南方海域ひとりぼっち   作:Colonel.大佐

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ログ 203日目

[ミッションログ 203日目]

 横須賀鎮守府と交信が回復し、ようやく話が見えてきた。

 

 元作戦指令部長の反乱により、海軍は現在、多くの作戦行動を中止している。もちろん、進められていたハワイ・ミッドウェイ攻略作戦は中止となり、中部海域に展開していた部隊は即座に撤退した。もちろん、近海の哨戒や船団護衛などの基本的な任務は行っているが、全体的に動きは止まってしまっている。

 それから、国防省と公安による裏切り者探しが本格化している。元作戦指令部長は逮捕されているため、奴の信奉者の多くは芋づる方式で捕まえられているとの事だ。

 

 なぜ元作戦指令部長が反乱を起こしたのか、何があったかはまだ捜査当局の報告書待ちの状態であるが、いちおう情報将校である大淀がその件について、わかる範囲の大雑把な流れ教えてくれた。妙高姉さんと望月を含む一部艦娘は私の件をマスコミへリークさせ、海軍に非難を集中させて救出作戦にGOサインを出すのが当初の目的だったそうだが、国防省の上層部が前々から海軍内部の不穏な動きを察知していて、私の件を利用する形で作戦指令部長を罷免するというカードを切ったそうだ。案の定、奴は拒否、そしていきなり反乱に至った。

 

 大淀いわく、罷免から短時間の間に反乱者たちが計画的に動いていた事から、奴の反乱は前々から計画されており、今回の件がトリガーとなって、計画が完成される前にフライングで発動した……という可能性があるそうだ。何にせよ騒ぎの元凶は今頃、怖~い公安のお兄さんたちに折檻されて朝から晩まで尋問パーティーの真っ最中だと思うので詳しい結果待ちだ。マスコミたちもこの件の報道で文化祭前の準備をする女子高生ばりに楽しんでる事だろう。

 

 反乱者の処遇については明らかにされていない。しかし、元作戦指令部長は極刑を免れないことは明白であるし、彼の側近たちも同じだろう。もちろん、反乱に加担した艦娘たちも厳しい待遇が待っているはずだ。

 相当の階級を持っているであろう、大和型や翔鶴型などの、精鋭される艦娘の中でさらにエリートとされる呉鎮守府勤務組も反乱側として参加していたという話も聞いている。彼女達については良くて降格処分、最悪の場合は軍事裁判の上で実刑判決となるだろう。深海棲艦に対して有効打となる精鋭だから、さすがに重たい刑罰は無いと思う。それでも、退役後の恩給無しや作戦終了後に不名誉除隊なんていう結末もありえる。

 反乱に加担した艦娘にはかわいそうな話であるが、この程度で心が折れていては人生やっていけないだろう。今までの行いで少佐への昇進と呉の海軍総司令部勤務という世間一般では栄光であるとされる道を3回くらいフイにした私がそう言ってるのだから間違いない。もし彼女らと会う機会があったらこう諭すのもいいだろう。――“戦場の辛さと社会生活の辛さもどっちもどっちだからあんま気にすんな”と。

 また、本郷中佐いわく、最悪の場合は反乱艦娘を集めて最前線に送り込み、文字通り「消失」するまで戦わせるというソビエトも真っ青の“使い方”を一部の将校が検討しているとの事も伝えてきた。できればその案は通らないで欲しい。流石にかわいそうにも程がある。

 

 人事刷新は現在進行中で、海軍の参謀や指揮官たちも大忙しのようだ。こうしている合間にも深海棲艦はその勢力を拡大しているし、仲間割れで時間を潰して戦争に負けては元も子もないからだろう。早ければ今週中にも海軍総司令部が再編され、新たな作戦が計画される予定だ。

 なお、作戦指令部長の後任である鈴木中将は、横須賀鎮守府の元総司令官であり、あの緒戦を生き抜いた「不死身の鈴木」とまで渾名された猛将で、そして知略高い男である。きっと上手い作戦を立て、戦争を終わらせてくれるだろう。

 

 何にせよ、私をここから連れ出してくれるのであれば誰でもいいんだがなあ……

 

[ミッションログ 207日目]

 いいニュースが2つある。

 

 まず1つめ。海軍の人事が刷新され、新しい作戦が立案されるにいたった。待ち望んだ南方海域攻略作戦だ。南方海域は現在、深海棲艦の強力な支配化にあるが、今度からは作戦方針を改めてアメリカ、EU連合などの友軍勢力との共同作戦でこれに対処するようだ。つまりはタスクフォースの結成である。頼もしい限りだ。

 まず、手始めに日米両軍によるサイパン・パラオ・トラックを含む海域の奪還作戦が行われる。その間に、EU連合艦隊とアメリカの豪州派遣艦隊がポートモレスビーの奪還へと乗り出す。

 これらの作戦は同時に行われるそうだ。つまり、二正面作戦となるわけだがそれぞれの戦力は十分であるし、深海棲艦の物量を効率的に削り取り、海域を奪還する目論見だ。

 

 南方海域の奪還に関しては、別に私を救出するわけではなく、来たるべき中部海域の奪還作戦に向けての橋頭堡……つまり深海棲艦の駐留海域を制圧し中部海域へ押し込める目的があるそうだ。

 南方海域が完全に制圧されたら、今度は世界の海軍が一致団結して中部海域という最後の深海棲艦支配地域を攻略する、という手はずだ。運が良ければ1年以内に終戦を向かえ、クリスマス前に将兵は家に帰れる、とアメリカ統合参謀本部議長は公言したらしい。

 どこかで聞いた死亡フラグだな、それ。アンソニー・ホプキンスが捕虜になったり最後に橋が遠かったって反省会するやつだろう。とはいえ、作戦の発動にはまだかなりの時間がかかる。今はまだ準備期間中だ。続報を楽しみに待つとしよう。

 

 2つめのいいニュースは艤装が何とか浮くところまで直った事だ。

 三樹原のサポートもあって、艤装修理によって他の艦娘の艤装パーツを切り貼りし溶接し、何とか浮揚し、航行できるまで修復できた。しかし燃料のアテも少ない上に、速度も半減し、いまや高速巡洋艦とか名ばかりの鈍足となってしまった。おそらく長門と同じかそれ以下だ。

 しかも、武装がまだ修復できていない。もしこれを使う必要がある場合、私は丸腰で海に出るしかないわけだ。そのへんのイルカでも捕まえて背びれに乗って泳ぐほうがまだ効率的だな。

 

 とりあえず私は酵母さんの悪戯を楽しみに待ちながら作戦成功をここで祈るとしよう。楽しい反撃の始まりだ。絶対に成功してくれ。

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