ソードアート・オンライン外伝 ―One man's side― 作:北川みゅー
――2日後の夜――
ユリエールさんからメッセージが入った。明日、シンカー氏がギルドを立ち上げるため、詳細打合せをしたいための呼び出しらしい。集合時間は明日の午前10時だ。
この2日間は日中ずっとネペント狩りをしてレベル上げをしていた。ちなみにグリフォーは料理のスキル上げをしているらしく、別行動だ。知り合いが他にいないとは言え、毎日一日中一緒に行動するような仲ではない。やりたい事が違えば別行動するのは当然だ。
(グリフォーにもメッセージ行ってるんだろうか。
一応聞いてみるか。)
≪Koume:やあ。料理上げは順調?≫
≪Koume:ギルド(予定)の人から明日来てくれってメッセージが入ったけど、そっちにも行った?≫
≪Griffo:料理はもう350まで来ましたよ。≫
≪Griffo:私にはメッセージ来ていませんね…。私不採用?≫
やはりその心配をするだろうな。一部の人だけを招集して、その少数の人を重要ポストにつけるという事なんだろうか。それにしてもギルド設立の時には先日の希望者は全員呼んでも良さそうなものだが…。とりあえず、テンプレートの言葉を発しておく。
≪Koume:手伝ってた人も2人しかいなかったし、まだ手が回ってないんだろう。≫
≪Koume:もう少し待ってみたら届くんじゃないかな。≫
≪Koume:明日、美味い料理を楽しみにしてるから。≫
≪Griffo:そうですね、もう少し待ってみます。≫
(…料理を持って行くとは言わなかったな。
そんなにへこんだか…。)
少々『めんどくさい』と思ったのは確かな事だった。そういった辺りが高校生を子供として見てしまう理由でもある。しかし初日に声をかけてパーティに誘ってくれた事を恩に感じているため彼女を無下に扱う事はできない。
そんな鬱憤を晴らすため、夜ではあるが少々狩りに出る事にした。
通い慣れた北西門付近で索敵スキルを使いながら周囲を警戒していると、明らかにイノシシとは違う動きをするMOBが2つとグリーンのマーカーが戦闘をしている様だった。
(まさかオオカミか!大丈夫なのか!?)
と思った俺は急ぎその場に急行した。が、到着する前にそのMOBは倒されていた。
「ふう、っと。おやぁ、君は先日の~!
コウメって言ったっけね、元気だったかー。」
『あ、どうも。
…えーと、ここでオオカミ狩りですか?』
「ほっ!コウメ君、やだなぁ、俺の名前忘れたの誤魔化しただろ(笑)
ジネンだよ、ジ・ネ・ン!」
『すいません、忘れてました…。』
「ま、いいんだけど、ね。
今までの知り合いがいなくなって、急に一万人と生きてって、厳しいやな。
あー、そうそう、うん、グレイウルフ狩りしてたとこだ。
この前レベル6って言ってたが、一緒に狩るかい?」
『レベルは7になりました。
でもグレイウルフはまだ見た事ないんですが、大丈夫でしょうか?』
「なーに、俺でさえ倒せるんだから大丈夫だろ~?
俺もレベル7になったから、ほとんど同じだな。
スキル構成は、両手戦斧・応急回復・暗視の3つだ。
コウメ君は?」
『槍、投剣、索敵ですね。』
「ほうほう、戦闘系スキル取ってるようだね。
まあそれなら余裕だな、っと。
そろそろ湧くぞ~~。
初めてって事なら、まずは俺が戦うから敵の動きを見とけばいいさ~。」」
おっさん――もとい、ジネンがそう言ってから数秒ですぐ近くにグレイウルフが2匹ポップした。おそらくジネンはリポップ間隔を掴む程ここで狩りしていたんだろう。
「ほれ行くぞ、っと!」
ジネンは両手斧を肩に担いでオオカミの中間に向かってダッシュする。それに反応したグレイウルフ2匹がジネンをターゲットしたようだ。俺はまだ手を出していないし距離もあるためヘイトが向く事はないだろう。
ジネンはオオカミの中間で停止し、首を振って両方の敵の動きを警戒している。先制攻撃はしないらしい。オオカミ2匹はジネンから2m程の距離を取って時計周りに歩き出した。喉を鳴らし、いつでも飛びかかれる状態の様だ。ジネンはまだ動かない。――とその時オオカミは同時に飛びかかり牙を剥いた。
『危な…』
と声に出した瞬間、
「ワールウインドーー!!」
と早口でスキルの使用を宣言し、ジネンの両手斧が青く光り出した。そして斧を水平に掲げたまま高速で一回転し、オオカミ2匹を同時に攻撃する。
「「ギャウン!」」
とオオカミが叫び声の様なものをあげたかと思ったら、その一撃でポリゴンの姿になり、ガラス片となって空に散っていった。
「で、だーれが危ないって?(笑)」
『いや、まさか一撃で2匹同時に倒すとは思わなかったんで…。』
「はっはっは!まあなぁ。使い手の多い片手剣じゃ無理だろうしなぁ。
でも一発で倒せる様になったのはレベル6になってからなんだがよ、
攻撃力の高い両手斧と筋力にしか振ってないステータスのおかげさね。
あのスキルは踏み込まなくてリーチが無いから、ネペントみたいにあんまり動かない奴ぁむしろ苦手よ。
ま、次戦ってみ?ここだと1分半で次が湧くぞ。」
両手槍にも範囲攻撃はあるが、武器の基本攻撃力が違うから俺では一撃で倒す事は出来ないだろう。ステータスも、ここまで筋力と敏捷性はバランス良く割り振ってきている。ではどうやってオオカミを倒すか、それを90秒弱で考えなければならない。
「ほれ、湧くぞ~。」
ジネンが言い終わる前に先程とほぼ同じ位置にグレイウルフが2匹出現した。
俺の作戦は、まず距離を詰めずにスローナイフで先制する。
『シングルシュート』
自分に近い方のオオカミに命中した。ヒットしたのは当然1匹だけであるが、それに連動して2匹共のターゲットがこちらに向く。しかし焦らずすぐに2本目のナイフを投じた。
『シングルシュート』
狙いは1本目と同じ方だ。基本的にMOBは再三の攻撃を受ければ、よりヘイトが積み重なり、その相手への攻撃性が増す。つまり、2度攻撃を受けた方のオオカミ1匹だけがヘイトが高まり、こちらに真っ直ぐ走ってきた。真っ直ぐ走ってきてくれさえすれば槍のリーチで捉える事は簡単だ。技を出すタイミングも関係無い、例のカウンターの構えを取った。槍の切っ先に触れる直前で上にジャンプして飛びかかってくるが、システムにアシストされたソードスキルではないために技の硬直も無く対応が可能だ。体の右側に水平に構えていた槍を、45°程の高さに上げ、飛びあがったオオカミの描くであろう放物線の先で待ち構えた。
「お~!オオカミの串刺しかー!」
狙い通りオオカミは胴のど真ん中を槍に深く突き刺した。しかしイノシシと違ってこれだけではまだ倒せていない。貫通継続ダメージが蓄積すれば倒せるのだろうが、しかし今は2匹目のオオカミがすぐ近くにいる。そこでオオカミが串刺しになった槍を一度90°近くまで持ち上げ、そして思いっきり地面へと叩きつけた。このダメージでグレイウルフのHPバーは左端まできれいに無くなり、ポリゴンへと姿を変える。
次に俺の2m手前で周囲を回るそぶりを見せる2匹目を見る。しかし、槍使いにとって2mはすでにこちらの間合いである。
『ヘリカルトワイス!』
刃先が青く光った槍を右手一本で持ち、右周りに1回転する。そしてその勢いのまま槍を持った手を水平に伸ばし、もう1回転。槍のリーチを生かした攻撃範囲の広い水平斬り攻撃である。予備動作で回転をする都合により、ジネンのワールウインドより出が遅いが、2回転目で一歩移動できる分リーチは比べものにならない。槍の重量と2回転分の遠心力が加わった一撃が2m先のオオカミを捉える。
「ギャウン!」
「まだ倒し切れてないぞ!」
『一発当って弱れば十分!
ツインスラスト!』
これは両手で繰り出す1段目の突きの後、システムのアシストによって高速に腕を戻して今度は右手一本で2段目の突きを繰り出す2連続攻撃だ。と言っても両手槍スキルの中ではもっとも初期に入手できるスキルではあるが。
1度ダメージを食らっていたグレイウルフは動きが鈍くなっており、“槍のソードスキル”は見事に2発とも命中した。しかし当たり所が良かったと言うべきか悪かったと言うべきか、まだ絶命はしていない様だ。それでもCPUのロジック通りにこちらを睨んで飛びかかろうとする敵に対し、ソードスキルも使わずに槍を右から左に野球のスイングの様に振り、その攻撃によってオオカミは倒れた。
「お~!槍もなかなかいいもんだねぇ!
飛びかかってくる前に攻撃できるって便利だなぁ、うん。」
なるほど。予想通り、スキル構成によってはオオカミは戦い辛い相手ではない様だ。もっとも、レベル1で初期装備の片手剣しか無い状態では危険極まりない相手である事は間違いないが。イノシシと違って300を越えてからもスキル上昇判定がありそうだし、夜の狩りも悪くないな。
スキル名やソードスキル名は極力原作のものを使用していきますが、取得条件や動作等はあくまでも本作オリジナルの解釈とさせて頂きます。
Koume Lv.7
両手用重槍 328
投剣 227
索敵 315
Griffo Lv.6
両手用剣 268
軽金属装備 181
料理 272
Jinen Lv.7
両手戦斧 356
応急回復 74
暗視 310