ソードアート・オンライン外伝 ―One man's side― 作:北川みゅー
2022年11月8日、午後0時45分。グリフォーと2人で黒鉄宮を訪れていた。まずは生命の碑で<Naoto>を探してみたが、どうやらまだ生存している様だった。一応サヤナにもナオト生存確認のメッセージを送っておく。
MMOトゥデイの管理人が立ち上げるというギルドの集会に来たのは100人余りを数える程であった。だがおそらく後ろの方にいるのはボランティアとしての運営候補ではなく、このギルドに期待する加入希望者や、もしかしたら様子見だけの人もいたに違いないだろう。
『思ったよりは…』
「少ないですね。」
『そうだな。』
おそらく、このギルドに参加したいという人は少なく見積もっても1000人は下らないだろう。なぜなら所属さえしていれば戦利品の分配があり、食べる物や宿屋代くらいは何とかなると考えているからだ。実際にそれが実現できるかは定かではないが、そういう触れ込みになっていると隣にいる清純っぽい黒髪女子高生――剣を持たなければ、な――から聞いた。人数が多くなればなるほど食事の確保はもちろん、分配自体も大変な作業になるだろう。この100名の内、何人が本当に運営候補として参加しているのかわからないが、“理想と現実”の差に若干開きがあると感じたのもまた事実だった。
等と色々考えながら、ほんの少し待っていたら、奥からこの件の発起人であろう人物が数人の仲間と共に現れ、急ごしらえの檀上に立った。
「みなさん、お集まり頂きましてありがとうございます!
私はシンカーという名で、これから共有・互助ギルドを立ち上げようとする者です。
みなさんには、MMORPG情報サイト<MMOトゥデイ>の管理人と言えば何者か伝わるでしょうか?」
この一言で傍観者を含む100名余名の参加者は沸いた。この歓声を聞けば期待の表れがすごくよく伝わってくる。
「しかし私1人ではとても理想を叶える事は出来ません。
そこでぜひみなさんのお力をお借りしたいと思っています!
書類選考、というわけではありませんが、適材適所で仕事を分担したいと思いますので、ギルドの運営業務に協力してもいいと思われる方は前方にあります3枚綴りの書類をお持ち下さい。」
ここで前に出たのはおそらく30名程度であっただろうか。やはり少ない。ほとんどが傍観者だったか。
先程のシンカー氏の仲間らしき2人が用紙を配りながら説明をしていた。俺の列の前にいたのは銀髪の女性であった。
「それではこちらに名前をお書き下さい。
その後、綴りを確認致しますので、私とフレンド登録をして頂きます。」
『あ、これは何て読むんですか?』
「失礼しました。<ユリエール>と申します。
では用紙の説明ですが、1枚目にはギルドの大筋の目的が書かれています。
ですが詳細の内容については、正式な設立後、みなさんと打合せをして決定する事になります。
2枚目は履歴書の様な物です。
ギルドの運営をする上で役に立ちそうな事をお書き頂ければ結構です。
例えば、他のMMOでギルドマスターをやった経験がある等ですね。
他にも生徒会長や会社での役職等でも結構です。」
『なるほど。』
「そして3枚目ですが、こちらはもし貴方が運営に参加した場合にやりたい事を書いて下さい。
こちらのテーマはフリーとなっております。
戦闘で先陣を切って戦うでもいいですし、生産方面の事でも構いません。
その他もしわからない事があれば私宛にフレンドメッセージを送って下さい。」
こうしてシンカー氏の仲間2人は、30人の希望者にそれぞれ半分ずつを担当して説明し終えた。すでに時間は午後2時近くなっているからその苦労が窺える。いつの間にか観客とも言える傍観者の数は倍くらいになっていただろうか。
「それではみなさん大変お待たせ致しました!
今ほどお配りした用紙は明日13時から15時までの間にこの場所で回収致します。
また、第2第3の運営希望の方がまだいらっしゃいましたら、同じ時間に受付も致しますので、ぜひ!ぜひ!みなさんのお力を私にお貸しください!」
これでまた歓声が沸く。これがカリスマ性というものか。
「それでは本日はお集まり頂きまして、ありがとうございました!」
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それから黒鉄宮を離れてグリフォーと今後について少しだけ喋りながら歩いた。彼女は非常にやる気に満ち溢れた顔をし、嬉々として今後について語っていた。
「今まで私、学級委員や生徒会役員をやっていたので、戦闘も事務作業も両方立候補してみようと思います!」
それを聞いた俺は、『やはり学級委員だったか』と正解した事に心の中でガッツポーズを取っていた。
俺は何をしようかなぁ。何をしたいか・何ができるかという事より、実はそれを文章にする事が苦手だった。アイディアは浮かぶ。そしてそれを他人に口で説明するのは得意だ。でも紙に書いて提出するのはなぜか苦手だった。
『面接の方が楽なのにな…。』
つい独り言が口に出てしまう。「え?」と「何か言いましたか?」と言いたげなグリフォーには応えず、こう言った。
『頑張って。
俺も何が出来るか考えてみようと思う。
まずは1枚目をよく読んでみる所から、だけどな。』
「お互い頑張りましょう!
今日はもう宿屋に戻って、提出物を仕上げる事にしますね。」
宿題は早めにやっておいた方がいいと思った俺はグリフォーに同意し、昨日とはまた別の、黒鉄宮からそう遠くないホテル調の大き目の宿屋に2人で入る。と言っても夏休みの宿題は残り3日になってからやっと動き出すタイプではあったのだが…。
あ、それと一応付け加えておくが、もちろん部屋は別々だから何の心配もいらない(苦笑)。俺にとってグリフォーは、いやその位の年代は男女問わずみんな“子供”に見える。もっとも、実際はそんなに大きな子供がいるはずの無い歳ではあるが。1人部屋に入り、ドアがノックされて迎えてみると、そこには部屋着に着替えたグリフォーがいて「入ってもいいですか?」なんて言ったとしても俺は1階ロビーに誘導するかもしれない。そういう人間だ。
さて、貰った用紙の1枚目を手に取ってよく読んでみる。
【プレイヤー互助ギルド発足に伴う、運営業務ボランティアのお願い】
此度は今ギルドの設立準備に伴う御声掛けに応じて下さり感謝申し上げます。
先日の一件は、私自身も含めたプレイヤー全員にとって大変な衝撃であったと共に、現在でも心痛が収まる事はありません。しかし、何もせず足を止めたままでは事態は改善しようがないのです。そこで私シンカーは、共にこの地に降り立った仲間達の助言を受け、ギルドを設立する事を決心致しました。
このギルドは上層に赴き、ゲームの攻略を目指すと共に、戦闘に参加しない非戦闘者も含めたメンバーへの互助ギルドとして活動したいと考えております。できれば、少なくとも第一層はじまりの町に残ったプレイヤーの皆さんの援助が出来ればいいのですが、あえてギルドメンバー限定とさせて頂こうと思います。
しかしこれらの事項は決定されたものではありません。この様な基本理念を基に、皆様方も含めた運営会議を開催し、詳細な点を決定しようと考えております。私は設立者の責任としてギルドマスターを務めさせて頂きますが、独裁者になるつもりは全く御座いません。皆様方と共に新たなギルドを創り、そして成長させていきたいと思っております。
2022年11月8日 MMOトゥデイ元管理人<Sinker>
(…。)
(…重いし、堅いな。
まあ真面目な人なんだろう。
しかしカリスマ性はある。)
そう考えた。例え実際に数千人規模の大会社の社長がこのVRMMORPGのフィールドにいたとしても、同じ規模のプレイヤーをまとめ上げる事は出来ないだろう。しかしシンカー氏になら出来そうな気がした。計算というより、“なんとなく”ではあるが、『それこそがカリスマ性なんだろう』と自分で納得した。
(さて、宿題はさっさと片付けてしまおうかな、っと!)
そんな事を思いつつ、結局『気分転換してから』とフィールドまで行ってイノシシ狩りをし、その後夕食をとった後で『仮眠だよ仮眠!』と自分に言い訳して一眠りし、宿題に取り掛かったのは結局のところ午後11時を回ってからであった。
ゲームの中で異性と知り合う事はあっても、それが恋愛に繋がる事って稀だと思いませんか?
そう簡単にアニメやドラマの様な展開にはならない、そういう点はリアルにして行きたいと思います。
グリフォーさんのアバターは、原作のサチをイメージして頂ければ雰囲気が近いと思います。髪型は前髪ぱっつん、ユイの髪を肩までの長さにしたくらい、でしょうか。
挿絵代わりに画像URLを後書きに書くのはセーフかしら?