南方海域ひとりぼっち   作:Colonel.大佐

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ログ 245日目

[ミッションログ 245日目]

 

 深海棲艦の活動が活発化している。とは言っても、ワ級がひたすらマリアナ方面へせわしく移動しているだけの話なんだが。毎回、8隻か12隻編成のワ級がせっせと周辺海域を航行し、そそくさと補給に向かっている。

 

 驚くべき話でもないかもしれないが、深海棲艦にも補給という概念がある。開戦当初は深海棲艦に補給は必要なのか?そもそも奴らはどういったソースで動いているのかという疑問が軍内部でもあったそうだが、かろうじて入手できたワ級の死骸を解剖した際に中から酔い潰れた隼鷹が吐き出したゲ○よりも酷い何か(これでもまだマシな表現)がドロドロと漏れ出してきて、それを解析班が頑張って分析した所、火薬や燃料の混合物、ならびに深海棲艦の修復用の資材であると結論付けた。もちろん艦娘の補給物資には使えない。使えたとしても使いたくない。

 しかし、意外にもこれを知ってガッカリしたのは現場の艦娘や前線指揮官である。「もしや輸送ワ級を拿捕すれば燃料弾薬がごっそり手に入るのでは!?」と淡い希望を抱いていた者はこの報告を聞くや否や「ハイ、解散!終了!」と言わんばかりに落胆した。当時はまだ補給もズタズタで、弾薬不足と燃料不足に苦しめられていた艦隊が多かっただけに、気持ちはわかる。

 

 しかし、輸送ワ級を叩けば相対的に深海棲艦の動きも鈍る、という至極一般的な結論と研究結果から海軍は輸送艦の撃破・撃沈に関して褒賞を与えると公言、その結果、どの鎮守府も大規模作戦以外は通商破壊がもっぱらの任務となっていた。大体の場合は潜水艦の仕事であり、毎週毎週、休みという概念すら存在しない(という生活に陥った)潜水艦たちが死んだ顔で出撃を繰り返していた。

 今ここに艦隊があれば輸送艦は叩き放題でボーナスに沸いていた所だろう。よりどりみどり、おまけに護衛もいない。

 

 南方海域奪還作戦の第一段階が進行中である現在、深海棲艦も物資輸送に必死なのだ。案外、こちらも深海も似たようなノリで戦争をしているのだろう。案外話し合えば分かり合えたりするのだろうか。

 それにしても輸送艦の艦娘がいたら良かったのにな……リバティシップとか作れないのか、今度三樹原に聞いてみよう。

 

[ミッションログ 248日目]

 

 艤装の最終調整に入っている。

 前回の修復はかなりいい所まで行った。まず艤装の機関が回復し、浮き、さらに航行ができるようになったからだ。脚は手に入れたが、また武装が生きていなかった。

 そこで、今度は本土の技術屋、三樹原の手も借りて色々と試行錯誤で主砲の修理に取り掛かっていた。

 

 現在の妙高型艤装はキメラと呼んでも差し支えのない状態になっている。

 機関部は陽炎型と伊勢型のパーツを流用、通信装置は飛鷹型と妙高型のニコイチ、各接続ケーブルはそれぞれの艤装の内装から引っ剥がした物をごちゃまぜに繋げている。武装に関しては半分ジャンクになった12.7cm連装砲、傷ひとつ無いのに搭載できない38.3cm連装砲、そして新品ピカピカでまっったく使われていない15.2cm単装砲だけしか手元にない。

 あえて言おう、カスであると。

 結局使えるのは15.2cm単装砲だ。残りはそもそも妙高型で使えもしない。

 

 泣ける話だ。我々艦娘の中では常々「役に立たない武装は何だ?」という話題が会話に上がっていた、開発部の連中が聞いたら泣いて怒り狂うような現場の直球ストレートな評価が各方面で上がっているが、15.2cm単装砲に関しては誰もが満場一致で役立たずと評価している。

 射程距離をごく僅かに伸ばすという利点以外は特に使いようもないし、駆逐艦は装備できないし、後継装備にもっと優秀な武装がそろっている。わざわざこれを搭載している艦娘はどこの鎮守府を見かけてもいなかったか、唯一、艤装を生産したりする際は「これを装備するように」と最初から艤装につけられているパターンが多い。

 つまり「カードゲームのスターターセットの中に入ってる一番いらないカード」に該当する装備がコイツだ。

 

 前に三樹原へ「こんなカス武器じゃ戦えないって現場はみんな言ってるからマシな武器作ってよ」と伝えた所「国民の血税で開発した武装に手前は何ふざけた事言ってんだ謝れ」と言われたが、たぶんどの鎮守府の艦娘もそう思ってるぞ。それとも開発部には単装砲マニアやフェチが多いのか……変態か。北上っちか。

 

 ともかく話がズレたが、今の私には15.2cm単装砲しかないのだ。

 艤装に乗せて空撃ちを試みたが、まずトリガー周りがうんともすんとも言わないし、照準もつけられない、と言うか「とりあえずハマっただけ」と評すのが正しいか。

 つまりは武装は死んでいる。

 

 武装のコマンドを受け流す為の配線が艤装の中で死んでるのが原因なのだ。三樹原に言われるがままに頑張って艤装の外装をはずすと、まあ出てくるわ、ゲーム機のコントローラー配線が絡まったのを数倍ひどくしたようなのがデロンとはみ出した。

 もはや言うまでもない。この修理には計5日はかかった。ひたすら配線を引っこ抜いては接続し、ダメになったものは交換しての繰り返しだ。

 高速修復材と入渠設備がいかに大切かを思い知る今日この頃だ。

 

 苦労の甲斐あって、15.2cm単装砲が何とか動くようになった。

 トリガーも何とか引けるし、装填装置も思いのほか上手く言った。後は溜め込んだ小銃用弾丸を改造し、妖精さんのお仕事に頼んで“砲弾”に変えてもらうのみだ。

 

 まあ、こんな艤装で突破しろと言われても自殺行為だが、とりあえず艤装は治ったわけだ。

 お祝いに酵母の妖精さんがいたずらした飲み物でも飲もう!

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