[ミッションログ 11日目]
高速建造材を生活に必要なガスとして使用する実験をスタートさせた。
銃後の軍事雑誌やSNSの軍事オタクたちは、この高速建造材の大きさを人間ぐらいの長さがあるガスボンベだと思っているが、実際は小さく1.5リットルのペットボトルと同等の大きさをしている。
金属製で、見ようによっては火炎放射器と誤解するような形をしているが、中身は妖精さん謹製のガスが詰まっていて、これで炙って建造時間を短縮するのだ。
火力は絶大で火炎放射器としても使えると思うし、実際に私は夕張と共謀して20.3センチ火炎放射砲を作った事もあったが明石から戦闘に使えないと却下された事がある。アレ、近接戦が多くなる水雷戦隊用として絶対に使えるぞ。これだから後方勤務の艦娘は……
ともかく、今日は倉庫にごまんとある大量の高速建造材を持ってきて、試しに燃焼時間を図ってみることにした。
バーナーの弁を調整し、どれくらいの火力をどれほど維持できるか実験してみたが、結果は良好だった。減りから見ても生活用に使う分には申し分ない、1個あたり倹約すれば週単位で使えるだろう。
さっそく、海水をくみ上げてきて住処のドラム缶風呂に入れ、バーナーをONにしてみた。
これも結果は大成功だった!
海水とは言え、風呂は風呂。今日一日の働きを考えれば私はこの風呂は勝利の風呂だ。湯船に浸かった瞬間に思わず「あ゛あ゛~」と声が出てしまった。
バーナーの有効性を確認できたので、今後はこれを調理や風呂、シャワー、海水の蒸留などに役立てていこう。
今日のバーナーを使う実験で、破壊されていた弾薬庫を跡形も無くぶっ壊した事は忘れよう。
[ミッションログ 12日目]
明日からじっくりと兵舎A棟の部屋を物色する事に決めた。
兵舎A棟は主に主力艦隊と遠征艦隊が使用している、我が基地では58名の入居者がいた。
駆逐艦は相部屋か3人部屋だが、重巡から上は1人部屋になる。ちなみに今はもう跡形に吹き飛んで存在しないB棟は艦娘と基地要員の共用で、壁で明確に仕切られ艦娘と基地要員は部屋を行き来できないようになっていたとはいえ男女共用だった。あっちは士官用のカウンターバーがあったのだが……実に惜しい。
A棟のセキュリティは頑丈だったが、電力が喪失した今となっては咎める人間がいないので侵入は非常に簡単だ。
さて、物色と言ったがこれから私は同僚の私物をあさり、それを利用する。
正直に言うのならこれは犯罪行為である。しかし状況が状況なので利用するしか私が生き延びる選択肢はない。緊急避難と割り切るしかないだろう。艦娘は本業の軍人に比べて規律はゆるく、制限も甘いため色々な私物を溜め込めたり、自由の利いた生活が出来る。今回はそれを利用するのだ。
見通しとしては、欲しい物は「娯楽にかかわる物」「生存に必要なもの」「食料品」の3つだ。それ以外は極力手を付けないようにしよう。
それから、今日は深海棲艦の艦載機を目撃した。
編隊を組んだ状態で、この島の上空を通過していっただけだったが、偵察だとは思えないので攻撃なり爆撃訓練や哨戒飛行だろう。ソーラーパネルも擬装しているし、おそらく私の存在を察知されたという事は無いはずだ。
だが、改めて自分が敵地の支配地域に取り残されているんだという実感は再確認した。
気を引き締めてかかろう。