ソードアート・オンライン外伝 ―One man's side―   作:北川みゅー

3 / 17
第3話 デスゲーム

夕方という時間を感じた私達は、町へ引き返す事にして帰路についた。夜になるとMOBの動きが活発になったり索敵スキルが無いといつ襲われるかわからなかったり、とにかく危険が多いらしい。だからベータの時は昼に狩り・夜は町に帰って次の狩りの支度をしたり談笑して過ごすらしいという事はパーティの色気担当・巨乳のサヤナからの話で理解していた。

空がオレンジ色になり、辺りが黄金に染まってきたロマンチックな景色の中、他愛もないお喋りをしながら歩いた。

 

 

「あ~、俺、夜8時からバイトなんだよなぁ…。あーー行きたくねーーー!」

 

(このイケメンは本当にイケメンでホストでもやってるんだろうか?

 源氏名がナオトだったりして。)

 

「あら、普通の人は明日は朝から仕事なのよ?明日の昼間もダイブできるのが羨ましいけど?」

 

(日曜の夕方に憂鬱になるのは誰でも一緒なのかな)

 

「そうだな。またタイミングが合ったらこのメンバーで集まらないか?

 別に毎回じゃなくてもいい、どのくらい強くなったとか情報交換だけでもさ。

 というわけでフレンド登録しておこうよ。」

 

(言いだそうと思ったけど、言ってくれてよかった…。)

 

 

こうして4人相互にフレンド登録をし、今度は将来的なスキル構成の話で盛り上がっていた。

 

その時突然、リンゴーーン、リンゴーーンという結婚式で鳴りそうな鐘の音が大音量で響き渡った。

 

何が起こったか想像もできない私は、何か知ってそうな隊長こと金髪ロンゲのグリフォーの顔を見たが、両の手のひらを上に首を横に振るジェスチャーで返事が来た。

とそのグリフォーの体が青い光の柱に包まれた――と同時に私を含め全員が青い光に包まれていた。

 

 

「これは転移か?」

 

 

とグリフォーらしき声が聞こえたと思ったが、すでに青い光が強くなって視界はまったく見えなくなった。

 

そして光りが収まり視界が開けた時にはそこは先程まで歩いていた草原ではなく、人ごみのど真ん中であった。人が周りに急に現れたのではなく、自分がこの場所に飛んできたという事は――足元が石畳で遠くに壁と黒い宮殿が見える事から――すぐにわかった。他にもまだあちこちに青い光が上がって人が転移されてきている。

まったく何が起きているか分からなかったが、救いだと思えたのはさっきまで一緒に狩りをしていたパーティメンバーの3人が近くにいたからだ。

 

「何千人、いやもしかして購入者全員の1万人いるんじゃないか?」

「み、みたいだよな」

「その様ね…」

 

とグリフォーが言ったが、身長が低い私にはさっぱり何も見えない。何しろ目線の位置がグリフォーの肩より低いからだ。

周り中が騒然としている中、こんな叫びを上げているのが聞こえた。

 

「ログアウト出来ないぞ!」

「おい運営出てこい!」

 

「マジか!?」

 

と反応したのはナオトだ。右手の人差し指・中指を2本揃えて縦に振り、メニューを出した。しかしどうやら本当にログアウトボタンが無いらしく、青ざめた顔をしていた。

私も自分でもメニュー画面を確認してみたけど、ナオトと同じくログアウトボタンは見当たらなかった。

 

と、下を向いていたら誰かが「上だ!」と叫んだ様な気がした。周りの見知らぬ人達も「上に何かあるぞ」とざわめき出した。

その場にいた皆がほとんど一斉に上を見上げた所、空が空でなく、【Warning】【System Announcement】という真っ赤な文字が市松模様の様に空を埋め尽くしていた。

 

 

(運営からのアナウンス?

 わざわざプレイヤーを一か所に集めて?

 ログアウト出来ない不具合についてかな。)

 

 

等と疑問に思ったが、それは誰もが同じだったのかざわめきが小さくなった気がする。

その時、赤い文字で埋まった空の中心部が変化を始めた。

何も無い所から血の様な色の大きな雫が垂れ、そしてその粘度の高そうなゆっくりとした動きの中で変化し、2,30mはありそうな血の色をした魔法使い風のローブになった。それはあくまでもローブであり、人の顔等は見えなかったが、誰かが「GMのローブだ」と言っていた。ベータの時にはあのローブがGMの目印であったが、当然中身のある“人”だったらしい。「なんで顔が無いんだ?」という声もある。

正直言って私の位置からではよく見えなかったが、そのローブの手の部分が動いたらしい。

 

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。」

 

 

低く静かな、よく通る男性の声であった。私の世界と言うからには開発者なんだろうか?と思ったら、すぐにその回答がされた。

 

 

「私の名前は茅場晶彦。

 今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。」

 

 

別に興味が無かったから名前等は知らないが、周りの反応からしたらこの茅場という人が開発者で正解であった。SAOについての知識は結構詰め込んで来たつもりだったのに、開発者がこれほど有名人だったのは知らなかったので、と少々ショックを受けた。

一瞬また騒然となったが、自然とまた血色のローブこと開発者茅場の声を聞くために静まっていった。

 

 

「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。

 しかしゲームの不具合では無い。

 繰り返す。

 これは不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である。

 諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない。

 また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。

 もしそれらが試みられた場合…」

 

 

ここでほんの少々の間が挟まれた。それまで「仕様だと!?」「ふざけんな!」「城ってどこだよ…」とまた騒然となった1万人が次の言葉を聞こうとまた静まり返る。

 

 

「ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。