言ってきた。絶望した。
ダメ元でポーラの部屋に隠し酒は無いか本人に尋ねようとしたが、羽黒曰く撤退後に飲みすぎで肝臓をやられてしまい現在、一線から退いて軍病院で療養中との事で回答は得られなかった。
酒は無理かぁ~!!と失望しかけていた所、睦月型一同から「那智姉さんにプレゼント」と酒の隠し場所を教えてもらった。睦月型は天使か。
物々交換用として“実弾”こと酒を用意していたそうで、各々の睦月型が各数本ほど酒を、壁の穴やロッカーの後ろなどに隠し持っていた。最高だ……
とは言っても、睦月型は酒を飲まない子が殆どなので銘柄もバラバラで、どれも市販品でも安い部類に入る酒ばかりである。唯一、皐月が上等なスコッチ・ウイスキーを隠し持っていたので、皐月には生きて帰れたら特段と美味い飯でもおごってやろう。睦月型全員に借りが出来たな。
そして、さらに朗報。ドライイーストが手に入った。
こんなもの見当たらないと私は悲観していた。こいつを持っていたのは戦艦金剛。パン食派でスコーンを焼いたりする女子力MAXの金剛型ネームシップは、間宮の調理設備を間借りする形でこれを使っていたそうである。未開封で常温保存なのでイースト菌は死んでいないだろう。「どうせ那智の事だから例のアレに使うんでしょ?私からのプレゼントデース」と粋な一言が。
ちなみに小麦粉はないし、私はパンを焼くつもりは無い。
酵母を使えば何が出来るか?それをよく考えれば私が今後何をしていくかわかって貰えるだろう。
それから、A棟へ入居していた艦娘全員からある“頼みごと”を依頼された。
私物の中で、撤退時に持っていき忘れた「大事なもの」を集めて保管してほしいとの頼みごとだった。当然、断る理由もないだろう。
と言う訳で、今日一日を費やして色々な品物を拾ってきた。
ビニール袋に入れて、マジックペンで袋に各々の名前を書き、装備用コンテナに詰め込むという作業だが、単純ながらこれが中々重労働だった。
家族の写真だとか、思い出の詰まった装飾具とか、家族から届いたり撤退前に内地の大切な人へ送るつもりだった手紙とか、書きかけの日記帳とか、この基地へ配属される前に別れた戦友の形見だとか、北上の生写真や“お守り”とか。個人のプライバシーにかかわるものはなるべく目を向けないように、そして忘れるように片っ端から詰め込んだ。
約1名は隠しきれてないのでこの場を借りて謝罪する。すまない大井、お前の北上への愛は重すぎる。