ソードアート・オンライン外伝 ―One man's side―   作:北川みゅー

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第14話 ギルド<MTD>①

翌日は午前10時に予定があるので狩りは日付が変わる前に終了した。おかげでレベルはまた1上がって8になったが、“調子のいいおっさん”こと<ジネン>もまたレベル8を目指し、まだ狩りを続けるつもりの様だ。

 

初のオオカミ狩りであったが、俺はオオカミの動きを見る事に注力した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ポップ後数秒で“敵”を認識し、近くにいる同族もリンクしてこちらをターゲットしてくるアクティブモンスターである事。ヘイトが一定以上蓄積されるまでは攻撃に出ず、約2mの距離を取って周囲を回る。そして距離によってヘイトが上昇すると敵に向かって真っ直ぐ走り、鋭い爪で飛びかかってくる。この際に前方に対して武器を構えていると、左右または上方向に進路を変える俊敏性もある。そして接近した場合は爪ではなく噛みつき攻撃を狙おうとする。頭のいいオオカミはダメージの大きい首ではなく、まず足を狙う場合もあるから注意が必要だ。

 

次に攻略法だが、周囲を回って警戒している状態で手を出すのは危険だ。高い敏捷性で回避され、次に牙を以って攻撃を受けてしまうだろう。

倒し方の1つはジネンの様にあえて手を出さず、数匹のヘイトを揃えておいて、一斉に飛びかかってきた所を範囲攻撃でのカウンターを狙う事。HPはおそらくイノシシの2倍程度あるが装甲は無いに等しい。きちんとタイミングが合えば攻撃力によっては一撃で倒せるか、または倒せなくても瀕死のMOBは素早さが落ちるために仕留めやすい。

もう1つ。こちらが一般的にオススメではあるが、1匹ずつタゲを取る事だ。“タゲを取る”とはMMORPG用語で、自分が相手のターゲットになるという意味で考えてもらえばいいだろう。出来ればポップ直後、こちらに気付く前なら回避されにくい内に攻撃を当てたい。この初撃は垂直斬りや突きではなく、横移動で回避されない水平斬りが適していると思われる。攻撃を受けた側だけヘイトが上昇し、1匹だけで走ってきたら狙い通り。これは回避するよりカウンターを取るか盾で防いで攻撃をした方がいい。そうしてダメージを与え、攻撃力・素早さが落ちた状態のオオカミは積極的に攻撃してこなくなり、その状態なら放置しても問題はなく、他のオオカミに集中する事が出来る。

そして、もし攻撃を受けても慌てるな、という事が重要だ。見た目にも怖い外見や攻撃方法ではあるが、ジネンの話によればレベル3・鎧無しでもオオカミの1回の攻撃では3割程しかHPは減らなかったらしい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

こういう知識は自分の興味のためもあるが、後に他人に教えるためでもある。<孔明>の名の通り、以前プレイしたMMORPGの様に複数人での戦術を立てる方が自分のやり方に合ってはいるが、敵の布陣を知らずに良い戦術は立てられないからだ。<戦いとは事前の情報戦がカギを握る>これが俺の戦い方だ。

 

 

『じゃあな、オッサン。

 また会えたらよろしくな。』

 

 

この3時間程の狩りの間にだいぶ打ち解けた喋り方になった。これはオッサンの人柄のおかげだろうか。

 

 

「おう~。

 お前さんがどーーしても、って言うならフレンド登録してもいいぞ?ん?」

 

『そこまで言われたらむしろ遠慮したくなるわ!(笑)』

 

「ま~俺はどっちでもいいのよ。

 どうせ夜の活動がメインのソロプレイヤーだからよ…。」

 

 

陽気なオッサンには珍しく、沈みがちな声だ。しかしデスゲームとなったこの状況では誰もが沈みがちになってしまうのも無理は無い。だが、俺はこの『どうせ○○だから』という言い方が好きではない。だから“相手がどう考えるか”といういつもの計算をせずに反射的に言葉を返してしまう。

 

 

『あーわかった!フレンド登録しておこう!

 ほら、酒を飲みに行く約束もあるからな。』

 

 

俺には毎日酒を飲むという習慣は無かったが、仲間とワイワイ酒を酌み交わすのは嫌いではない。初日の広場や圏外フィールドの狩場、黒鉄宮の集会と、ここまでの数日間で様々なプレイヤーを見てきたが、若いプレイヤーが非常に多いと感じていた。ボリュームゾーンは20歳前後か、もしかしたらそれより下の可能性もある。だからこそ、歳の近そうなサヤナやジネンとは自然と息が合うのかもしれない。

 

 

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翌朝、グリフォーからメッセージが来ていた。

 

 

≪Griffo:おはようございます≫

≪Griffo:私の所にもギルドのユリエールさんからメッセージ来ましたよ!≫

≪Griffo:午後1時にギルドを発足させるから、運営候補の方は集合してくださいって!≫

≪Griffo:12時半にどこかで待ち合わせますか?≫

 

≪Koume:おはよう≫

≪Koume:ごめん、今日は昨日の夜に知り合ったオッサンと約束があるから、1時に現地で会おう≫

 

≪Griffo:先に約束があれば仕方ないですね≫

≪Griffo:ところでオッサンって(笑)≫

 

≪Koume:オッサンはオッサンだよ(笑)≫

 

 

等と他愛も無い話をしたが、昨日のメッセージで時間を書いておかなくて正解だ。俺の集合時間は10時。どういう用件かは知らないが、呼び出し時間が違う。正直、面倒な事をしてくれるな、という感想だ。運営をやる気のある人からやる気を削ぐ様な事はしないで欲しい。

グリフォーもおそらく、現実世界での知り合いはこっちにいないんだろう。まあ真面目な学級委員として通してるのに、実は重度のゲームオタクでしたと知れたらクラスでも浮きそうな気がしないでもない。俺も周りにゲーム仲間と言える友人はいなかったし…なるべくいい友人でいてあげたいものだ。

 

予定通り10時、の少し前に黒鉄宮に着いた。普段5分前行動等はあまり考えていないが、この世界では特に暇つぶしの方法を見つけておらず、結果的に早めに移動をしてしまう。

入口で待っていたユリエールさんに案内され、急造であろう会議室の様な部屋に通される。そこでは3人掛けの長テーブルが正方形に配置されていて、つまり12人がこの席に着く事ができる。奥にはすでにシンカー氏も座っており、自分が案内された自分の名前が書いてある席に座った所で、残る空席はシンカー氏の両隣――おそらくユリエールさんともう1人の側近の席だろう――を除いて残り2つであった。ちなみに先日の集会に来ていた人達だけに顔に見覚えのある人もいるが、知り合いと呼べる様な人はいなかった。

残り2人が到着したようで、側近の2人も席に着き、これで12人が揃った。

 

 

「皆さん、今日は急なお呼び立てに応じて下さってありがとうございます。

 改めまして、MMOトゥデイの管理人をしておりました、シンカーです。

 今後とも宜しくお願い致しますm(__)m」

 

 

歓声という程ではないが軽い拍手が起こる。真面目ではない、とは言えひねくれてるわけでもない俺も手は叩いた。

 

 

「この後13時に、先日運営業務に応募された他の皆さんもお呼びして、そして皆さんに立ち会って頂く中でギルドを設立しようと予定しています。

 そして、ある程度予想はされているかもしれませんが、ここにお集り頂いた皆さんは、これから作ろうとしているギルドで、運営側の中でもちょっとまとめ役の様な立場になって頂きたいと考えています。

 我々立案者の3人で相談し、選考させて頂きましたが、この後皆さんそれぞれにお願いしたい内容をお伝えしますが、もしご納得頂けなければご辞退されても構いません。

 これは強制していい様なものではないからです。」

 

「今の時点では皆さん大丈夫な様ですね?

 では続けさせて頂きます。

 皆さんにお願いしたい内容は個別に連絡してもいいのですが、ギルドの立ち上げの初回ですので、皆さん自身が他の人は何をしているのかある程度把握しておいて頂きたいために、この集合した場の中でお伝えしていきたいと思います。」

 

「まず、私はギルドマスターとして全体のまとめ役として各部門のバランス取りを行います。

 次に私の両隣に座っているスタッフについてですが、これは<UQ2>というMMORPGをやっていた時の仲間です。

 MMOトゥデイの記事作成にも協力して貰っていましたし、頼れる人材です。

 向かって右がキャスティ、左がユリエールです。

 このギルドにはサブマスターという職は置かない予定ではありますが、彼らには私のサポートをお願いする予定です。」

 

 

ユリエールは銀髪ロングヘアの女性であるが、キャスティは女性の様な名前だが男性だ。俺やサヤナと同じく稼動当初は女キャラだったんだろう…。人の事は言えないが、ご愁傷様だ。アバターの髪型・髪色・瞳の色だけは自由に変えられるので、原色に近い青い髪を後ろで小さく結んでいる。ユリエールさんは20代前半といった所だろうが、キャスティさんは20代後半か30くらいだろうか。

そういえば、周りの出席者を見ても、10代と思われる人はいない様だ。ちなみにシンカー氏は30代半ばに見える。

 

 

「キャスティです。

 宜しくお願いします。」

 

「ユリエールと申します。

 皆さん今後とも宜しくお願い致しますm(__)m」

 

 

ユリエールさんはなかなかきれいな人だ。B+かA-だな。MMORPGをやっている女性というだけでレアなので、Bクラス以上でも輝いて見える。きれいな女性と共に仕事をしたいと思う事の何が悪い!と一人心の中で喋っていた。ちなみに俺の眼鏡ではグリフォーはB-だ。現時点で“無し”ではないが、5年後は期待できるだろう。等と考えてしまうのはもはや男の習性であると言わざるを得ない。

そんな俺の妄想を妨げるかの様にシンカー氏は続けた。

 

 

「では次に、皆さん方の役についてご説明させて頂きます。」

 

 

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