ソードアート・オンライン外伝 ―One man's side― 作:北川みゅー
ランチに出た5人は近くの店に入った。
口火を切ったのは広報担当のサカツキだ。
「さて、あらためて自己紹介でもしておきましょうか。
まず私の方から。今回ギルドで広報を任される事になりましたサカツキです。
お恥ずかしい話、茅場氏の演説の後でフィールドに出るのが怖くなってましてね、
黒鉄宮近くの宿屋に閉じこもってたんですが、この話を聞いて参加する事にしました。
資料にもありましたが一応ライターやってましたので、それを生かしてプレイヤーの役に立てる事は光栄ですね。」
『あー、サカツキさん、実は同じ広報誌の提案は自分もしていたんですよ。
結果的には戦闘訓練の方の担当になりましたが、ぜひサポート等させてください。』
「ありがとうございます。ぜひお願いしましょう!
ええと、コウメイさんでしたね。」
今は特にパーティーを組んでいるわけでも無いので、回りの人に<Koume>という名前の綴りは見えていない。
『今後とも宜しくお願いします。』
「了解しました。
多少は取材に出れる様に私自身のスキル上げにもご協力願いますよ(笑顔)」
「よろしく、サカツキ、コウメイ。
俺はウォルコフだ。今の所は普通にハンマー使いの戦士やってる。
でもな、俺はゲームの攻略に欠かせないのは強い武器防具を持つ事、その供給と修理という後方支援こそが大事だと考えている。
そしてSAOでは1人が何でも作る事は不可能であり、このギルドでは数が必要だから人数が物を言う。
だからそれを取り仕切る役がいた方がいいだろうと提案したわけだよ。」
「確かに、俺達戦士が前線で戦い続けるためにはいい武器と、そしていいメンテナンスが必要です。」
「ドロップアイテムの武器も有るには有るんだろうが、それにしても全員がいい武器を手に出来るわけじゃないし、どちらにしてもメンテナンスは必要だろう?
どんなに質が良くても数が無ければ戦力にならん。逆に質の悪い物を揃えても意味は無いがな。
えーとあんたは第1チームの…」
「コービーです。
皆さん方と違ってリアルでの経験や知識、全体を見た考え方という“何か”は持っていないのですが、元ベータテスターというメリットを生かして攻略では頑張ろうと思います。」
「ついでに自分もいいですか?
同じく攻略担当のリュウノスケです。
コービーさんとは逆に、ゲーム経験はあまりないのですが、自分の剣の腕がこの様な形で役に立たせられるとは…、すみませんこの様な状況で不謹慎なんですが、多少の嬉しさもあります。」
『ところで皆さん、今ここにいる5人だけでなく、先程の9人みな同じ境遇なんだ。
年齢も多少違うだろうけど、呼び捨てで構わないと思う。
宜しいですよね?ウォルコフさん、サカツキさん。』
「ああ、かまわんぜ。」
「もちろん。
その方がいいでしょう。」
俺はこの5人の中では年長者である可能性が高い――と言っても30代半ばか40くらいか――ウォルコフとサカツキに同意を求めた。コービーとリュウノスケは、現実世界でのタイプこそ違うんだろうが、SAOではどちらも熱血主人公タイプだ。彼らを動きやすくするのも俺の役目だろうと勝手に考えている。
午後1時の集合までの残り時間で食事をし、それぞれがここまでの数日で何をしていたかを喋っていた。
コービーはベータ時代の仲間とパーティを組んで次の町、ホラントを拠点にレベル上げをしていたそうだ。同じ様な事を考える人達が増え、NPCショップの在庫も不足し始めた事ではじまりの町に補給に戻り、その時にギルド立ち上げの噂を耳に挟んだらしい。他の仲間は運営に立候補こそしなかったが、後にギルドに合流する予定だそうだ。
リュウノスケは逆に特に知り合いもおらず、はじまりの町の近郊でイノシシやオオカミ退治をして小銭を稼ぐくらいしかしていなかった。ずっとソロだったからこそ、パーティを組んで戦う事に魅力を感じて応募したようだ。
ウォルコフは鍛冶屋を目指していたが、先立つ物を得るためにハンマーを手に“先ずは戦闘”をしていた。いつか生産者ギルドを作るつもりであったらしいが、個人でやるよりもシンカーという有名人の呼びかけならば大きなギルドになるだろうと考えを変えたそうだ。ちなみに現在はまだ鍛冶系の生産スキルは持っていない。
最後のサカツキは、デスゲーム開始前こそ野良パーティを組んでフィールドに出ていたが、茅場の演説後ははじまりの町を歩き回っていたそうだ。町の様子を見て施設の情報収集をしたり、人の様子を見て他の人はどう動くのかを観察していたそうだ。
集合の午後1時まではもう少しだけ時間があり、コービー・リュウノスケと今後の話をした。
その間、ウォルコフとサカツキはどんな仕事をしていたか等、リアルの話題で喋っていたようだ。
『さっきのシンカー氏の話だと、あと45人くらいが運営に参加するって話だから、たぶん戦闘チームにも15人くらいは加わると見ていいだろうな。
それからギルドへの勧誘活動が始まって、俺はたぶん全体で1000人くらいの規模になると思うんだが、攻略に進める人材がどれだけいるか…、いや、ほとんどいないと考えてもいいだろう。
おそらく、ギルドからの配給品が目当ての非戦闘員が多いと思う。』
「1000人中、戦えるプレイヤーは100人もいたらいい方ですかね。」
『最初はそれも期待できないかもしれないな。
まずはβ出身者や、すでにレベルが高い人を集めて、コービー率いる精鋭の第1チームを作ろう。そして先遣隊として上位プレイヤー達と共に迷宮区を目指して欲しい。』
「もちろん、元々そのつもりだったし、仲間が増える事はデスゲームになった今となっては心強いな。」
『あと、残った中で他のMMORPGをやってた様な中堅層はリュウノスケの第2チームへ。危険の無いエリアでレベリングしてもらい、前線にレベルが追いついたら順次第1チームに合流する事にしよう。
もしボスクラスの敵と戦う事になれば、臨機応変に加勢に加わる事にしたらいいと思う。』
「了解です。
ではコウメイさんは?」
『俺はまず、情報収集という所から始めるつもり。
前線の戦力、敵の強さを知らなければ今後の作戦の立てようがないからなぁ。
というわけで、色々協力していきましょうサカツキさん。』
「あ、ああもちろんだよ。
情報は武器にも盾にもなるからね。」
さすが、一応話は聞いていたようだ。
「おい、そろそろ黒鉄宮に移動しようかね。
いきなり遅刻は不味いんじゃないのか?」
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午後1時を迎え、グリフォーを含むその他の運営立候補者が黒鉄宮に集合した。後で聞いた話であるが、先に集合していた12人を含み、運営は総勢60名になったそうだ。
その中にはβテスターが2人等、初めから攻略に行けそうな人材は4人程いた他、レベル8以上の戦闘部門希望者も10人いた。これはあの提出書類に書いた自己申告の内容や、後で直接聞いた話であるから実際のレベルやβ出身者の数は違うかもしれないが。
「それでは、只今ここに、ギルド<MTD>の設立を行います!」
そのシンカーの一声によって、会場は拍手喝采に包まれた。
書き貯めていた分がすべて消え、へこんだ所から復帰してみました。