[ミッションログ 7日目]
私は夕張と仲が良かった。
夕張は軽巡の艦娘だが、どちらかと言えば工廠での装備開発、それも現地での開発という任務が多くて、提督と明石と日夜装備開発について意見交換をしていた。明石と提督は真面目一辺倒だったが、夕張はこの私とつるむような女なので、時折、私と一緒に真面目でない装備開発もよくやった。深海棲艦をだまし打つためのサメ型甲標的とか、96式艦戦ニトロブースト仕様とか、高速建造材を弾薬として使う20.3センチ“バーニングラブ”対深海棲艦火炎放射砲とか。
もちろん、その都度私と夕張は提督から説教を食らい、明石から「その装備はここがダメだ」と理論的なダメ出しを食らうのがセットだった。
夕張とつるんでいて良かったと思う事は工作機械の使い方を学べた事である。溶接の方法や、工具の使い方や機械の直し型(と破壊の仕方)、さらに電子工作に関する事を教わった。今回の避難生活においてこれが一番役に立つと改めて実感した。持つべきは技能だった。今回それがソーラーパネルの設置という形で役立つ。
まず、司令棟の屋上にあったソーラーパネルを何個か取り外した。合わせて配線やチャージコントローラーを含む運用機械、台座にバッテリーも同じように取り外した。
全部で8枚、計畳4枚ほどの大きさがあるソーラーパネルをいかにして下ろすかは難儀した。落としたらコトなので、慎重にロープで括り、何とか一階まで下ろした。
あとは軽トラに乗せて南の監視所までドライブした。
設置場所はどこにするか悩んだが、監視所の屋上へ設置する事にした。屋上まで梯子で登ってから、これまたロープで慎重に、そして丁寧にパネルを引き上げて展開して終了。それから配線を下へと降ろし、機械や配線を監視所の外へと設置した。
ためしに確認してみた所、バッテリーは充電された。
第一関門の電力はクリアだ。
次に擬装の問題を片付ける。
倉庫に擬装網が無いか入念に調べた所、擬装網があったのでそれを使う事にした。
監視所は海から離れているが、コンクリート製なので浜辺から見ると目立つ。そこで、海側に向けて擬装網をかけて、風で飛ばされないように杭で固定した。屋上のソーラーパネルも同じように網で隠すが、こちらは天候を見計らって充電のために取り外す事にしよう。さすがに深海棲艦も偵察衛星で24時間監視してないだろうし、偵察機に警戒するに越した事はない。
監視所の出入り口がある裏庭には軽トラを停めているが、こちらは木と木の間に隠す方向で処理した。
これでひとまず外観と内部はどうにかなった。
試しに監視所の自室に入り、電気のスイッチが付いて扇風機が元気に送風を始めた瞬間、私はガッツポーズを決めこんだ。
でもトイレやシャワーが無い。本土なら家賃最小でギリギリ人が住める家だな。
そうそう、監視所の中にロッカーがあると言ったな。
鍵がかかってたので今日、ピッキングして開けて見たが面白い物が出てきた。なんと防弾ヘルメットと、突撃銃が出てきた!型落ちの64式小銃だったが、実包もたっぷり240発ほどある。9mm拳銃よりも心強い武器が増えたし、駆逐イ級くらいなら何とか戦えそうな気がしてきた。
ランボーごっこも捗るな!
[ミッションログ 8日目]
思い切って髪を切る事にした。
元々この長髪は、妙高型重巡那智――つまりこの私のパーソナルマークのようなものであったし、お洒落だし、好きではあったが、ここ1週間のサバイバル環境の構築でこの長い髪が非常にデッドウェイトであると痛感した。とにかく引っ掛ける、はさむ、踏むの3セットで、よくこんな髪型で今までやって来たものだと再確認させられた。
という訳で、鋏を使ってバッサリと切った。誰も見てないならいっそGIジェーンみたく丸坊主でもいいかもしれないと思ったが、早いうちに仲間が助けに来たら笑われるだろうから、羽黒と同じ長さまで切る事にした。自分で切ってから鏡を見ると結構歪だったが、まあこんなものだろう。
さよなら私の髪。また長いサイドテールにする日まで。山篭りする人間が片眉を剃るみたいでカッコいいと思えばこれぐらいどうって事ない。
そして、艦娘用の制服を着るのはやめる事にした。
妙高型重巡の制服もいいものだが、やはり海と陸では勝手が違う。それにもう艤装は壊れて使えないから着ている意味も無いだろう。今更気がついた。
艦娘のアイデンティティはもはや存在しないが、ここは艦娘になる前の頃を思い出そう。とりあえず、私のサイズに会う野戦服を基地のロッカーから見つけたので着てみた。
中々いい感じだ、ここに突撃銃があるし私も立派な歩兵だな。
それにしても、みんなはどうしているだろうか。無事に逃げ延びて、本土に辿り着けていればいいが……