空は快晴。
強い日差しは季節の感覚を麻痺させる。
海風は頬に心地よく、ウミネコの鳴き声が寂しさを緩和させる。
文句の付けどころのない絶好のロケーション。
時に良からぬ輩が良からぬ企みを考えるのに利用されている神沢の廃港は、しかし。
――――この上なく対照的な二人(+一人)によって、ガチガチな険悪空間になっているのであった……!!
「って、さらに増えてやがるぅ……!?」
愁厳の背後。
桃色のカーデガンをヒラリと翻す、あの銀髪の少女は間違いなく新たな暇人……!!
「ふっ、タイ十六匹ゲッチュ。
よい漁港ですね、面白い様に魚が捕れます。ところで後ろの人、今日それで何ゲッチュ目ですか?」
「……喧しいぞ、答える必要はない。釣りとは静粛に行うものだと教わらなかったかね?」
「ほう、まだサバが八匹だけですか。
そんな時代遅れのフィッシングスタイルではそんなところでしょうね、おっと十七匹目ゲェェッチュゥゥ!!」
「すごい! すごいよお姉ちゃん!!」
※ゲッチュとは当たりの意味です。ゲット、キャッチ、取ったぜオラァァァァ!!等とお考えください。
「だから喧しいと言っているだろう……! 釣りをする場合はマナーを気にしたまえ! 魚が逃げてしまう!」
「ふっ、自らの腕の無さを他人の所為にするとは、落ちたものですね会長。
釣れないのならば知恵を使えば良い話です。例えば人妖能力を使うとか。
まあ、会長の怪力など、獲物が来た場合でしか使う機会など無いでしょうけどね、おっとまた来ました十八匹目ゲェェッチュゥゥゥ!!」
「やったぁ! また釣れたよお姉ちゃん!」
ヒャッハー、と雄叫びを挙げるロシア人。その隣で銀髪の少女に瓜二つのワンピース姿の少女が歓喜の言葉を掛ける。
……おかしいなあ。
妹に褒められたいが為に頑張る少女を見るのって、こんなに苦々しいものだったっけ……。
「…………つーか、なんだありゃ」
……ホント、同じ生徒会のメンバーでありながら目を背けたい。
着ている服こそ地味目だが、何やらサングラスを掛けて男立ちをするその姿は少女の外見も相まって何だかちょっと微笑ましい。
背中から伸びる彼女の人妖能力そのものであるロープ状の触手は、ロシアの研究所で移植された感覚も強度も力も何でも御座れの万能品。
汎用性が非常に高く、彼女の行動を支える相棒とさえ言える。
しかも身内からの応援までときたか……!
「……いいな、あれ。色々と応用性が効くんだよなぁ……」
彼女の持つロープ状の触手の力は、サッカーゴールすらも軽々と持ち上げられる程の物なのだ。愁厳の怪力とは訳が違う。
さらに水中に浸しておけば、自動的に魚を感知して即座に引き揚げてしまうという、もう釣りに来ているのか能力の性能を確認しに来ているのか判断の付かない反則ぶり。
その他に各オプションも先に述べた通り、チートとさえ呼べるほど。
これで本人はしれっと「まあ能力は選べませんからね」とサラリと言ってのけるその狸娘っぷり。
ちなみに言うまでもなく、その言葉を受けた同輩の男は「宴会の時に俺に言った台詞は何だったんだーっ!」と叫びながら逃げていった。
「ふぅっ、このままでは半日と経たずに勝負が付きますね! 軽い準備運動のつもりで始めたのですが様子を見るまでもありません。
ねえ会長、別にこの港の魚を捕りつくしてしまっても構わないのでしょう?」
「出来るものならやってみるがいい。その時は遠慮なく御頭様に言いつけてやろう。ここの漁港で泳ぐ魚は御頭様も大層気に入っていたからな」
「よく言いましたね会長。ふふ、まさかこんな形で貴方と対決する日が来ようとは……!
どちらが生徒会最強か、ここでハッキリさせてあげましょう……!!」
大張り切りのトーニャに、俺の休息を邪魔してくれるな、といった様子の愁厳。
……ほら、言わんことじゃない。
ヘンな事を口にするから、ヘンなのが寄ってくるんだ。
二人の邪魔をしないよう、こっそりと港から立ち去る。
どうかあの少女が、あの小さい少年の皮を被った神様に物理的に雷を落とされる、なんて事がありませんように。
ご感想などを待っております。
さあ、次でいよいよラストだ。